「ゲニウス(北)の北海鉄旅いいじゃないか」

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東京を目指す旅 ~この坂を越えて~(平成29年3月4~10日)

2日目(平成29.3.6) 3/7ページ「山形名物・麦切り」

庄内・鶴岡に降り立つ

山形県に入った特急いなほは、庄内平野に入り、酒田・鶴岡に向かっています。

庄内は酒田と鶴岡というふたつの10万都市を中心とする地域で、その一つである酒田からはかなりの乗客が乗ってきて、車内は一気に幹線特急の雰囲気になりました。ここまで来ると、いなほで新潟や東京に向かう乗客がだいぶ多いようですね。

庄内~新潟ではそこそこ需要があり、秋田県内でも本荘などからの利用があるので、少なくとも自由席で見れば過剰輸送というほどではなさそうです。指定席はどんなものなのでしょうか。

酒田では2分ほどの停車。最初それを知らなくて、なかなか列車が発車しないので「おや、どうしたんだろう?(無能)」とか考えてました。普段の旅行ではできるだけ列車の時刻や長時間停車などを頭に叩き込んでから旅に出る……というかそれくらいのことを覚えるほどに時刻表を読み込んで旅程を立てるのですが、今回は時間がなかったので、乗車・下車駅のおおよその時刻しか覚えていません。まあ、時刻表を持って旅しているわけで、覚えなければならないものではありませんが。

庄内平野は秋田以上に雪が少なく、すでに田畑が雪の中から顔を出しています。酒田以南は農村の風景が続きます。

次の余目は微妙に延発。酒田は時刻通りの発車だったのに……。

列車はそのまま遅れを引きずり、鶴岡も少しだけ遅れての到着。ボクはここで下車します。秋田から2時間弱のやや長い付き合いとなった特急いなほと、ここで別れます。

正直ちょっと眠いのですが、体を座席から引っぺがして、ホームに降り立ちます。

目的地に着いたからには改札を出るわけですが、先述の「角館 → 今市」のきっぷは余目から陸羽西線に入るルートで作ってあるので、余目~鶴岡間は区間外乗車となります。なので、駅の改札ではその乗車券のほか、秋田駅で買っておいた「秋田→鶴岡のB自由席特急券」「余目→鶴岡の乗車券」の3枚を提示して改札を出ます。しかも用済みのきっぷを記念に持って帰りたいと告げて。駅員さんはこんな面倒な客が相手でも、快く無効印を押して改札を通してくれました。


というわけで初の山形県上陸、そして鶴岡に到着。時間があるので、この後に備えていろいろと準備し暑い!!

なんだこの気温は!?

――3月4日、札幌市の最高気温マイナス0.2℃。5日、北秋田市阿仁合の最高気温0℃ちょうど。6日、鶴岡市の最高気温7.4℃

だいぶ南に来ましたけれど、それにしてもたった2時間移動しただけで変わりすぎです。これは、5日に東北を覆っていた寒気が6日に抜けたせいです。

さっきまで寒い秋田にいたボクは、重ね着をしたうえで厚手のコートを着ていたのですが、もはやこの格好ではいられません。

そこで、バックパックから春秋用のコートを出します。コートを2着用意したのが、荷物が多くなった要因のひとつです。


上着を替えたところで、駅舎を少しばかり眺めてから、この先の日程に備えた準備を始めます。

駅舎は3年前にリニューアルが完了したとのことで、オシャレな外装がイイと思いました。

駅前はロータリーが整備されており、「大地」と名付けられたモニュメントがありました。

鶴岡の目抜き通りは駅から離れているので、駅周辺は必ずしも賑わってはいませんが、駅前がきっちり整備されており、付近に商店や予備校などがあるので、まずまず明るい雰囲気があります。

では行動開始。まず駅からまっすぐ歩いたところにある郵便局で預金を下ろします。この直前の手許金はわずか2000円少々。ちょっとしたトラブルで破綻しかねない状態でした。ここで無事に財布を肥やすことができたので、一安心。

ついでに風景印をもらって、郵便局を後に。その次は、「S-MALL(エスモール)」というショッピングモールに向かいます。駅から徒歩10分もかからないところにあり、大変便利です。

