「ゲニウス(北)の北海鉄旅いいじゃないか」

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【番外特集】北海「鉄+チャリ」旅いいじゃないか プロローグ(後編)

自動車に、トヨタ・ホンダ・日産など多様なメーカーがあり、同じサイズでもヤリス・フィット・マーチなど様々な選択肢があるように、折りたたみ自転車一つとっても車種が驚くほどたくさんあります。

その中から、今のボクに合った1台を探す作業が、始まりました。

前ページの通り、必要条件は「20インチのタイヤ」「8速以上の多段変速」。加えて、なるべく「軽量・コンパクト」

輪行メインで、市街地よりも専ら郊外を中速~高速で、距離も1日50km以上走ることを想定しての条件です。車輪径が小さいと中速域以上での速度維持が難しく、ギアが少ないと加速がしんどくなり、重いと持ち運びが厳しいです。

ネットで調べて、まずは候補の選定。

主要ブランドで条件に近い自転車が多いのは、米・DAHON(ダホン)社の自転車と、米・Mobility Holdings社のTern(ターン)ブランド。

その他、日本の会社でもモンベルの"SCHEIDEGG"(シャイデック)シリーズ、テック・ワンの"CARACLE"(カラクル)シリーズあたりに、条件に合う車種がありました。

その中から、知識も少ない中で、ある程度絞っていきます。DAHONやTernは車種が非常に多く絞り込みが難しいですが、とりあえず10万~12万円程度の車種を想定。ほか、CARACLEはネットで得られる情報が少ないので少し不安がありましたが、札幌に正規取り扱い店舗があり試乗もできるとのことで候補入り。SCHEIDEGGはCARACLEに条件面で劣るため、候補から外しました。

暫定的な第一候補はCARACLE。折りたたみ時のサイズが20インチ自転車としては世界最小とのことで、さらに重量も軽い、というのが輪行にピッタリだからです。走行性能も他の候補と同等程度のようです。


候補をある程度絞ったところで、お次は試乗をしてさらに絞り込みです。全く知らない世界ですので、実車を見ずに買うのはあまりに怖いです。ここは急ぎつつも慎重にステップを重ねます。

まずは、CARACLEの取り扱いがある、札幌・厚別区の「パドルクラブ 札幌大谷地店」へ。

入口すぐの所に、CARACLEが展示されていました。それを横目に、店内の自転車コーナーへ。(場所が分からず時間浪費……。スタッフに訊けばよかった。)

自転車担当の方に、試乗希望の旨と、自転車の使用目的を伝えます。すると、「それなら、CARACLEはまさに打ってつけ」と太鼓判。

ただ、ここで納期の問題が。

CARACLEシリーズの中での候補は、"CARACLE-S"の「rev.3.1 標準仕様」と「rev.3 スポーツ」。スポーツは標準より変速が1段多く、またタイヤが細くサドルも軽いスポーティな仕様。輪行での持ち運びでも、軽量パーツを使うスポーツが有利です。ただ、いきなりスポーツ仕様は馴染みにくそうで、価格も少し高いため、標準仕様を買うつもりでした。

ところが、ちょうどモデルチェンジを控えており、rev3は生産終了・店舗在庫限りとなっていました。在庫車はスポーツのみで、そちらも残りわずか、とのことでした。

モデルチェンジ後に買うとなれば、納期はだいぶ後になります。この熱が冷めないうちに始めたいので、在庫のあるスポーツを検討することに。

ということで、店舗周辺を試乗。生まれて始めて跨る「ミニベロ(小径車)」にワクワクしながら、ペダルに足を置きます。

ペダルを踏み込んだ瞬間。何かビビッと来るものがありました。良い自動車に乗って、アクセルを踏み込み始めた瞬間に来る感覚に似ていました。これは……、良い予感。

そのままペダルを踏み込んでいきます。やはりというか、漕ぎ出しがとても軽い。ミニベロの魅力の一つです。

白石本通(国道12号)に出て、スピードを上げてみます。

ミニベロが弱いのは、ある程度以上速度が乗った時の速度安定感。そこが実際どんなものか確かめましたが、多段変速のおかげで、むしろシティサイクルよりも速度維持が楽だと感じました。加速もかなりスムーズです。長時間乗ったらどうなるかは未知数ですが……。

