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駅が産声を上げる! JR学園都市線、新駅計画が始動

記事公開:令和2年6月23日

令和2年(2020年)3月、札幌のすぐ北にある当別町から面白いニュースが届きました。

町内を走るJR北海道の学園都市線(札沼線)に、新駅を造る計画が始まったというのです。

学園都市線は、札幌都市圏を形作る近郊鉄道の一角。……といっても、今回駅の計画が持ち上がったのは、市街地ではありません。

新駅が想定されるのは、あいの里公園駅~石狩太美駅間にある、北海道を代表する菓子メーカー・ロイズの「ふと美工場」の近くです……が、その周りは、畑作地帯のただ中。太美の市街地からも離れた場所で、人口密度はかなり低いです。

果たして、当別町の狙いとは。そして、この計画はうまくいくのか。

ロイズの工場拡張&観光化をチャンスに!

なぜ、畑の中に駅を造るのか。それは、一言で言うと「ロイズの工場拡張をまちづくりに活かすため」です。

ロイズふと美工場の大変貌

ロイズと言えば、言わずと知れた「スイーツ大国」北海道の誇るヒットメーカー。上品な甘さがたまらない「生チョコレート」は、道内外問わず一度は口にしたことのある方も多いでしょう。

その人気に応えるため、ロイズはふと美工場を大拡張中です。さらにアミューズメント施設も追加し、「造る」だけではなく「遊びに行ける」工場へと変貌させるというのです。

イメージとしては、同じく札幌エリアの有名菓子メーカー「石屋製菓」の、「白い恋人パーク」のような感じかと思います。工場見学をメインに、他にもさまざまに遊べる一種のテーマパークになるでしょう。

この「遊べる工場」を訪れる人のアクセス手段の確保。それが、新駅の第一の目的です。

通勤輸送にも期待できる

当然ですが、工場への通勤にも使えます。

ふと美工場は規模が大きく、さらに本社機能も一部持っているようで、社員・従業員が多数勤務しています。今後、さらに従業員が増えることになります。

工場周辺は、今のところコミュニティバス程度しか公共交通がありません。公共交通で通う場合、あいの里教育大駅から送迎バスで行く形となります。

新駅ができれば、JRで直接通えるようになります。

工場通勤目的で新駅をつくった例としては、近江鉄道のフジテック前駅・京セラ前駅があります。そのほか、東武東上本線の末端区間(小川町以北)ではホンダの工場付近にみなみ寄居駅が建設中(本記事初版執筆時点)です。

「遊べる工場」を町の起爆剤に

当別町としては、新たなアミューズメント施設をまちづくりに活かしたいところです。

工場は札幌からほど近く、それなり以上の来客が期待されます。町にとっては、交流人口を呼び込む貴重な存在となります。

それだけではありません。新駅想定地点のすぐ南を走る国道337号と連動したまちづくりにも期待がかかるのです。

国道337号線は、「道央圏連絡道路」をはじめとしたバイパス化、および4車線化が進められており、札幌の外環道路としての地位を高めています。その337号沿いに、「北欧の風 道の駅とうべつ」が平成29年にオープン。単なるトラックストップとしてだけでなく、交流拠点としての機能もあります。

さらに、道の駅を中心に、周辺の国道沿いのエリアが「企業誘致エリア」と位置付けられています。道の駅の西隣に、今年(令和2年)にいちごの観光農園が開業。その他にもいろいろな話が進んでいるといいます。

このエリアとロイズ工場や新駅を連動させ、交流人口、そして定住人口を増やす……というのが、当別町の究極の狙いです。


なお、「定住人口を増やす」とは言いましたが、これが「新駅周辺の宅地開発」を意味するかは不明です。

一部報道には、新駅周辺の宅地開発が計画にされているとありましたが、当別町としてはあくまで既存市街地(中心部と太美)を集中して開発する計画のようです。

なので、「定住人口を増やす」というのは、「新駅効果を活かして『既存の』宅地の人口を増やす(または減少を抑える)」という意味であって、新駅周辺は宅地にはしない……のかもしれません。

