「ゲニウス(北)の北海鉄旅いいじゃないか」

……北海道の旅行・鉄道の魅力をアグレッシブに発信する"闘う情報サイト"です。

  1. トップページ >
  2. 素人流・鉄道観察 >
  3. JR北海道の地方路線に「Kitaca」拡大の狙いは 交通系ICを活かした経営戦略を先読みする

JR北海道の地方路線に「Kitaca」拡大の狙いは 交通系ICを活かした経営戦略を先読みする

JR北海道は令和6年(2024年)春に、岩見沢~旭川間、および函館~新函館北斗間で、「Kitaca」などのICカード乗車券の利用を開始します。

「タッチ&ゴー」でスムーズに使えるICカード乗車券。利用可能エリアが広がれば、もっと便利になりますが……

「札幌近郊と北海道新幹線以外には、ずっとICカードが使えなかったのに、今になって導入するのはなぜなのか?

「旭川や函館にICカードを導入しても、沿線人口が少ないから、効果は薄いのでは?

こんな疑問が湧いてくるかもしれません。

北海道の地方路線へKitacaエリアを拡大する、その意味とは。

実は、ただ「便利になる」だけではなく――

経営難に苦しむJRが、地方人口が減り続ける中でも「収益を伸ばす」ことに、Kitacaが貢献するかもしれないのです。

Kitacaエリア拡大の狙いとは?

人口が少ない地域では、コストダウンの効果が低い

北海道はご存知の通り、札幌近郊を除いて人口密度が低い地域です。

今回ICカードが導入される空知地方や旭川・函館近辺も、普通列車の利用が多いとは言えません。

朝ラッシュでも、2~3両編成の列車が何往復かすれば、乗客を運びきれてしまいます。

日中は列車の間隔が1時間以上空くことも多く、乗客も数十人程度という便がいくつもあります。特に岩見沢~旭川間ではほとんど乗客がいないこともあります。


交通系ICカードは、利用者が多ければ多いほど、その効果が高まります。

ICカードの魅力には、たとえば「コストダウン」があります。

紙のきっぷや磁気の定期券と違い、繰り返し使えるので、資材コストを抑えられます。モバイルSuicaなどのスマホアプリを使うと、カードすら要らなくなります。

改札機の維持コストも下げられます。きっぷを通すためのローラーなどの部品は、使うたびにすり減っていくのですが、ICカードはそもそも改札機の中に通さないので、部品は摩耗しません。

交通系ICのメリットは他にも、「電子マネーとしても使える」ことがあります。これによりJRは加盟店から手数料を得られ、重要な収益源の一つとなります。

利用者が多いほど、こうしたコストダウン・手数料収入などのメリットが大きくなってくるわけです。


でも、利用者が少ない地域では、ICカードのメリットが薄れてしまいます。

きっぷや改札機が使われる回数がそもそも少ないので、コストダウンの効果は低いです。

また、沿線住民に交通系ICを電子マネーとして使ってもらうのも難しいでしょう。列車を利用しない人は、そもそも交通系ICを使う習慣を持ってくれないことが多いでしょうからね。

交通系以外にも、さまざまな電子マネーが既に定着しているのですから、なおさらです。

ICカードの導入には大きな費用がかかります。それに見合った効果は、期待できないようにも思えてきます。

ましてや、JR北海道はかなりの経営難。その中であえてやるべきことなのか、という疑問が湧いてきます。

……もっとも、JR北海道は国から設備投資に対する支援をもらっており、それを活用した事業なので、問題は無いと思うかもしれません。

でも、支援の総額は決まっており、大事に使わなければなりません。効果の薄い投資をしている余裕は無いでしょう。

Kitacaエリア拡大は「特急・新幹線の利用者」がターゲット

ではなぜ、JR北海道は旭川・函館にKitacaを導入するのでしょうか。

JR北海道が記者会見で説明したところによると――

  • 旭川方面は「都市間で鉄道を利用する人が多いため」
  • 函館方面は「北海道新幹線の利用者から交通系ICカードの利用を求める声が多いため」

――と、このような理由とのことです。

つまり、Kitaca新エリアのターゲットは「特急・新幹線の利用者」ということです。

エリア拡大の「理由」まできちんと報道しているのは、筆者が確認した範囲ではNHKのみでした。北海道最大の地方新聞は触れていません。道内企業の動向についての報道で優位に立てない道内紙……。


函館方面のメリットは、とてもわかりやすいですね。

東北・北海道新幹線では、ICカードが使えます。また、函館市電や函館バスもICカードで乗れます。

それなのに、新幹線と函館駅を結ぶJR線だけ、ICカードが使えない状態です。

でもようやくこの問題が解消されて、東京から函館の観光地・市街地までが、1枚のICで繋がるのです。

間接的に、新幹線もICカードでの利用が便利になります。ICの利用率が上がれば、コストダウンなどにも期待ができます。

でも、旭川方面はどういうことでしょう。

普通列車の利用が少ない旭川方面ですが、札幌~旭川間を走る特急は多くの乗客を運びます。特急利用者がICカードを使ってくれれば、コストダウンなどの効果は出るでしょう。

……しかし、ICカードでは在来線の特急料金を支払えません。

特急利用者は、果たしてICカードを使うでしょうか?

将来像は「交通系IC+チケットレス」

特急列車の利用者をターゲットに、旭川にKitacaを導入する、その理由とは?