むしろ問題は、タイヤ。スポーツ仕様は1.25インチ幅の細いタイヤで、こういうスポーツタイヤに不慣れなので走りづらく感じました。もっとも、慣れれば問題はないと思われました。

体の負担も気になります。タイヤとサドルがスポーツタイプなので、ロードノイズや段差の衝撃などがダイレクトに体に響く感覚がありました。ただ、こちらも慣れの問題という感がありますし、ダメそうならその時はその時で考えればよいので、まあOK。

左折して小路に入り、店舗に戻る方角へ。途中に上り坂があったので、ギアを下げて坂を上り、ターンして戻ってもう一度上る、という風に走ってみました。

ここはスポーツミニベロの強いところ。クルっと回って、ドカンと立ち上がる。坂も(もちろん力は要りますが)思ったより軽い。思わず「すごい!」と声に出ます。走っていて楽しく、つい何度も繰り返してしまいました。

試乗車を返し、あとは細かい不安点について質問します。一番心配だったのは、メンテナンス。扱ったことのない折りたたみ・多段変速の自転車なので、何か特別なことが要るのかも、と思っていたのです。ですが、最低限としてタイヤの空気圧点検とチェーンの注油をすれば問題はない、とのことで、それならハードルも低いなと安心。

出張の多いビジネスマンが、出張先に持って行って、空いた時間に乗って観光するのに使う事例も多いとのこと。そのくらい、気軽に使える車種だということです。

もう一つ心配だったのが、このお店がどのくらい自転車の扱いに長けているかという点。なにせネット上に情報の少ないマイナー車種。しかもこのお店は自転車専門ではなくアウトドア用品店で、扱う自転車もMTB中心だったので、若干不安に思っていました。ですが、一通りの整備はできるとのことで、自転車担当の方も知識が豊富そうなので、こちらも心配は無用と思いました。

折りたたんだ状態も見てみましたが、やはり小さい。特急列車の荷物置場や、731系以降の札幌圏通勤型車両のドア付近スペースに余裕で置ける感じです。

もうこの車種でいいかな、とも思いましたが、他も見てから決めたいので、別のお店へ。


続いて訪れたのは、「秀岳荘 白石店」。秀岳荘は以前、別のお店でバックパックを買った際にお世話になり、それ以来の訪問。ここもアウトドアのお店ですが、白石店は自転車専門のフロアがあり、ミニベロの品揃えが充実しているようなので、行ってみました。

店内の展示車をいろいろ見てみましたが、それだけではよくわからなかったので、自転車担当の方に「素人だが輪行メインで郊外を走る」という条件でのおすすめ車種を訊いてみました。

それならと紹介していただいたのが、DAHONの"Speed Falco"と、前編で取り上げた動画で知った、Ternの"Verge N8"。いずれも20インチタイヤ、8段変速を備える、本体価格10万円前後の人気車種です。

店舗には各所でしばしば「初心者向け」と言われているブロンプトンも展示されていましたが、今回担当いただいた店員の方は話題に出しませんでした。やはりボクの想定使用条件では、多段変速で軽快に走れる車種が良いようです。

しかし、残念ながらおすすめ車種はいずれも在庫がなく、納期も長くなっているとのこと。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響で部品供給が滞っており、早くても11月、外板色によっては年をまたぐとのことでした。

自動車が東南アジアのロックダウンの影響(+折からの半導体不足)でべらぼうな長納期になっているのは知っていましたが、自転車も自転車で大変なことになっていました。本当に、悪夢のような感染症です……。

"Speed Falco"は試乗車があったので、試乗をお願いしました。

こちらの車種も、漕ぎ出しが軽く、変速の力でスイスイ加速してしっかり速度維持ができます。こんなに走れると知っていたなら、もっと早く始めていたのにな、とさえ思いました。

タイヤは"CARACLE-S スポーツ"とは大きく違います。実は20インチタイヤといっても2種類の大きさがあり、あちらは小さめの"ETRTO 406"、この"Speed Falco"は大きめの"ETRTO 451"。また、タイヤの太さもこちらの方が太いです。その分、比較的安定感のあるしっとりした走りで、長時間乗っていても疲れづらそうと感じました。

