【令和元年5・6月】北!鉄!ニュースライナー 第7回
記事公開:令和元年7月15日
ゲニっとな(/A皿A)/
「令和」が始まってから1回目となる「北!鉄!ニュースライナー」でございます。
ルールは簡単。北海道の鉄道のニュースを紹介。自分流にコメント。不確定情報は原則×。それだけです。
新時代ということで、特別に、豪華に、景気良く……いつも通りにやっていきます。
今回は詳細にコメントしたいニュースが多めなので、ニュースの数に比べて記事が長め。お休みの日なんかにじっくり読むのがオススメです。ではでは、レッツビギン!
※今回より出典・参考文献の記載を開始しました。
※今回よりジャンル分けを見直しました。新たに「観光列車」ジャンルを新設、「その他」から「非鉄道事業」を分離など。
- 【全道 5/10】JR北海道が10月の運賃大幅値上げを申請
- 【全道 5/25~27】北海道で史上最大級の猛暑、札幌近郊・石北本線など大量運休
- 【札幌エリア 6/12】ボールパーク玄関口第一弾! 北広島駅改修計画が発表
- 【札幌エリア 6/下旬?】キハ201系の更新工事スタート
- 【特急 4/27~5/6】春の繁忙期輸送ザッピング
- 【特急 6/6】石北特急、北見峠の坂に敗北
- 【新幹線 5/15】北海道新幹線、反逆の時 ~新函館・札幌間320km/h化へ~
- 【観光列車 5/25・26】くしろ湿原ノロッコ 30th Anniversary
- 【ローカル 6月中旬】維持困難区間問題ようやく第一歩 沿線自治体、利用促進費を予算計上へ
- 【その他 6/12~28】"East i-D"ひさびさ来道
- 【非鉄道事業 5/25・6/14】JR北海道グループの住宅事業の動き
- 【番外編 5/20】音楽ユニット"pupe"が「快速エアポート」をリリース
【全道 5/10】JR北海道が10月の運賃大幅値上げを申請
5月10日、JR北海道は10月から運賃・料金を値上げすると発表。国土交通省に申請中、または計画中の新しい運賃・料金を公式Webサイトで公開しました。
10月1日に行われる見通しの消費税増税への対応もさることながら、維持困難路線をある程度抱えたまま経営再建をするために、利用客に負担を求める形です。
そのため、運賃については増税分をはるかに上回る値上げとなります。
皆さんご存知かとは思いますが、具体的に振り返ってみましょう。
まずは運賃。簡単にまとめると次の通り。
- 1~100kmは「対キロ区間制運賃」を採用、並行する地下鉄・バスの運賃水準に合わせる形で大幅値上げ。
- 101~200kmは賃率を11.1%(税抜9.1%)アップ。
- 201km以上に適用する賃率は、増税分を除いて据え置き。(201km以上のきっぷは、200kmまでの部分と、200kmを超えた区間の運賃を足して計算します。前者は上の通り11.1%値上げも、後者は増税分以外値上げなし。合計額で見た上がり幅は低めです。)
つまり、短距離ほど値上げになる仕組みです。
特に、7~10km・11~15kmの2区分では3割ほどの値上げとなります。もっとも、地下鉄と同水準になるだけなので、JRの経営難を考えるとむしろ今までがそうとう安かったとさえ言えます。
バスと比較しても、極端に高くはなりません。たとえば札幌~小樽間は価格差130円で、バスより圧倒的に速いことを考えたら安いです。
ただし、千歳線空港支線の加算運賃が140円から20円に大幅引き下げとなるので、空港発着のきっぷは値上げが少なめです。値下げになる区間さえあります。空港バスとの競合を考えるとプラス材料です。
平均の値上げ額は、増税分を入れて15.7%となるようです。
なお、定期運賃の割引率は変わりません。もちろん、通常の運賃が上がる分、定期運賃も上がります。
続いて料金。特急料金・グリーン料金・指定席料金などは増税分以外は上がりません。ホームライナーの乗車整理券はこれまで通り100円ポッキリ。
料金を含めた全体での値上げ幅は、11.1%(税込)となるようです。
短距離中心の値上げということは、「札幌圏中心の値上げ」と言っても過言ではありません。札幌圏の人が使いもしないような田舎の路線の赤字が原因で、札幌圏の人が割を食う形になります。
ですが、これはある程度仕方のないことです。
理由は次の通り。まず、札幌エリアの負担はいわゆる「内部補助」、つまり乗客がかなり少ない路線の赤字を収益の多い区間の稼ぎで補うものだからです。
内部補助は、企業の経営努力としては当たり前です。たとえば将来の柱にするために新たな事業を始めるとして、最初の頃が赤字だからって切って捨てたら意味がないので、他の事業の収益でカバーしなきゃなりませんよね。
二つ目、特急列車の大幅値上げはできないからです。
特急は高速バスとの激しい競争にさらされています。特に高速道路の整備が進む道東方面では、崖っぷちに立たされています。
長距離の運賃や特急料金を値上げしすぎると、バスよりあまりに高くなり、一気に乗客を取られてしまいます。
特急が大幅値上げできないなら、他には札幌エリアしかアテがありません。
第三に、税金投入には限度があるからです。
国や地方自治体は、税金でインフラをある程度維持する責任があります。ですが、大量輸送機関である鉄道を、どんなに人口の少ない地域でも維持するのは、税金の無駄遣い以外の何物でもありません。
