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紅葉半端ないって! "元気"に層雲峡散歩(平成30年9月17日)

平成30年9月6日、北海道は地震の闇に包まれた!!

灯りは消え地は裂け……あらゆる地域が被災したかにみえた……。

だが……、ほとんどの地域は被災していなかった!!


最大震度7を観測した北海道胆振東部地震(以下、「胆振地震」)の後、北海道全体で旅行のキャンセルが相次いだといいます。

キャンセルの波は二度三度と押し寄せました。被災していない地域にも、また地震から1か月以上経った時期の予約に対してさえ。

そうした警戒感・自粛ムードをよそに、北の挑戦者たちは、「北海道は元気です」と書かれたプラカードを手に、立ち上がっていました。

……というか、北海道の人たち、すっごい呑気です。電力が復旧するや一気に日常モードに戻っていきましたもの。被災地はともかく、大部分では何事もなかったかのようです。

……要は、北海道のほとんどのエリアでは普段通りに観光できるぞ~ってコトをアッピルするために、実際に自分で旅行して、それを記事にしました、ってお話です。

……まあ、そういうPR目的以外にも、「今ならいつもは激混みの所でもちょっとは空いていそうだから、通常だと激混みでなかなか行く気が起こらない場所にこの機会に行っとこう」というヨコシマな発想があったことは否定しません。

今回目指したのは、停電以外は地震とほぼ無関係の上川エリア・層雲峡。まだ9月ですが、大雪山系・黒岳の七合目以上ではすでに紅葉が始まっていました。今回はその黒岳で、一足も二足も早い紅葉狩りというわけです。

さて、それでは本編まいりましょう。

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特急オホーツクで上川へ

特急オホーツク1号(札幌6:56 → 上川9:16) 車両:キハ183-7555(4両編成・3号車)

今回は特急利用なので札幌駅からスタート。まずは層雲峡へのバスが発着する上川を目指し、網走行きのオホーツク1号に乗車。

実はオホーツクは初乗車。石北本線には乗ったことがありますが、特急で通るのは初です。そう、乗ったことのない特急の列車データを書いてたんです、この2か月半前のボクは(苦笑)。

所定4両編成で、先頭1号車からキハ183-9560(エンジン換装車・460PS)、キロ182-7552(同)、キハ182-7555(同)、キハ183-4558(エンジン未換装・330PS)という布陣。「毎度おなじみ流浪の運用……」という口上が似合いそうな便利屋・キハ183-4558はしかしエンジン換装車より低出力なので足かせになっている感。

往路のきっぷは「えきねっとトクだ値」の札幌→遠軽を使用。普通に上川まで買うよりこっちの方が安いです。座席は「面白そうだから」半室指定席の3号車を指定。運良くグレードアップ座席車が来てくれました。「指定席 Reserved Seat」と刺繍されたヘッドレストカバーがグレードアップ座席に付いているのが新鮮。

指定席部分はほとんど空席。自由席は10人くらい短距離の乗客がいましたが、やっぱり寂しい人数。おそらくは他の号車も似たか寄ったかでしょう。震災の影響もあってかとにかく利用が少ない……。


定時に札幌を発車し、一路オホーツク地方へ。動き出した瞬間に、思わずビックリ。その後も凄まじい違和感。エンジン換装車は実は初乗車なので、音・振動の少ない静かな加速はまるで別の車両に乗っているかのように感じられました。

とはいえ、加速は思っているほど鋭さが感じられません。原型エンジンのキハ183系基本番台4両でも走れるスジである以上、この時乗っている編成がフルパワーを発揮する必要はありません。(そうじゃなくて4号車の流浪人が足引っ張ってただけ?)

さて、おなじみの出発の儀式、車内で駅弁タイム。今回は札幌駅弁人気No.1なのに今まで食べたことが無かった「海鮮えぞ賞味」(¥1,080)。「THE 北海道!」という感じの海の幸オールスターズで、道外・海外の旅行者に人気が出るのもわかるお弁当です。弁菜亭だから当然味もグッド。でも「冬御膳」などの季節の駅弁の方がずっと上な希ガス。

食べ終わったあたりで江別を通過。朝もやの平原を疾走。現役晩年にしてエンジン換装によりブラッシュアップされた走りに、なぜかボクは元プロ野球の山﨑武司選手を思い出します。パワーがあって、出火して退場して、晩年に洗練される。うん、山﨑だわやっぱり。

そんな静かな走り……はカーブや分岐を通ると一時中断。車体が左右に動揺します。一気に悪化する乗り心地。こういうところはやっぱりキハ183系だなあ、と。

ところで、特急オホーツクは以前はすべて肉声で車内放送をやっていましたが、ハイデッカーグリーン車が投入されたので自動放送が導入されていました。当然、他の特急と同様に英語・中国語放送も。でも装置が一時的にヘンになったか、砂川・滝川・深川の車内放送は肉声でした。旭川到着前は自動放送が復活。


旭川まではそこまで時間がかかりません。しかも、この日の未明に余震があった関係で睡眠不足状態で、岩見沢~深川間はほとんど寝ていたので、なおさらあっという間です。寝不足で黒岳とか自然なめすぎですよね、この日のボク。

