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「労働力不足」時代のローカル鉄道

記事公開:令和2年(2020年)8月29日

JR北海道の経営危機が発端となった、道内ローカル鉄道の存廃問題。数多くの路線が「JR単独では維持できない路線」に指定され、それらを今後も残すのか、残すなら誰が赤字を背負うのか、考えなければならなくなりました。

北海道に限らず、日本には乗客の少ない鉄道路線が数多くあります。一般に、輸送密度が2,000を切っている路線は「鉄道という大きな器を当てはめるには需要が少ない」とされています。北海道のみならず、やがては全国で路線の維持について考えなければならない日が来るでしょう。

鉄道は「大量輸送機関」であり、乗客が少ない路線には向きません。ならば、輸送密度が低い路線はもはや、社会から必要とされていない――

……それも、少し違うような気がするのです。

昨今の日本では、それまで注目されてこなかった、しかし重要な問題がとみにピックアップされるようになりました。その問題を考えると、簡単に鉄道を廃止してよいのか、という疑問が浮かぶのです。

くま川鉄道の災害不通が与えた影響とは?

今年(令和2年/2020年)7月、九州の熊本県・球磨川流域を豪雨が襲いました。旧国鉄湯前線を引き継いだ第三セクター鉄道であるくま川鉄道は、豪雨により橋が流失するなど甚大な被害を被りました。

利用が決して多いとは言えないローカル線であり、復旧せずにそのまま廃線かとも思いましたが、会社はすぐに存続に向け動き出しました。沿線自治体や県も存続を願い、国の支援を取り付けるための協議に入りました。

熊本地震からの復旧を目指す南阿蘇鉄道について、国が費用の実質97.5%を負担して復旧させる特例措置が取られ、昨年(令和元年/2019年)に発生した三陸鉄道の台風被災の際も踏襲されました。この方式で、費用のほとんどを国に持ってもらう形での復旧を目指すようです。

もちろん条件がいろいろあるようで、「上下分離方式」の導入がその一つのようです。


当然ですが、「復旧させずに廃止すべき」と主張することも可能です。くま川鉄道の輸送密度は令和元年度で1,193と、2,000に満たない数字です。経済合理性からは、存続させることの説明が難しいレベルです。

しかし、今現場で起こっていることを知っても、そう言えるでしょうか。

……SNS上の目撃情報によると、平日は毎朝、鉄道に沿う道路を10台以上もの大型バスが連なって走っているといいます。

列車が失われた今、沿線の地域輸送は列車代行バスに拠るほかありません。ところが、通学客がかなり多いため、朝はかなりの台数を要しています。被災前でも朝の湯前発・人吉温泉行きの最混雑列車は3両編成にびっしり通学客が乗っていたのです。それを代替するのですから必然でしょう。

もっとも充てられているのはハイデッカーのバスなので、全員を着席させる前提の台数となっており、これが路線バスタイプの車両なら数は抑えられるでしょう。それでも、5台程度は必要になると思われます。

問題になるのが、運転手の確保です。今はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響で観光バスの需要が激減しており、運転手の確保もしやすいかもしれません。ですが、いつの日か疫病が終息し、社会が元に戻れば 疫病の終息は永遠に見込めませんが、経済活動はいずれ元に戻り、折からの労働者不足により運転手を確保できなくなるおそれがあります。


くま川鉄道は、沿線に複数の高校があるため、通学輸送が旺盛です。

混雑に拍車をかけたのが、平成31年(2019年)の多良木高校の閉校。同じくま川鉄道の沿線の高校と統合されることによるものです。

これにより、多良木町・湯前町から人吉方面に通学する生徒が増え、ラッシュが激化したのです。

使用されている車両を、しかも観光用車両(それも水戸岡鋭治氏デザイン)も含めてロングシート化するほどに、混雑は激しいといいます。

日中の輸送量は小さいと思いますが、ラッシュ時にはまさに「大量輸送」という役目を担っているのが、くま川鉄道なのです。

深刻化するバスの労働力不足

「労働力不足」という言葉を聞くことが増えてきました。

リーマンショックから始まる長いトンネルを抜け、景気拡大が続いたことが影響し、より多くの労働力が求められるようになりました。その結果、働き手の不足が一気に顕在化した印象です。

IT産業に代表される新たな知的産業が成長したり、高齢社会に突入し介護業界が拡大したりと、産業構造に変化が見られることも一因でしょう。

労働力不足の状況は、業種により異なります。ふつう人はよりよい環境で働きたいと願うもので、きつい仕事や、実力を発揮できない(やりがいのない)仕事、安月給の仕事には人は集まりません。

