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【お詫び】記事「ローカル駅の移転は春風を呼ぶか? ~『名寄高校駅』誕生!~」における重大な誤りについて

令和3年(2021年)5月29日に公開した拙論「ローカル駅の移転は春風を呼ぶか? ~『名寄高校駅』誕生!~」において重大な誤りがあったことが判明いたしました。

当該記事については修正作業を行っており、これに伴いまして内容が大幅に変更となっております。なお、論旨につきましては修正前と概ね同様です。

誤りの詳細につきましては、以下に詳述いたします。

誤りのある内容を1年余りにわたって掲載してしまい、記事をご覧の皆様に多大なご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます。

記事の誤りについての詳細

考察の前提として設定した条件における重大な誤り①

1.概要

「名寄高校の登下校時刻」の仮定が大きく誤っておりました。

2.詳細

「名寄高校駅」が名寄高校への通学にどのような影響を及ぼすかについて考察するため、その前提となる「名寄高校の登下校時刻」について仮定を置きましたが、資料を精査することなく、月曜日から金曜日まで下校時刻が一定であると仮定しました。

しかし、実際には金曜日のみ下校時刻が異なると考えられます。つまり、月~木曜日と金曜日で、最適な列車時刻が大きく異なることとなります。

この誤りにより、JRで名寄高校に通学する場合の時間面での便益を過大評価していたほか、記事後半で掲載している「新駅の利便性を上げるための列車ダイヤ私案」が実態を反映しないものとなっておりました。

3.原因

収集したデータを十分に精査しなかったことが原因です。

名寄高校のカリキュラムが高校Webサイトに掲載されているにもかかわらず、その内容をきちんと確認していなかったため、授業数が曜日により異なることを見落としました。また、通学バスが金曜日のみ異なる時刻で運行されている事実を把握しながら、授業数ではない何らかの要因によるものと決め付け、十分に理由を精査しませんでした。

管理人が通っていた高校が曜日にかかわらず同じ授業数であったこともあり、記事公開までに誤りに気付くことができませんでした。

4.誤りが発覚した経緯

名寄高校駅が開業後、あらためて駅について特集する記事を制作することを企画し、それに向けて資料を再度確認している際に、資料の誤読に気付きました。

考察の前提として設定した条件における重大な誤り②

1.概要

「名寄高校の部活生の帰宅時刻」について考慮すべきところ、考慮することなく検討を行っておりました。

2.詳細

名寄高校駅の効用について検討するにあたり、「部活などがない場合」の登下校時刻の仮定のみに基づいて、効用を検討しました。部活の時刻は部ごとに様々で、仮定を置くことが困難だと考えたためです。

しかし、名寄高校のWebサイトの情報、および通学バスの時刻からおおよその予想が可能でした。それに気付かずに上述の判断を行ったため、JRで名寄高校に通学する場合の時間面での便益について十分な考察ができていませんでした。

この判断ミスにより、JRで名寄高校に通学する場合の時間面での便益を過大評価していたほか、記事後半で掲載している「新駅の利便性を上げるための列車ダイヤ私案」が実態を反映しないものとなっておりました。

3.原因

先述のミスと同様、収集したデータを十分に精査しなかったことが原因です。

4.誤りが発覚した経緯

上記の誤りに気付き、対応を検討すべく資料を再度確認している際に、資料の確認不足に気付きました。

考察の前提として設定した条件における重大な誤り③

1.概要

「名寄市中心部から名寄高校への通学」についての考察において、コミュニティバスによる効用についての検討に誤りがありました。

2.詳細

名寄市中心部から名寄高校への通学においては、通学バス(駅移転後はJR)のほか、名寄市街を走行する「なよろコミュニティバス」の利用が想定されます。高校最寄りのバス停は「徳田17線」です。

しかし、このバスが通学に利用されるケースを想定しなかったため、通学バスが廃止された場合の市中心部から高校への移動手段が「JR」「道北バス」「徒歩」の3つしかないという誤った前提を置いてしまいました。

このため、名寄駅から離れた場所からの通学について、実際にはコミュニティバスを利用できる場合が多いにもかかわらず、バスが使えず徒歩移動を強いられるという仮定を置いてしまいました。

