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「令和一番列車」で行く北東北・函館観桜紀行(令和元年5月1~2日)

2日目(令和元.5.2) 4/4ページ「復活の味」

登別→白老

木古内から新幹線はやぶさと臨時特急北斗を乗り継いで、登別駅まで戻ってきました。

旅の最後の目的地・白老に向かうべく、登別駅の1番線で普通列車を待ちます。

そんな札幌に近いところにいったい何の用なのかと言いますと、夕食です。行きたいお店があるのです。

登別の空は、土砂降りの雨。見ていると息苦しくなるほどに降り注ぎ、激しくホームの屋根を叩きます。

そして、寒い。ウインドブレーカーを脱げないような気温。春の連休だということを忘れさせるような冷たい風が、体と、そして心を冷やします。

そんな中、普通列車が来るまでの約15分を過ごしました。


室蘭本線普通437D 苫小牧行き(登別15:55 → 白老16:16) 車両:キハ143-102(2両編成・1両目)

列車が来る5分前から、改札がスタート。駅舎内で列車待ちしていた乗客たちが次々とホームに出てきます。

旅行者の姿も多く、外国人旅行客(のように見える顔立ちの人たち)も何組か。会話を聞いていると、うち1組はどうも札幌に向かう様子。後続のスーパー北斗13号と間違えているのかと思いきや、話しかけてみると「普通列車を乗り継いで向かう」とのこと。ワァオ。

雨音だけが響く寂寥感から一転、賑やかになったホーム。ほどなく、右手から苫小牧行きの普通列車が入線。キハ143形・2両編成のワンマン列車。

車内は座席がかなり埋まっていました。こっちは地元民みたいなものですので、残りの席も他の旅行者に譲って先頭部付近に立ち、前面展望としゃれこみます。

このごろ特急主体の旅が多くなってきたので、あまり乗らなくなったキハ143。しかしやっぱりこれが良い。線形が良いのもありますが、強いエンジンでグイグイ速度を伸ばします。他の一般形気動車だともたつきがちな中高速域も何のその。100km/hくらいまで、一気に加速してみせます。

爽快な走りに何かを感じ取ったのか、雨もようやく落ち着いてきました。

登別~白老間の途中には、お世辞にも主要駅と呼べるような駅はありません。なので、途中駅では地元客がパラパラと乗り降りするだけだろうな、と思っていました。実際その通りに多少の乗り降りがあったのですが……。

ここで、外国人(と思しき)旅行客1組が萩野で下車する、という事象を目撃。

駅付近にめぼしいものがあった記憶はありませんが、彼らはいったいどこへ?(何もないということは無いようですが……。)あまり詮索すべきではないのでしょうが、かなり衝撃だったので……。

※追記(令和4.7.27):萩野駅の近くに、外国人旅行者に人気だという「緑や食堂」という所があるようで、そちらを目指していたのかもしれません。

さておき、列車はそれからまた数分走り、白老駅の2番線に到着。


白老駅では、地元客が乗り降り。その中に交じって改札口に向かいます。

観光客は乗降無しの模様。そりゃそうです、目玉商品のポロトコタンは、民族共生象徴空間「ウポポイ」へと進化を遂げるべく、工事の真っ只中だったのですから。

降り立った2・3番線ホームのうち、3番線寄りの部分は一部削り取られていました。駅もまた「ウポポイ」開業に向けた工事の最中。特急北斗を白老に停めるため、ホーム高さが特に低い2・3番線を嵩上げしているのです。

それをちらっと見てから、改札を出ます。雨は上がっていたので、助かりました。

復活! 白老牛の絶品ビーフシチュー

わざわざ札幌に向かう足を止め、わざわざ登別で普通列車に乗り換えてまで、しかもポロトコタンが閉まっている時期に、白老に来た理由。

それが、駅のすぐ近くに建っている、レストランにあります。

かつては、その場所に「おおきな木」というレストランがあり、過去の旅行でも訪れましたが、惜しまれつつも閉店となりました。すごく気に入っていたので、残念に思っていました。

それからしばらくは、空きテナントとなっていたのですが……。

平成31年(2019年)3月、つまりこの旅のおよそ2ヶ月前に、その場所に「ポロニ」というレストランが、障碍者の就労施設という形でオープンしました。

それだけではありません。かつて「おおきな木」の看板メニューだった、地元ブランドを活かした「白老牛のビーフシチュー」。そのレシピを、新しくできたポロニが受け継いだのです。