税金だけでJR北海道の赤字全額を補うのはさすがに無理で、一部は値上げによって我々市民が負担するより仕方ありません。
この3点を考えると、札幌エリア中心の値上げは、大筋では認めざるを得ません。
ただ、「もう少しなんとかならないんですかネJRさん」という気はします。
乗客の少ない路線を維持するなら、それで利益を受ける者が維持費を負担すべき、という考え方でもいいと思います。つまり、札幌エリア以外は近距離をもっと値上げして定期の割引率も減らし、その分札幌エリアは値上げを少しでも抑えてくれないかなと。
案の定と言いますか、非建設的な非難が飛んでいます。
7月1日に国土交通省が開いた公聴会では、3人の公述人が非合理的な意見を連発しました。それについては別に批判記事を作ったのでこちらからどうぞ。
その記事がめちゃくちゃ長文なので、要点だけザックリまとめると、次のような感じ。
- 「国の分割民営化失敗のツケは道民でなく国が払え」云々
- →巨額赤字の国鉄を解体して高額納税の優良会社を4社も生んだのだから「失敗」はウソ。「失敗の責任」などと、JRの赤字「全額」を負担させるのはおかしいです。
- 「北海道の農産物で本州以南が食べさせられているから全国一律で負担させろ」云々
- →貨物列車が走っていない路線は関係ありませんし、そもそも輸入や近郊農業などもあるわけで、北海道産だけを殊更に取り上げるのは滑稽。
- 「赤字の北海道新幹線に投資するくせに」云々
- →後述します。
- 「路線見直しで道民の負担を増やしているのにさらに値上げするな」云々
- →鉄道は大量輸送機関なので乗客が極端に少ない路線・列車が整理されるのは当然ですし、たかが5区間屠っただけでJR北海道の赤字はまだ補いきれません。
- 値上げが「恣意的」という意見
- →どこが? 近距離区間は「対キロ区間制運賃」になる以上、他の交通機関より極端に高いのでなければ非合理とはいえません。121km~140kmと201~220kmは前後と比較して値上げ率が高いですが、121km以降一律でプラス約100円、201km以降一律でプラス約200円になっていて、境目だけを率で見たら高くなっているだけです。
他にもネットで「自助努力不足」だの「安全対策もできていないのに値上げは悪」だの、わけのわからない批判が飛んでいます。
まず自助努力云々は、中期計画・長期ビジョンを一度でも呼んだことがあるのか、と。「値上げするなんて自助努力が足りない」じゃないんです。「なんぼやったって足りないものは足りない」って話です。
札幌エリアの強化や新幹線高速化といった収益アップ策、非鉄道事業の強化、コスト削減と様々な施策をミックスして、それでも全然足りないから値上げが必要、というのは少し読めば簡単にわかるはずです。
安全云々については、そもそもJR北海道が安全を疎かにしたのは、札幌エリアと特急を除いた鉄道利用者が極端に少なく、収入が全然見込めないからだったはずです。安全のための費用をちゃんと用意しつつ、路線網を一定程度維持するためには、どう考えても値上げが必要です。
ボクは、今まで一度も「合理的な」反対意見を目にしていません。有効な批判のない以上、値上げは(少なくとも総論では)認められるべきでしょう。
- 出典
- JR北海道 令和元年5月10日ニュースリリース「運賃・料金改定の申請について」(http://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20190510_KO_Revision.pdf)
- JR北海道Webサイト「新しい運賃・料金について」(http://www.jrhokkaido.co.jp/fare/index.html)
【全道 5/25~27】北海道で史上最大級の猛暑、札幌近郊・石北本線など大量運休
5月25~27日、北海道を季節外れの熱波が襲いました。
26日、オホーツク地方の佐呂間町で最高気温39.5℃を記録。これは北海道の観測史上最高気温であり、同時に全国でも5月の観測史上最高気温です。
帯広でも25・26日の2日連続で猛暑日となるなど、特に十勝地方・オホーツク地方が尋常ならざる猛暑となりました。札幌でも、27日に34.2℃を観測するなど3日連続真夏日となりました。
この影響で、JR北海道で多数の運休が発生。石北本線が足掛け3日にわたって不通となり、札幌近郊でも札幌~岩見沢間が一時運転見合わせとなりました。このほか、釧網本線などでも運休が発生しました。
原因は、暑さでレールがのびて歪んでしまうおそれがあったこと。真夏だと時々あるんですが、5月に発生するのは異常事態です。
鉄道のレールは、「鉄」の「道」って言うくらいですので、当然鉄でできています。
で、鉄は「熱膨張」という、温度が上がる性質を持っているので、レールは暑いとのびて、寒いと縮みます。
多少ならレールの継ぎ目にスキマがあるので大丈夫ですが、あんまりのびちゃうとレールどうしがぶつかって、歪んでしまう可能性があります。
なので、鉄道会社はレール面温度が何℃以上で徐行・運休、と各社ごとに決めています。今回、それを上回ったので運休した、というわけです。
別に、JR北海道の保線がだらしない、とかではなく、全国各地で発生することです。
では、十勝・オホーツクほど暑くなかった札幌近郊までダウンした理由は?
