「ゲニウス(北)の北海鉄旅いいじゃないか」

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東京を目指す旅 ~この坂を越えて~(平成29年3月4~10日)

0日目(平成29.3.4) 1/2ページ「胸騒ぎの、出発」

本日の行程

移動手段乗車(移動開始)出発時刻下車(到着地点)到着時刻車両
特急スーパー北斗14号札幌13:32函館17:09キハ280-105(7両編成・4両目)
函館市電函館駅前18:17湯の川18:498010
函館市電湯の川温泉19:59湯の川20:012002
函館市電湯の川20:40函館駅前21:118009
道南いさりび鉄道普通1168D函館21:56七重浜22:06キハ40 1793(単行)
徒歩七重浜駅22:10頃津軽海峡フェリー函館FT22:35頃-

昼下がりの札幌を発つ

3月4日、午後1時ころ。他の宿泊旅行の時と同じように、ボクはスタート地点の札幌駅にいました。

今回は自身2年ぶりの本州上陸。本州へは函館からの夜行フェリーで上陸するので、この日は「0日目」と銘打ちまして、午後に札幌を出て、まずは函館に向かいます。料理で言えば下ごしらえ、落語で言えば前座にあたる部分です。

函館への交通手段は、やはりというか「スーパー北斗」を選びました。札幌~函館間の特急は前年の改正で臨時含め14往復にまで膨れ上がったJR北海道の主力のひとつであり、ボクもこよなく愛しています。トップランナーにふさわしい存在です。

苫小牧からフェリーというのも手ですが、翌日の目的地の都合で青森港から本州入りしたいのと、トップランナーをスーパー北斗にしたいというのがあり、函館経由にしました。


土曜日の昼下がりの札幌駅は、いつものように多くの人で賑わっていました。しかし、前日までとは大きく違うのが、「ライラック」や「カムイ」といった、新しい列車の名前がアナウンスされていたこと。この日は、まさにダイヤ改正の当日でした。ダイヤ改正の直前に旅をしたことはありましたが、改正直後は今回が初めてです。

といっても、北斗系統は1往復の車両が変わった以外は大きな変化はなく、ダイヤ改正があったとはいえ違和感はありませんでした。

そういえば、2年前の道外旅行では、「いつもと違って特急スタートだから、旅の始まりという感じがしない」なんて言っていましたが、あれから2年経ってボクは特急に慣れたので、そんなことはもうありません。

ボクは普段の旅立ちと同じような感覚で、函館までの乗車券と特急券を重ねて、自動改札を通りました。


13時16分ころ、苗穂方から特急スーパー北斗14号が入線してきました。車両はキハ281系7両編成です。

スーパー北斗は現在、キハ281系のほか、キハ261系1000番台も担当しています。でも、ファーストランナーには、どうしてもキハ281系がいいとボクは思っていました。道央や道南を、車体を左右に揺らしながら駆け抜ける青い車体が、やっぱりスーパー北斗と聞いてボクが一番にイメージする姿だからです。まあでもそのうち261系のスーパー北斗にも乗ってみるとしますかね。

2年前も同じように、まずはスーパー北斗で函館に向かったわけですが、あの時はキハ283系が代走で来たんでした。このせいもあって、札幌~函館間をキハ281系で乗り通すのが自身なんと16年ぶりというおかしな事態となっています。まあ気にせずいきましょう。

今回は、事前にえきねっとで特急券を買っておきました。えきねっとはこの年から北海道の特急列車の予約が可能になりました(JR北海道予約サービスと統合したような感じ)。ネット予約だと自分での座席指定が可能で、窓側ならどこでも良いといえば良いのですが、当サイトの「北の特急(+α)図鑑」で使う用に車内の写真が撮りたいので、その都合で4号車より後ろを選ぶことにしました。それで、座席数が少なく、静かな確率が比較的高い5号車にしようかと思ったら、5号車はまとまった数の座席が埋まっており、団体客が乗る可能性があると思ったので、隣の4号車にしました。

というわけで、早速4号車に乗車。車内ではいつもの自動放送が流れていましたが、いつの間にか中国語放送が付いていました。以前から登別や洞爺といった中国人旅行客が多い駅の直前では流れていましたが、各駅で流れるようになってました。

