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待望開業!「ロイズタウン駅」訪問・観察レポ

令和4年(2022年)3月12日、JR北海道 学園都市線の新駅「ロイズタウン駅」が、当別町に開業しました。

穀倉地帯にそびえる、生チョコなどが有名な「ロイズコンフェクト」の大工場へのアクセス駅として造られた同駅。工場への通勤のほか、今後開業が予定されている工場見学施設に遊びに行くのにも役立てられることでしょう。

さっそく新駅の様子を見てきましたので、今回はその様子を中心にお届けします。

※COVID-19(新型コロナウイルス感染症)感染予防対策として、顔との隙間が少ない高機能な不織布マスクの着用、衛生的手洗い、「密」の回避を徹底しています。

◆「北海鉄旅」では、新駅開業前に駅建設予定地の現地レポや解説・考察を行った記事を2つ公開しています。よろしければそちらもお読みください。

平日ラッシュ時間帯の様子を見てきました

開業3日目、さっそく駅へ!

駅ができてから初の平日となる3月14日(月)、朝の時間帯に駅を訪れ、様子を見てみました。

ただし、列車ではなく自家用車での訪問としました。日程の都合があったのと、COVID感染が爆発中だったためラッシュ時間帯の列車移動を避ける目的です。車は邪魔にならない場所に停めています。


7時20分ころに現地到着。駅舎内部を見学した後、無用に人と接触しないよう、道路脇に陣取って駅を遠巻きに観察します。

スタンバイができたところで、7時29分の北海道医療大学行き列車が入線。さっそく、スーツ姿の方が数名下車してきました。

それに合わせるように、工場の方からマイクロバスがやって来て、列車を降りた方々を乗せて戻っていきました。

年齢層が高めと見受けられたうえ、通常の社員の出勤時刻にしては早すぎるので、おそらくロイズの重役の方々がお試しで新駅を利用したものかと思います。


それから少し時間が経つと、7時35分発の札幌行きが入ってきます。

同時に、駅前に設けられた仮設駐車場に1台の車が入ってきて、学生と思しき1名を降ろしていきました。車を降りた方はそのまま駆け足で駅に向かい、列車に乗車。

つまり、最寄り駅への車での送迎、いわゆる「キスアンドライド」です。以前の記事で、パークアンドライドでの新駅利用が期待できると書いたのですが、まだ駐車場の整備が終わっておらず、新駅がまだ町民に浸透していないであろうこの段階で、早くも自家用車と組み合わせた利用があるとは驚きでした。

もっとも、これも先ほど同様、見物ついでの「お試し」の可能性もありますが、それでも今後の駅利用者増加に期待が持てるワンシーンでした。


当たり前ですが、乗客の大半は降りずに通過していきます。

列車ごとの乗客は、上下ともせいぜい100名程度といったところでした。(パッと見で超ザックリ数えた数字ですが。)

札幌の通勤通学を支える学園都市線ですが、当別町内ではわりと空いています。加えて、おそらく北海道医療大学が授業をしていない時期だったので、特に下り列車の通学需要が減っていたと思われます。


さて、本丸はもちろん「ロイズ工場への通勤利用」です。ロイズの採用情報ページによると、一般的な勤務時間は8時30分からということで、非正規の従業員も多くは同じ時間でしょうから、出勤時間に間に合う7時台終盤~8時台前半の列車が多く利用されるでしょう。

まずは7時43分の医療大行きと、同48分の札幌行き。合わせて十数名が下車しました。大半が札幌方面から来たと見られます。(駅舎・ホームと逆の駅南側から見ていたので、列車ごとの降車人数を正確に把握できず。)

先ほどまでは朝ラッシュ時間帯の鉄道駅だというのにひと気がない、ある意味不気味な状況でしたが、これで少しは平日の朝らしくなりました。

ロイズ工場までは徒歩で数分ですが、降車客は駅舎で待機し、しばらく経ってやってきた工場行きの送迎バスに乗車しました。

新駅開業前も、あいの里教育大駅・太美駅からの送迎があったようですが、新駅ができて徒歩数分で行けるようになった今でも、新駅から送迎を行っているとは予想外でした。優しい会社ですね。

