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北海道新幹線迷開業事④ 高額料金の検討から見る北海道新幹線の本質(平成28年2月6日)

久々に北海道新幹線シリーズの続きを出してみます。今回やっと新幹線の話に入ります。

第4回は最高速度の話をするつもりでしたが、特急料金が決まったようなので、先にそちらのお話をば。

北海道新幹線の料金が発表されましたが、報道やネットで聞かれる声は、「高い」という声ばかり。

まあ実際高いワケですが、一旦立ち止まって妥当かどうか検討してみましょう。

高額料金は妥当か?

料金が高いかどうか考える前に、前提となるお話を一点。

受益者負担の原則というものをご存知でしょうか。字面でわかる通り、ある財・サービスを提供するにあたって、その受益者に財・サービスの対価を求めるという原則です。

この受益者負担の原則について、二点ほど掘り下げてみます。

まず、受益者負担の原則は、一般的には公共財には適用しないものとされています。ただ現在では適用すべきとの考えもあり、地方自治体では広まりを見せているようです。

ここでポイントなのが、新幹線は公共財なのか、ということ。

誤解のないように説明すると、公共財とは「競合性や排除性のない財」のことです。つまり、そのサービスが消費されたぶんだけ他の人がそれを受けられなくなるという条件と、受益者はサービスを受けるために必ず対価を払わなければならない(フリーライドできない)という条件のふたつが満たされていれば、公共財とは言えないんです。

字面で誤解しそうな概念ですが、決して「公共的な財」を指すものではありません。まあ「公共財」の多くは「公共的な財」なんですがね。

で、新幹線は「特急列車」ゆえ座席数や列車本数に限りがありますから競合性が存在しますし、改札というシステムがあるので道路(下道)と違って排除性も高いです。したがって新幹線は「公共的な財」ではありますが「公共財」ではありません。したがってこの点から受益者負担の原則の当てはめを否定することはできません。

※以上の「公共財」についての説明は平成28年11月27日に修正しました。議論の大筋に影響はありません。以前の説明に間違いがありましたことをお詫び申し上げます。

もうひとつ、受益者負担の原則は「限界効用」を前提とした考えなんだそうです。つまり、「そのサービスを良くしても、もはや社会全体には効用はない」という立場が前提なんです。

ゼロ成長時代と言われる現代にまさに適合した考えではあるまいか、などと思うわけですが、さておき。

ここから、少なくとも「あるプロジェクトによって社会全体に影響が及ばないときは、受益者負担の原則があてはめやすい」と言えるのではないでしょうか。

たとえば教育は社会の地力アップに不可欠なもので、教育をコツコツやることが社会全体の利益に直結しますが、ローカル線の維持は沿線の衰退を緩めこそすれ、社会全体からすると必ずしもプラスではありません。後者の方がより受益者負担の原則に馴染むワケです。

ここで北海道新幹線を見てみます。

まず利用者の動きの予測。どうやら、高い高いと言われるほどの特急料金を課しても、なお赤字が予測されるようです。ここから何が言えるか。

冷静に現状を分析すれば、答えは見えてきます。

現状でも新青森で新幹線と特急白鳥を乗り継ぐ客が多く、一方で所要時間がアクセス快速込みで最速でも4時間29分ですから新規利用者の開拓も難しいです。よって、影響するのは既存の利用者+αの所要時間短縮くらいのもので、推進派が経済効果などという胡散臭い概念を振りかざして主張するような効果はないはず。

なので、その受益者こそが速達化の対価を払うべきだという考えは割としっくりきます。この論点からも、受益者負担の原則を排除することはできません。

こうして見てみると、受益者負担の原則は北海道新幹線に十分当てはめ可能といえます。

以上を前提に料金が妥当か見てみます。まあ既に結論出したようなものですが。

北海道新幹線には受益者負担の原則を当てはめ、受益者の利益とJR北海道の収益が最も吊り合う地点に料金を設定すべきということになります。

まさかJR北海道がみすみす収益を減らすような設定をするわけがないので、おそらくは最も損失の少なくなるだろう料金設定にしたんだと思います。

つまり、利用客の少なさ・酷寒および青函トンネルという特殊な環境・車両が少数派になることによる追加の費用(少量多品種はメンテナンスコストがかさむ)を考えると、高いからと一部利用者に敬遠されても、残った利用者からタップリ料金をもらった方がいいという判断があるのでしょう。