自分の後ろに座っていた自由席の乗客はポツリポツリと降りていき、たまに乗ってきて、そして残っていた乗客も旭川でおおかた下車(札幌からの指定席客は旭川をまたぎました)。入れ替わりに、指定・自由の両方に乗客が数名ずつ乗車。旭川~オホーツク地方の都市間需要もやっぱりあるんだなあ。外国人旅行客もちゃんとおり、いろんな意味で安心。

その外国人客、どこまでが指定席かわからなかったようで、ボクにそれを訊いてきました。なんか最近、英語が北海道旅行の必須技能な気がしてきました。

ボクにとってはどうということのない半室指定席も、旅行者目線だと初見殺しですよね。どうやったらわかりやすく案内できるかな。

旭川まで来ればもう一息……ということもなく、ここからさらに40分以上の道のりです。旭川からは最高速度が落ちますが、線路等級も下がるので乗り心地は悪化。でも窓の外は穀倉地帯なので、旭川までとそう変わりません。

伊香牛を過ぎると平地の少ない地域に入り、しばらくすると上川到着前の放送がかかりました。

ほどなく列車は上川駅1番線に停車。低いホームに降り立ちます。他にも十数名の観光客が下車。おそらくはボクと同様に層雲峡に行くのでしょう。紅葉の時期とあってJRも利用が増えているようです。地震がなかったらもっと利用が多かったんでしょうかね。

バスに乗り換え層雲峡へ

上川駅からはバスで層雲峡へ。バスの時間までは30分以上あるので、駅前散歩。

上川町というと、スキージャンプの高梨沙羅選手の出身地。駅や商店、それに住宅に「沙羅」の文字が躍り、町ぐるみで沙羅選手を応援しているのがわかります。

で、さっき駅弁を食べたとはいえ、このあとは山に行くわけで、それを考えるとちょっと腹具合が微妙なところだったので、なにかおいしいお菓子でもないかなと探してみると、「旭軒」さんという地元の洋菓子店を発見。上川銘菓だという「花あかり」(¥170)を購入しました。銘菓といっても地域ならではの味というのではありませんが、しっかりした味わいで、おいしくいただきました。小腹もちょうどいい具合に満たされ、作戦は成功に終わりました。

駅に戻ると、当時は節電中だったため薄暗い駅舎内で、先ほどの旅行者たちがバスを座って待っていました。こんなに時間があるんだから、散歩して名物でも探した方が面白いと思うんですがね。意外なところにおいしいお店や名物が転がっているものです。


道北バス 83系統(上川森のテラスバスタッチ9:50 → 層雲峡10:20) 車両:日野・ブルーリボン

さて、バスに乗車して層雲峡を目指します。駅すぐのバスタッチにはすでにバスが来ていました。路線バスタイプの車両でありながらWi-Fi利用可能との貼り紙に驚愕。

入口にはICカード乗車券の読み取り機も。札幌以外の地域でも確実に時代は進んでいます。といっても道北バスは全国共通ICカードは使えませんが……。

でも座席はフツーの路線バスタイプ。乗車時間を考えるとちょっとキツイかな……。

で、このバスは上川始発。旭川駅直通の系統もあるのですが、この時間は上川始発のやつに乗った方が早く層雲峡に着けます。まあボクはJRに乗ることを重視しているので、どっちにせよ上川で乗り換えますけど。

先ほど列車を降りた外国人客を中心に、20名内外の乗車。駅の窓口やこのバスの運転士は、彼ら乗客への対応を、片言の英語……いや、ほとんどボディランゲージのような感じで何とか頑張っていました。今まで英語なんて要らなかった環境でも、これからは英語が要るようになっていくでしょうね。

ところで、今いるバスタッチ、バス停の名前が「上川駅前」とかじゃなくてよくわからない長ったらしい名前なんですよね。「駅」という言葉を使わないのは、もしかして「JRは使わずバスだけで行け」というJRへの対抗心の表れ……?

さておき、バスは時刻通りに発車し、国道37号を東へ。層雲峡までの道のりは誰も住んでいなさそうな感じですが、律儀にバス停が設置されています。

道路は層雲峡観光のハイシーズンなので混んでいるかと思っていましたが、全然そんなことはなく、車がビュンビュン流れていました。バスは速度制限を守ってゆっくりと層雲峡を目指します。

ひたすら山の中という感じの景色がしばらく続きます。それが変わってくるのが、層雲峡到着数分前。車窓が単なる山道から「峡谷」へと変わっていきます。左右には層雲峡特有の切り立った崖がそびえ、荒々しくも風情ある景観に。道路に沿うように石狩川が流れ、時折木々の間からその姿をのぞかせます。

10時20分ころ、バスは層雲峡に到着。

七合目まで駆け上がれ

バスを降りると、飛び込んでくるのは鮮やかな緑と、断崖の威容と、川のせせらぎ。自然の迫力に圧倒され、同時に安らぎをも感じます。層雲峡は一度通ったことこそあれ、降り立ったのは初なので、実際降りてみると思っていた以上にいいところだなあと。