それは、夏に備えた線路作業が間に合わなかったからです。
毎年、厳しい冬が終わると路盤・ボルトを調整し、夏の暑さに備える作業があるといいます。しかし、あんまり早くに猛暑が来ちゃったので、作業が全部終わっていなかった札幌~岩見沢間は運転をとりやめざるを得なくなってしまったようです。
で、下に記してあります通り、この「レールが夏仕様になってなくて運休」って話の出所、あの北海道新聞なんですよね。
この新聞は、平成29年7月の猛暑による運休の時、「そんなの聞いたことが無い、ちゃんとしてくれ」というような街の声を拾ってJRを叩いたという過去があります。
ろくすっぽ調べもせず、しかも街の声という「主観」だけを根拠にJRを非難するという、ひっじょーに浅ましい記事で、読んだ瞬間ブチ切れて批判記事の原稿をこしらえました。(分量不足などにより結局ボツに。)
ですが、今回は丁寧に説明していて、JRへのフォローにもなっています。
道新はJRに対する非合理的な攻撃を繰り返してきた会社ですが、最近はそういうことも随分少なくなり、かえって強い違和感が。雷にでも打たれたんじゃないかと。
ともかく、道新でさえ進歩するんだから、自分ももっと強くなりたいと思う今日この頃です。
- 出典
- 北海道新聞 令和元年5月28日朝刊29面「猛暑急襲 ため息 JR107本運休 レール『夏仕様』間に合わず」
【札幌エリア 6/12】ボールパーク玄関口第一弾! 北広島駅改修計画が発表
北広島市に建設予定の北海道ボールパーク(仮称)。そのアクセスのための北広島駅の改修計画が、6月12日にJR北海道のニュースリリースで発表されました。
BPの最大の課題である交通アクセス。新駅建設や増発のための路線強化を含めた、JR千歳線を活用した鉄道アクセスの整備が重要です。北広島市の資料、および毎日新聞の報道によれば、関係者の間で対策が前向きに検討されています。今回は、その第一弾となります。
詳細は、後日公開予定の記事にて解説します。
- 出典
- JR北海道 令和元年6月12日ニュースリリース「北海道ボールパーク(仮称)開業に向けた北広島駅の改修について」(http://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20190612_KO_Kitahiroshima%20renew.pdf)
【札幌エリア 6/下旬?】キハ201系の更新工事スタート
札幌エリア近郊輸送の名脇役・キハ201系の更新工事が始まりました。
情報の速さに定評のある「北海道の鉄道情報局」さんなどが、既に取り上げています。ボクも7月に入ってから実車を目撃しました。
別記事の通り731系の更新工事が進行中ですが、キハ201系もそれと同様、内装のお色直しや転落防止幌設置が行われています。おそらく、エンジンも同型の新品に載せ替えているものかと。
……で、731系の時は記事を独占できたのに、今回は他サイト様に先を越されるどころか、実車見たのが7月入ってから、と今回当サイトは散々です。
独占記事だ、どうだすごいだろ、ってあの時さんざんイキってたのに、今こうして醜態をさらして、どんな気持ちかって?