新駅想定地点に実際に行ってみた

去る3月中旬、新駅が想定されるふと美工場付近に足を運んでみました。その時のレポートをば。

※COVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策として、マスク着用・社会的距離などを意識した上で取材しています。

渡り鳥の楽園

新駅想定地点にたどり着いて、最初に目にしたものは――

白い衣に身を包んだ、渡り鳥の群れでした。

暖かい時期が近づき、北を目指す白鳥たちが、畑で羽を休めていたのです。草を食みつつ、優雅に佇んでいました。

しばらく、目的を忘れて見とれていました。我に返った時、こう思いました。

「……ここを本格的に開発するってのも、なんだなあ……。」

ロイズがこの場所をアミューズメント化するのは、こういう環境だからこそなんじゃないかな、と。だから、それを壊すような本格的な開発をしちゃったら、それって違うよなと。

これはあくまで理屈じゃなくて感覚・感情のハナシなので、この件は流してください。では、本題いきましょう。

ザ・畑作地帯 ~駅想定地点インプレッション~

それでは、新駅想定地点がどんなところか、見ていきましょう。

駅が造られると思われるのは、ロイズ工場から南に数百メートルの踏切のあたりです。

駅近くの国道337号からは、トラックが走る音がひっきりなしに聞こえます。

でも、それ以外はすべて、畑。畑畑畑畑畑畑畑畑畑畑畑。宅地もない、コンビニもない、電車もそれほど走ってない。離れたところに太美の市街は見えますが、今いるところはまさに「農村」。

パッと見た感じでは、「こんなところに駅を造って、キツネでも乗せるんか?」という声が聞こえてきそうなくらいです。

畑の中の城 ~ロイズふと美工場~

もちろん、列車に乗せるのはキツネじゃなくて人です。新駅のターゲットは、ロイズの工場なのですから。

というわけで、お次はロイズ工場について。駅想定地点から北を向くと、大きな工場が鎮座ましましています。

これが結構大きく、徒歩数分ほど離れているのにそうとう近くに見えます(農村なので距離感が狂うのもありますが)。それだけ製造規模も大きいのでしょう。

工場の東側には従業員用の駐車場がありましたが、こちらもそうとう広く、停められている車は百台単位。

奥の方には、送迎バスの車両が何台も停まっていました。車通勤ではない社員も一定数いることが窺えます。

ロイズの採用情報によると、正社員だけで140人ほどが働いているといいます。さらに相当数の工場パートがいるはずなので、総計で300~400人台とみていいでしょう。今後工場の規模拡大が控えますが、工事の規模からして百単位で従業員が増えることになるでしょう。

「住んでいる人」は少ないエリアですが、「昼間人口」で見ればけっこうなボリュームになることがわかりました。


あと余談ですが、工場に併設されているショップでソフトクリームを買って食べました。店内で他に食べている人がいたので、COVID-19対策を考え、寒いのを承知で外で食べることに。寒空の下で冷たい食べ物ってのもアレですが、せっかく来たのでね。

優しい甘さが日々の疲れを癒してくれました。北海道はおいしいソフトクリームがいっぱいありますが、さすがはロイズ、北海道の中でもけっこうハイレベル。皆さんも一度ご賞味あれ。

建設費は安くできそう

駅想定地点の方に話を戻します。

駅の設備はおそらく最小限でよく、費用はかなり安く抑えられそうです。最初に報道を見た時点でそうだろうと思っていましたが、現地を見て改めてそう感じました。

学園都市線のあいの里公園~北海道医療大学間は、単線区間です。両隣のあいの里公園・石狩太美がともに列車すれ違いができる交換駅で、この区間の列車本数も多くて1時間に上下3本。なので、新駅建設にあたっては新たに交換設備を設ける必要はないでしょう。