したがって、利用者はこの高額料金を受け入れるべきだと考えます。

高額料金に見る北海道新幹線の本質

ここまでの議論から、北海道新幹線はJR北海道・沿線地域のどちらにもプラスの効果を期待できない、ということが理解できましょう。

前述の通り、北海道新幹線はこれほどの高額料金にもかかわらず赤字マシーンです。であるからして、JRは新幹線の運営者でありながら同時に産廃を押し付けられた被害者でもあるんです。

また、所要時間が4時間を大きく越えることから東京~函館間の輸送における市場拡大もありえません。ということは、土建業以外の産業の発展にも繋がりません。

まして、函館から遠く離れている、札幌をはじめとした道内の他地域には、スズメの涙ほどの効果もありません。函館エリア以外は、たとえ同じ北海道であっても、明らかに北海道新幹線の沿線ではありません。よって、東急田園都市線の乗客増が歌志内市の人口を増やすことには繋がらないのと同様に、北海道新幹線が函館エリア以外に影響をもたらすことはありません。

こうした点を考慮することなく、本質からどっぱずれた議論をしている人たちがいる。それが実態です。

新幹線万能論のような意見が多々ありますが、彼らは「4時間の壁」を理解していませんし、交通需要と地域発展との相関関係を無視しています。同じ北海道だからと函館や札幌、それに根室や稚内をも十把一絡げにしている議論が散見されますが、先述の通りくだらない議論です。

言ってみるなら、某ゲームをプレイする際に、「レベルを上げて物理で殴る」という原理原則を無視して、ゲームの攻略に無関係な魔法やタイプ相性の議論をしていて、あまつさえ「そもそもそのゲームを買う必要があったのか」という話をまともにしていない、といった感じ。これこそが、北海道新幹線の本質です。

あえて極論すると……

以上の議論をあえて無視して、極論を申し上げます。北海道新幹線の料金は安すぎます

受益者負担とはいいますが、そもそも北海道新幹線の本当の受益者は誰でしょうか

当然、赤字が増えるJRでも、何の恩恵も得られない沿線でもありません。究極的に言えば、それは新幹線という利権を手に入れた政治家であり、官僚であり、建設に関わった業者たちです。

「我田引鉄」という言葉が古くから用いられていることからわかる通り、鉄道というものはいつだって政治家などの思惑で引かれてきました。

実際の需要があろうがなかろうが、それは関係ありません。すべては利権のため。そうでなければ、人が乗らないとわかっている鉄道路線を、あんなに頭のいいセンセイ方が引くワケがないですもの。

戦後日本においては、さらに官僚支配とその腐敗が様々な問題を招きました。にもかかわらず、彼らはその体質を改めようとしません。目の前にニンジン(=利権)をぶら下げられては、前以外に進む選択なんてありえないからです。かくして鉄建公団の赤字路線乱発や整備新幹線の増殖が進んでいきました。

実際の需要があろうがなかろうが、それは関係ありません。すべては利権のため。そうでなければ、人が乗らないとわかっている鉄道路線を、あんなに高学歴のお役人様方が引くワケがないですもの。

もう言いたいことはおわかりでしょう。

政治家や官僚、それに彼らに取り入ることができた土建業者は、新幹線の建設によってタンマリと利益を得ています。彼らが利権を貪る一方で、ただでさえ苦しいJR北海道は赤字マシーンがひとつ増えてさらに苦しむことでしょう。

ならば、一番の受益者である、利権を手に入れた政治家・官僚などにこそ、新幹線のランニングコストを負担させるべきです。

少なくとも彼ら「受益者」については、1回の乗車につき十万~百万単位の料金を、それもポケットマネーから支出することを強いるべきで、さらに競合する交通機関の利用も禁止すべきでしょう。

暴論なのは重々承知です。でも、極端な話をするならば、それこそが本来あるべき姿ではないでしょうか。

結びに代えていまさらご注意

ここまで散々書いた後で何だ、というお話ですが、今回の記事は(というか今回も)ネットの情報のみを参考にしていることに注意してください。

ただ、手前味噌にはなりますが、皆さんがこの問題を考える参考にはなると思っています。この記事はあくまで出発点として、自由に考えていただきたいのです。無関心こそがこういう問題を引き起こすのですから。

採算すら怪しいと思われる、いわく付きの新幹線、北海道新幹線。

当然と言いますか、その周辺には様々な迷要素が存在しています。

この連載では、北海道新幹線の開業を前に、それらのおかしな要素を取り上げ、狂いつつある北海道の交通をネタにしていきます にスポットライトを当てていきます。

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