昨今、運輸業界はかなり深刻な労働力不足の状況にあります。今年こそCOVID-19の影響で観光バス会社の大量解雇などがありましたが、昨年まではバスの運転手不足が叫ばれており、社会が平常に戻れば再び運転手は足りなくなるでしょう。トラックの運転手や、鉄道の保線要員の不足も問題です。

とりわけ、下道を走る一般路線バスが、危機的な状況にあるといいます。これは、高速バスとの運転環境の差によるものと考えられるようです。

一般路線バスは、高速道路よりも事故のリスクが高いです。高速道路よりもはるかに障害物が多く、対向車と走行空間が分かれておらず、左右からも車がやって来ます。歩道には人が歩いていますし、他にも路駐、自転車など、事故の原因になるものがたくさんあります。

最近注目が高まっている自動車の自動(被害軽減)ブレーキがあれば事故リスクは軽減できるわけで、バスの新車は自動(被害軽減)ブレーキを義務化している……んですが、実は一般路線バス用の車両は例外とされています。

高速バスは、当たり前ですが高速道路が走行区間の多くを占めます。また、着席が前提であり立ち客を想定する必要がありません。

一方、下道では急ブレーキが必要な場面が高速よりも増えます。また、下道を走るバスは立ち客を許容します。

一般路線バスで自動(被害軽減)ブレーキを装着した場合、ブレーキで立ち客が転倒するおそれがあります。安全を守る装置であるはずが、かえって人を危険にさらしてしまう場合があるのです。

こうした事情もあり、一般路線バスの運転のリスクをうまいこと軽減できておらず、そのせいで一般路線バスは運転手から嫌われている、と聞きます。

地方の通学の足を、ローカル鉄道によって維持する

利用の少ないローカル鉄道を廃止する場合、代替のバスなどを用意する必要があります。

廃止が取り沙汰される路線の多くは、日中はバスでも輸送力が余る程度であることが多いです。しかし、通学時間帯となると状況は変わります。

通学利用が多い場合、くま川鉄道の代行バスのように、何台もバスを用意する必要があります。労働力不足の状況では、このバスを十分に用意できないおそれがあります。

今後、おそらく全国で鉄道の廃止が相次ぐでしょう。そのたびに、新たに代替バスが設けられることになります。それだけでも運転手をたくさん必要とします。長距離の路線を廃止するとなれば、特に大量の労働力が必要になるでしょう。さらに通学時間帯に増発する……。本当にできるのでしょうか。

鉄道なら、増結をすれば数百人の乗客を運転手1人で運べます。採算はともかく、運転に必要な人員を減らすことはできます。

してみると、利用の少ない路線でも、朝夕は大量輸送をしている路線は、「廃止しない」のも選択肢に入れるべきなのではないか、と思われるのです。


先ほどのくま川鉄道の事例は、もう一つ重要なことを示唆しています。「高校の統廃合」による交通の変化です。

地方の人口減少により再編の必要に迫られているのは、交通だけではありません。高校もまた、人口の少ない地域ほど苦境に立たされています。

それゆえ、高校を統合したり閉校したりして、数を整理する動きが強まっています。

当サイトは北海道の鉄道に関するサイトなので、北海道の事例を挙げます。「維持困難路線」の周辺、かつ交通にある程度変化をもたらしうる事例に絞って、最近の事例を見ていきます。

まず平成28年(2016年)に、旭川凌雲高校が旭川東栄高校と統合され、旭川永嶺高校となりました。旧凌雲高校の校舎を継続使用しています。最寄り駅は石北本線の南永山駅で、統合により駅を使う学生が増えたと考えられます。

平成31年(2019年)には、十勝の新得高校が閉校。これにより、根室本線では新得から清水・芽室・帯広方面に通う学生が多少増えたと考えられます。

今後も統廃合が行われる見通しで、すでに令和5年(2023年) 令和6年(2024年) に北見市の留辺蘂高校が入学者の募集を停止することが決まっています。したがって、令和7年(2025年) 令和8年(2026年) 3月をもって閉校することとなります。今まで北見方面から高校最寄りの西留辺蘂に向かう需要があったのが消滅し、代わりに西留辺蘂・留辺蘂方面から北見の方に向かう通学需要が少し増えるはずです。