バスはすぐには発車せず、この後の列車で来る方を待ちました。

8時12分の医療大行き列車からは、多くの方が降車し、次々にバスに乗っていきました。さらに8時17分の札幌行きからも数名が下車。2本合わせて、およそ60名内外が駅を利用。バスは1回では運びきれず、2往復のピストン輸送で対応。

新駅からの従業員送迎も、この日が初めてでしょう。社員が駅前で様子を見たり、バスの運転手と話したりしていて、手探りで送迎をやっている様子が見てとれました。

正社員の通常出勤時刻を過ぎた後も、8時30分の札幌行き、8時37分の医療大行きからも、それぞれ数名が下車。8時30分の便までで送迎バスは打ち切られ、37分の便から降りた数名は歩いて工場へ。

最初の重役? の方を除いて、朝の通勤利用は合計70~80名規模でした。

う~ん、思ってたよりだいぶ少ないぞ……。

……はい、早く来過ぎました。考えてみたら、駅ができてもすぐに使えるとは限りません。多くの利用者は、それまで使っていた「あいの里教育大まで」または「太美まで」の定期を持っているでしょうから、その区間外となる新駅から通う形には、すぐに切り替えられませんからね。

というわけで、日を改めて出直すことにしました。

4月、駅を再訪

およそ1ヶ月が経った4月11日(月)、再び駅にやって来ました。COVIDの感染状況が一段と苛烈になっているので、今回も車で訪問&遠巻き見物。


7時15分ころに到着し、観察スタート。今回も相変わらず(駅前広場工事の業者の方を除いて)人がおらず、ピカピカの駅はまるで開業前のようにすら見えましたが、20分以上経ってようやく第一利用者が登場。自転車を駅前の仮設駐車場に停めて、駅舎に入っていきました。つまり、「自転車でのパークアンドライド」です。

数分後、さらに1名がキスアンドライドで登場。先ほどの方と合わせて2名が、7時48分の札幌行きに乗っていきました。

徐々にではありますが、ロイズ関連以外の利用も根付き始めている……のかな?


前後して、ロイズへの通勤客も現れます。7時43分の医療大行き、同48分の札幌行きから、合わせて10名ほどが下車(ほぼ全員が前者利用か)。送迎はすぐには来ず、数名はしびれを切らせたか、徒歩で工場へ。

しばらくして送迎バスが到着。前回同様、すぐには行かずに後続列車を待ちます。

そして、大本命・8時12分発 医療大行きが入線。先ほどまで閑散としていたホームが、一気に賑わいます。

8時17分の札幌行きの利用者も合わせると、およそ95名。先ほどの約10名も含めた計100名超の送迎となると、今回は2往復でも足らず、3往復して輸送完了。

その後、8時30分の札幌行き、37分の医療大行きから、それぞれ5名ほどが下車。今回は両方の便に合わせて都度送迎が来ました。

合計して、110~120名ほどの従業員が利用。開業直後と比べ、大きく増加しました。

ただし、そこはやっぱりクルマ社会の札幌圏、新駅開業後も車通勤が主流のようです。観察を行っていた1時間強の間に、駅前をたくさんの車が通り、次々と従業員駐車場に入っていきました。


新駅を通過する乗客は、上下とも列車あたり100名強程度と、前回よりは若干多いように見受けられました。また、ロイズタウン8:12発の下り列車(札幌7:41発の医療大行き)は、ロイズタウンで降りた乗客も合わせて300名くらいは乗っていたと思います。大学の授業が始まったことなどで、以前よりも利用が増えたものと思います。

3月の時は車内から見物したりスマホで写真を撮ったりする人もたくさんいましたが、1ヶ月もすると落ち着きました。

夕方の時間帯は?