ところで、鶴岡は城下町です。今回は城跡を見学する余裕がありませんが、主要道を除くと道幅が狭いところに、武士の町の雰囲気を感じることができました。

市街地を歩き、エスモールに到着。けっこう規模のあるショッピングセンターです。

まずは、後でもう一回来ることを見越して、お土産品を下見。

それが終わったら、コインロッカーを借ります。料金は100円と安価で嬉しかったのですが、大きいサイズのものはなく、バックパックをそのまま預けることはできませんでした。やむなく、要らないものをすべて出してロッカーに置いていくことにしました。バックパックを背負うにしても、少しでも軽くするわけです。

なお、駅で荷物を預けなかったのは、エスモールで買い物をする可能性があったからです。

これで準備ができました。それでは、エスモールに併設されているバスターミナルに向かいます。

羽黒に向かうバス

「併設の」バスターミナルに向かうと約束したな。あれは嘘だ。

……というのは、この時はバスターミナルが改修工事中で、仮設のバス乗り場に一時移転していたのです。

ボクは事前にこのことを知っていたのに、この時はそれをコロッと忘れていて、ターミナル併設なら時間ギリギリでも行ける、と踏んでいて、移転の張り紙を見て慌てて移動。旅行準備時間が足りなかったツケが回ってきました。

とにかく、エスモールの外にある乗り場に急ぎます。

ここからは、庄内交通のバスに何本も乗ります。なので少しでも経費を浮かせるため、仮設の窓口でバスの回数券を購入します。今回買ったのは、200円券11枚つづりで2000円の券。

なお、この旅行の後で乗り放題のきっぷが生まれたようです。でも、「もう少し早く登場してくれていれば……」とかは考えたら負けです。


それでは、バスでの移動を開始します。これから向かうのは、かの有名な羽黒山です。羽黒山の参道入り口にほど近い「随神門(ずいしんもん)」バス停までは、バスで約40分の道のりです。

ターミナルに停まっていた、随神門行きのバスに乗車。車両はふつうの路線バスタイプで、乗客は他になし。

11時40分、エスモールを発車。鶴岡駅に寄った後、鶴岡の中心街を通って、羽黒地区へと向かいます。

道が複雑に入り組んでいるのが車窓から見てとれ、ここらへんからも城下町としての鶴岡の歴史を垣間見ることができます。

バスは駅前や中心部で乗客をこまめに拾っていきます。平日の午前中ですが、利用がそこまで少ないわけではないようです。

中心街を過ぎても、なかなか街が切れません。もっと田園風景かと思っていましたが、結構市街地が広い街のようです。また、田畑も秋田より面積が狭いと思いました。中心部以外の人口密度の高さや、農地の狭さに、「本州」を感じます。

住宅などの建物以外は、田んぼが多いと思いました。庄内も米どころなので、農地に占める田んぼの割合はそれなりにあるのでしょう。天気もいつの間にやら良くなっており、明るい空の下の田園は絵になるものでした。

ひとつ特徴的だったのが、運転です。「一時停止」「右よし」「左よし」など、鉄道の運転士のように指差喚呼をしながら運転しています。この後他の運転手が運転する便にも乗るわけですが、やっている人はやっていたので、安全対策としてこのような方法をとるよう社内教育をしているのでしょうか。

バスは郊外の道をスイスイ走り、羽黒山のふもとの手向(とうげ)という地域に向かっていきます。手向もけっこう建物があります。ぶっちゃけ「集落」程度を想像していましたが、思った以上に「町」でした。

そして12時20分ころ、随神門バス停に到着です。

「麦切り」を食す

ちょうどお昼時です。この先、また体力を使う場面が控えていますので、ここらできっちりパワーを蓄えておきましょう。

付近には食事処が何軒かあります。とりあえず辺りを歩いて店をリストアップして、その中から一か所をセレクト。

選んだのは、「御食事処 いしい」。そばなどを出しているようです。

メニュー表を見ると、いろいろ面白そうな品が載っています。せっかくなので頼んでみましょう。

まずメインディッシュとして頼んだのが、「麦切り」という麺です。

麦切りは庄内で親しまれる独特の麺で、そばでもないし、うどんでもない、という独特の食感が味わえます。

材料はうどんと同じ小麦粉ですが、けっこう細く切られ、つやがあります。そば粉は使わないのに、どことなく蕎麦っぽさを感じるのがフシギ。麺の味はもちろん美味で、おいしく楽しく食べることができました。