折りたたみサイズは、やはり"CARACLE"よりは大きくなってしまいます。十分小さいのでそこまでの問題ではありませんがね。


その次の休み(翌週)に、改めてスペックや納期などを比較し、最終決定へ。

今回購入する車種は、"CARACLE-S スポーツ rev.3"で決定。やはり、「今始めたいんだ!」という思いがあるので、納期の短い車種を選ぶ形となりました。

もちろん納期だけでなく、スペックの面でも納得しての決断でした。

ETRTO451タイヤを備え、価格も安い"Speed Falco"も良い車種で、"Verge N8"も気になります。納期が同じだったとしたら、もっと悩んだでしょう。

店舗に電話して、本体とメーカーオプション(輪行袋など。スタンドはサービスで付けてくれました)を注文。オプションの取り寄せや防犯登録があるので、即納とはいきませんが、在庫車なので次の週には乗れます。

いよいよ、新しい旅人生が始まるんだ……!


納車までの1週間は、毎日ランニングか筋トレをして、落ちている体力を戻し、自転車での長時間走行に備えました。

今までは大概三日坊主に終わっていた運動が、自然と続く。「自転車旅をするための体力づくり」という明確な目的があるので、それに向かってひとりでに体が動くのです。

思った通り、自転車購入をきっかけに運動習慣を付けることができました。まさか、納車前にそれを達成するとは思いませんでしたがね。

そして、7月中旬のある日。地下鉄大谷地駅から徒歩で、再びパドルクラブの店舗へ。

乗る時のコツや注意事項、折りたたみ方やタイヤ空気バルブなど説明を受け、防犯登録のシールを貼ってもらい、現金一括で代金を支払って、これで準備万端。思い立ってから3週間、慎重を身の上とするボクとしてはかなりのスピード購入でした。


それでは改めて、今回購入した自転車を紹介します。

"CARACLE-S スポーツ rev.3"。最大の特徴は、折りたたむと市販スーツケースに収まるという脅威のコンパクトさと、10kgを切る車重。それでいて、20インチタイヤと9段変速を備え、高速走行・ロングライドも可能。「地方を輪行で旅する」という目的に見事に合った1台です。

外板色はレッド・ホワイトから選べましたが、レッドを選択。「この自転車との出会いを、何かを変えるきっかけとしたい」という思いがあったので、普段の自分とは違う色選びにしようと。身のまわりは白・青系が多く、当サイトのデザインもラベンダー色・萌黄色基調ですが、それらとは大きく違うレッドという色を、「自転車旅をする新たな自分」のテーマカラーと決めました。

それまで使っていたシティサイクル(27インチタイヤ)と比べて、漕ぎ出しは当然ですが圧倒的に軽く、ギアの段数が多いので比較的少ない力で速度が乗ります。ある程度のスピードを維持して走るのも、思っていたよりずっと楽です。

折りたたみ・展開の作業も、慣れれば簡単。工具も技術も要りません。


さあ、いよいよ自転車ライフの始まりの瞬間。ここからサイクリングロード(白石こころーど)を経由して、試運転を兼ねて自走で帰宅します。

まだ体が慣れていないので、ちょっと漕ぐだけでも汗が流れます。でも、それがとても心地よい。

ほどなく、「虹の橋」を渡ります。厚別区と白石区の境を越えるこの橋は、この時のボクには、新たな世界へと渡る橋のようにも見えました。

新たな旅を前にした高揚感と、自転車を漕いで風を浴びる開放感で。

思わず、口を衝いて言葉が出てきました。

「どこにでも行けるはずだ。」

※写真は橋を渡り切ってから振り返って撮影。


つ、疲れた……。こんな長い距離漕いだの久しぶりだから、結構キツイ……。

こんな調子で、大丈夫だべか。

今回の出費(交通費除く)

  • 書籍「おりたたみ自転車はじめました」 …… ¥1,540
  • CARACLE-S スポーツ rev.3 …… ¥143,550(現金一括、パドルクラブ会員価格)
  • トレバッグ2(輪行袋)(CARACLE-S メーカーオプション) …… ¥6,732(同上)
  • トレバッグ用ショルダーストラップ(CARACLE-S メーカーオプション) …… ¥1,485(同上)
  • Wellgo M138 QRD(ペダル) …… ¥7,722(同上)
  • 自転車防犯登録手数料(北海道) …… ¥650

合計:¥161,679

総出費(交通費除く):¥161,679

プロローグ

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