13時32分、札幌駅を発車。1両あたり710PSの馬力を誇るキハ281系は、軽やかに札幌駅を離れていきました。

さまざまな思いとともに

札幌を出たスーパー北斗は、まずは新札幌を目指します。札幌発車直後の放送は客室乗務員による手動放送です。客室乗務員が乗っている「北斗」だと毎回こうなのですが、どういう意図があるのでしょうか。

ともかく、新札幌、そして南千歳とボクにとっておなじみの駅をたどり、列車は南下していきます。この2駅でも結構乗車があり、とくに南千歳では大量の乗客があったので、札幌発車時はそれなりに空席があった列車も、南千歳を過ぎると賑やかになりました。

さて、まだ昼食を食べていないので、ここで昼食にします。最初の食事は札幌駅の駅弁「幕の内弁当 いしかり」、800円。

2年前はいきなり豪華な「北海道三昧 冬御膳」でしたが、いきなり盛り上げ過ぎるのも何だな、ということで、今回はあえて普通の幕の内弁当にしてみました。しかし、そこは老舗・弁菜亭、料理の腕は折り紙付き。昆布の味付けでそれが簡単にわかります(ボクが嫌いなはずの昆布を食える = 味付けが上手)。ホタテの味からは、素材もいいものを使っていることも窺えます。

札幌駅から列車に乗って、車内で駅弁。これが毎度おなじみの出発の儀式と化していますね。ただ、乗る列車は昔とは本当に変わりました。昔は基本的に普通列車スタートでしたからね。人って、やっぱし変わるんですね。


函館までは3時間半ほどの道のり。その中で、さまざまな思いや感情がボクの中をめぐっていました。

今回の旅行は先述の通り、準備時間が全く足りていませんでした。そのため、実は出発のギリギリまで準備に走り回っていました。

準備期間はしっかり取っていたつもりでしたが、他の用事が重なったうえに、準備するべきものもこれまでより多かったため、それでもなお期間が足りませんでした。

そんな中でも、なんとか準備を済ませ、予定通りの時間に旅立つことができたのは、家族の支えがあったからでした。

実は家族との細かいトラブルは非常に多く、その他もろもろあって家族に対する信頼感が薄れていたのですが、旅行の準備の時にいろいろと助けてもらい、「やっぱり自分の家族なんだなぁ」と実感しました。

そうした家族への思いのほかに、単純な話として、準備に、他の用事に、と奔走していたために、気持ちがまったく落ち着いていなかった、ということもありました。

さっきまで焦燥していた後に、旅への期待と不安、そして家族や支えてくれる人への感謝など、さまざまな感情や思いが入り混じって、列車に乗ってしばらくはそうした感情を整理するのに必死でした。


いくばくかの時が過ぎ、少し気持ちが落ち着いてきた頃。気持ちの整理がついてきました。

そして、一つの決意を胸に刻みます。

「よし、やるぞ! 必ずこの旅を成功に終わらせてみせる!!」

支えてくれた人への恩返しとして、今ボクができることは、旅行を成功させ、すなわち大きな収穫とともに無事に帰還して、たくさんの人の支えを無駄にしないことだ。ボクはこう考えたのです。

気だるさの振り子特急

決意を固めたボクは、ようやく不安定な精神を落ち着け、旅に向けて気持ちを整理しつつありました。というか、いろいろありすぎて疲れたので、ボーっとしたくなったという方が正しいかも……。

それから十数分。出発直後の慌ただしさと落ち着かない気持ちはどこへやら、ボクは「車窓を眺めながら車内で気だるく過ごす」といういつもの旅の調子に戻っていました。

この日は旅行の「0日目」と銘打っていまして、日程上は本州上陸時点が実質的な旅行開始地点となっていますが、気持ちの上ではこの時が旅行のはじまりといえるかもしれません。


さて、札幌エリアを抜け出したスーパー北斗14号は、「日本一長い直線区間」である苫小牧近辺を快走していました。

……といっても、何分かの遅れをずっと引きずっていましたが。

列車は「東北リベンジ」の最初で乗ったキハ283系のスーパー北斗ほどではありませんが、結構揺れていました。前年10月の散歩で乗った、同じくキハ283系の臨時北斗(スピードが遅いせいかそんなに揺れなかった)から見ても揺れています。スピードが上がると、揺れが激しくなる、ということでしょうかね。