※追記(令和4.12.24):募集停止が1年延期されました。

また、確定ではありませんが、名寄市の名寄高校と名寄産業高校も統合の話があるようです。現在、名寄市では名寄高校最寄りの東風連駅を高校のさらに近くに移設し「名寄高校前駅」に改称することを計画しているようで、ここから推測するに名寄高校の校舎は今後も使うことになるでしょう。片方が専門学科オンリー(つまり「非普通科」)の高校なので簡単に一つの校舎に集めることはできませんが、運営方法によっては名寄高校の校舎への集約がおこり、名寄→名寄高校前間の利用が増えることになるかもしれません。

※追記(令和4.12.24):令和4年(2022年)に「名寄高校駅」が開業。また令和5年(2023年)の高校統合が正式決定となり、校舎は現・名寄高校のものを活用することとなりました。(なお、名寄高校駅については別記事で特集しています。

これらの統廃合によっては、そこまで大きな交通の変化はありません。しかし、より思い切った統廃合が検討される可能性もあり、学年あたり複数のクラスを持つ高校が、他の市町村の高校と統合、なんて状況も考えられます。そうなると百単位の数の学生が新たに公共交通での通学を始めることになるでしょう。


もちろん、遠い将来はさらに少子化・過疎化が進み、鉄道が必要なほどの通学需要がなくなるところが多くなっていく、ということも想定できます。

ですが、「学校が統廃合されるから」「地方が不便になっていくから」と、今日明日すぐに皆が都市に移転する、ということは絶対にありません。今日いきなり子どもがゼロになることはありません。緩やかに変化してはいきますが、短期的には「今の場所に住みながら、離れた町に通学する」という人が存在し、場所によってはバスだと厳しい程度のボリュームを持つ、という状況が続くはずです。

こうしたことを考えると、少なくとも「今」、通学需要の高いローカル鉄道を廃止するのは、少し慎重になった方がいいのでは、とボクは考えます。

不採算のローカル鉄道をどう維持するか

そうは言っても、不採算のローカル鉄道を維持するのは簡単ではありません。ローカル鉄道はふつう赤字に苦しんでいますし、過疎化が進む現状通学客以外の需要拡大には期待しづらく、朝夕以外は鉄道という大きな器を持て余すことになります。

その困難に立ち向かうために、どのような方策を採るべきでしょうか。

……もちろん一発で解決できる特効薬なんてありませんが、とりあえず各地の事例の中から参考になりそうな事例をいくつかピックアップしてみました。

路線ごとに状況は異なるので、「どこどこのマネをすれば万事解決」ということはありえません。あくまで「参考事例」と考えてください。

あくまで鉄道を「利用が減るまでの間だけ輸送を確保するための時限措置」と位置付けるなら、そのまま放置という消極策もありえますがね……。

方向性①:朝夕にとことん特化し、コストを徹底的に削減

一つ目の方向性は、「日中は器を持て余す」という状況を逆手にとり、朝夕に特化した運営を行うというものです。

昼間の保線間合いを設け、保線コストを削減

昼間の利用が少ないなら、無理に本数を増やしてあがくのではなく、いっそのこと昼間は本数をうんと減らして、線路が空いている間に保線などの保守作業を終わらせてしまう、という発想ができると思います。

JR西日本では、木次線でいわゆる「月一運休」を行っています。月に1回、昼間の列車の一部を運休して、その間に保線などの作業を行うものです。

また、同じくJR西日本、およびJR北海道では、集中的な作業をするために一定の期間にわたってローカル線の日中の列車を運休することがあります。令和2年度(2020年度)では、西日本では山陰本線・赤穂線・津山線、北海道では宗谷本線・釧網本線・室蘭本線岩見沢口で予定されています。

保守作業は旅客列車が動かない夜間に行うことが多く、本数の多い区間だと特に夜間作業が多いです。なるべく昼間に振り替えることで、割高な夜間労働を減らせ、赤字削減にも繋がります。

それだけではありません。先ほど「バスの労働力不足」の話をしましたが、鉄道でも労働力不足の問題はあり、特に夜の仕事が多く体力的にもきつい保線作業では深刻です。「平日の昼間」の仕事を増やすことで、少しでも状況を打開できる可能性があります。

通学特化の車両を導入

車両面では、思い切って通学に徹底的に特化した車両を導入して、日中の居住性を捨て去る、という思い切った戦術が考えられます。

具体的にはオールロングシート。先ほど挙げた木次線の車両の一部は、松江への通学に特化したオールロングシート車両です(セミクロスシート車両と共通運用)。全線で80km以上に及ぶ長めの路線ですが、乗り通す乗客がそうとう少ないこともあってか、思い切った座席配置を選んでいるようです。