悔しいです!!(変顔)
- 出典
- 「キハ201系D-101編成に重要機器取替工事を施工」(http://fortysonseason.blog.fc2.com/blog-entry-3605.html)、「北海道の鉄道情報局」 ※令和元年7月15日閲覧
- 筆者の実見
【特急 4/27~5/6】春の繁忙期輸送ザッピング
悔しいついでに、もう一つ悔しかった話を。
今年のゴールデンウィークは、新天皇即位、そして改元という大きな節目だったので、「最大10連休」という超大型連休になりました。
なので旅行者がとても多くて、まあそれは良いんですが……
何かって、とある列車の指定席にありつけなかったんです……。普段は空いている列車なので油断して当日購入しようとしたら、まさかの満席。自由席は空いてたので、座席グレードが下がった以外は無問題でしたがね。
そんなわけで、特急の話題にナチュラルに(?)移行。まずは春の繁忙期輸送を振り返ります。
実乗+ネット情報(クロスチェックはしてます)より、各方面の特急の様子は次のような感じでした。
- S北斗:キハ261系は8~9両、キハ281系は8両(一部7両) ついにキハ281も増結。それでも日中の指定席は満席続き!
- 北斗(臨時):毎度おんなじやつ
- ライラック・カムイ:札幌市内イベントに伴う臨時以外は増発なし
- Sおおぞら:7両(一部6両)
- Sとかち:5~6両
- 石北・宗谷:所定編成
輸送実績は、函館方面(苫小牧~東室蘭)が前年比117%、旭川方面(札幌~岩見沢)が107%、釧路方面(南千歳~トマム)が111%。(ちなみに新幹線は145%と面目躍如。)前年を大きく超える大立ち回りです。
長い連休とあって、旅行者が非常に多かったのがわかります。
実際、観光地や有名なお店なんかはどこも大盛況で、いろいろ大変でした。
実乗したのは函館方面だけですが、日中の列車はほとんど満席で、朝早いスーパー北斗2号でさえ満席になる日もありました。
一方、臨時「北斗」は少し余裕がありまして、ゆったり過ごせました。札幌~洞爺とか登別~函館のような途中利用なら、激混みシーズンは臨時北斗がオススメです。
ただ、道東方面については手放しで喜べる数字じゃありません。破格の「お先にトクだ値」が設定されていたからです。
スーパーおおぞらは、札幌~釧路間を50%引き。スーパーとかちは札幌~帯広間を55%引きと、そうとうな安売りです。(スーパーとかちは9月まで続いています。有効に使おう!)
これだけ値引いているのに、そしてこれだけの大型連休なのに、わずか11%の利用増にとどまっている。非常に厳しい数字です。
バスに押される一方の道東特急に、活路はあるのでしょうか。頼む、持ちこたえてくれ……。
追記(令和6.8.29)
以上の内容に、勉強不足による説明の誤りがありました。
「お先にトクだ値」、および前日まで予約可能(席数限定)の「えきねっとトクだ値」のような取り組みは、「イールドマネジメント」と呼ばれる方式です。
列車の需要は日ごと・列車ごとで異なるため、便によってはやむを得ず空席がある状態で走ることになります。その空席は翌日に持ち越せません。
それよりかは、「安値でなら乗りたい」人に売ってしまった方が、その分利益になります。1人追加で運ぶコストはゼロに等しいため、タダに近い価格でも利益を増やせます。
特急おおぞら・とかちでは、「お先にトクだ値」によって主に閑散期(とかちは通年)に早め予約で「安いなら乗る」層(観光客など)を取り込みつつ――
一方で、割引を適用できる期間・席数を限定しておくことで、直前に予約する「高くても乗る」層(ビジネス・所用客など)には支払意思額に見合った値段を提示しています。
こうした方法で、空席をうまく売りさばきつつ、利益を確保する戦略を、イールドマネジメントと呼びます。
上記では「トクだ値」の設定をまるで「捨て身の戦法」であるかのように記述しておりましたが、むしろ列車の空席という資源を活かし、賢く利益を増やす戦術であると説明するべきでした。
誤った説明を長きにわたって掲載しておりましたことを深くお詫びするとともに、内容を訂正させていただきます。
ちなみに、ボクがこの連休中に特急に乗った話、指定席取れなかった話については、いつか公開予定の旅行記にて詳しくお話しする予定。
- 出典
- JR北海道 令和元年5月7日ニュースリリース「ゴールデンウィークご利用状況のお知らせ」(http://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20190507_KO_GW.pdf)
- 筆者の実見および各種ネット情報(クロスチェック済)
【特急 6/6】石北特急、北見峠の坂に敗北
続いてはちょっと残念な話題。6月6日、特急オホーツク4号がトラブルで運転打ち切りになりました。