この誤りにより、名寄市内から名寄高校に通学する場合の利用者便益を過小評価しておりました。

3.原因

バスでの通学について、「名寄高校前」バス停の利用以外を考慮しなかったことが原因です。

4.誤りが発覚した経緯

上記2つの誤りに気付き、対応を検討すべく資料を再度確認している際に、資料の確認不足に気付きました。

利用者便益の算定における重大な誤り

1.概要

「名寄高校への通学における移動快適性」について、駅移転による徒歩移動距離短縮の影響を過小評価しておりました。

2.詳細

名寄高校駅が開業することによって、雨天・冬季に風連および名寄市外からJRで名寄高校に通う場合における徒歩移動の距離が大きく減少します。従来だと東風連駅から高校まで約1.5km、または名寄駅から高校まで約2kmを歩く必要がありましたが、新駅から高校まではほとんど歩きません。

そのため、長距離の徒歩移動を強いられるケースが大きく減り、特に積雪期において移動快適性が上がることとなります。

しかし、この点を十分に考慮せず検討を行ってしまいました。

この誤りにより、JRで名寄高校に通学する場合の移動快適性便益を過小評価しておりました。

3.原因

費用便益分析について十分な理解をしておらず、移動快適性について正当な評価ができませんでした。

4.誤りが発覚した経緯

国交省の費用便益分析マニュアルを再確認した際に、誤りに気付きました。

供給者便益の算定における誤り

1.概要

「駅移転による運賃収入の増減についての考察」において、消費税を減算するのを失念しておりました。

2.詳細

駅の移転に伴い、乗客が他の交通機関に転移したり、乗車距離が変動したりするため、JRおよびバスの運賃収入に変化が起こります。

この点について考察をした際、利用者が支払う運賃から事業者の収入とならない消費税を差し引くべきところ、その処理を忘れてしまい、消費税込みの金額のまま計算してしまいました。

この誤りにより、供給者便益を過大評価しておりました。

3.原因

単純なケアレスミスです。

4.誤りが発覚した経緯

国交省の費用便益分析マニュアルを再確認した際に、誤りに気付きました。

誤りが発覚したことへの対応について

名寄高校駅が無事に移転開業したことを受け、令和4年(2022年)4月中旬に新記事制作の検討を始めましたが、その際に上述の「登下校時間」に関する資料の誤読がある可能性があることがわかりました。

精査した結果、資料の誤読が明らかとなり、他にも複数の誤りがあることが判明したため、5月13日に取り急ぎTwitterにその旨の告知を行ったほか、記事冒頭にも注釈を付して告知を行いました。(なお精査に時間がかかっておりますが、年度始などのため作業時間が十分に確保できなかったことによるものです。)

その後あらためて駅移転の効用・不効用について考察を行い、記事の内容に落とし込んだ上で、7月20日に修正版および本記事を公開いたしました。


原因はいずれも「資料の誤読・確認不足」「費用便益分析における知識・理解の欠如」など、管理人自身の取り組みが不足していたことです。

自分の至らなさが原因で、重大な誤りをいくつも犯してしまいました。結果として論旨がほぼ変わらなかったとはいえ、不正確な内容を掲載してしまったことに変わりはなく、深く反省いたしております。

記事をお読みくださった多くの皆様をはじめ、駅移転事業を主導された加藤剛士名寄市長、事業に取り組まれた名寄市・JR北海道の関係者の皆様、また名寄高校・名寄産業高校に通われる学生の皆様に、多大なご迷惑をおかけしてしまいました。

改めまして、この度は誠に申し訳ございませんでした。

記事差分

以下、ご参考まで修正前の記事の本文を掲載いたします。

(前半部は変更がないため省略)

新駅によってもたらされる便益

さあ皆さん、始めましょうか。楽しい分析の時間です。ほらそこ嫌がらない。分析なしにその場の思い付きで打開できるほど世の中は甘くないよ!

過去記事で何度もやってきたのと同様に、主に利用者にとってのメリットを洗い出す方法で、新駅の効果を考えていきます。

まあ、ボクは素人なので専門知識に基づいた分析はできませんから、「なんちゃって利用者便益分析」って感じにはなっちゃいますがね(苦笑)