なお、麦切りというのは冷やしで食べるのがキホンのようで、このお店では温かい麦切りというのは出していませんでした。

お店の方に「寒いですけどいいですか」と心配されましたが、むしろ冷たいものが食べたいくらいでしたから好都合。わちきは北から来たもんで、暑くてかなわんっちゅーねん……。

なお、この店には普通のそばもありますが、こちらは地元産のそば粉を使っているとのこと。今回頼んだ麦切りにもそば入りの吸い物が出てきたので、そばを食べることができたのですが、これがまたおいしい。あまりそばが好きでないボクでもおいしいと思いました。

もう一品だけ、一緒に頼んだ物があります。それは、ブルーベリージュース。

なんでも、このエリアにある月山高原というところでブルーベリーが特産なんだそうで、それを使ったジュースを出していたんです。暑いし、麦切りだけだとさみしいし、暑いし、せっかくの地物だし、暑いし、ということで注文してみた次第です。

地元のブルーベリーをふんだんに使って作られたであろうジュースの味は、濃厚でほどよい甘酸っぱさがあり、ブルーベリーの良さが生かされています。


腹を満たしたところで、ちょっとここで解説パート入ります。

まず前提知識として、この先向かう羽黒山についての説明を(念のため)いたしますと――

羽黒山は全国でも名高い修験道の霊場で、畿内の熊野三山に肩を並べる聖地「出羽三山(でわさんざん)」の一角を成しています。

そのうち冬季に登頂できるのは羽黒山のみで、ほかの二つの山には、冬の間は参拝できません。

そのため、羽黒山の山頂にある「出羽神社(いではじんじゃ)」は、出羽三山すべての神社を兼ねる形となっています。それゆえ、この神社は「出羽三山神社(でわさんざんじんじゃ)」とも呼ばれています。

羽黒山の頂へは、麓から参道が伸びており、2446段もの石段を登っていきます。

そのほか、今いる麓には、羽黒山に関する資料・解説が展示される「いでは文化記念館」もあります。

で、今回ここに来たからには、当然出羽三山神社に行くわけです。しかも、往路はバスではなく参道経由で行ってやろうと企画しています。さらに文化記念館にも行く予定です。

当初の予定は、先に文化記念館を見て、その後で登る、という風になっていました。

しかしここで問題となるのが天気。この時は晴れていましたが、西の海上には低気圧。また、雷雲も近づいており、庄内には雷注意報が出されていました。参道を登る途中で雨や雷が来てしまうと、大変なことになってしまいます。

気圧配置・雨雲レーダー・雷雲レーダーなどをスマホで確認して、日程を再検討。

その結果、「最悪3時ころから天気が悪化する、もしくは雷が落ちるおそれがあるので、できるだけ早く登って、室内観光を後に回そう」という結論が出ました。つまり、先に羽黒山に登って、後から文化記念館を見学することとしたのです。

ところが、この計画には大きな問題が。それは、時間配分の問題です。もともと文化記念館を先にする予定だったのは、時間の都合でした。つまり、出羽三山神社を先にしてしまうと、参道を登る時間が足りなくなるおそれがあるのです。

現在時刻、12時50分ころ。羽黒山頂からのバスが2時20分発。参道の所要時間は1時間程度。お参りの時間と余裕時分を織り込むとちょいと厳しそう……。

というわけでお店の方に相談だ。

店員さんはこちらの質問に優しく答えてくださり、「歩くのが早い男性なら、参道は50分でもいける」など情報をいただき、何とかなると判断。計画変更案、脳内衆議院通過です。

店員さんは観光マップをくれるなど、旅人のボクをサポートしてくれました。

さて、それでは荷物を持ってお店を出ます。店の前の自動販売機で飲み物を補給して、道中の水分補給手段もバッチリ確保。では、修験の道にいざ行かん――

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