エンジントラブルがあったため、4両のうち1両のエンジンを切って走行していたせいで、遠軽から上川にかけての坂を上りきれず、遠軽まで引き返して運転を打ち切ったとのことです。
石北本線は、道内の特急街道で一番の急坂です。特に、上川~白滝間37.3kmは急勾配がずっと続く隘路で、比較的性能のいい特急・快速でも高速運転は無理なほどです。
特にこの区間が牙をむくのが秋。落ち葉で車輪が空転しまくって、特急が数十分遅れるなんて、毎年のことです。
もちろん、何事もなければ普通に走れる区間です。ですが、今回は1両の動力をカットしたせいでパワーが不足したのか、あえなく敗北となりました。
トラブルの2日後、6月8日の早朝に、トラブルのあった編成を札幌に運ぶ救援列車(DE15形重連で牽引)を目撃しました。
その際に確認した車番は次の通り。
- 1号車:キハ183-9561
- 2号車:キロ182-7552
- 3号車:キハ182-7557
- 4号車:キハ183-4559
1~3号車は、旧・特急「北斗」用のエンジン換装車(最後まで定期「北斗」に使われていた、機器更新でエンジンを換装した車両群)です。
ここで、ニュースライナーの第2回で報じた内容を再掲。(当該記事はこちらから。)
エンジン換装車主体の編成は、昨夏に特急オホーツク・大雪の運用に就いてからしばらくは、常に1両増結の5両編成だったんです。乗客が少なかろうが、お構いなしに。
ということは、エンジン換装車をオホーツク・大雪に回すにあたって、なにか不安要素があったと考えられます。
今回、エンジン換装車主体の4両編成で、まさにトラブルが発生。こういうトラブルが怖くて、あの頃は5両運転してた……のかなあ。
石北本線の特急には、キハ261系1000番台の投入が急務ではないかと思います。
スピードアップ、サービス改善もそうですが、トラブルも減らせるからです。
キハ261系1000番台はハイパワー、かつ全車が2エンジンなので、エンジンが1つ程度ダウンしても出力面での影響が少なくなり、上り坂の不安が減ります。
また、キハ183系は先頭車が1軸駆動なのに対して、キハ261系の先頭車は2つのエンジンがそれぞれ1軸、あわせて2軸が駆動しますから、空転も防げます。秋の遅延・運休はかなり減るはずです。
キハ183系は数年以内に置き換えられる見通しですが、オホーツク・大雪の車両については数年と言わず、すぐ置き換えるべきだと考えます。
- 出典
- 北海道新聞 令和元年6月7日朝刊26面「特急 斜面上れず運休 石北線エンジン不具合」
- 筆者の実見
【新幹線 5/15】北海道新幹線、反逆の時 ~新函館・札幌間320km/h化へ~
「遅いから、反対」――当サイトが約5年にわたって、北海道新幹線に対して言い放ってきた主張です。そろそろ、一部撤回の必要があるようです。
5月15日のニュースリリースで、JR北海道は北海道新幹線の新函館~札幌間の高速化の計画を発表。当初計画の最高速度260km/hから、現在の東北新幹線の最高速度と同じ320km/hにアップさせることを、国交省に申請したとのことです。
北海道新幹線は、法令に基づいて作成されている整備計画によって、最高速度が整備新幹線の基本スペックといえる260km/hとなっています。この整備計画を変更し、さらに審議会と環境アセスをパスする必要があります。
それと、いくつか工事を行うようです。一つは、トンネル微気圧波(いわゆる「トンネルドン」)による騒音などを抑えるために、トンネルの入口に緩衝工を設置。
もう一つ、高架線路を高速で走ることによる騒音の音量アップを防ぐため、高架橋の防音壁をかさ上げ。
追加で必要となる工事費用は、JR北海道の試算で120億円程度。全額をJR北海道が負担するようです。
北海道新聞の報道によれば、JRは増収効果を年10億円ほどと見込んでいます。
さんざんな批判にさらされ、辛酸をなめ続けていた北海道新幹線。札幌延伸のその日、彼の反転攻勢が始まる……のかもしれません。
今、費用を「JR北海道が負担する」と言いました。ところが、北海道新聞が報じたところによると、JRは国交省に対して資金の助成または無利子貸し付けを求める考えだといいます。
最初から「お金ないので助けてください」と言うのではなく、一旦は自社負担と宣言した上でのお願い。一見すると妙なハナシです。
これ、けっこう政治的な駆け引きだと思います。
おそらくこれは、昨年7月に国交省がJR北海道に出した、経営再建に向けての監督命令との絡みでしょう。国交省は命令の中で、「前向きな設備投資」への支援を約束しています。
「命令」とは言いますが、見方を変えればJRは「言質を取っている」状態とも言えます。今、JR北海道が「前向きな設備投資」をすると言えば、国交省は無下にはできません。
自社での負担を明言しておいて、「前向きな設備投資」に該当すると言って、国交省を引きずり出す。これがうまくいけば、新幹線ができてから金利手数料なしの分割払いで返す、という形にもっていけます。増収効果を考えれば余裕で返せるはず。さらにうまくいけば、一部くらいは助成してもらえるかも。かなりおトクな話です。
