JR北海道問題 「5路線5区間」は打つ手なし - ゲニウス(北)の北海鉄旅いいじゃないか
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JR北海道問題 「5路線5区間」は打つ手なし(平成30年8月9日)

JR北海道は現在深刻な経営難にあり、加えて鉄道としての強みを活かしづらい輸送密度2000以下の鉄道路線を大量に抱えています。そのため、「持続可能な交通体系」を目指した事業の再編を進めています。

その中でも一番大きな話題と言えるのが、乗客が極端に少ない5路線5区間の存廃問題です。

「5路線5区間」とは、具体的には次の区間です。

区間平成28年度輸送密度存廃(8月9日現在)
札沼線(学園都市線) 北海道医療大学~新十津川64廃止でほぼ確定
石勝線 新夕張~夕張80平成31年3月31日の運行を最後に廃止
根室本線 富良野~新得152(※1)議論中
日高本線 鵡川~様似186(※2)議論中
留萌本線188議論開始前(!?)

※1……一部災害不通となる前の平成27年度の数値。

※2……災害不通となる前の平成26年度の数値。

いずれも輸送密度200未満という惨憺たる状況で、当然ながらJRの経営を大きく圧迫しています。上表の上2つは表にある通り廃止の方向ですが、残り3区間、下3つについては結論が出ていません(以下、特に断りなく「3区間」と言うとき、上表の下3つを指します)。

しかし、もはやこれ以上の資源の浪費は許されません。残る3区間もすぐに廃止の方針を固めるべきです。

この記事では、3区間の現状を整理し、存続への道筋を示すことがいかに困難であるか、皆さんと再確認していきたいと思います。辛い現実ではありますが、一緒に見ていきましょう。

根室本線 富良野~新得間

まずは3区間で一番輸送密度がヒドい根室本線の富良野~新得間から見ていきます。

根室本線は札幌と道東を結ぶ重要な路線ですが、そのうち滝川~上落合(~新得)間は石勝線に取って代わられ、細々とした地域輸送をメインとする路線となりました。滝川~富良野間は臨時特急「フラノラベンダーエクスプレス」や貨物列車が走り、一応は今でも都市間輸送の役割を持っていますが、富良野~新得間は乗客の少ない普通列車しか走らない寂しい路線となってしまいました。

乗客のほとんどは通学客と考えられます。しかし、平成29年度特定日調査(平日)によれば一番乗客の多い朝通帯の富良野行きで乗客45人と、通学客すらバス1台で運びきれる有様です。災害で一部区間が不通になっているため若干利用が落ち込んでいる可能性はありますが、多く見積もったところでやっぱりバス1台で足りてしまいます。

「広域観光ルート」ならバスの方が適任では?

ところが、一部では存続に向けた議論が始まっているようです。

今、北海道は「観光の時代」に突入しようとしています。道内では、観光客を運ぶための交通の整備が喫緊の課題となっています。

観光輸送で重要なポイントの一つが、「広域観光ルート」の整備です。広い世界をより楽しむために、観光地の間を行ったり来たりできるような交通網が必要とされています。

富良野~新得間は、ラベンダーなどで有名な富良野沿線と、釧路湿原に代表される自然豊かな地域である道東を結ぶことができる路線です。そのため、長距離観光列車のルートなどに活用するため、富良野~新得間を存続させるべきだという意見があります

ですが、観光ルートとして使うためにこの区間を存続させる必要はありません


理由その1。トマムと結んだ方が効率的です。

トマムは北海道でも屈指のリゾート地で、今なお新たな施策などが多くの観光客を呼んでいます。富良野とトマムを直結すれば、非常に便利になり、双方の観光客増加に繋がるでしょう。

根拠はあります。先日、旅行で占冠から富良野に向かうバスに乗った(その時の旅行記はまた後日)のですが、占冠村民向けのバスなのに外国人観光客が1組乗ってきました。聞けばトマムからバスを乗り継いで来たとのこと。現状の不便なバス網でさえ、富良野~トマム間の利用があります。バス網を整備すれば利用が大きく伸びる可能性は、じゅうぶんにあります。

