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東京を目指す旅 ~この坂を越えて~(平成29年3月4~10日)

2日目(平成29.3.6) 6/7ページ「人情湯けむり湯田川温泉」

湯田川温泉に向かうバス

鶴岡市街の「南銀座」バス停にて、次に乗る湯田川温泉方面行きのバスを待っています。時刻は4時半過ぎ、バスは時刻表では4時33分に来ることになっています。

お昼の晴天はどこへやら、空は分厚い雲に覆われています。それを恨めしく眺めていると、突如雷鳴が響き渡りました。稲光は見えませんでしたが、音がかなり大きく、割と近くに落ちたのではないかと思います。

この雷は、この後の天候が雷雨になることを知らせるには十分でした。やっぱり、羽黒山での予定変更は正解だったのです。

確実に天候が悪化することを悟り、この先が少々不安……。


さて、バスは数分遅れてバス停にやってきました。湯田川温泉方面・越沢行きです。

バスは市街地を縦断して南西方向に向かいます。

南銀座を出たバスはそれからすぐに市街地を抜け、田園地帯へと進みます。この方角は、先ほどの羽黒方面よりも住宅が少ないと感じました。

夕暮れと低気圧接近が重なって、一気に外が暗くなっていきます。人口が少ないエリアに入ったことと相まって、寂寥感を感じます。

ほどなく、雨が降り出し、あっという間に土砂降りになりました。本来この日の鶴岡は悪天候が予想されており、ここまで天気がもったのですからむしろ喜ぶべきなのでしょうが、土砂降りというのは厳しいです。思わず「勘弁してくれ……」と言いそうに。

雷も鳴っており、だんだんイヤになってきます。東北の日本海側には「荒れるときはとことん荒れる」というイメージがありますが、まさにその荒れた日本海側という状況に直面してしまったようです。

乗客は学生などが数名いましたが、一人また一人と降りていき、ついにボク一人になりました。

温泉に着くまでに天候が回復するか、それに至らずとも雷だけはなんとか静まってくれないか、と願っていましたが、残念ながら雷雨がおさまる気配はありません。

ボクだけを乗せたバスは、狭い道路をスイスイ走っていき、湯田川温泉に近付いていきました。

南銀座から約20分、バスは「湯田川温泉」バス停に到着。ここで用意していた回数券を使い果たしました。


ここで、一つだけどうしても申し上げなければならないことがございます。

ボクはこの時、どのバス停で降りればよいかを、バス走行中に運転手に尋ねてしまったのです。

「湯田川温泉口」というバス停がコールされたため、そこで降りるべきか「湯田川温泉」まで行けばいいかがわからず、聞こうと思ったのですが……、それにしても、運転中のドライバーに話しかけることは、安全運転を妨げる、交通ファンとしての禁忌です。

万が一降りるべきバス停を逃してしまった場合大変なことになるため焦っていたのはありますが、そもそもスマホで地図を確認しておけば事足りたのです。

交通ファンにあるまじき軽率かつ他人を顧みない行動をしてしまったことで、バスの安定運行に大きな支障を与えてしまったことは、大罪といえるでしょう。

庄内交通様ならびに当該バスの運転手様には、大変ご迷惑をおかけいたしましたことを、この場を借りて心よりお詫び申し上げます。

豪雨の湯田川温泉

バスを降りると、大雨がお出迎え。時折雷も鳴っており、なかなか賑やかなことです。

湯田川温泉には、入浴だけでなく、風情ある温泉街を見るという目的をもって来たのですが、この雷雨ではそんな余裕はほとんどありません。大誤算です……。

山形は東北屈指の温泉どころで、同じ庄内だと湯野浜温泉、内陸部には肘折温泉や銀山温泉などがあります。ただ、肘折や銀山は時間の都合で入れず(長時間のバス移動かつバス本数が少ない)、湯野浜温泉か湯田川温泉か温海温泉か、というチョイスとなり、この中から交通の都合のほか、温泉街の風格(写真で見た限りで、ですが……)を決め手として、湯田川を選んだのです。