よって、駅の形態は「単線区間」の「停留所」、つまり1面1線でいいでしょう。線路に沿ってホームを敷いて、道路に降りるスロープと、駅舎を取り付ければそれで完了。利用者は多めに見積もっても数百人ですので、駅舎も小さめでいいでしょう。跨線橋や橋上駅舎のような大掛かりなものは不要です。

列車は最長6両編成で、ホーム長は最低130m必要になり若干工費がかかりますが、ホームは1面だけなので不安要素というほどではありません。

※6両編成の普通列車の最大列車長:先頭車21.67m×4両+中間車21.3m×2両=129.28m

たぶん、1億~数億円程度で造れると思います。駅を造るにあたっては、駅が生み出す便益が費用を上回らないといけないワケですが、その費用がかなり小さいので、ハードルはだいぶ下がります。

国道沿いの企業誘致エリアの状況

続いては、国道の方を見ていきます。

駅想定地点に近いあたりは、国道沿いであってもやはり畑作地帯で、施設は何もありません。

そこから一区画東に行きますと、「企業誘致エリア」に入ります。国道の両側に沿うように側道が整備され(ただし現状は冬季除雪なし)、インフラ面では企業の受け入れ態勢が整いつつあるようです。

駅想定地点から1km弱くらいの場所には、先述のいちご観光農園があります。集客効果はお世辞にも大きいとは言えませんが、ロイズ工場または道の駅とセットで訪れるにはちょうどいいスポットです。

観光農園から道の駅までは、さらに400mくらい離れています。新駅から道の駅までは徒歩だとちょっと遠いので、新駅と道の駅が「直接」相乗効果を生むことは考えづらいですね。

ロイズ以外に駅から徒歩で行けるのは、まだ観光農園だけ。やはり現状では、新駅を使うのはほぼロイズの行楽・通勤客だけになりそうです。今後の企業誘致などの成果にもよりますが、現状だけ見ると「うーん……」となってしまいます。

素人流・グダグダ費用便益分析

毎度申し上げていることですが、交通プロジェクトを評価するときは、メリットとデメリット、その両方をしっかり考察する必要があります。

というわけで、素人なりに新駅の良いこと・悪いことをまとめてみます。「費用便益分析」なんて言えるような定量的な話はできませんが、流し読みでいいので目を通していただけると幸いです。

メリット① 少ない費用で交流人口を増やせる

札幌からそこそこ近い「遊べる工場」が、さらに「札幌からJRで乗り換えなし」となれば、より気軽に行けるので、さらに集客力が高まるはずです。

環境面のメリットも無視はできません。新駅ができない場合と比べてマイカーで来る人の割合が減りますので、それだけ排ガスも少なくなり、ある種利益になります。そうした「環境便益」は、ネットの議論などでは無視されがちですが、「持続可能な開発」はもはや世界の常識ですし、現実に各地の交通プロジェクトにおける「費用便益分析」でも出てきますので、ちゃんと計算に入れなければなりません。

施設1か所のアクセス向上と、環境便益。「新駅を造るわりにこれだけなのか」ってなりそうですが、現地レポで触れた通り費用が安いワケです。「これだけ」でも、安さを考えれば相対的には大きいメリットになります。

メリット② 工場への通勤を担える

工場への通勤によっても、いろいろなメリットが生まれます。もし「費用便益分析」をちゃんとやったら、その計算の上ではこちらの方が大きなメリットになるかもしれません。

現時点で公共交通で通勤している人は、送迎バスを使わずに通えるようになるので、教育大駅での乗り換えをしなくてよくなります。

また、札幌方面から通う場合、帰りのJRは2番線発車なので跨線橋の階段を上る必要があります(当別方面からであれば逆に往路で階段移動)が、新駅なら跨線橋なんてそもそもないでしょうから、階段移動も解消されます。