また、トマムと結ぶことで石勝線と連絡でき、普通列車(または代行バス)でちんたら日高山脈を越えるよりもはるかに効率よく富良野沿線と道東を結ぶことができます。

よって、鉄道を廃止し、代替バスは元々のルートにこだわらず、たとえば「富良野~金山~幾寅~落合~トマム」のようなルートで運行する方が、鉄道を無理に存続させ、しかも復旧のための費用をかけるよりも合理的だと考えます。

理由その2。長距離観光列車を通す必要はありません

路線がなくても、観光列車のための車両を2編成用意し、鉄道のない区間をバスで繋げば、観光ツアーとして成立させることができます。

詳しくは、過去記事「釧網本線は『全線』維持すべきか?」をご覧ください。

迂回路としての役割も期待できない

観光面だけでなく、石勝線の迂回路として存続させるべきという意見もあるようです。

ですが、富良野~新得間は迂回路として残すべき路線とは言えません

第一に、石勝線経由に比べて札幌~新得間の距離が長すぎます。石勝線経由の176.4kmに対して、滝川まわりだと219.8km。40km以上の遠回りになってしまいます。距離の短い函館本線の「山線」(小樽~長万部)とは、ワケが違います。

第二に、そもそも「何のための迂回路なのか」が分かりません。「山線」は、「有珠山」という明確な脅威に対する迂回路であるからこそ、意味があります。ですが「石勝線の迂回路」にはそういった「仮想敵」がありません。地震だとしたらむしろ路盤の緩い富良野~新得間の方が問題でしょうし、火山にしても気象庁が観測している活火山は石勝線沿線にはありません。水害については今現在起こっている現実の通りであり、脱線事故があったとしても数日で復旧するまでの代替交通(バス・トラック)を確保すればそれで足ります。

こうして見ると、「迂回路」論にはまったく理由がないことが分かります。

日高本線 鵡川~様似

続いて、北海道屈指の長大ローカル線・日高本線です。現在は鵡川~様似間が平成27年の災害の影響で不通となっており、路線の需要がかなり少ないことから復旧させずに廃止させることが考えられています。

国鉄時代は札幌直通の急行が走っていたこともありますが、近年は臨時快速「優駿浪漫号」を除いては札幌直通列車は走っておらず、札幌に向かう交通としてはもはや選ばれていないと思われます。苫小牧への交通としては一応利用されてはいますが、その数はかなり少なく、もはや都市間輸送を担っているとは言い難い状態です。

日高地方は札幌からの時間距離が長く、交通に恵まれない地域です。だからこそ、少しでもスピードのある鉄道を何とか残せないか、と考えた時期がありましたが、正直に言うとかなり難しいです。

苫小牧~鵡川間も含め全線廃止が妥当

もう少し詳しく見てみましょう。

まず都市間輸送ですが、苫小牧~静内間は災害不通前の所要時間が路線バスよりも約1時間速く、土休日は増発もあったことから、一応は都市間輸送を担っていた路線です。

しかし、その絶対数はきわめて少ないです。定期外旅客は代行バスが1日30人程度で、資料から推測するに不通になる以前でも多く見積もって100人強しかありません。都市間路線としては、あまりにも細すぎます。

静内~様似間については、もはや言わずもがなです。

次に通学輸送。主に苫小牧~日高門別、静内~富川、静内~本桐、東町~荻伏などで利用されています。

しかし、最もボリュームの多い苫小牧口でも、平成29年度特定日調査(平日)によれば4222Dが21人、2224Dが183人です。204人ならバス3台で運べます。他の区間でも、災害不通前でさえバス1~2台で運べる程度しか利用がありません。

輸送密度で見ても、鵡川以東は先述の通り200未満、苫小牧~鵡川間でも平成25年度(災害の影響がない年)で676と、通学のためだけに路線を維持できる水準とは言えません。

したがって、苫小牧~鵡川間も含めて、日高本線全線を廃止することが最も合理的、という結論に至らざるを得ません。災害復旧のための莫大なコストをかけてまで復旧する価値があるとは、到底言えません。