駆け引きといえば、「今このタイミングで申請を出した」という点も気になります。
今年1月、東北新幹線の盛岡~新青森間の最高速度を260km/hから320km/hに上げることに地元が承諾した、と東奥日報が報じました。
正式発表はまだですが、JR東日本が平成24年に発表した「グループ経営構想Ⅴ ~限りなき前進~」に東北新幹線の320km/h運転区間を伸ばす構想が載っていることを考えると、JR東日本としても前向きに考えていると思います。
追記(令和3.6.12):令和2年10月に、JR東日本がニュースリリースにて「盛岡~新青森間の最高速度を320km/hに向上させる」と正式に発表しました。
それに被せるようなタイミングで申請を出すことで、実質的に「JR東日本との協願」の形にして、法改正を促すのが、狙いの一つなのかもしれません。
JR北海道が請願者として名を連ねることで、「JR北の経営を助けるため」という大義名分が付きます。また、JR北海道の単願だと「赤字会社のぶんざいで……」などと言われかねませんが、JR東日本が絡むのでそういう声は出づらくなるでしょう。
国交省をいかに動かすか。今回の申請の裏のテーマは、それなのかもしれません。
ウラを取っている話ではもちろんありませんが、こういう見方もできる、ということで参考までに。
絶対いるとは思っていましたが、案の定「金がないからと値上げや路線見直しをしておいて、新幹線には金を出せるとはどういうこっちゃ」「赤字の新幹線に投資はおかしい」「たった5分のためだけに120億円も?」などと言っているかわいそうなお友達が大勢います。ムダとはわかってますが一応ツッコミを。
(前述の国交省支援は決定じゃないので措いておきます。)
まず、この新幹線高速化には大きな意味があります。
今のままだと東京~札幌間は約5時間となる見通しですが、スピードアップのためにさまざまなプロジェクトが進行中です。
- 上野~大宮間 110km/h→130km/h……騒音対策を実施中
- 宇都宮~盛岡間 320km/h→360km/h……高速試験車"ALFA-X"で360km/h運転試験中(大宮~宇都宮間でもスピードアップの可能性十分)
- 盛岡~新青森間 260km/h→320km/h……先述の通り
- 新中小国信号場~木古内間 140km/h(青函トンネル内160km/h)→200km/h以上?……貨物列車とのすれ違い衝撃、明かり区間の三線軌条の雪対策などを解決できれば高速化可能。9月から試験再開予定。
これに加えて新函館~札幌間のスピードアップも実現すれば、東京~札幌間を最速4時間29分以内で結べる見込みは十分にあります。
さらに、新函館~札幌間で見ても最速で1時間を切れます。
単に速くなるだけでなく、「4時間半」「1時間」という閾値を超えることで、それを大きくアピールできます。
東京~札幌でのシェアは、飛行機には負けるにしても、2~3割取れるでしょう。札幌~函館でも、飛行機を完全に下せるはずです。
単に「5分短縮」ではないのです。これだけの意味があるんです。
また、今の赤字額だけを見て批判するのは狂気の沙汰です。札幌延伸に加えてこれだけの高速化を実現できれば、黒字転換どころか経営再建の立役者になる可能性さえ十分にあります。
同様に、「金がないくせに……」と批判するのも的外れです。ただ「金を使う」だけでなく、「利益を出す」プロジェクトですからね。赤字だから増収のための投資をしちゃいけない、なんてことはありません。それを否定してしまっては、投資という行動そのものの否定と同じになります。
「在来線を縮小しておいて新幹線ばかり投資を……」という批判も無意味です。鉄道は大量輸送機関なので、より多くの乗客を運ぶプロジェクトが優先です。それで利益が出るならなおさらです。
巷で言われているこういった批判は、まったく支離滅裂。惑わされず、素直に便利になることを喜んだ方がいいでしょう。
- 出典
- JR北海道 令和元年5月15日ニュースリリース「北海道新幹線新函館北斗・札幌間の高速化の要請について」(http://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20190515_KO_Shinkansen%20speed.pdf)
- 北海道新聞 令和元年5月16日朝刊2面「JR、5分短縮に120億円 札幌延伸 追加工事負担を表明」
- 「地元負担なしと県見解/新幹線盛岡・新青森高速化」(https://www.toonippo.co.jp/articles/-/139758)、Web東奥(東奥日報のWeb版) ※令和元年6月ごろ閲覧(現在は有料記事)
- JR東日本 平成30年5月16日ニュースリリース「新幹線 上野~大宮間の所要時間短縮に向けた工事着手について」(https://www.jreast.co.jp/press/2018/20180507.pdf)