東室蘭を過ぎると、振り子が本領を発揮します。車窓と車内を同時に見ると床面が大きく動いているのがわかることから、振り子の動きを目でハッキリ確認することができます。

ところで、今回は山側(進行方向右側)の座席に座っています。「えきねっと」での予約なので席は自由に選べますが、「あえて」山側にしました。

今まで北斗系統の特急に乗る時は、必ず海側を指定していました。しかし、「東北リベンジ」と同じ区間・同じ名前の列車でのスタートとなるわけで、動画を撮ることを考えて、せめて車窓を逆側にして変化を付けたい……というとんでもなく不純な理由で、今回は山側をチョイスしました(笑)。

山側は海こそ楽しめませんが、苫小牧を過ぎると樽前山が見えます。この日はかなりキレイに見えまして、山側を取ったおかげでタップリ楽しめました。

さらに伊達紋別~洞爺間あたりでは昭和新山と有珠山が姿を現します。こちらも特徴的かつ魅力のある面構えで、ティンときます。

逆に駒ヶ岳はあまり楽しめません。仕方ないのでデッキから見ていました。駒ヶ岳もこの日はきれいに見え、今回は「山運」があるなあ、と思いました。

また海側と山側では見えるものも大きく違います。海側ではひたすら海沿いですが、山側だと農村部というイメージが強くなります。海側、山側、そして臨時北斗でノースレインボーが入ったときはここに前面展望が加わりますが、3つとも見え方が違って本当に面白いです。

ただ、札幌~苫小牧間や長万部以降だとずーっと西日があたりっぱなしでした。スーパー北斗は区間によって方角が異なるので、どっちに座ろうが日光にさらされます。

あと車窓ついでにもうひとつ。北入江信号場あたりで速度が落ちまして、その時に車窓を見ましたら、線路の脇にまくらぎが並んでいました。前の月に起きた脱線事故の現場です。脱線が起きた時は「おい、旅行でこの区間乗るのに大丈夫かよコレ」と戦慄しましたが、無事復旧して本当によかったです……。


さて車内ですが、乗った車両はもちろん「グレードアップ座席」です。今回の座席はいつもよりちょっと固く感じましたが、ホールド感はやっぱり高く、快適でした。

そんな車内には、登別から観光客がかなり乗車。その多くを外国人(と思われる面々)が占めています。相変わらず外国人には登別・洞爺が人気のようですね。

洞爺ではちょうどホテルに入るのにいい時間だからか、かなり降りる乗客が多かったですが、東室蘭から乗った乗客がまだ結構おり、相変わらずそれなりの乗客数を誇ります。

スーパー北斗は札幌~東室蘭間だけの乗客が一定割合を占めることから、函館寄りでは乗客がやや少なくなる列車でしたが、新幹線効果か今では東室蘭以西でも結構な乗客があるようです。事実、JRのプレスリリースによれば苫小牧~東室蘭間の乗客は伸びていませんが、東室蘭~函館間では伸びています。函館界隈の特急の乗客が以前の1.3倍になったとの報道もあり、函館口での需要増は間違いないでしょう。この2点から、新千歳空港よりも新函館北斗駅の方が近い洞爺や大沼などに新幹線を使って行く客が増えたことが読み取れます。

この事実から、「東室蘭での段落ちが少なくなり、スーパー北斗の回転率が以前より良くなった」「道南限定ながら、新幹線効果が表れ始めている」ということが言えます。でも、「増えたと言ってもたかが1.3倍」「札幌まで新幹線で来る客が増えていない」という事実には変わりがないわけで、JRとしては苦しいところです。

ともかく、南千歳以降は車内には常に賑わいがあり、「北の看板列車」に相応しい雰囲気となっていました。

そんな車内を、ときおり車内販売のワゴンが通ります。この日のダイヤ改正から、道内の車内販売実施列車はさらに減り、特急ではついにスーパー北斗の一部だけとなってしまいました。安月給で長時間労働、となると嫌われるのも道理で、時勢もあって労働力を確保できないようです。スーパー北斗でくらい車内販売が残ってほしいので何か買って応援したかったのですが、あいにく欲しいものが何もなく、長丁場の旅行で無駄遣いをするわけにもいかず、泣く泣くスルーしました。

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