ただ、バスの車内から見ただけでも、温泉街は風情や静けさを感じました。温泉街の光と夜の闇がほどよく調和しているところが、特に好感が持てました。好きな温泉街かもしれません。

さて入浴……と行きたいところですが、その前に一つ。後で説明しますが、日帰り入浴のために、まず「船見商店」というお店に行きます。

商店はバスの車内から場所を確認していたので、バスで通った道を少しだけ戻る形で移動。相変わらずの雷雨で、だらだらしていると雷が怖いところなので、早く室内に入ろうと走って移動します。

商店に入ると、ちょうど店員さんがいなかったので、店の中で待機です。

店員さんが戻ってきた後、店員さんに付いて温泉に向かうことになるのですが、雨足がさらに強まり、雨宿りを余儀なくされます。長い旅行、雨や雪に見舞われるのは仕方ありませんが、こうも大降りというのは……。

札幌ではなかなかないような強い雨。これが本場のゲリラ豪雨……すなわち、「特殊訓練を受けたゲリラ豪雨」ですか……。


で、なんでお店に行かないとお風呂に入れないか、について説明します。

今回向かうのが、湯田川温泉の公衆浴場「正面の湯」です。旅館の日帰り入浴ではなく、公衆浴場を選択します。

正面の湯を、湯田川温泉の旅館に宿泊せず利用する場合は、今いる船見商店、またはその近辺の大井商店で料金を払って、店員さんに浴場の鍵を開けてもらう必要があるのです。

というわけなので、雨が少し弱まったタイミングで、店員さんと一緒に正面の湯に向かいます。


店員さんが男湯のドアを開けると、そこには簡素な脱衣場がありました。

脱衣場には数人の男性がいました。世間話に花を咲かせていたところを見ると、地元の方でしょう。

日常のお邪魔をするという立場上、恐る恐る「こんばんは」と声をかけて入ると――

地元の方々は、ボクを邪険にするどころか、「この扉開けたら浴場だ、ゆっくりしてけ」「荷物はここに入れておきな、誰も盗る人なんていないから」と、優しく迎え入れてくれました(会話内容はうろ覚え)。

見ず知らずのところで、地元の方が日常生活を送っているところに行くというのは、何気に怖いものがあります。気にも留められないならまだいい方で、下手をすると邪険に扱われるでしょう。

でもこの正面の湯は、楽しげな会話の声が響く朗らかな雰囲気で、しかもよそ者のボクにも優しくしてくれたので、「あったかいなあ……」と心が動きました。

さて、それでは待ちに待った入浴です。もう早く汗を流して体を休めたかったですからねえ。

浴場はこぢんまりとした感じで、数人分の洗い場と、これまた数人が入れる浴槽があるだけです。必要十分、という感じです。

すでに何人かが体を洗ったりお湯に浸かったりしていました。やはり地元客でしょう、脱衣場の方々と同様、ときおり和気藹藹とお話しをしていました。

彼らは新たにお客さんが入ってきたら、みんな挨拶していました。だいたいが顔見知りなのかもしれませんね。こういう場合は「郷に入りては郷に従え」がセオリーですので、ボクも一応挨拶。

で、地元の皆さんは水道のお湯よりも、浴槽のお湯を使って体を洗っていました。ボクはいつも通り水道で体を洗っていましたが、蛇口からお湯を出すタイムロスがだるくなり、途中からは浴槽からお湯をとるようにしました。今思うと、沸かしたお湯ではなく天然の温泉を使うというのはエコですね。

あと、体を洗わないで浴槽に入っちゃう人もいましたね。「東北は体を洗うことにうるさいイメージ」とか前日の7ページ目で書きましたが、そのイメージが一瞬でローソクのように溶けて崩れていきました。