また、あの逸品を味わうことができる――。そう思うと、行かずにはいられなかったのです。

就労施設という形態上、時間や曜日はかなり絞っての営業。それがうまく今回の旅程と噛み合ってくれたので、行くことにしたんです。

ディナー営業はないので、無理矢理「夕食」として食べるために、4時台前半という半端な時間の訪問に。こうしてでも食べたいものなんです……。


懐かしい、店内。レイアウトは少々変わっていますが、おおきな木時代の面影をよく残していました。

ラストオーダーも近い時間ですが、数組が食事を楽しんでいました。空いている席に案内され、着席。

そして、ビーフシチュー(¥1,750)を注文。

待つこと10分少々。復活を果たした白老グルメが、目の前にやって来ました。

舌の上でとろける牛肉。コクの深いシチュー。サッパリ食べやすいサラダに、上品な味わいのスープ。

あぁ、これだ――

作る人が違うので、流石に全く同じ味ということにはなりませんが、でも間違いなく、あのビーフシチューです。

もう一度食べられたこと、その幸せを、味といっしょに何億通りの細胞で噛み締めます。

そして、やっぱり白老牛はおいしい! いつ食べても、深い旨味は確かです。これぞ、和牛。これぞ、ブランド牛。その品質に、やはり揺るぎはありません。

たっぷりと味わって、完食。この数瞬をまた楽しみたいから、願わくはこの地で長くお店を続けてほしいと……。


お店を出る前に、入店時にちょっと気になっていたものをチェック。

おおきな木時代とは違って、お茶や菓子の販売もやっていまして、その中に気になるものがありました。

それが、「エント茶」(¥500)。アイヌの人々がふだんから飲んでいた野草茶です。以前、白老のポロトコタンで飲んだことがあり、おいしかったので、今回買って帰ることにしました。

野草茶とは、すなわち先人の知恵。その重みに、和人とかアイヌとか、そういうのは関係ありません。(むしろ北海道で培われた知恵という点ではアイヌの方がいっぱい持ってるわけで。)その恩恵を、ありがたく享受させていただくわけでございます。

会計を済ませ、退店。素晴らしいひと時でした。

すずらんパニック!? と、家路

さて、あとは帰るだけです。既に札幌まで100kmもない所にいるのでもう日常モード。

のんびり普通列車乗り継ぎで帰ってもいいのですが、早く帰って家でゆっくりしたいのと、快適に移動したいので、特急すずらん9号を使います。

この時間帯の下りすずらんは(少なくともウポポイ開業前の当時においては)空いているはずなので、特に座席を押さえてはいません。しかし、ここで「なんとなくuシートに乗りたい」という気持ちが生まれ、窓口で指定席を押さえ……ようとしたら。

まさかの事態。

指定席、満席。

すずらんという列車は自由席の利用が主体。指定席は(当時)1両だけですが、それが埋まっているところなんて見たことがありません。それだのに、よもやの満席。

一体、何が……!?

こうなっては選択肢がないので、自由席特急券を買います。あまりに驚いたので、思わず駅員の方に「すずらん満席なんて初めてですよ~」なんて話を振ってしまいました。すると答えて曰く、「私も初めて見ました……」と。そりゃあそうですよね……。


特急すずらん9号(白老17:05 → 札幌18:11) 車両:モハ789-1001(5両編成・2号車)

再び白老駅2番線。ホームにはすずらんを待つ人が他にもけっこういまして、何だかんだ言われつつも地元から根強く支持されている特急なんだなあと。

しばらく待っていると、列車が入ってきます。満席だという指定席の様子はどんなもんだべ、と車内を覗いてみると……、一番前の窓に、ツアーコンダクターが持つような手旗が立てかけてあるのが見えました。

あぁ、なるほど団体利用か、と納得。

先述の通り、この日は日中のスーパー北斗はことごとく満席。席を確保できなかった、おそらく登別→札幌でJRを使う団体ツアーが、すずらんに流れてきたのでしょう。

こうなると、ウポポイがオープンすれば、特急を使う団体も増えるでしょうから、指定席が埋まる事態が増えるかもしれません。だからといって、指定席の座席数が多い北斗を、短距離の団体客のために今よりさらに増発・増結するというのも考え物です。そう考えると、すずらんの運行形態は今のままでいいのだろうか、という疑問が湧いてきます。

