「ゲニウス(北)の北海鉄旅いいじゃないか」

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東京を目指す旅 ~この坂を越えて~(平成29年3月4~10日)

3日目(平成29.3.7) 3/6ページ「立石寺」

参道1000段・目指せ五大堂

立石寺の山門の先には、さっそく上り階段が待っています。羽黒山と違って、遊びがありません。

前日の疲れが抜けていない中で石段に挑むわけで、100段程度で足がだんだん動かなくなってきます。普段の自分では、その程度でへばることは考えられません。やっぱり3日連続登山はキツイか……。

しばらく登ったところにある姥堂は、地獄と極楽を分けるお堂と言います。しかしですね、この体力でここから先に登るというのはですね、およそ極楽とは思えないのですが……。

なるほど、地獄のようにしか見えないところにこそ極楽がある、と。立石寺は示唆的ですね……。

その先にはせみ塚という芭蕉の句碑があります。ここまでで、すでにかなり体にこたえています。

さて参道ですが、雪解け水でかなり濡れているうえ、ところどころ雪が残っています。万が一にも足を滑らせてしまうと、足首をくじく程度では済まないでしょう。決して時間に余裕があるわけではありませんので少し急ぎつつも、慎重に慎重を期して足を置いていきます。

また、大きな岩があって参道がとても狭くなっている、「四寸道」と呼ばれる地点もありまして、人どうしがすれ違うことすらできません。ここも慎重に。

前日の羽黒山の参道は(当たり前ですが)全然人がいませんでした。立石寺は有名観光地とあって、頻繁に人とすれ違いました。外国人らしき人もちらほらと。さすがは全国区、という感じ。

時々上を見上げると、露出した山肌が高々とそびえているのが見えます。静かな大地、澄んだ空気、そしておごそかに構える山。立石寺もまた、前日の羽黒山と同じように、聖地たる風格を感じる場所です。


弥陀洞まで来ると、階段の段数で言うと前半が終わります。すでに息があがっており、先が思いやられます。

その先には、立派な門が立っています。名を「仁王門」と言いまして、運慶の弟子がこしらえたとされる仁王尊の像が内部にあり、参道を見守っています。

門をくぐってさらに上へ。足腰のスタミナは刻一刻と削られていきます。そうなると、脳のはたらきもそれに付き合うように鈍っていきます。

ここから先のことは、あまりよく覚えていないのです。前日の羽黒山と同じ状態です。何かを考える余裕もなく、ほぼ無心で坂を上っていました。

この「ただ一心に」というのは、仏教では非常に大事なことです。禅宗では心を無にすることが求められますし、浄土宗でも「専修念仏」がたいそう重んじられています。もしかしたら、そういうことなのかもしれません。

静かで荘厳な環境で、余計なことを何も考えず、ただ石段を上る。都会に住んでいると、そういう機会はなかなか無いものです。そうした環境を用意するのが、このような石段の続く参道の意義であり、仏教という宗教の現代における存在意義の一つ、と考えることもできますね。

これから生きていく中で、そういう精神統一というか、心を無にできる環境を作っておくのは大事かもな、と思います。旅の中でそうした場所を組み入れることは簡単ですが、いかにして札幌市内にそういう場所を作るか、ということは考えていきたいです。

そして何より、そんな風に無心で物事に取り組んでいる時が、何だかんだで幸せだったりするものだと思うのです。これはまさに仏教の教えに通じるもので、やはり仏教は大事なことを教えてくれるものだと改めて痛感します。ボクの場合「信仰」ではないような気はしますが、今後も仏教の教えを生かして、このストレス社会でも何とかやっていきたいものです。


途中、ルートが二つに分かれます。まっすぐ行くと「奥の院」、左に行くと「五大堂」があります。今回は先に五大堂を目指します。

道中に見えてくるのは、「修業の岩場」。お釈迦様のみもとに行くべく、大勢の修行者が危険な岩場を渡ろうとしては、落下して命を落としてきたといいます。考えるだけでぞっとしてしまいます。

ボクは、自分が得ようとするもののために、危険を冒してまで行動を起こすことができるのか。そんな度胸はどう考えてもありません。

もちろん、普段の生活では落ち着いて行動し、危険を冒さず、長期的な計画に基づいて、安定感をもって事に当たるべきだと思います。でも、ここぞという場面で、自分が人生の中でどうしても達成したいと思うこと、欲しいと思うもののために、命を賭してでも頑張る、ということも、必要になるかもわかりません。