便益いろいろ

長くなるので、まずは簡単なまとめをどうぞ。

項目概観効用不効用
利用者通学時間全体的に短縮市外からは時短市内からは通学バス利用より通学時間延びる
利用者増加確実に増加市内利用中心に増加-
所要時間
(名寄高への通学以外)
所要時間が増加-都市間でのJR利用などが若干不便に
金銭的負担日あたりの平均の負担は減るが、合計は増加か風連・市外からの場合は同程度、または負担減名寄市街からの場合は場所により負担増
利用回数増による負担増も
乗り換え回数減る人の方が多い市外からの場合は減少市内からの場合は同じ、または増加
冬季の徒歩移動距離増える人も減る人も市外からの場合は減少市内からの場合は増加する人が多い
供給者営業収益は増加JRは収入増
バスは収入減も費用減でトントンか
-
その他環境等改善便益あり交通事故削減による便益
送迎の減少による環境便益など
-

前提① 新駅に合わせたダイヤ調整への期待

便益は駅の場所だけでなく、駅に何時何分に列車が来るかで変わってきます。

おそらくJRは、新駅の利用を見込み、駅の移転に合わせて列車の時刻をある程度調整するでしょう。それを念頭に分析していきます。

具体的な予想もしてみます。

下り予想時刻
列車名普通(321D)普通(327D)
現行予想現行予想
旭川発6:036:0313:5914:32
和寒発6:526:5214:4815:20
士別発7:127:1715:0415:36
風連発7:297:3415:1915:56
7:357:4215:2316:02
名寄着7:407:4515:2816:05
上り予想時刻
列車名快速なよろ2号普通(326D)
現行予想現行予想
名寄発7:517:4916:3016:15
7:5316:18
風連発8:008:0016:3816:25
士別発8:138:1316:5216:39
和寒発8:328:3217:1016:57
旭川着9:219:2117:5317:40

※=現行ダイヤは東風連発、予想ダイヤは名寄高校発

このような形で、名寄高校の登下校に少しでも合わせるのではないかと。

ただし、なよろ2号は新駅の停車時間確保のための名寄発車時刻繰り上げのみと予想。これは、時刻を名寄高校に合わせて繰り下げると、今度は士別への通学に不便になるためです。

これ以外の列車でも、新駅の停車本数が増え、それに伴って細かい時刻変更があると予想します。

なお、327Dは特急サロベツ4号との兼ね合いがあり、下校時間にこれ以上合わせるのは無理と判断しました。

また、名寄16:39発の音威子府行き(4329D)は、士別に通う学生が使っているであろう快速なよろ3号との接続をとるため、時刻は変わらないと予想。

※この前提条件は「誤った登下校時刻の想定」を基にしたものであったため、修正後記事では削除しています。

前提② 通学バスは廃止か?

既存の交通にも変化があると考えられます。

特に大きな影響を受けるであろう交通が、通学バス。利用客を失い、廃止となると考えられます。よって、それを前提に考察を行います。

朝日新聞の報道によると、名寄市は平成30年(2018年)に高校生にアンケートを行い、「現在JRを利用していない学生で、新駅ができたらJRを利用したいと答えた人が、冬季・雨天時のみの利用も含め52名」という結果を得ています。

……朝日新聞の報道姿勢を見ていると、この情報は本当なのか、という疑問が湧いてきます。ただ、先述の現地調査やデータからしても突飛な数字ではないので、とりあえず信用します。

アンケート実施時点以降の学生数減少を織り込んでも、JR利用者が30~40名規模で増えることになります。

この新規利用者は、ほぼ全員が名寄市内からの通学で、大半が中心部在住で通学バスから切り替える人だと考えられます。(市外からは既に大半がJR通学なので、JR利用は増加しようがありません。)

通学バスの利用者のうち、名寄市内からの利用は40名程度だろう、と先ほど言いました。となると、その大半がJRに移るということになります。

当然、美深方面在住の利用者も通学バスを使わなくなります。JRで直行できるのに、通学バスを使う意味などありません。

以上から、通学バスは乗客のほとんどを失うでしょう。残る需要も、市内を走るコミュニティバスとJRの乗り継ぎで対応できるので、通学バスは廃止した方が合理的、というわけです。