- 「E956形新幹線試験電車『ALFA-X』」、『鉄道ファン』2019年8月号、交友社
- 「青函共用走行区間等高速化検討WG(第3回) 配布資料」(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/tetsudo01_sg_000281.html)に掲載の各資料、国土交通省Webサイト ※令和元年7月15日閲覧
- 北海道新聞 令和元年7月12日朝刊11面「北海道新幹線 9月から高速化試験 青函トンネル 200キロ超で走行」
- (令和3年6月12日追記)JR東日本 令和2年10月6日ニュースリリース「新幹線の速度向上に向けた取り組みについて」(https://www.jreast.co.jp/press/2020/20201006_ho01.pdf)
【観光列車 5/25・26】くしろ湿原ノロッコ 30th Anniversary
釧網本線の観光列車・くしろ湿原ノロッコは、今年で30周年! それを記念して、5月25・26日に釧路~川湯温泉間でノロッコが設定されました。
沿線自治体と協力したおもてなしも実施。特別な2日間……に、なるはずだったんですが。
先ほどお伝えいたしましたように、5月26日の北海道はとんでもない猛暑に。26日のノロッコは運休となっちゃいました。ちょっと残念……。
- 出典
- JR北海道 平成31年4月5日ニュースリリース「~『くしろ湿原ノロッコ号』運行30周年~ 地域の皆様と各種取り組みを実施します!」(http://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20190405_KU_norokko.pdf)
【ローカル 6月中旬】維持困難区間問題ようやく第一歩 沿線自治体、利用促進費を予算計上へ
維持困難路線のうち、廃止前提の「5路線5区間」を除く区間について、ようやく第一歩の取り組みが始まりました。
維持困難路線をなんとかするため、道と沿線自治体が分担して今年度・来年度で数億円の利用促進費を出すという話が出ていました。6月中旬までに、廃止前提路線以外の維持困難路線を抱えるすべての自治体が、利用促進費の予算計上を決めました。
わずか数億のはした金で、鉄道という大きなインフラを抜本的に変えることはできません。でも、大事なのは「一歩目を踏み出した」ことです。今まで駄々ばかりこねていた沿線自治体が、わずかであっても資金を出した。これだけで、大きな意義があります。
大きな金ではないので、フリーWi-Fiの整備や携帯電話充電スポットの設置など、車両などを少々改良するくらいになるでしょう。うまく使えば、そこそこ利用促進になるかもしれません。
もちろん、マニア(「ファン」じゃなく「マニア」という表現を使っている点に留意)を悦ばせるだけの無駄遣いはいけません。最近、宗谷本線でマニア向けに何やら紙を配っているようですが、ああいうことに全額を注ぎこんでしまうようでは何も変えられません。使い道は真剣に考えるべきでしょう。
また、今回の支援は緊急的・臨時的な措置と位置付けられていますが、そうではなく継続して行う必要があります。少なくとも新幹線の札幌延伸までは行政支援が必要となる見通しなので、少額であっても自分たちが出すという思いは持ってほしいところ。
- 出典
- 北海道新聞 令和元年6月11日朝刊5面「JR維持困難8区間の地元負担 全沿線自治体が同意」
- 北海道新聞 平成30年12月25日朝刊1面「道と市町村 JR支援へ 国、自治体負担軽減せず」
【その他 6/12~28】"East i-D"ひさびさ来道
線路や架線などの地上設備を点検する「検測車」の一つ、JR東日本が所有する"East i-D"(キヤE193形)が、久方ぶりに北海道で検測を行いました。
JR北海道はマヤ35形という新型の検測車を持っていますが、架線などEast i-Dでないとチェックできない設備もあるので、East i-Dの力が時々必要になるようです。
半月ほどをかけて全道を駆け巡り、本州に戻っていったようです。
……自前の写真はないんだ。謝って許してもらえるとは思っていない。でも一応言っとく。すまん。
- 出典
- 「キヤ193系『East i-D』が甲種輸送される」(https://railf.jp/news/2019/06/13/130000.html)、「鉄道ファン・railf.jp」 ※令和元年7月15日閲覧
- 「キヤE193系『East i-D』がJR東日本に返却される」(https://railf.jp/news/2019/06/30/194000.html)、「鉄道ファン・railf.jp」 ※令和元年7月15日閲覧
【非鉄道事業 5/25・6/14】JR北海道グループの住宅事業の動き
続いては、JR北海道グループの、鉄道以外の事業について。5~6月に動きがあった住宅事業のプロジェクトを、2つ紹介します。