ボクは普段、無茶をせずに、堅実に行動するタイプです(旅行中は無茶しますが、落ち着きだけはいつもの通りです)。しかしながら、それは裏を返せば「意気地なし」ということにもなり、おそらくボクは周りの人間からそう思われていることでしょう。

それは一つの持ち味でもありますが、人生の大チャンスが訪れた時、ただ冷静にしているだけではそれを逃してしまうことでしょう。そういう時は、正反対の人間になった方がいい時もありえます。

普段は冷静沈着で、ここぞで思い切ってドカンと賭けて、自分にとって価値があると思うものを何としても得る。これもうまい生き方の一つと言えそうです。

常に冷静であるべきなのか、それともここぞで羽目を外してでも何かを掴みにいくべきなのか。若造のボクには難しすぎます……。

五大堂の絶景&奥の院から全力ダウンヒル

立石寺で最も有名なのが、五大堂から山の下を見下ろす景色。

眼下には先ほどボクがいた駅周辺の町並みが見え、残雪の白色と、道路や屋根の黒色が目立ちます。正面には山がずらりと並び、雪の白と、葉が生える前の木々の黒。

この景観はしばしば水墨画に例えられますが、実際見てみると本当に水墨画です。それ以外にうまい例えが全く思いつきません。

白と黒、つまりモノトーンの風景ですが、これだけ風情を感じさせ、人の心を動かすことができるのです。まさに「詫びさび」という感じ。

わずか二色の景色に、どうしてこんなに惹かれるのか。「美しさ」というのは、あまりにも奥が深いです。

で、当然ながら山寺駅も見えます。駅の東側には、転車台の跡が見えます。せっかく心を一つにしていたのに、一瞬で鉄道ファンのモードに入っちゃうところが、悲しい性です(苦笑)。

なお、五大堂の近くには圧雪アイスバーンの坂があり、足を滑らせたら周りの人まで巻きぞえにして転落死しかねないポイントがありました。この時期に行かれる方はご注意ください。あと立石寺様、滑り止めの砂のご用意を願います……。


続いて奥の院に行く……のですが、五大堂からは道が二本伸びています。一方が今来た道、もう一方が木の枝が落ちていたりするちょっと危なそうな道。

後者の道に少し行ってみたのですが、ちょっと危険かな、と思ったのと、時間がない中でどこにつながっているのかわからない道をたどるリスクが大きいと思ったことから、引き返して来た道を戻り、先ほどの分岐点から奥の院に行くことにしました。たぶんどっちの道でも奥の院に行けるとは思うのですが……。

では奥の院に向かいます。この時期の奥の院は閉まっていますが、行かずに帰るのもなんですし、取りあえず行ってみます。

道中、山の中を歩き回るサルの群れを見つけました。野生のサルは初めて見るかもしれません。思わずしばらく眺めてしまいました。

石段をさらに登ると、奥の院に到着。五大堂訪問を含め、山門から1時間半程度での到着です。だいたい予定通り。

やっぱり扉が固く閉まっていますが、賽銭を入れる缶はあったので、せめてということでそこに多少の小銭を入れておきます。


一通り見学したところで、下山します。全速力で。

……というわけで企画のお時間。今回のテーマは、「立石寺奥の院から何分で山門まで戻れるか」です。

というのは、旅行前にインターネットで立石寺について調べていた時、登る時間の目安はいくらでも書いてあったのですが、下る時間は全然書いてありませんでした。下りは来た道を戻るわけで、その時間をとことん短縮すれば、そのぶん食べ歩きや他の観光などに時間を回すことができます。

少し給水を挟んだ後、ダウンヒル開始です。石段は濡れていますし、体も疲れているので、急ぐとは言っても慎重さは失わず、一段一段に気を付けます。

最後は特に路面がズルズルで、冷や汗をかきつつ、急いでいる割にゆっくり降りる形になりました。

さて肝心のラップタイムですが……、7分58秒! 単純計算で1秒に2段ちょいの階段を下りたことになります。階段ではない部分もあるので実際はもっと早いペースですが、ダウンヒラー(?)としては少々物足りない数字です。