通学時間の短縮効果

以上を念頭に、詳しく検討を始めます。まずは一番基本の「所要時間」から。名寄高校への通学時間がどれくらい変わるのか、出発地ごとに場合分けして見てみましょう。

名寄中心部から

名寄中心部からの通学手段は主に自転車。新駅開業後も同様の傾向になると予想します。したがって、通学利用は自転車が使えない冬季と、雨天の日が中心となるでしょう。

名寄駅の徒歩圏内であれば、JRに乗って1駅。通学バスは駅から学校まで10分かかっているようですが、JRなら3分程度で着くでしょう。片道あたり7分も短縮……

と、一筋縄でいく話ではありません。

乗車時間が短くなっても、家を出る時間、家に着く時間が変わらなければ、「便利になっていない」と思う人が多いでしょう。

朝の列車は現行ダイヤでも名寄7:51発で、先述の通り来春からは7:49発に繰り上げと予想。通学バスは名寄8:00発なので、今よりも11分早く駅に行く必要があります。帰りも通学バスよりは名寄駅到着が遅くなるでしょう。

市街地南西部だと、さらに問題が。現在の通学バスは名士バス本社始発なので、市街地南西部からのアクセスが容易ですが、通学バスが廃止されれば地区によっては駅までけっこうな徒歩移動、またはコミュニティバスとJRとの乗り継ぎをすることになり、通学時間が伸びてしまいます。

通学バスの名士バス本社発は7:55。しかし、コミュニティバスが近辺を通るのが7:30ころ。単純計算25分ほど早起きすることとなります。

もっとも、名寄中心部の大半が駅徒歩圏内なので、コミュニティバスを使わざるを得ないほど不便になる場所は決して多くありません。

冬季以外だと間違いなく改善になります。現状は冬以外に通学バスがないので、雨の日には親などに送ってもらえない場合、合羽を着て自転車で強行するか、時間的に不便な道北バス名寄線を使うか、延々歩くことになるかと思いますが、JRがあればかなり楽になる人が多いでしょう。

風連・士別方面から

南の方面からJRで通っている学生は、現状だと東風連または名寄から自転車などで高校に行くことになりますが、新駅ができれば高校前までJRで直通できるようになります。ですが、こちらも中心部と同様で、実質的な通学時間こそが重要。「歩く距離が減った分がまるまる時間短縮になる」と簡単にはいかないわけです。

とはいえ、JRのダイヤ次第ですが多少の時間短縮は期待できます。

風連からの通学については、名士バス風連線がちょうどいい時間に設定されており、JRより時間面で便利です。ただJRの方が定期が安いので、冬季はバス利用者がJRに移ると思います。そうなると、時間的には損になります。

美深方面から

反対の美深方面からも、列車の時刻を調整すれば通学時間を短縮できます。

ただ、士別の高校への通学も考慮する必要があると思いますので、結局はほとんど調整が効かず、時短は見込めないでしょう。

市外からの通学時間は、士別方面からは多少短縮が見込めますが、美深方面は望めません。

名寄市内からは、冬以外の雨天時は公共交通が不便な状態が解消され大きく改善。しかし一方で、冬は通学バスと比較して時間面では便利になるとは言い難く、むしろ後退とも言えます。

「便利になる」と一概に決めつけてはいけません。さっき言った通り、家を出る時間が変わらなければ仕方ありません。それに出発地によってこれだけ事情が異なり、逆に不便になる人もいます。

全体を合計すればプラスになるのは間違いありませんが、大きな改善にはならないでしょう。

※先述の通り「誤った登下校時刻」が前提となっているため、修正後記事では内容を大幅に変更しています。

金銭的費用の変化

駅の位置が変わったり、使う交通手段が変わったりすれば、交通機関に支払う運賃も違ってきます。どんな風に変わるか、以下にまとめてみました。

なお、名寄高校駅の営業キロは「現在の東風連駅より1.6km稚内寄り」と仮定して計算しています。

また、名士バスの詳しい運賃の情報がネットに上がっていないので、わかる範囲でのみ記載します。

出発地想定交通手段
(現在)
定期運賃
(現在)
想定交通手段
(新駅開業後)
定期運賃
(新駅開業後)
差額負担
名寄中心部徒歩・自転車¥0JR¥3,440+¥3,440
通学バス(冬)
バス+JR¥3,440+バス
風連JR¥6,620JR¥5,690-¥930
自転車¥0+¥5,690
バス
多寄JR¥9,040JR¥8,000-¥1,040
士別JR¥10,250JR¥10,240-¥10ほぼ同じ
智恵文JR¥9,040JR¥9,660+¥620
JR+通学バス(冬)¥9,040+バス+¥620-バス
美深JR¥10,250JR¥10,410+¥160(微)
JR+通学バス(冬)¥10,250+バス+¥160-バス

※定期券は通学1ヶ月、高校生の場合で計算。


JRの定期券は割引率が高いので、新駅開業後にバスを使わなくなる場合、大きく負担が減ることになります。バスよりJRの方が所要時間面で不利なのに、新駅の利用希望者が多いのは、この点によるところが大きい?