一般にこれはマナー違反とされますが、これだけ大らかな方々が集う場所ですから、なんの問題もないでしょうね。体を洗うのが「みんなでいい気分で入浴するためのコツ」だとするなら、こうした「細かいルールを気にする必要がないほど大らかな雰囲気」というのもまた、気分よく入浴できる環境なのかもしれません。お風呂というのも奥が深いようです。

さて汗をしっかり流したところで、お湯に浸かるとします。浴槽に空きが出たタイミングで、浴槽に入ります。

湯田川温泉は源泉の量が非常に多いそうで、この正面の湯は天然・源泉かけ流しという贅沢仕様。これで入浴料たった200円。「お、ねだん以上」とはまさにこのことです。

ヘトヘトになった体を、ゆっくりと休めます。温泉とは本当にありがたい存在です。日本に生まれてよかった……。

名湯と謳われる湯田川温泉だけに、温泉自体もやっぱりいいのでしょう、疲れがどんどん取れていくような気がしました。それでも限度がありますけども……。

また、この温泉には血液中に酸素を取り込ませる効能があるとのことで、ボロボロの筋肉にきっちり酸素を送り込むことで体が活力を取り戻した気がします。

路線バス人情旅 in鶴岡

リラックスしながらゆっくり温泉に浸かって、リフレッシュしたところで、鶴岡市街に戻るわけですが、バスまでは時間があったので、先ほどの船見商店で買い物ついでに時間をつぶさせてもらうことに。

甘いものがほしかったので温泉まんじゅうと、翌日以降の入浴に備えてフェイスタオルを買った後、事情を話すと、時間つぶしを許可してくれるどころか、お茶まで出してくださいました。前日といい、本当に東北の優しい方々のお世話になりっぱなしです……。

さらに店員さんは地元の新聞を貸してくださいました。そういえば忙しい旅なので、1日目以降はニュースや新聞に触れていません。いい機会ですね。

ここで読ませていただいたのは確か「山形新聞」の庄内版だったと思いますが、普段読んでいる新聞とは違い、農業や林業に関するニュースが目立ったのが印象的。200万都市の札幌に拠点を構える新聞社とは違って、一番大きな山形市で人口30万という環境下だからなのか、地方にしっかり目が向いていました。


6時20分ころ、バスの時間が近づいたので、お店を出てバス停に向かいます。

雨はだいぶ弱まっていましたが、今度は風が強い。持ち物の都合上折り畳み傘しかないので、風と悪戦苦闘していると――

近くにあったバスの車庫にいた運転士の方が、折り畳み傘をひっくり返しては元に戻しているボクを見かねたのか、車庫に停まっている、この後エスモール行きになるバスに乗っていていいよ、と声をかけてくださいました。こうやって人のお世話になるの、今回東北来てから何度目やら……。

そんな優しい運転手が運転するバスで、エスモールまで戻ります。エスモールまでは30分もかかりません。

外は真っ暗なので、ただぼんやりとして過ごすのみです。


エスモールの仮設バス乗り場についたのは午後7時前。この後は夕食にしようと思いますが、当初予定していたお店までは、ちょっと今の体力では歩いて行くのがきついので、エスモールや駅の近くでなんとかして食べることにします。

そんなわけで、とりあえずバスの案内所に入って、近場のお店を聞いてみることに。さっきやった「バスの運転手にバスの乗り継ぎを尋ねる」行為といい、さっきから「ローカル路線バス 乗り継ぎの旅」とやってることが同じですね……。

月曜の夜だと、残念ながら近くにはちょうどいいお店がないとのことでした。なので、エスモールで何とかして夕食を調達することにしました。

ちょっと歩いて、エスモールの建物に移動です。まだ雨が止んでいないので、傘を差して移動……していたのですが、突風一閃、折り畳み傘がバキー。半分壊れてしまった状態となり、一応使えないことはないのですが、もう長くはもたないでしょう。まだ辛うじて使えるっちゃあ使えるし、一応バックパック内に他に雨を防げるものは入っていますから、この先も何とかなるかとは思いますが……。

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