セミクロスシートの場合でも、2+1列の構造にする、ロングシートの割合を増やす、といった具合です。JR北海道の新型ローカル気動車・DECMO(H100形)や、その姉妹車のJR東日本GV-E400系がまさにこのタイプですね。

定員を増やすことで、ラッシュ輸送に必要な車両の数を減らすことができます。製造費や維持費、運行に必要な燃料代などを削減することができます。

方向性②:日中に「地域内旅客輸送」以外で稼ぐ

逆に、日中時間帯の余った輸送力を何かに活用することも考えられます。

当然、増発などを行って正面から地元の旅客のデータイム利用を促進したところで惨敗するのがオチ。したがって、「地域内旅客輸送」以外で稼ぐことになります。

貨客混載

最近話題になることが多い「貨客混載」が一つの方策となりえます。

これまた労働力不足に苦しんでいる宅配業者と組んで、人のかわりに空気を運んでいる日中のローカル列車を使って宅配荷物を運ぶ、というものです。

すでに全国の鉄道・軌道・バスで取り組みが広がっており、JR北海道でも宗谷本線の稚内→幌延間で実施中。北海道新幹線でも検討が進んでいるようです。

運送業者にとっては、空いている公共交通機関を間借りすることでトラック運転手を削減できます。公共交通にとっても、ガラガラの便を有効活用でき、収支の改善に繋がります。

観光

場所にもよりますが、域外から観光客を呼び込むというのも手です。

JR北海道の富良野線は通学需要が旺盛な路線ですが、同時に観光路線でもあります。沿線にラベンダーが咲き誇る7月を中心に、臨時列車を運行したり普通列車を増結したりして、たくさんの観光客を捌いています。

ただ、観光客による運賃収入「だけ」で路線を黒字に持っていくのはさすがに困難です。物販など関連事業の収益に繋げる、沿線に利益を生み出すことで路線維持に向けた地域の積極的参画を促すといった風に、他の施策と連携させて行う必要があります。

また、観光資源に乏しい地域では、この方法は難しいでしょう。

方向性①と②の複合技:朝夕特化の設備を観光に活かす ~サイクルトレイン~

続いては、先ほど紹介した「ロングシート車両の導入」と「観光利用促進」の合わせ技です。

つまり、ロングシート車両が持つ広い空間を、観光客を呼ぶのに活かす、ということです。

たとえば、自転車積み込みOKの列車の運行。自転車旅はいいぞ。冒頭で取り上げたくま川鉄道の車両のロングシート化改造がその好例で、観光用車両の内装意匠をそのまま活かして座席をロングシート化することで、「サイクルトレイン」という自転車積み込み可能な観光列車として運行。鉄旅を楽しみつつ、自転車で雄大な景観を誇る人吉・球磨地方を周遊できる魅力をアピールしました。

このほか、そこまで利用の少ない路線ではありませんが、JR東日本の総武線・内房線・外房線・成田線あたりを走る「B.B.BASE」も、ロングシート車両を自転車積み込みに活かした事例です。

自転車以外にも、ロングシート車両の室内空間を活かす方策があるかもしれません。いろいろ考えてみるのも面白そうです。

方向性③:交通全体を俯瞰した路線再編により利用を増やす

その路線だけに視野を絞らず、もっと広い見地から見た利用促進策も考えてみましょう。

ローカル鉄道がある区間に、並行してバスが走っていることが往々にしてあります。たとえば、A町とB町を結ぶ鉄道に並行して、駅のない途中の需要を拾うバスがあったり。A町と、Bより遠いC町を結ぶバスがあったり。あるいは、途中まで鉄道と並行して、AとBの間で分かれてD町に行くバスがあったり。

こういった場合に、鉄道を交通網の「幹」の部分と位置付け、鉄道のある区間は交通機関を列車に一本化して、バスは鉄道各駅から各地を結ぶ「枝」の役目に特化。鉄道が乗り入れない場所に行く場合は鉄道とバスを乗り継ぐ……という方法もありえます。

北海道内で、通学需要がある程度太く、かつ「幹」の役割を持てそうな路線を2つほど挙げます。最近、労働力不足による「高速ひだか号」の廃止というショッキングなニュースがあった日高地方で、たとえば苫小牧~富川間で鉄道を維持し、並行バスを取りやめ。富川よりも東の静内・浦河方面、および富川から枝分かれする平取方面へは、それぞれ鉄道に接続するバスを富川から運行する、といった感じの交通網をつくることが考えられます。バスの運転手の数を減らせ、高速バスでさえ削減される状況でも各地への交通機関を確保しやすくできるでしょう。