逆に、名寄駅まで歩くのが大変で、コミュニティバスとJRを乗り継ぐ場合には、バスとJR両方の運賃が必要となり大幅な負担増になります。もっとも、そうする人は多くて数名で、大多数はJRのみを使うと思いますので、負担が減る人の方が圧倒的に多いでしょう。

JRの運賃は、士別方面からは乗車距離が減るので若干負担減。逆に美深方面からは少し増えます。美深はそこまで大きな負担にはなりませんが、智恵文からだと少し気になる負担になります。

片道1回あたりの負担額は、全体的に見て減る人の方が多いと考えられます。ただ、今までなかった冬以外の交通手段ができることで平均の利用回数が増えて、伴って出費も増え、総計ではやや負担増となると予想します。


先ほど検討した時間短縮効果との合計で見ても、おそらくはプラスになると思います。

ただ、プラスはプラスでも、あまり大きなプラスとはならないでしょう。

JR利用者の増加を見込めるか

続いては、通学しやすくなる、つまり「利用するにあたっての実質的な費用」が下がることにより、JRの利用が増えることに期待できるかどうか、という尺度で考えます。

これについては、先ほど申し上げた通りJR利用者が増えるというアンケート結果が出ています。

(通学バスが廃止になる場合、バスがないので仕方なくJRを使うという人も出てくるので、アンケート結果以上にJR利用が増えるでしょう。もっとも、それは「費用減に伴う利用増」ではありませんが。)

さらに、1人あたりの年間利用回数も、現行の通学バスより増えるでしょう。JRは当然通年運行なので、現行の通学バスと異なり、冬以外でも悪天候時に使えますのでね。

名寄高校への通学以外にはマイナスに

現状では東風連駅を多くの列車が通過していますが、駅移設後は停車列車が増えるでしょう。そうなると、当たり前ですが所要時間は増えます

旭川~名寄間の都市間で利用する場合や、通学でも士別方面から名寄産業高校に通う場合、名寄中心部から士別の高校に通う場合など、多くのケースで不利益が発生します。

中速域の加速が電車ほど良くない一般型気動車なので、所要時間は2分ほど増えると考えられます。2分のロスでも、往復合わせて100人ほどが食らいますので、無視はできません。

ただ、通学を想定する必要のない早朝・深夜の列車、および特急には関係ありません。

乗り換え負担の増減

その他、やや細かい部分もピックアップします。

一つは「乗り換え回数」。

現状JRと自転車を使う学生は、新駅ができればJRだけで行けるようになり、自転車にまたがる必要がなくなります。

冬にJRと通学バスを併用している人も、同様にJRとバスの乗り換えが解消されます。

ただし、美深方面から通う場合、帰りだけは名寄駅での乗り換えが必要です(現状のダイヤを踏襲する場合)。

一方、名寄中心部からの通学で、新駅開業後はバスとJRを乗り継ぐ場合は、当然乗り換え回数が往復それぞれ1回増えます。先ほども言った通り、いても数名かとは思いますが。

全体としては、乗り換え回数が減る人の方が多くなります。

※修正後記事では「移動快適性の変化」という項目を追加し、そちらでこの内容について触れているため、本段落は削除しています。

徒歩移動の増減

自転車を使わない場合の徒歩距離についてはどうでしょうか。

JR既存利用者は、新駅によって一気に1km以上歩く距離が短縮されますので、体力面でかなりラクになります。

逆に名寄中心部からの通学では、今まで近くのバス停から通学バスに乗れていたのが、バスが廃止になって駅まで歩くことになり徒歩移動が長くなる、という人が一定数いるでしょう。

「明らかに多くの人にとってプラス」という感じではなさそうですが、平均で見れば悪化とはならないでしょう。

また、名寄市街を歩くのと、東風連駅近辺から高校まで周縁部を歩くのでは、雪が積もっている時期を想定すると当然市街地の方がラクなはずです。そこも踏まえると、仮に全体の平均が変わっていないとしても、周縁部を歩く人が減って市街地を歩く人が増えるなら改善と見ることもできそうです。