山寺グルメざんまい

駅前の市街まで戻ってきたところで、お昼ごはんの時間とします。

山形はグルメ大国として知られており、県としても「おいしい山形」をキャッチフレーズに食を全国にPRしています。前日の庄内の食事でも、山形の食のレベルの高さを実感したところですが、内陸部もまた一級のグルメ王国です。

その中でも山寺には、芋煮、玉こんにゃくなど名物が揃っています。さっそく、名物を味わいにいきましょう。

ここは、いろいろなメニューを食べ歩く方式で行ってみます。まずは、先ほど地図をいただいた「えんどう本店」に戻って、お店の入り口付近に出ていた玉こんにゃく(100円)をいただくことにします。

球体のこんにゃくを、北海道・中山峠のあげいものように割り箸に刺して食べるのが、玉こんにゃく。じっくり煮込んだプリプリのこんにゃくに、辛子を付けて。

こんにゃくの味もよく、だしもしっかり染み込んでいます。食感もたまりません。冷え切った体を温めてくれ、体の調子を整えてくれます。


さてお次ですが、芋煮を食べようと思います。他にも周辺にはたくさんの飲食店がありますが、その中でも山を登る前に声をかけてくださった「信敬坊」さんに入店。

このお店のメインはお蕎麦ですが、芋煮も出しています。

メニュー表に目をやると、ボクを待っていたかのように、あるメニューが目に飛び込んできました。その名も、いも煮そば(1,080円)。山形名物の蕎麦と芋煮を同時に楽しめるという、なんとも欲張りなメニューです。欲張りなボクは即座に注文。

さて実食。まずはお蕎麦ですが、一口啜ると「一級」と直感。本コーナーや「独り言」のグルメ関連の記事で再三申し上げてきた通り、ボクは温かい蕎麦がなぜかダメなんですが、一部のお店の蕎麦は温そばでも問題なく食べられます。この蕎麦は問題ないどころか、かなりおいしく感じました。流石蕎麦どころ。

北海道・新得の蕎麦もおいしいと思ったので、おそらくボクが温そばを食べられる条件の一つに「一流の蕎麦どころ」というのがあるのかもしれません。

続いて具、つまり芋煮部分にも手を出していきます。中身は芋のほかに牛肉やネギが入っています。

牛肉は山形県産です。山形牛というと、米沢に代表される日本有数のブランド牛です。こちらも、一噛みしただけで思わず声が出る味わい。噛んだ瞬間に広がってくる肉の味わいは、本場の味とでも言うべき、普段食べている安い牛とは比較するのも難しいものでした。

芋やネギも、いい感じに味が染み込んでいています。

全体を通して不満点が全くない、完成度の高い一杯でした。蕎麦も芋煮もきっちりと味が生きている、という風に見ると、つゆこそが最大の魅力と言えるかもしれません。


さらにもう一軒行っちゃいます。せっかくのグルメ大国・山形観光です、食い意地張っていきますよ。

宝珠橋の近くにある、「お休処 対面石」さんに入ります。先ほど下山口からえんどうさんに向かう途中で通った時、おいしそうな甘味が出ているのに惹かれていたので、デザートとして食べにいった次第です。

店名の「対面石」とは、店のすぐ後ろにある大きな岩のことです。奇岩という感じではありませんが、周りの景色に溶け込んでいい味を出す岩です。

で、入店時はだんごを食べたいと思っていたのですが、メニューを見たらむしろ「宝珠っ子」と名付けられたおやき(150円)が気になったので、そちらを注文。

「おやき」というと北海道民は本州で言うところの今川焼きを想像するのですが、ここで「おやき」とは信州発祥の野菜などをあんにした焼き餅を指します。

この「宝珠っ子」の中味は、青菜です。北海道では野菜を餡にした焼き餅なんてないので初めての組み合わせですが、これが合うんですよ道民の皆さん。

アツアツのうちに食べると、よく練られた皮の味わいが非常においしい。青菜もシャキっとしていました。

大満足、大満足。食べ歩き作戦は大成功に終わりました。これにて山形県とはお別れです。

なお、立石寺見物と食事を合わせた所要時間は、先ほどの宝珠山ダウンヒルにもかかわらず、約3時間という時間を要しています。でも、これでだいたい予定通りです。

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