日高門別部分復旧もかなり厳しい

「日高本線の線路被害」と言っても区間ごとに様々で、最も大きな被害があったのは豊郷~大狩部間です。

言い換えれば、被害が軽い鵡川~日高門別間の復旧には、そこまで大きなコストはかかりません。

この点を突いて、日高町は鵡川~日高門別間だけの復旧という案をテーブルに乗せました。

富川・日高門別から苫小牧へ通学する乗客も一定数おり、復旧が実現すれば苫小牧口の利用促進にも繋がるでしょう。

しかし、先述の通り平成25年度の苫小牧~鵡川間の輸送密度が676しかなく、部分復旧が実現してもこの数字を上回る実績は期待できません。やはり存続は厳しいと考えざるを得ません。

なお、部分復旧案について「平取町から苫小牧へのアクセス整備」が謳われていますが、乗り換え無しの道南バス「特急ひだか号」を整備した方がどう考えても合理的です。スピードを上げたいなら、日高自動車道を使えばいいのです。鉄道を使って平取の交通を整備するというのは、ちょっとズレています。

DMVは無意味、かつ北海道では不可能

日高本線の復旧案として、DMVの開発を再開し、被害が著しい区間は道路を、それ以外は線路を走ることで復旧するプランが提示されたことがあります。

ハッキリ言っておくと、DMVは全くの無意味であり、かつ北海道での実用化は不可能です。

DMVはマイクロバスをベースにしており、輸送力はほとんどありません。DMVで足りる程度の需要しかない路線は、そもそもバス転換されるべきです。わざわざ線路と道路の両方を走る必要など全くなく、全区間で道路を走ればいいだけの話です。

また、DMVは鉄道車両としてはずば抜けて軽いので、「雪に弱い」「踏切が反応しない」など様々な課題があります。実用化への道筋はあまりに遠く、特に北海道では雪に弱い点があまりに痛手で、実用化の可能性はゼロと言って過言ではありません。

紙面の都合で簡単な説明に留めます(詳細はまた別の機会に)が、とにかくDMVはありえません。考えられません。

「じゃあBRTはどうだ」という向きもあったようですが、目玉が飛び出るような額のお金がかかるようで、こちらも厳しいです。素直にバス転換するより他に選択肢は無いようです。

留萌本線

3番手は留萌本線。留萌地方の中心である留萌に繋がっている路線です。

留萌本線は北海道の漁業・鉱業とともにあった路線で、かつてはニシン漁で栄えた留萌からの海産物や、羽幌の炭鉱で採れた石炭を運び、貨物輸送に大きな役割を果たしました。留萌の漁業の衰退と羽幌炭鉱の突然の閉山(採掘中に断層発見、取引先倒産と不幸が重なったため、エネルギー革命の折鉱員に不安が走り大量離職という事態になったらしいです)などによりその存在意義の大部分を失いました。

連続テレビ小説「すずらん」で一時ブームになった時期もありましたが、現在ではブームも去り、寂寥感あふれる零細路線に成り下がってしまっています。

なお、5路線5区間で唯一、沿線自治体が議論のテーブルにすら着いていません。どういうことなの……。

都市間輸送でバスに惨敗、地域輸送もか細い

では検討開始。都市間輸送からいきましょう。

留萌本線は深川で函館本線に接続し、札幌・旭川と留萌を結びます。

しかし、対旭川はフリークエンシーでバスに敗れているうえ、旭川~留萌間直通の1本を除いて深川での乗り換えが必要なため、(乗り継ぎが良ければ)バスよりも速いという武器をスポイルしてしまっています。

対札幌では所要時間面での優位は全くなく、乗り換え1回で完敗という感じ。

鉄道の定期外旅客を見ると、平成28年度の1日あたり平均で、大和田~留萌間が142人。しかもこの数字からは留萌~増毛間廃止に伴う「特需」を割り引く必要があります。ここからも惨敗ぶりが見て取れます。

同時に、札幌・旭川~留萌間の都市間輸送のボリューム自体がかなり少なく、仮に旭川直通便増加や札幌方面特急との接続改善などを行ったとしても効果は期待できないことも物語っています。