バスとは違って、駅から工場まで数分歩く必要はありますが、乗り換えと階段がなくなる分トータルではラクになるでしょう。

車通勤からJRに切り替える人もいるでしょう。車の運転に不安を抱える従業員も一定数いると思いますので、JRで通えるならそうする、という人も少なからずいるはずです。

そのため、既存のJR+送迎バス通勤者の便益と、新規のJR利用者が生まれることとなります。

当然、環境便益にも期待できます。送迎バスが要らなくなり、マイカー通勤の割合が減るためです。利用者便益と環境便益を足したら、けっこうな数字になると思います。

そしてもう一つ、今の時代だと特に大事なポイントが。それは、「バスの労働力不足に対応できる」こと。

送迎バスを廃止できるので、バスの運転手を確保しなくて済みます。今のご時世、バスのドライバーは全国的に不足していますので、送迎バスのままだといずれ運行できなくなるおそれがありますが、都市鉄道にその憂いはありません。

ロイズが将来にわたって操業を続けるための「持続可能な」通勤輸送体制を組める。これもバカにはできないメリットです。

メリット③ 供給者便益

学園都市線を保有・運行するJR北海道にとっても、増益のチャンスとなります

行楽と通勤を足しても、駅利用者はせいぜい1日あたり数百人程度でしょう。ですが、札幌中心部からはある程度距離があるので、客単価は高めです。

札幌から新駅までは、おそらく普通運賃は540円、定期運賃は通勤1か月で17,590円となるでしょう。

新駅は「請願駅」、つまり町またはロイズが建設費を負担する形となる見通しです。維持費はJR持ちだと思いますが、駅の規模が小さいので、そこまでかからないでしょう。

JR北海道の経営再建の柱の一つである「札幌エリアの収益最大化」に、少しではありますが結びつきます。

デメリット① 札幌~石狩太美以遠の所要時間増加

デメリットについても目を向けていきましょう。最大のポイントと言えるのが、所要時間が延びる点。

新駅に停車することで、あいの里公園~石狩太美間の所要時間が少し延びるでしょう。

主に、札幌~石狩太美・石狩当別・北海道医療大学で列車を使う人に影響します。合わせて数千人規模と思われます。一人あたりの損失は小さくとも、千人単位となると大きな数字になります。

駅の利用者はせいぜい百単位、ということを考えると、なおさら気になるデメリットです。


もっとも、駅停車による所要時間増は、せいぜい1分程度でしょう。

学園都市線の最高速度は85km/hと低め。駅を出て85km/hまで加速するのに、そこまで時間はかかりません。同様に、85km/hからのブレーキングも時間は短いです。

令和2年から特急「北斗」の大半が白老駅に停車するようになりましたが、所要時間のマイナスは平均1.3分程度。こちらは最高速度120km/hの直線区間ですので、120km/hからブレーキかけて、駅に停まって、また120km/hまで加速。それで、プラス1.3分程度です。

「北斗」よりもスピードレンジが低いのでロスはさらに小さく、1分くらいで済む、と予想します。

(「北斗」と学園都市線では車両が違いますが、そこまでのスペック差はないと踏んでいます。)

また、この利用者損失は増発によってカバーされている、と見ることもできます。

北海道医療大学~新十津川間の廃止のバーターとして、あいの里公園~北海道医療大学間で平成31年3月、令和2年5月と2度にわたって増発が実現しています。所要時間が増えても、総合的に見れば平成31年改正以前よりは悪くならない、と言うこともできそうです。

このほか、当別町は学園都市線への快速導入を要望しています。学園都市線はどの駅もそれなり以上に利用がありますので、通過できるとしたら太平・百合が原くらいだと思いますが、実現すれば新駅による所要時間の延びをある程度相殺できます。

ロイズへの行楽・通勤を想定しづらい早朝・夜間は一部通過とするなど、細かく調整するのも手。

付け加えると、たとえば桑園~八軒間に新駅を造るような場合(そんな計画今ンとこ無いけど)と比べたら、悪影響が及ぶ範囲は狭いです。学園都市線の利用者の多くは札幌市内相互で使っており、あいの里~医療大間はそこまで利用が多くはありませんからね。