「夕方の時間帯も見ておかないと、この先の内容が書けない」ことに気付いたので、4月26日(火)の夕方に三たび訪問。やっぱり今回も車で。

17時ちょうどに駅前にスタンバイ。数分ほどして、工場から数十名~百名規模の従業員が出てきました。正社員の終業時刻は17時30分のようなので、パートの従業員と見られます。

ほどなく、工場から数台の送迎バスが発車。1台が駅までのピストン送迎、他の車両は別の方に向かいました。(札幌北部方面、当別方面に各1本?)

駅に入ってきたバスから約30名が降車。ほか若干名が徒歩で駅へ。17時18分発の札幌行きに次々乗車……

……しましたが、一方で10名ほどは駅に残り、17時32分発の医療大行きに乗車しました。

この1本前の下り列車はあいの里公園止まりで、その前はロイズタウン16時57分発。なので、17時上がりの従業員で当別方面に帰る方は待ちぼうけを余儀なくされているわけです。この点も、需要とダイヤが噛み合っていない部分ではあります。


17時30分を少し過ぎたところで、再び多くの社員・従業員が退社。同45分くらいにかけて、次々と人が出てきます。知人にこの話をしたら「定時になったらすぐ上がれるなんて羨ましいなあ」と呟いてました。

数名が徒歩で駅に向かい、その少なくとも一部は17時45分発の当別行きに乗車。

その後、送迎バスが駅に入り、60名ほどが下車。ほぼ全員が17時51分発の札幌行きに乗っていきました。このバスは当別方面への利便は考えず、完全に札幌行き列車の時間に合わせて動いていました。

通勤客を乗せた札幌行きは6両編成で、混雑はしていませんでした。乗った人はだいたい座れたものと思います。

18時すぎにやって来る医療大行きは、ロイズタウンを通過。その後、再び送迎バスが来て数名が下車、18時08分の札幌行きに乗車。3両編成でしたが、ロイズタウン発車時は空いていました。

17時からの合計で、約100名が駅を利用。前回の朝の調査より少ないですが、早上がりのパートの方が一定数いるものと推察します。(逆に遅め出社のパートの方もいるかもなので、JR利用者の正確な実数は駅に一日中張り付いていないとわかりません。流石にそこまでする時間は無く……。)


周辺に建物がぜんっぜん無いので、周囲の道路の状況も見えます。

17時30分からの帰宅ラッシュになると、駅がある通りの1本西側の道が、国道337号交点の信号付近で渋滞していました。

渋滞と分かっているのに、駅がある通りを使わないのは、1本西の方が踏切が無く、かつ国道との交点に信号があり右折しやすいためと思われます。

一番混んでいる時間は、渋滞を抜けるのに数分ほどかかっていると見られます。


なお、工場通勤以外にも若干名の地元利用がありました。

学生のキスアンドライド利用(札幌方面から)も見られました。車が向かった方角からして、以前の記事で「可能性」程度の話として挙げた「石狩市からの利用」である可能性があります。

なんにせよ、ロイズ以外の利用も少ないながら定着しつつあるようです。

駅舎・駅前の様子

駅舎の内部や駅前風景も撮ってきました。


まず駅舎。外観はロイズらしい配色でちょいとシャレオツな感じですが、内部は必要最小限という感じで、車いすなど向けのスロープと、簡易版の改札機・券売機、あと列車の時刻・ロケーションを簡単に表示する画面があるばかり。

特に開業記念の何かが飾ってあるでもなし。天井に至っては鋼板・鉄骨むき出しという、体育館を思わせる無骨っぷり。潔さには逆に好感。

プラットホームも、特別なものはありません。屋根が全面あるのが悪天候時・冬を考えると嬉しいところですね。


さて駅前。ロータリー・駐車場を備える広場が整備される予定となっていますが、まだぜ~んぜん出来てません。令和4年度(2022年度)完成に向け工事が行われていて、工事関係者の車両が行き来したり、重機が動いたりしています。