※「長距離を歩くことによる不効用」について過小に評価していたため、修正後記事では内容を大きく見直し「移動快適性の変化」という項目として記述しています。

JRは増収増益、バスは減収も利益はトントンか

ここまでは利用者の側面からの分析。続いては供給者、つまり交通機関を運行する会社側から見ていきましょう。

まずJRですが、風連・士別方面からの利用客の定期券は少し安くなり、その分収入が減りますが、美深方面からは逆に少し収入が増え、さらに名寄市内からの利用者が新たに数十人増えます。

新駅ができるかわりに東風連駅は無くなるので、駅の維持費用は変わらないと想定します。その他の運行費用も特に変化はないでしょう。収入が増えた分がそのまま利益になるわけです。

一方、通学バスや風連線を運行する名士バスは、名寄高校への通学利用が大きく減り、収入が落ち込むことになります。

ただ、通学バスを廃止するならその分の費用も要らなくなります。

通学バスは赤字運営だと考えられます。冬季に限っての運行なので、運賃収入で車両導入費まで含めた費用を賄えているとは考えづらいです。この赤字がまるまる消え去るわけですね。

ボクの見立てでは、この赤字削減で風連線の収益減をほぼ相殺できると思います。

道北バスも名寄線の通学利用者減少により損失を受ける可能性がありますが、額は非常に小さいでしょう。

(なお、名寄市はバス会社に対する補助を行っていますので、バスの赤字は実質的に名寄市が負担していると考えられます。ただ、この分析は「社会全体の便益」がどうなるかに主眼を置いているので、赤字を負担するのが誰かにかかわらず、赤字が減ることを「供給者便益」として評価します。)

供給者便益は、JRはプラス、バスは概ねプラマイゼロ。よって全体で見てもプラス、ということになります。

※消費税の減算を忘れていました。修正後記事では消費税についても触れています。

その他のポイント

環境に与える影響もあります。

先述の通り、交通事故のリスクを下げる効果が期待されています。これも「便益」に盛り込むことができます。

内閣府の調査・分析によると、経済的分析における死傷事故による損失(平成26年度/2014年度)は、被害者1人あたり約2,000万円。死亡事故に限ると7億円以上になります。新駅によって交通事故が起こる確率を下げられれば、「損失額の期待値」も下がるわけです。

さらに、自動車の使用が抑えられることによる排出ガス削減も、多少は見込めるでしょう。新駅があれば、親などによる送迎の件数が減ると思われるためです。

また、送迎をしないことで、親などの送迎者も時間とガソリン代(or電気代or水素代)を浮かせることができます。

もっとも、東風連駅~高校間を歩く人や、親などに送ってもらう人はあまり多くないわけで、これらは大きな効果とは言えません。

結局、プラス? マイナス?

最後に改めて全体のまとめ。

通学所要時間は短縮となるものの、その差は小幅。

その一方で、名寄高生以外は停車駅が増えて損をすることとなり、少ないメリットがさらに薄れます。

JRは増収が期待されるとはいえ、せいぜい年間100~200万円程度でしょう。乗客増は数十名程度で、そのほとんどが名寄~名寄高校の1駅利用ですからね。

このほか交通事故削減などもありますが、大きくは見積もれません。

……あれ、駅移設のメリット、思いのほか微妙だ……。

費用が安いとはいえ、今後学生の数がさらに減ることも考えると、「投資に見合う価値がある」とは言い難いと言わざるを得ません。

名寄高校に訪れる転機

(内容に変更がないため省略)

駅移設は高校統合を見据えた賢い選択だ!

「高校統合」により、何がどう変わるのか。一つ一つ検討してみましょう。

列車の時刻を最適化可能に

まず、前提条件からして変わります。列車の時刻を、先ほどよりもさらに名寄高校に合わせたものにすることができます。

現行で名寄16:30発の旭川行き、先ほどは「15分繰り上げ」と仮定しました。これは、それ以上繰り上げると名寄産業高校からの下校に使いづらくなるかな、と思ったためです。

高校統合を前提に置くと、産業高校からの下校を考えなくてよく、名寄高校からの利用に合わせてさらに時刻を繰り上げることができます。対向の快速なよろ3号との兼ね合いがあるので数分程度しか変わらないと思いますが、それでも大事な変化です。

326D予想時刻
現行先ほどの予想高校統合前提
名寄発16:3016:1516:12
16:1816:15
風連発16:3816:2516:22
士別発16:5216:3916:36
和寒発17:1016:5716:54
旭川着17:5317:4017:37

