- トップページ >
- 乗り鉄な旅行記 >
- 東北リベンジ~旅は、何かを変える~ >
- 北の大地の夕日
東北リベンジ~旅は、何かを変える~(平成27年2月11~16日)
6日目(平成27.2.16) 4/4ページ「北の大地の夕日」
その、夕日にほだされて
青函トンネルを抜けた列車は、木古内を過ぎ、海沿いを走ります。日は既にだいぶ西に傾いており、空と海を赤く照らします。
その景色を見ながらも、ボクはなお、今いるところを北海道だと認めたくありませんでした。
今までも旅が終わってほしくないと感じたことは何度もあります。でも、ここまで強くそう思うのは、初めて。今までに経験したことのない感情でした。
でも、それはきっと、今までで一番いい、それもダントツでいい旅行ができたから。この旅行が、一生の思い出になって、いつまでも人生の糧であってくれるから。
それだけ素晴らしい旅が出来たんです。思い残すことなんかないはず。
だったら、胸を張って帰ろう。そして、またいずれ、いい旅をしよう。
――夕日を見ながら、そんなことを思ったとき、涙がこみ上げてきました。
溢れる涙をこらえることは、出来ませんでした。コートの裾で涙を拭きつつ、外の景色をぼんやり眺めていました。隣に誰もいなくて良かったよホント。
あの夕日が、あまりにも感動的で……。485系が持つ、国鉄特急車特有の、あの包容力とも言っていいような不思議な魔力もまた、ボクの感情を解き放たせていました。
気持ちが静まる頃には、ようやく旅の終わりを完全に受け入れ、札幌、すなわち日常に戻る決意をしたボクがいました。それを迎え入れるように、函館山が見えてきました。
すると、車掌が函館山の紹介をします。この時、標高が334mだとアナウンスされて、一気に我に返りました。なんでや阪神関係ないやろ、と。こんなことをパッと考えちゃうのが、心が汚い証拠。残念ながら、今回の旅行では心をきれいにすることはできなかったようです……。
時間はあっという間に過ぎて、函館到着まであとわずか。到着放送がかかります。車内チャイムは「主よ、人の望みの喜びよ」が流れました。旅のフィナーレを告げるようなその音色に、ボクはまた涙をこぼしてしまいました。
そして、列車は函館駅のホームに滑りこみました。新幹線工事に関連する工事のために減速したとかで、10分近くの遅れでした。
帰ってきたよ、函館
すぐには乗り換えず、1時間ほど後の列車に乗るので、一旦外へ出ます。
あの頭端式のホーム、放送、そして駅舎。青森駅と同様、不思議な魅力があって、旅愁を誘う駅です。
函館というのは、ボクら札幌の人間にとって、とても不思議な場所です。つい去年の旅行では目的地だったのに、この時はむしろ函館駅前の風景を見て、「帰ってきたんだなぁ」という思いでいました。札幌から遠く離れた場所でありながら、もうそこがふるさとであるような……。
何が言いたいかって、もうこの時点で気持ちが切れてまして……。ほぼ帰るだけというのもありますが、「家に帰るまでが旅行」というポリシーにも関わらず、もう腑抜けてしまっていました。
さて、函館で時間をとったのは、夕食のため。最後の食事は、函館の名物バーガー店・ラッキーピエロにしようと思っていました。
……いたんですが、何とこの日に限って全店舗休業。最後の最後でえらい目に遭いました。まあ今回は函館が目的地というわけじゃないので、いいんですが。
駅に戻って、バーガーの代わりに駅弁を購入。適当に時間を潰した後、列車に乗り込みます。
長い旅の終わり
特急北斗15号。ついに「札幌行き」に乗る時が来ました。
車両は、前年にあのエンジントラブルからカムバックしたN183系。
車内放送は、あの聞き慣れた、低くて落ち着いた声。「棚の上の荷物は落ちませんでしょうか。もう一度お確かめ下さい。」といった丁寧な放送内容もまた、自分の住んでいるところに帰ってきたという風に感じさせます。
しばらくボーッとしていると、列車は発車。
五稜郭を出たあたりで、駅弁のフタを開けます。最後の食事に選んだのは、「みかどのかにめし」。長万部のかにめしに勝るとも劣らない味です。去年長万部で買ったかにめしの味を思いだしながら、比較するように食べていました。
……などと長万部のことを考えていたら、長万部で降りていました。
というのは冗談で、元々降りる予定でした。
なんで、って? そらぁ、山線で帰るからですよ。
長万部発、小樽経由札幌行き普通列車2953D。この列車に4時間揺られます。
いやだって、長距離の普通列車ってなんか惹かれるんですもん。きっぷだってちゃんと有効なものを持ってます。何があかんのですか。
それに、旅の余韻に浸るには充分……と思っていたんですが、先述の通り完っ全に気持ちが切れてまして、あまつさえ外も暗くて見えず、実はただの苦行になっていたというのは秘密です。
旅の思い出をノートに綴りつつ(この旅行記はそれをもとに書いてます)、長時間の乗車に耐えます。
列車は小樽まで2両編成で、小樽で後ろに3両増結。一方乗客は、小樽までは空気輸送ですが、小樽からはいかにも夜遊びしてた人たちが乗り込んできて、座席はだいたい埋まり、一気に札幌エリアらしくなりました。
札幌まであと54分。その時間もあっという間に過ぎて、札幌駅の5番線に到着。そこは、既に日常です。といってももう半分くらいは「帰してくれんかぁ」モードなので、あまり感傷は無し。
隣の6番線の、千歳行きの終電に乗車。これがラストランナーです。乗り慣れた733系です。
通学で散々乗っている路線を最後に走り(暗くてわからんけど)、白石に到着。全ての日程が、過去になった瞬間でした。
走り行く列車を見送って、旅を締めくくりました。6日間の旅行が、ついに終わりを迎えました。
1日目 札幌→仙台
2日目 仙台・松島観光→盛岡
3日目 盛岡→ほっとゆだ→宮古
4日目 三陸鉄道北リアス線→盛岡
5日目 盛岡→大館→弘前
6日目 弘前→札幌
- 1.弘前観光
- 2.川部温泉
- 3.かえり隧(みち)
- 4.北の大地の夕日