先ほども触れた通り、道路沿いに仮の駐車場が用意されています。スペースは狭く、現状は送迎バスの発着と、キスアンドライド程度でしか使えず、長時間の駐車は許されません。また自転車を停めるのも、車・バス・歩行者の邪魔にならないようにかなり注意が必要で、自転車でのアクセス(除く輪行)もオススメはできません。

この駐車場には、駅からロイズの工場直営店までを結ぶ、お店を訪れる客向けのシャトルバスの停留所が置かれていました。工場見学施設ができていない段階で来店者向けバスを用意するとは思っていなかったので、少し驚き。現状だとどれほど利用されるのでしょうか。

広場と工場を除く周囲は、以前と変わらない農村風景。駅ができたというのに、場所の雰囲気そのものは相変わらずで、思わず笑ってしまったくらいです。でも、この場所は、このままの方がいいような気がするのです。

で、今回もいました、白鳥!

付近に留まっているヤツはいませんでしたが、4月11日の訪問では駅の近くを飛ぶ白鳥を何度も見かけました。また、帰りに通りがかった、少し離れた場所の農地には、白鳥がたくさん休んでいました。白鳥たちにとっても、このあたりは変わらず過ごしやすい場所なのでしょう。

他にはスズメが飛び交い、駅周辺はスズメの鳴き声(と国道などを走る車の音)で満たされていました。リラックスできる音です。


せっかくなので、ロイズの工場直売店にも行ってみました。

以前はこぢんまりとした売店だったのですが、ロイズの工場が拡張され、その拡張された部分に新しいお店ができました。

この場所は「ロイズ カカオ&チョコレートタウン」と名付けられ、白を基調としたデザインの広々とした入口広場はちょっと異国情緒さえ感じられました。

開店直後、しかも平日だというのに、すでに駐車場には数台の車が。前の狭い店内のイメージがあったので、COVIDのことを考え「混雑しているか、マスクをしていない人が1人でもいたら逃げる」つもりで入店。ところが店内はだいぶ広くなっていて、たくさんの商品が並んでいました。これなら、数組程度なら「密」の心配もありません。

「工場見学エリア 2022年 冬 オープン」との掲示がありました。どのような施設になるか楽しみです。

さて今回は、新駅開業記念の商品がいくつか出ていたので、「ロイズ バラエティ缶」(¥1,728)を買いました。新駅の駅舎がデザインされた缶で、記念に形に残るのでいいなと。中身は慣れ親しんだ定番商品ばかりですが、その定番商品が好きなのでむしろ良し。

また、新しいお店にはベーカリーコーナーができまして、パンやスイーツなどを販売しています。ロイズの直営店はここ以外行ったことがなかったので、ベーカリーの商品を見るのは初めてでした。

人気の生チョコを使った「生チョコタルト」(¥270)というのがあり、見たら食べたくなったので購入。生チョコがおいしいのは当然として、タルトもよくできていて、完成度の高いひと品でした。

新駅はどんな効果をもたらしたか?

さてお次は、実見した利用状況のほか、列車のダイヤなどを見渡しながら、「新駅の効果」をあらためて考えてみます。

学園都市線・新ダイヤはこうなった

駅が一つ増えた学園都市線。ダイヤもいろいろ変わりました。

どんな風に変わったか、新駅に絡んだところだけ簡単に紹介します。


まず新駅の停車本数。札幌~あいの里公園間の区間列車を除く84本の列車のうち、およそ9割にあたる75本が停車します。

通過となる列車は、まず上り(札幌行き)の始発とその次。続いて、深夜の下り(札幌から当別方面行き)の、当別まで直通する便の最終。時間が早すぎ・遅すぎて需要が見込めないため、通過となっているものと思われます。

朝ラッシュ時間帯の上下各1本と、夕ラッシュの上下各2本も通過です。本数の多い時間帯ということで、単線区間である札幌~八軒間・あいの里教育大~北海道医療大学間のダイヤの都合が付かないため、または多くの列車が走る中で多少遅れが出ても吸収できるダイヤの余裕を確保するため、通過としたものと思います。