この関係で、その快速なよろ3号も若干時刻を繰り上げることができ、その接続をとる名寄16:39発の音威子府行きも繰り上げ可能に。つまり、美深方面にも少し早く帰れるようになるでしょう。

このように、列車の時刻を最適化でき、「新駅による通学時間短縮効果」がアップすると考えられるのです。

※この前提条件は「誤った登下校時刻の想定」を基にしたものであったため、修正後記事では削除しています。

新駅利用者の増加

さらに、新駅の恩恵を受ける人の数も増えるでしょう。

現地調査で見た通り、名寄産業高校に通う高校生がJRを使っており、高校統合後は新駅から現名寄高校に通う形となるでしょう。(さらに少数かとは思いますが、名士バス恩根内線からの転移もありえます。)

また、名寄~名寄高校間の1区間利用も10名単位で増えると考えられます。

つまり、先ほど検討したような通学時間の短縮、(1往復あたりの)費用減少といった便益を受ける人が増えるということです。

費用も相対的にさらに安くなる

費用の面でも変化があります。といっても、別に駅の建設費が安くなるわけではありません。「駅を移設しない場合」と比べた時の、相対的な費用が下がるという意味です。

駅を移設しない場合は通学バスを維持する必要がありますが、生徒が増えるということはバスの利用者も増えることになります。

現状でも(少なくともちょっと前の時点では)バスが満員なワケですから、生徒数が増えれば積み残しのリスクが増すことになります。

これに対応するためバスを1台増やしたら、当然費用は跳ね上がります。車両代、運転手の給料、燃料費に車検代……。

一方で、その経費に見合うほどの運賃収入は望めません。産業高校の現状の生徒数を考えると、利用者増加はバスの定員よりも少ない数にとどまると思われるためです。

しかも今時は路線バスの運転手が全国的に不足しています。運転手を増やすのは難しく、仮に増やせたとしてもそのための採用活動費用、定着のための待遇改善などがさらなるコスト要因となります。

バスを増便しない場合、一部の生徒に徒歩移動を強いることになりますが、もちろんそれは利用者損失となります。

なお費用の面で補足すると、駅を移設する場合は今度はJRが利用客増加に対応する必要があります。ですが、車両の運用をうまく調整するなどで十分対応できると思います。費用はそこまで大きく変わらないか、かかるにしてもバスを1台増やすよりは安く上がるのではないかと思います。

※修正後記事では内容を強化しています。

高校統合を見据えると、新駅はおトク!

所要時間が減り、利用者も増え、費用も実質下がる。高校統合で、これだけ条件が変わることになります。

これなら、投資に見合うだけの十分な効果が得られるでしょう。

一見すると効果が薄そうなこの駅移設計画も、実は結構おトクな、そして賢い選択だったのです。

もしかしたら、この話題を知った時に「現行のバスで十分では」と考えた方もいるかもしれません。しかし、例えば札幌市内の駅を移設するのとは違い、費用は非常に安いです。それでいて、今見たようにしっかりした便益が見込まれます。しかもバス労働力不足の今、現状の輸送網が維持可能かと言うと疑わしいです。これらを勘案することなく、一瞬考えただけで「ムダ」と断じることができるとは思えません。

北海鉄旅流! 駅セントリック・ソリューション

※本段落は、修正後記事では全く新しい内容に書き換えています。

ここからは、「新駅の効果を最大限引き出すにはどうしたらいいか」という視点でいくつかお話を。

まあ、しょせんは素人の戯言なので、かる~い感じで笑って読んでいただければと……(苦笑)

新駅開業後のダイヤを考えてみた

先ほども言った通り、駅が高校の近くにあっても、列車待ち時間が長ければ意義は薄れてしまいます。

では、どんなダイヤにすれば駅の効果を引き出し、かつ効率的に運行できるでしょうか。北海鉄旅流に考えてみました。

ここでは、「新駅の利便を最優先」としつつ、「なるべく他が不便になるのを避ける」をコンセプトとします。

また、令和3年3月ダイヤ見直し時点と同様、「旭川~名寄間の普通列車は原則DECMO(H100形)で運行」「名寄以北にDECMOを入れない」前提で検討します。


高校統合により、現名寄高校に通う生徒の数が増えることを念頭に考えます。

まず下ごしらえとして、朝の下り始発(321D→4323D→4325D)の旭川~名寄間と、旭川13:59発の名寄行き(327D)の車両を入れ替えます。つまり、321DをDECMOの単行、327Dをキハ54・40形2両とします。