室蘭本線の岩見沢口も、岩見沢~栗山・由仁間で通学が多いですが、沿線各地と岩見沢を結ぶバスが並行しています。このバスを、岩見沢直通ではなく各駅に乗客を運ぶフィーダー路線に再編することで、バスの運行距離を減らしつつJRの利用を増やすことができるでしょう。

これらの方法は、「乗客に乗り換えを強制させる」ことを意味します。なるべくラクに乗り換えさせるよう、乗り換え移動(特に垂直方向への移動)を減らすなどの対策をしても、乗り換え自体が嫌われて逆効果に、という懸念もあり、諸刃の剣です。また、バス会社にとっても長距離客を失うことになりますので、同意を得られない可能性も高いです。なかなかうまくはいかないでしょう。

方向性④:並行路線との調整により共存を図る

※この部分は令和4年(2022年)12月24日に加筆しました。

逆に、並行路線との共存を図る方策もありえます。

列車やバスの時刻を、並行路線と時刻が被らないように調整したり、運賃を鉄道とバスで共通化したりして、並行路線どうしで乗客を取り合わないようにする、というものです。

JR四国の牟岐線が有名な事例です。乗客が少ない阿南~海部間が平成31年(2019年)3月ダイヤ改正で減便となる代わり、阿南~浅川間で並行して走っている、大阪~海部方面を結ぶ高速バス「室戸・生見・阿南大阪線」(徳島バス)で、阿南~浅川間だけの乗車がOKになりました。従来はこの「室戸・生見・阿南大阪線」を徳島県内区間のみ乗車することはできず、近畿との行き来でしか乗れませんでしたが、それを阿南~浅川間だけ開放し、路線バス的に使えるようにした形です。

さらに令和4年(2022年)からは、JRのきっぷでもその区間に乗れるようになりました。(乗降停留所限定あり)

駅やWebサイトの時刻表にもバスの時刻が掲載されているほか、阿南駅の改札口にある電光掲示板でもバスの時刻を案内しているとのことで、鉄道とバスを一体の路線として考えてもらう仕組みがあります。

こうした取り組みは、独占禁止法によって禁止されているカルテルに該当する可能性がありますが、令和2年(2020年)に独禁法の特例ができ、地方部のバス会社が同業者と経営統合・共同経営を行う場合は同法の適用除外となっています。「鉄道に詳しい」と自称する人達の中に、このことを知らずに「調整なんてできない、コストの大きい鉄道が市場から退出するしかない」と言い続けている人がけっこういるようです。「詳しい」風に振る舞うだけではダメで、絶えず知識をアップデートしないといけません。

さらに進んだ取り組みとして、運賃やきっぷの仕組み・買い方を完全に共通化したり、スマホアプリなどで一体的に検索・予約できるような仕組みを作ったり、ということが考えられます。

方向性⑤:行政による補助

路線を運営する事業者の自助努力だけでは、ローカル鉄道の維持は難しいものがあります。国や地方自治体が支援に乗り出す必要も出てくるでしょう。

上下分離方式を導入して地方自治体に運営に対する責任を持たせる、国が通学需要のある路線に補助を出せるような制度を建議する、など行政面でも踏み込んだ議論が必要かと思います。

これまで「北海鉄旅」では、朝夕の通学需要がある路線であっても、都市間輸送など日中の需要がない路線の存続には懐疑的でした。設備が遊んでしまう時間が長いことと、「幹線としての役割がない単なる閑散線区は価値が低い」と考えていたことが、その主な理由です。

しかし、こうして検討してみると、通学輸送だけでも場合によっては残した方がいい路線もありそうなところ。ローカル線ひとつとっても、それぞれに事情が異なり、簡単には存廃の結論を出せないことがわかってきました。

こんな風にさまざまな角度から検討して、少しでも良い結果になるように考えていくのが大切で、自分もいろいろやってみようと思います。

今回はそのための「考えたこと備忘録」兼「皆さんへの問題提起」という感じで書いてまいりましたので、煮え切らない内容、かつ終盤はあやふやな感じになっちゃいました。

こんな文章でも、少しでも参考になれば幸いです。

……といったところで今回はここまで。公共交通に栄光あれ!

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