これら9本を除いては、ぜんぶ停車です。

特に日中時間帯は、(当別・医療大発着便の)全列車が停まります。なので、ロイズ工場にぷらっと遊びに行く場合、とりあえず札幌駅に行って、特に何も気にしないで「医療大行き」または「当別行き」に乗ればOKで、わかりやすいです。

工場で働く人にとっても、遅い時間帯の列車も停まるので、残業が発生した場合も安心です。平成31年(2019年)改正で夜間の上りの本数が1本増えているのもポイント。

筆者は「利用が見込める時間帯のみ停車する」と予想していましたが、実際は「ダイヤの都合上停まれない列車と、あまりに需要がない時間帯以外は全部停める」という感じになり、ちょっと驚き。でも、「基本的に停車」とする方が、わかりやすくて安心というメリットにはなります。

ただ、下りは札幌を10~12時台に出てロイズタウンに行ける列車は合わせて4本しかありません。上りも、ロイズタウン12~14時台発の便は計5本しかありません。これは、元々この時間帯は区間列車が多く、ダイヤ改正でも変わっていないためです。

通勤・通学客の需要が落ち着く時間帯は乗客が多いとは言えないので、本数が少ないのは仕方ありません。お出かけ前には列車の時刻を確認しましょう。


一方、新駅を利用しない、札幌市~当別町を行き来する乗客にとっては、新駅が「デメリット」になります。

ダイヤ改正前と比較して、札幌~当別間の所要時間は、平均で約1.0分増加しました。新駅を通過する列車がかなり少ないので、所要時間が延びた列車が多くなっています。

(ただし、比較的利用が少ないであろう「札幌10~14時台発着の列車」「札幌21時以降発着の列車」を除外すると、0.8分ほどの増加にとどまります。)

たった1分かもしれませんが、千人規模の乗客が、その分だけ社会活動の制約を受けるわけです。決して無視してはいけない「負の効果」です。

ロイズへの通勤に大きな効果!

ロイズの工場見学施設がまだできていないので、現状新駅を一番使うのは「ロイズ工場への通勤客」です。新駅と新ダイヤで、ロイズへの通勤はどう変わったでしょうか。以前の記事と被る部分もありますが、改めて見てみましょう。


まず、札幌方面からの通勤。以前は教育大駅からの送迎でしたが、先述の通り今は工場間近の新駅が使われます。

朝の時間帯で一番使われているのが、札幌7:41発、ロイズタウン8:12頃着の便(2543M)。工場には8:20くらいには着けます。

従来の教育大駅からの送迎だと、(道路状況にもよりますが)もう少し遅めの到着となっていたでしょう。時間の余裕を作るには、1本前のあいの里公園行き(1541M、札幌7:23発)に乗る形となり、だいぶ早く家を出なければなりませんでした。

ですが、今では札幌7:41発の便でも、以前よりも時間に余裕を持って出勤できていることでしょう。

逆に、たっぷり余裕がほしい人は、損をしてしまっています。あいの里公園行きに乗ってもロイズタウン駅には行けませんので、早めに行くなら札幌7:12発の便(2539M、ロイズタウン7:43頃着)に乗ることになり、さらに家を出るのが早くなってしまいます。

この早い便は送迎が無いにもかかわらず、10名弱が利用していたことから、余裕がほしい(または「密」を避けたい)需要が確かにあるのだと思いますが、残念ながらこの需要とダイヤは噛み合っていません。

全体的には、「ちょうどいい時間に着きたい」人が一番多いでしょうから、新駅がメリットになった人の方が多いでしょう。


夕方の時間帯はどうでしょうか。

17:30上がりの場合、一番早い列車はロイズタウン17:51発の札幌行き(2596M、札幌18:24着)です。

従来の教育大駅利用では、工場付近の道路混雑を考慮すると、同じ列車(従来ダイヤだと教育大駅17:55発)には間に合わないことも多かったのではないかと推測します。1本後の便は、従来ダイヤだと札幌18:38着でした。