……こういうことがあったからなのか、この翌年(令和2年=2020年)のダイヤ見直しで、すずらんは3号車が新たに指定席となり、座席数が2倍以上になりました。札幌~白老、札幌~登別など短距離でJRを使う団体が席を押さえやすくなり、しかも長距離を走る北斗の負担も減らせる形です。(自由席利用者に皺寄せが行く諸刃の剣でもありますが。)


列車に乗りこめば、あとは札幌までひとっ飛び。指定席満席と聞いた時には「まさかすずらんにまで大型連休の波が……?」と混雑を懸念しましたが、団体の指定席利用がある以外は結局いつものすずらん9号と何も変わらず、ガラガラの自由席でゆったり過ごします。

ずっと「超大型連休」という非日常の世界にいたので、この「いつものすずらん」の表情に不思議な安心感が。

そんなことを考えつつ、見慣れた景色をぼんやり眺めていると、やがて車窓から海は消え、そして住宅やビルが増えてきます。

白老からおよそ1時間、札幌駅到着。これにて、怒涛の2日間が終わりました。

学園都市線普通2629M 北海道医療大学行き(札幌18:15 → 桑園18:18) 車両:モハ733-119(6両編成・5両目)

……終わりましたが、表紙に書いた通り自分の車を桑園に置いているので、普通列車に乗り換えて移動。函館本線より学園都市線の方が先の発車だったので、9番線へ。1駅移動なのであっという間。

帰る前に、せっかく桑園界隈にいるので、「極楽湯 さっぽろ弥生店」で汗を流します。札幌の極楽湯はJR北海道グループなので、利用することでJR支援にもなります。

さっぱりしたところで、車を転がして帰宅。

おわりに

突発的な企画でしたが、思った以上にいろいろ楽しむことができました。天気が良ければもっと楽しめたことと思いますが、まあ贅沢は言いっこなし。

また、訪れた地域の素晴らしい文物にいろいろ触れることができ、この社会が新しい時代へと羽ばたいていく、そんな予感がしました。

新時代でも、今までと同じく……いや、今まで以上に、鉄旅を楽しんで、鉄旅に学んで、もっと豊かな旅人生にしていきたいな、と。

"新時代の初春"の令月にして、風優しく花香る中、希望の光が産声を上げる。そんな2日間でした。

1日目(令和元.5.1) 行程
移動手段乗車出発時刻下車到着時刻車両
特急スーパー北斗2号札幌6:00新函館北斗9:13キハ280-4(8両編成・6号車)
北海道・東北新幹線はやぶさ16号新函館北斗9:35八戸11:07E525-404(10両編成・5号車)
八戸線普通1435D 鮫行き八戸11:3811:59キハE131-505(2両編成・1両目)
八戸線普通1440D 八戸行き13:44八戸14:05キハE132-505(2両編成・1両目)
東北新幹線はやぶさ19号八戸14:14新青森14:43H526-202(10両編成・4号車)
奥羽本線普通662D 弘前行き新青森14:53弘前15:42キハ40 521(4両編成・4両目)
弘南バス 臨時 弘前公園直行バス弘前駅16:00頃文化センター前16:10頃-
奥羽本線普通1672M 秋田行き弘前17:29大館18:12クハ700-33(2両編成・1両目)
花輪線普通1935D 大館行き東大館20:48大館20:52キハ112-112(2両編成・1両目)
奥羽本線快速3627M 青森行き大館20:55青森22:13クモハ701-10(3両編成・1両目)
2日目(令和元.5.2) 行程
移動手段乗車出発時刻下車到着時刻車両
津軽海峡フェリー 3便青森フェリーターミナル2:40函館フェリーターミナル6:20ブルーマーメイド
函館バス 16系統津軽海峡フェリー7:05五稜郭7:28-
函館市電 2系統五稜郭公園前8:56頃青柳町9:21頃2002
函館市電 2系統青柳町10:00頃函館駅前10:12頃8009
道南いさりび鉄道線普通122D 木古内行き函館10:40木古内11:46キハ40 1812(2両編成・1両目)
北海道新幹線はやぶさ7号木古内12:40新函館北斗12:52E515-18(10両編成・9号車)
特急北斗91号新函館北斗13:08登別15:39キハ282-2006(4両編成・3号車)
室蘭本線普通437D 苫小牧行き登別15:55白老16:16キハ143-102(2両編成・1両目)
特急すずらん9号白老17:05札幌18:11モハ789-1001(5両編成・2号車)
学園都市線普通2629M 北海道医療大学行き札幌18:15桑園18:18モハ733-119(6両編成・5両目)

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