まず、苗穂駅新駅舎の近くに建設中の分譲マンション、「ザ・グランアルト札幌 苗穂ステーションタワー」です。
昨年11月に移転した苗穂駅の周辺開発の一つとして建設が進められており、5月25日にマンションギャラリーが一般公開されました。
27階建て、合計300戸という規模は札幌有数。単に不動産事業の収入だけでなく、苗穂駅の利用者増にもなるでしょう。
苗穂駅前では、ほかにもさまざまな計画が進行中。某区役所移転のような「ハコモノを建てて終わり」ではなく、苗穂駅を「単なる駅」から「まちの拠点」へと変えるプロジェクトになることを期待しましょう。
2つ目は、旧社員寮を活用した、「TOMOSマンスリー要町」。
所在地は、東京都豊島区。JR北海道が2月まで使っていた旧社員寮を、ハプティック株式会社が借り上げてリノベーション。生まれ変わった建物が、新たなビジネスを生みます。
その内覧会が、6月14日に開催されました。現在、すでに入居者の募集が始まっています。
道外の事業なので、鉄道路線とのシナジーはありません。でも手持ちの不動産を活用して人口・経済規模の大きい東京で稼げるチャンスなので、うまく生きてほしいです。
- 出典
- JR北海道 令和元年5月14日ニュースリリース「苗穂駅北口西地区優良建築物等整備事業 共同住宅棟『ザ・グランアルト札幌 苗穂ステーションタワー』 ~5月25日(土)に、マンションギャラリーを一般公開~」(http://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20190514_KO_naeboapartment.pdf)
- JR北海道 令和元年5月28日ニュースリリース「社員寮を一棟リノベーション 『居心地の良さ』『入居の手軽さ』にこだわったサービスアパートメントの運営をスタート」(http://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20190528_KO_SA_TOMOSkanametyou.pdf)
【番外編 5/20】音楽ユニット"pupe"が「快速エアポート」をリリース
最後はちょっと違う話題をば。
北のエース・快速エアポートに、ステキな応援歌(?)が登場しました。
それは、音楽ユニット"pupe"の楽曲「快速エアポート」。各種音楽配信サイトで配信されており、価格は単曲で200円です。
快速エアポートに乗って旅立ち、人生の新たな一歩を踏み出す人を描いた一曲です。新たな世界へと踏み出す時のワクワクした気持ち。一方で、札幌で過ごした頃を思い出し、胸をよぎる一抹の郷愁。そんな若人の気持ちを、爽やかなメロディに載せて。
札幌駅の列車接近放送を模したフレーズを織り込むという遊び心もステキです。
ボクはこの曲、YouTubeで試聴して、即買いしました。
普段は音楽を一回聴いてすぐ買うってことはしないんです。それが、今回は即買い。地元ソング、かつ鉄道ソング、しかもボクが愛する快速エアポートを題材にした曲だった、というのはありますが、それ以上にメロディや歌詞にグッと来たのが最大の理由でした。
で、買って聴いていたら、快速エアポートで旅立つ時のあの高揚感を思い出して、また旅に出たくなっちゃいました。
……もっとも、ボクの場合は空港に行かずに恵庭で2726Dに乗り換える方が多いですし、最近はむしろエアポートよりスーパー北斗で旅立つ方が多いんですがね。
あと、思いついて「快速エアポート / pupe」→「Another Sky / 葉加瀬太郎」→「赤い電車 / くるり」と連続して聴いてみたら、札幌発・東京行きの旅をしている気分にほんの少しなりました。
「Another Sky」はANAのイメージソング、「赤い電車」は京急を題材にした曲なので、札幌→新千歳空港→羽田空港→品川・日本橋方面……という移動の疑似体験になるという寸法です。
なお、「快速エアポート」は札幌「から」旅立つ曲で、「赤い電車」は羽田「から」ボクらを乗せてひとっ飛びな歌なので、逆パターン(東京→札幌)はできないのでご用心。
来年には1時間に5本への増発が予定され、さらには7両編成化も検討されている快速エアポート。この曲がそんな快速エアポートへのエール……になるかはともかく、エアポートで移動中に車内で聴くにはちょうどいいと思います。
画面の前のアナタも、まずはYouTubeで聴いてみましょう! 気に入ったら是非買ってみてください!
「令和」が始まって2か月。北海道新幹線やBPなど、大きな課題に関する話がいろいろ動きました。いよいよ新しい時代に入るんだな、という実感。
自分たちの未来は、ボクら自身で創るべ!
新時代の旗手「北!鉄!ニュースライナー」、次回もチェキらないかんですよ!!
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