これが、今では送迎バスでものの1分、歩いても数分ですから、定時で上がれれば17:51発に余裕で乗れます。札幌駅到着時間で、14分も差が付きます。


当別方面からの通勤も考えてみます。

札幌方面よりも利用が少なく、距離も短いため恩恵としては大きくないようにも思われますが、一つ注目点があります。「階段を上る必要がなくなっている」ことです。

朝の出勤時に太美駅から送迎バスに乗り込むためには、列車を降りたら跨線橋を渡って北口に回らなければならないのです。つい最近まで、太美駅には南口がなかったためです。(現在はありますが、バスで南口に乗り付けるのは困難。)

対してロイズタウン駅は1面1線なので、跨線橋もへったくれもありません。上下方向の移動をほとんどすることなく、駅ホームから工場入口まで行けるという寸法です。

感覚的にわかると思いますが、人という生き物は「ただ道を歩く」のと「段差を上る」のでは、段差の方を嫌がります。上下方向の移動を減らすのは、横方向よりも重要なのです。

地味かもしれませんが、見逃せない変化です。


道路への影響も見逃せません。

ロイズタウン駅を使って通勤する従業員が増えれば、それだけ自家用車での通勤が減ることになります。

そうなれば、先述の帰宅時間帯の渋滞も和らぐことが期待できます。自家用車での通勤でも、所要時間が減るということです。

また、渋滞が短くなるということは、車の排ガス(or電力消費or水素燃料消費)が削減できるということにもなり、環境面も現状より良くなります。

既存のインフラを上手に活用すれば、道路の建設・拡幅のような大がかりな工事を行わずとも、こうした効果が得られます。今回の新駅プロジェクトもその一例というわけです。

行楽客もちょっとラクに

今後増えるであろう行楽利用でも、もちろん新駅はメリットになります。

新駅と工場直営店の間には、先述の通り来店者向けのシャトルバスが運行されています。それなら新駅が無くても、教育大駅あたりから送迎でも良さそうに思えるかもしれません。

ですが、「送迎バスでしか行けない」のと、「送迎もあるけど駅から徒歩でも行ける」では、イメージはぜんぜん違うはずです。

また、跨線橋を通る必要も無くなります。(仮に教育大駅からの送迎となった場合、来店者向け送迎は北口・南口いずれかの発着となり、往復いずれかで跨線橋を通る形となっていたと想定。)

ロイズタウン駅があるからこそ、ロイズ工場が公共交通でも気軽に行ける場所になったというわけです。

ロイズにとってもメリットに

この他、ロイズも送迎にかかるコストが大きく削減できているでしょう。

以前ですと、教育大駅と太美駅にそれぞれ送迎バスを出していたようですが、現在はロイズタウン駅との間を1台でピストンしていますので、送迎を1台削減できています。人件費や車両の導入・維持コストを抑えられるメリットになっています。

工場の拡張に伴い、従業員が大きく増えるとなれば、送迎バスの台数を増やすか、従業員駐車場を増やすことになると思いますが、JR通勤を奨励すれば送迎を増やさずに済みますし、駐車場のための用地取得・工事の費用も安く上がる(または不要になる)ので、コストを抑えられます。

駅の建設費用はロイズが負担していますが、こうしたコスト削減も考慮しての経営判断だったのだろうと思われます。

現状では「新駅効果」は期待できず。今後の展開に期待!