もちろん無視していいデメリットではありませんが、そこまで大きなものではない、というのは確かでしょう。

デメリット② 川の氾濫にどう対応するか

交通的な分析からは外れますが、「災害」という観点からも考えてみましょう。

(この話はTwitterにあった意見を参考にしています。)

新駅の周辺には、日本を代表する大河川のひとつ・石狩川など、いくつかの川があります。低地なので、川が氾濫した場合大洪水に見舞われるおそれがあります。

平成30年の豪雨で、旭川市・神居古潭地区で石狩川が氾濫したのは記憶に新しいところ。それ以外にも、昨今各地でとんでもない水害が相次いでいることを考えると、「確率は低いから」などと侮れません。

新駅周辺に、もしもガッツリと開発が入るとしたら、災害により失われるものが大きくなる、ということに。本格的な開発は、考えものかもしれません。

(先述の「宅地開発は新駅周辺ではやらないのかも」という話、もしかしたらこういうことなのかもしれません。)

いずれにせよ、新駅周辺の治水・防災(減災)はしっかり考えた上で計画を練る必要が出てきます。それだけコストがかさむので、そういう意味では「費用」と言えます。

新駅を733%活かすための提案

ここまでの話をまとめると、「今回の新駅は安く造れて、畑の中に造るワリにはいろいろ期待できるけど、デメリットも気になる」という感じ。

さてここからは、「じゃあ新駅のメリットをより大きくするにはどーしたらいいべ」ということを、ドシロートなりに考えてまいります。

あえて大規模には開発しない

まず一つ目。「本格的な開発はあえて行わない」。

新駅の駅前を思い切って宅地化するなど、大規模な開発に乗り出すことも考えられないでもありません。

でも、あえてそれをしない。今の農業地帯としての表情を、変えない。その方が、いいような気がするのです。

根拠は主に3つ。第一に、「既存市街地の再開発との兼ね合い」。

先述の通り、町は中心部(石狩当別駅周辺)と太美エリア(石狩太美駅周辺)への集住を進める都市計画を打ち出しています。人口減少時代において、効率的で持続可能なまちを目指すなら、コンパクトシティです。人口・経済規模ともに決して大きくない当別町にとっては、なおさら集住を目指すことが重要です。

当別町でも人口が減少局面にある以上、新駅付近を下手に開発すると、中心部・太美の人口を奪う形になりかねません。

農地をゼロから宅地化するとなればインフラ整備にも費用がかかります。それで人口が増えればいいのですが、ただ人口が散らばっただけ、となったら効率が下がるだけです。

なので、新駅によって「まちの顔」ができることを、新駅の周辺ではなく中心部や太美の魅力アップに繋げる発想の方がいいと思います。両地域に住む魅力として、「札幌にそこそこ近くて」「既にある程度都市機能がまとまっていてまずまず便利で」「人口密度が高過ぎずのびのび生活できる」というところがあると思いますが、さらに「1~2駅先に遊びに行ける場所がある」という新しい魅力を訴求することで、中心部・太美に人を集める(流出を食い止める)、という感じです。

第二に、「防災」。

仮に人口を増やせたとしても、水害のことを考えるとかえって高くつきそうです。宅地開発をそもそもしないか、するにしても小規模にとどめる方がよさそうに思います。

避難所の確保も問題です。新駅エリアで水害の避難先にできそうなのはロイズ工場くらい。そんなに多くの人は避難させられないでしょう。(新たに避難所を造るにしても、やはりコストの問題が立ちはだかります。)この点でも、新駅エリアの人口はそう増やせないと考えます。