バス停の目の前には郵便局がありますが、ロッジ風の見た目で、一瞬観光案内所かと思いました。また、近くにあったセイコーマートも地味な色合いのデザインになっていて思わずギョッとしてしまいました。層雲峡全体で観光地としての色の使い方を意識していることがわかります。有名なのは京都で、実際に地味な色のローソンを見たことがありますが、層雲峡でもやってるんですね。

それでは黒岳へアプローチ。目指す七合目までは、ロープウェイとリフトを乗り継いで向かいます。ロープウェイ乗り場まではバス停から数分、ただし急な上り坂です。

途中、橋を渡ります。歩行者用の吊り橋で、名前は「朝陽橋」。読みは「ちょうようばし」で、層雲峡にある山の一つ・朝陽山から来ているようです。この橋がまたぐ川に沿った道には、この地域の治水・砂防についての説明が。土石流と闘い続ける行政の取り組みが紹介されていました。かなり地形が急な地域なので、大変なんだろなぁ……。

その辺りからロープウェイの索道が見えます。視点をずーっと上の方にやると、五合目の駅舎がハッキリ見えます。さらに上を見ると、雲こそ出ているものの過半が青く澄んだ空。この日ここまでは晴れたり曇ったりで、山に行く以上は天気がとても気がかりでしたが、ラッキーなことに晴れの層雲峡を引き当てたようです。

坂をずんずん上っていき、ロープウェイ乗り場へ。中にはすでに十数組の乗客が順番待ち中。さっそくチケットを購入し列に並びます。

並んでいる人たちは、いかにもという感じの観光客から、七合目より先を目指すであろうガチ勢まで様々。なんとなく、ガチ勢っぽいいでたちの人は山頂や石室(もしかしたらその先?)へ、軽装の人は五合目どまり、その中間が七合目に行くのかな、と想像。実際は然にあらず……。

ロープウェイは20分間隔の運行で、この時は毎時0・20・40分発のラウンドアバウトな20分ヘッドのダイヤで運行されていました。ビバ等間隔ダイヤ。10時40分の便の数分前になると、改札開始。いざ、ロープウェイに乗車です。


大雪山層雲峡・黒岳ロープウェイ(層雲峡10:40頃 → 黒岳10:47頃)

ロープウェイはけっこうな混雑。発車間際まで次々と入ってくる乗客。といっても東京のアレには足元にも及ばず、新聞くらいならなんとか読めそうな程度の混雑で、JR札幌エリア程度(除く721系)です。

ネットには「最混雑期はかなり待たされるおそれ」との記述が複数ありましたが、今回は積み残しは全くなく、全員が問題なく乗れてホッと安堵。仮に地震の影響がなかったらどんなものなんでしょうね。

ドアが閉められ、五合目まで数分間の空中遊泳スタート。道中では窓から見える(一部雲の中)山々などの解説放送が。

混雑していたのであまり外を見る余裕なし。地震のバタバタその他もろもろで心身ガタガタということもありボーっと過ごします。

ロープウェイはぐんぐん高度を上げ、五合目に到着。


思わず身震いする冷たい空気。それが、五合目に待っていたものでした。

五合目とはいえ、すでに標高は1300mもあります。当然、札幌とは全く気温が違います。

それはもちろんわかっていたので、用意しておいた防寒着を着て対策。準備が終わったら、駅舎を出て外へ繰り出します。

五合目は通過点でしかありません。200mほど歩いた先にあるリフトに向かいます。

この辺はまだ紅葉は来ていません。それでも木々は美しいですし、胸いっぱいにおいしい空気を吸い、陽光とフィトンチッドを浴びられるステキな環境です。

そこから少し歩くと、黒岳の全容が目に入ってきます。黒い山肌が鮮やかな紅葉の袿をまとい、天に向かってそびえていました。山頂方面はしっかり紅葉していることがわかります。さて七合目はいかほど……。

サクサク歩いてリフト前に。登山道に挑まずとも、リフトに乗れば七合目まで一直線です。(実はちょっと色気を出して、リフト乗り場のちょっと手前にある入口から登山道にも行ってみたんですが、道がよくわからず、睡眠不足・心身疲労など無理をできる状態でもなかったのでそそくさと引き返しました。)

リフトに乗るには、ロープウェイとは別に料金を払います。チケットを手に入れ、上着のせいでいつもより1個多い荷物をうまくまとめて、リフトに腰を下ろします。

リフトの所要時間は約15分。標高差200mのリフトは、ゆっくり山を上っていきます。

リフトなので寒風が吹きつけます。上れば上るほど、冷たさが増していきます。

木々はまだ色づかず。一方、足元にはすでに紅葉したチングルマが広がります。紅葉の赤に、リンドウなどが色を添える、色彩豊かな自然の絨毯を見下ろしながら、七合目到着を待ちます。

足元を見たり、空を見たり、山頂方面を見たり、隣の下りリフトを見たりしているうち、いよいよ七合目のリフト乗降場が見えてきました。

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