いろいろとメリットを挙げてきましたが……

しかしながら、今現在においては「新駅効果が発揮されている」とは到底言えない、と言わざるを得ません。

現状では利用者がせいぜい1日百数十人程度。通勤が楽になるという「1人あたりの効果」はあっても、人数と掛け算すると大きな数字にはなりません。むしろ、駅を利用しない人が被るデメリットの方が目に付く状況です。

JRにとっても、得られる運賃収入が小さく、駅の維持コストを考えるとあまり利益にはなっていないでしょう。


もっとも、今後の利用客増加次第では、「新駅効果」はじゅうぶんに期待できます。

工場拡張で従業員が増えれば、必然的にJR利用者も増えるでしょう。行楽客の需要も今後出てきます。

30年、50年といった長い目で見ていけば、所要時間増加による不効用や、駅の建設費やランニングコストを考えても、立派に「新駅効果」と言えるだけのものが得られることもじゅうぶんにありえます。

今はまだ利用の少ないロイズタウン駅ですが、今後の活躍には期待が持てます。


「建設費に見合うか」という点でさらに言うと、「利用者にとっての効用+JRの増収+環境に与える効果」だけでペイしなくとも、別の観点から見て費用を回収できていると言えれば、特段問題は無いと思います。

ロイズタウン駅は「請願駅」、つまり建設費用を地域が負担する形で造られた駅です。駅の建設費用として約10億円をロイズが負担し(当別町の政策として実施されていますが、予算に計上された事業費に相当する寄付金があり、ロイズによる実質的負担と見られます)、駅前広場など周辺の工事は約6億円をかけて当別町が実施しています。

これはつまり、ロイズと当別町はそれぞれ「この費用をじゅうぶんにペイできる」という見込みがある、とも取れます。

ロイズとしては、先述の「送迎や駐車場整備の費用減少」のほか、新駅によるPR効果とアクセス改善による増収、寄付による節税も見込めます。現に新駅開業によって多くの方が直営店を訪れているようで、この意味での「効果」は既に出ているわけです。

また当別町としても、ロイズの増益(増収+コスト減)によって得られる法人市民税が増えることが期待できますし、周辺の地価向上による固定資産税の増収、また人口増(または減少食い止め)・地域活性化・訪問客増加による税収増と、財政面でプラスになりうる要素がいろいろあります。(ただし以前の記事でお話しした通り、利用者視点を含めた駅の効用について町がきちんと精査したことがわかる資料がないため、「費用を上回る効果となりうるか」についてはやや不安はあります。)

これらの効果により、ロイズ・当別町が投資を回収できたなら、「ひとまず成功」と言えるでしょう。

(もちろん、駅の利用者がじゅうぶんに増加し「利用者から見て新駅効果がプラス、または許容できる程度のマイナス」と言える水準に達することが大前提です。)

大雪に次ぐ大雪に見舞われた、厳しい冬を越えた先に、駅が産声を上げ、その煌めきの色が"札幌アーバン鉄道"を明るく照らしました。

もちろん、この駅ができただけでJRが黒字になることはありませんし、いきなり当別や札幌北部が高層マンションだらけになるようなこともないでしょう。将棋で言えば、飛車や角なんてものではなく、せいぜい「歩」くらいのものなのかもしれません。

しかし、歩を一枚打ち込んだだけであっても、そこから駒得したり、玉を追い詰めたりできればいいわけです(打ち歩詰めはダメだぞ!)。同じように、新駅が道内の鉄道全体から見てほんの1ピースでしかなくとも、費用をじゅうぶんに上回る効果が出ている限り、「無駄」なんかじゃありません。

札幌圏にとって、地下鉄東西線の延伸以来となる新駅の登場。これからどのような展開を見せてくれるのか、今後も注目していきたいと思います。

参考文献
「令和2年度当別町一般会計予算書」(https://www.town.tobetsu.hokkaido.jp/soshiki/zaisei/26226.html)、当別町Webサイト ※令和4年5月6日閲覧
「令和3年度当別町一般会計予算書」(https://www.town.tobetsu.hokkaido.jp/soshiki/zaisei/29475.html)、当別町Webサイト ※令和4年5月6日閲覧
ロイズ 公式Webサイト(https://www.royce.com/) ※令和4年5月6日閲覧

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