留萌本線は函館本線の培養としての役割を果たし得るとは言い難く、都市間輸送としてはほぼ「死に体」の状態です。

都市間輸送を除いた残りのうち、ほぼ100%を深川~石狩沼田間の通学輸送が占めています。十数年前に起きた「秩父別事件」を見てわかるように、一定の通学需要があることは確かです。

しかしながら、通学時間帯の上り2本の利用者は、平成29年度特定日調査(平日)によれば計121人。「秩父別事件」の頃からだいぶ減ってしまったようです。当時ですら単行の列車が2本で何とか運びきれていたのが、さらに減ってしまい、今ではバス2台で運びきれる数しか残っていないのです。

3区間の中では一番輸送密度が高い路線ではありますが、それでも路線を残せる次元ではないのは確かです。

沼田町の利用促進策は評価できるが焼け石に水

深川への通学客の多い沼田町は、何とか路線を存続させようと、行動を起こしています。

学生以外の利用を掘り起こすために、沼田の商店街で一定額以上の買い物をすることを条件に、深川までの回数券の配布を行うキャンペーンを実施したそうです(現在は終了していると思われます)。

路線維持に向けて具体的に行動を起こした自治体はきわめて少なく、早くから行動を起こした沼田町の姿勢は高く評価できます。

内容としても、百害あって一利なしの「秘境駅」を持て囃し、「利用者」とは到底呼べないような者ばかりを呼び込む某自治体とは大きく異なり、町民の利用を促進するための企画であり、素晴らしい取り組みだと思います。

ですが、残念ながら焼け石に水と評せざるを得ないでしょう。

深川~石狩沼田間は、留萌本線の総延長のうちわずか28.7%に過ぎません。その区間だけ利用を促進しても、効果はどうしても薄くなってしまいます。

また、鉄道は都市間輸送に向いた交通機関ですから、深川~留萌間の都市間輸送を伸ばさなければ、鉄道の強みを活かした経営はきわめて難しいです。短区間の利用を促進したところで、結局は「バスでいいじゃん」で片付いてしまいます。

沼田町がひとりで頑張ったところで、留萌までの路線をすべて守ることは絶対にできません。沼田までの部分存続となるとさらに難しく、輸送量が半減する中での苦しい運営を余儀なくされてしまいます。

頑張っている自治体に水を差すのはとても心苦しいのですが、「ムダな抵抗はやめなさい」という結論にどうしてもなってしまうことをご理解ください。

なお、文句ばかりを言う一方で具体的な行動を何一つ起こさず、JRの提案にも耳を貸さないような自治体については、何も言うことはありません。

以上より、3区間を含めた「5路線5区間」については、もはや都市間輸送の需要が皆無またはあまりに細く、通学輸送もバスでじゅうぶん、という状態で、他に存続を主張するに足る合理的な理由は見当たりません。

JRが検討しているように、5路線5区間は廃止・バス代替するより他になく、鉄道としては維持できない、というのが当サイトの結論です。

さらに言うと、5路線5区間以外の「単独維持困難路線」についても、一部は廃止せざるを得ない路線・区間もあるでしょう。

単に赤字黒字の問題ではありません。廃止という結論は「その路線・区間が鉄道としての役目を既に終えている」という厳然たる事実から導き出される唯一の解であって、よしんばJR北海道が黒字会社であったとしてもいずれは(労働力不足などの他の理由により)廃止される日がやってきます。

鉄道ファンや沿線住民の皆さんにとっては、直視しがたい状況であることは分かっています。しかし、他に方法がない以上、受け容れていただくしかありません。

人間は、辛い現実をすぐに飲み込むことはできません。最初は大きく動揺し、反発し、受け入れまいとあらゆる策を打ちます。でも、やがては諦め、避けがたい現実を受け入れる準備を始めるのです。

今日すぐに受け容れろとは申しません。ゆっくり、冷静になって考えてみてください。この記事の言わんとするところを飲み込み、受け容れた時、この世界は次なるステージへと歩を進めるでしょう。

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