朝の時間帯から考えていきます。現在と異なり、名寄→名寄高校でラッシュが起きると考えられます。朝の通学時間帯に走る快速なよろ2号は現状でも都市間の利用者などが乗っており、さらに100名前後の乗客が乗り込むことになるため、1両では足りません。輸送力を増やす必要があります。

ただ、1区間のためだけに新たに増結を行うとなると、コストが高くつき、新駅の効果以上のデメリットになりかねません。

そこで、321Dの折り返しで名寄発・風連行きを増発。これで増結なしで効率よく輸送力を確保できます。しかも、士別への通学列車でもある快速なよろ2号の時刻をずらさずに、名寄高校への通学に最適な時刻の列車を設定できるため、士別と名寄の両方にとって得となります。

このほか、321DはDECMOの性能を活かしたダイヤにすれば、士別方面から名寄への通学時間を短縮可能です。


続いては帰宅時間帯。前述の通り327Dを2両編成にして、さらに時刻を30分ほど繰り下げれば、名寄高校から名寄・美深方面への下校に対応できます。(通常は部活のあるなしで乗客が複数列車に分散しますが、完全下校の日も考慮し2両編成にする必要があると判断。)

もうひと手間。現状のダイヤを踏襲する場合、美深方面から名寄高校に通う人は、帰宅時は必ず名寄での乗り換えが必要です。これを解消するため、327Dを名寄16時台発・音威子府行き(4329D)と統合し、旭川から音威子府まで直通運転化(名寄で後ろ1両切り離し)。キハ54形への車種変更を考えた最大の理由がこれです。

4329Dは現状だと快速なよろ3号との接続を待ちますが、これを取り止めて名寄をすぐ発車すれば、さらに通学時間を減らせます。

そうすると美深から士別に通っている人が困るので、別途17時ごろに名寄発・美深行きを設定(その分昼間時間帯を減便)。

なお、327Dの時刻・車両変更により、名寄16時台発の旭川行き(326D)に使う車両がなくなってしまうので、名寄11:01発の旭川行き(324D)を2両から1両に短縮し、車両を326Dに回します。

これらを実現するためには、朝はDECMO、帰宅時間帯はキハ54形を、それぞれ1両確保する必要があります。新たな車両を導入するとコスト増で新駅効果がかき消されるので、既存の車両だけで対応したいところ。これは、音威子府~幌延間の列車を2往復減便し、名寄以北の列車時刻を変更、さらに宗谷・石北本線の車両運用を少し見直せば対応可能です。


以上の予想をまとめたダイヤグラムファイルを公開しますので、興味のある方はダウンロード(PC:右クリック モバイル:リンク長押し)して、Oudiaで開いてみてください。 たぶんJRのスジ屋さんに見せたら笑われるんだろなあ……。

駅の設計はムダなくシンプルに

先ほど「駅は最小限の設備になりそう」という話をしました。ボクはそれに賛成です。

今回は新駅の利用が多くても100名程度(乗車人数)の小規模事業。得られる便益が(大都市交通の改善事業と比べれば)かなり小さいわけですので、費用をなるべくかけないようにすることで、投資効率を高めた方がよいと思います。

新駅は立地などを考えると、「交通結節点」とはならないと思います。例えば駐車場なんかを整備したとしても、空振りになるはず。過度な期待はせず、最低限の設備プラス自習スペース程度にとどめる方がよいと考えます。

まして、きっぷ売り場や、きっぷ販売を兼ねた売店などを置くなどナンセンス。駅利用者の多くは名寄・士別・美深からの利用で、新駅に駅員がいなくとも発駅で定期券を買えます。無人駅から通う学生は不便かもしれませんが、北見エリアで平成30年(2018年)から開始された「スマホ定期券」を導入するなどで、人件費をかけずに対応可能です。この労働力不足の時代に、しかも深刻な赤字に苦しむ路線にさらに死重を加える必要は皆無。まして売店など荒唐無稽の極みです。(名寄駅のキヨスクさえなくなる時代ですよ?)

豪華なディナーも素敵ですが、醤油かけただけの豆腐を食らうのもまた一つの楽しみ。シンプルなのも良いものです。

(以下同文)

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