第三の根拠は……、後述します。

「企業誘致エリア」を西に延長、新駅&道の駅エリアに相乗効果をつくり出す

つづいての提案は、「企業誘致エリアを新駅付近まで拡大し、新駅の徒歩圏内に企業を呼び込む」こと。

新駅の南、国道337号線沿いに、小規模でいいので遊べる施設を呼べれば、新駅エリアの回遊性が高まります。

工場しか遊ぶ場所がないと少しつまらないですが、もう1か所ついでに寄れるところがあれば、遊んで回れるのでより多くの人を引き付けられる、という寸法です。

すでにいちご農園があるとはいえ、駅から少し離れているので、間に寄れるところが何かないと「駅から歩いて行こう」という気になる人は少ないと思います。

もう1つでも企業を呼び込むことで、「ロイズ工場⇔新駅⇔新規誘致企業⇔観光農園⇔道の駅」というラインを作り出せば、それぞれ隣どうしで相乗効果が生まれるでしょう。道の駅の恩恵も、間接的に新駅、そしてロイズ工場に届きます。その逆も然りです。

企業から見ても、「道の駅に近い主要国道沿い」かつ「新駅徒歩圏内」という好立地となります。誘致チャンスはあるでしょう。

そんな感じに、「新駅と国道をダブルで活かした企業誘致」で、ロイズ工場から道の駅まで続く線状の「まちの顔」をつくるというのが、二つ目の提案です。

パークアンドライドを推進、町外利用も視野に

最初の提案で、「宅地は造らないか小規模に」と言いました。そうなると、市街地から離れている以上は、ロイズ工場通勤以外の生活利用には期待できません。

そういう場所で、大規模開発によらずに生活利用者を確保する方法が一つだけあります。「パークアンドライド(P&R)」です。

新駅に大きな駐車場を整備することで、「自宅から駅まではマイカーで、駅から目的地(札幌中心部など)まではJRで」という風に使えるようになり、広い範囲から人を呼び込むことができます。

国道337号・道道112号はじめ道路がしっかり整備されているので、当別中心部や太美から新駅までラクラク移動できます。また、JRから遠い「スウェーデンヒルズ」からの利用も期待できます。

当別町内だけではありません。隣の石狩市からも、ごく少数になるとは思いますが利用客を想定できます。石狩川の右岸に位置する八幡・緑ケ原・厚田区虹が原は、いちおうパークアンドライド圏内に入ります。石狩から札幌中心部に車で向かおうとすると、朝の時間帯などは札幌市内で渋滞することもありますので、パークアンドライドをする意味はありそうです。

現状でも、石狩太美駅の近くに(不法に)車を停めてJRを利用する人がけっこういるようで、パークアンドライドの設備がしっかり整備されれば一定以上の利用があるはずです。


パークアンドライド重視の新駅がうまくいった例としては、三重県にある三岐鉄道北勢線の「大泉駅」があります。

(今の北海道の維持困難路線ほどではないにせよ)利用が少ない北勢線を近鉄から引き継いだ三岐鉄道は、沿線自治体のバックアップのもと路線改良を計画。その中に、「駅の統廃合」と「パークアンドライド」がありました。

1kmと離れていなかった大泉東駅と長宮駅を統合する形で、両駅の間に大泉駅を新設。あえて住宅街の近くに造らず、住宅は少なくても主要道路からのアクセスがしやすい場所を選び、そのかわり駐車場とそこへのアクセス道路を整備し、パークアンドライドをしやすい駅としました。

これが見事に当たり、駅の利用者は統合前の2駅の合計を上回る数となりました。

駅には農産物直売所が併設され、移動だけでなく買い物もできる地域拠点へと成長しました。


今回の新駅の場合ですと、駅を移設・統合する形ではありません。なので、既存の石狩太美・石狩当別両駅と役割分担をしつつ生活利用を呼び込む形となりましょう。

太美・当別両駅は、既存市街地に人を呼び込みコンパクトシティ化を目指すための「まちの中心」としての役割を。新駅は、スウェーデンヒルズなど駅から離れたところに住む人、または既存駅付近の住民でもマイカー派の人を鉄道に振り向かせる役目を担う……といった方向性がよろしいかと思います。

大泉駅の事例を参考に、いくつか工夫するとなおいいでしょう。一つ、パークアンドライド推進のため、駐車場は無料とした方がいいでしょう。もう一つ、駅前道路の拡幅も視野に入ります。車線を増やさないまでも、路側帯を広げたり、国道に差し掛かる地点に右折レーンを設けたりするくらいでも効果は出るでしょう。

ひまわり畑で(交流人口を)つかまえて

新駅周辺には、実はもう一つ、期間限定の見どころがあります。夏から初秋にかけて咲き誇る、ひまわりです。

時期になると列車とひまわりをセットで撮っている写真をけっこうネットで見るので、札幌エリアで活動する撮り鉄の方でしたらけっこう知ってるのかミ。

ひまわりというと北竜町などが有名で、そちらの方が大規模だと思いますが、当別のひまわり畑は札幌から近いというのがウリになります。

このひまわり畑を見に行く手段としても、新駅を活用できます。

さっきの「本格的な開発はあえてしない方がいいと考える三つ目の根拠」はこれを指しています。大々的に家を建てたりしたら、ひまわり畑を潰しちゃいますからね。

札幌から電車1本で、ついでにロイズ工場で楽しめる……ときたら、花や自然に多少でも興味があれば「よしちょっと行ってみるか~」ってなる人もけっこういると思います。本格的な開発をしなくとも、他に魅力があれば人は来るものです。

「畑の中に駅をつくる」。それだけ聞いたら、意味がなさそうに聞こえるかもしれません。ですが、建設費が安く上がるわりに様々なメリットがあり、実現可能性はじゅうぶん。もちろんデメリットもありますが、決して下策ではないとボクは思います。

札幌エリアでは平成一ケタ年代までに地下鉄延伸やJR新駅などのプロジェクトがだいたい出尽くしたので、市電の狸小路電停を除けば20年ほど新駅ができない時代が続いています。北広島で進行中の新駅プロジェクト以外に新駅はできないだろう、と思っていましたが、もう一つ面白い動きが出てきました。むしろ、設備が簡易なので先に当別の新駅が動くかもしれませんね。

札幌都市圏のダイナミズム全体から見るなら、あるいはJR北海道の経営再建のピースの一つとして見るなら、小さな一歩かもしれません。でも、これまで札幌圏(とくに札幌市内)ではともすれば鉄道が無視されがちだったことを考えると、パラダイムの変化という意味では大きな一歩と言えましょう。成功すると保証はできませんが、新駅の産声が当別町、そして札幌エリアの心臓を動かしてくれると信じて、注目していきたいと思います。

参考文献
「当別町第6次総合計画」(https://www.town.tobetsu.hokkaido.jp/site/kikaku1/25811.html)、当別町Webサイト ※令和2年6月23日閲覧
当別町議会 令和2年第1回定例会 会議録(https://www.town.tobetsu.hokkaido.jp/uploaded/attachment/16903.pdf)、当別町Webサイト ※令和2年6月23日閲覧
「当別太に新駅 当別町とロイズがJRに要望書」(https://e-kensin.net/news/126233.html)、北海道建設新聞電子版 ※令和2年6月23日閲覧
ロイズ 公式Webサイト(https://www.royce.com/) ※令和2年6月23日閲覧
『JR HOKKAIDO DATA BOOK 1992』 (1992年) 北海道旅客鉄道株式会社
「特集:地方鉄道の経営努力と公的支援 地域の活力を支える三岐鉄道 三岐線・北勢線 鉄道の多様性と他の交通との共生で地方鉄道を存続する」(https://www.mintetsu.or.jp/association/mintetsu/pdf/68_p10_17.pdf)、『みんてつ』Vol.68、日本民営鉄道協会
大泉駅(三重県)についてのWikipedia記事(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%B3%89%E9%A7%85_(%E4%B8%89%E9%87%8D%E7%9C%8C))※令和2年6月23日閲覧

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