その答えは、「チケットレス特急券」です。

令和3年(2021年)6月27日から、札幌~岩見沢間と、札幌・新札幌~苫小牧間で、「えきねっとトクだ値(チケットレス特急券)」が利用開始しました。

インターネットの予約サイト「えきねっと」で予約さえしておけば、紙のきっぷとして受け取る必要が無く、手間要らずでストレス無く使える商品です。

運賃(乗車券)が含まれない「特急券単体」の商品です。そのため別途きっぷか定期券が必要ですが、Kitacaエリア内なので、もちろんICカードでも大丈夫。

つまり、「事前に座席をネット予約して、改札をICカードで通る」ことで、紙のきっぷをまったく使わずに移動ができてしまいます。

Kitacaエリアといっしょに、チケットレス特急券が使える範囲も拡大すれば、札幌~旭川間の特急列車を「交通系IC+チケットレス」で使えるようになります。

ICカードを1枚持ってさえいれば、きっぷを買うために窓口や券売機に並ぶ必要がなくなります。

スマホに「モバイルSuica」アプリと「えきねっと」アプリを入れて、「チャージも特急予約も、改札タッチもスマホで」……という風に、スマホ1台で完結することさえ、できてしまいます。

つまり、「スムーズに乗れてストレスフリーで移動できる」便利な列車になるのです。

また、紙のきっぷが減ることで、紙や人件費、券売機のメンテナンスといったコストが減ります。JR北海道の経営再建に向けたコストダウンにも繋がるわけです。

これこそが、おそらく旭川にKitacaを導入する、最も大きな意味です。

JRの収益確保策「イールドマネジメント」

特急列車のネット予約を推し進めるのは、便利になる・コストを減らすという以外にも目的があります。

それが、「イールドマネジメント」という方法で、利益を増やし、経営を改善するというものです。

イールドマネジメントとは

飛行機やホテルのネット予約は、「早めに予約すると安くなる」仕組みになっていることが多いですよね。

これは、早めに予約する人と、利用日が近くなってから予約する人とでは、求めているものが違うことを利用しているのです。

早くに予約する人の目的は、観光・行楽が多いです。値段にビンカンな傾向があります。

一方、直前予約は、ビジネス・所用のためという場合が多いです。高いお金を払っても、スピードや快適さを得たい人が多くなります。

そこで、たとえば次のような方法を採ります。

  • 予約を開始したら、まず安い値段のチケット(プラン)を売る
  • ただし、安く売る人数や時期には制限をかけておく
  • 安く売る分の枠が埋まったり、早期割引の時期が過ぎたりしたら、通常価格で売る

こういう風に、2つ以上の値段を設定して、条件によって売り分ける方法を、「ダイナミックプライシング」といいます。


飛行機や鉄道の乗客の数は、曜日・時期・時間帯で変わります。

でも、需要の多い・少ないに合わせて、機体・車体のサイズが伸びたり縮んだりはしてくれないので、必ず空席のある便が出てきます。

しかも、それらの余りは次の日に繰り越せません。

それなら、空いている席はたとえ大安売りであっても、全部売り切ってしまった方が利益は増えます。

だからと言って、全員に安い値段を提示したら利益になりません。そこで、「○日前までに予約した人、かつ人数限定」のように条件を付けます。

こうすることで、「安いなら使う層」を取り込んで空席を減らしつつ、急用などがあって、高くても使いたい人には、それに合わせた値段を提示するのです。

ダイナミックプライシングは、座席という資源を有効活用して、同じコストでも利益を増やすことができる方法なのです。

このダイナミックプライシングのような、会社が使える資源と利益を管理して、利潤をできるだけ大きくするような施策を、イールドマネジメントといいます。

JR北海道の「おトクなきっぷ」販売戦略のこれまで

JR北海道は従来、"列車がどれだけ混んでいるかにかかわらず、いつでもどこでも割引になる"タイプのきっぷを展開してきました。

これは、国鉄時代に比べて特急列車の本数を大幅に増やし、割引きっぷで乗客をかき集めるビジネススタイルを採っていたからです。

鉄道は、線路や車両などの固定費用が莫大にかかるため、規模が大きいほど乗客1人あたりの輸送コストを小さくできます。

そのため、鉄道サービスの規模を拡大し、値段は下げて多くの人に利用してもらうことで、収益を増やせるのです。いわゆる「規模の経済」です。

「いつでもどこでも割引」の代表例が、特急の往復利用をセットにした、自由席版の「Sきっぷ」と指定席版の「Rきっぷ」です。利用できる時期に制限が無く、また往復セットとすることで多くの回数を利用してもらう仕組みになっています。


ですが、この「本数を増やして割り引く」ビジネスモデルの土台が揺らいでいます。

鉄道利用が減り続けており、今後大きく増える見込みも無いからです。

北海道の人口は右肩下がりで、しかもこの社会が不注意にもやっかいな感染症を蔓延させてしまった(筆者も感染した以上その責を免れません)ために、鉄道利用がかつての水準に戻る見込みが無いのです。

そのため、今後はなるべくコンパクトな体制をとることになります。

事実、特急北斗・おおぞらは基本5両編成に短縮となり、特急ライラック・カムイも実質の運行本数がだいぶ減っています。


利用者が減り、それに合わせてコンパクトな体制に変えると、「規模の経済」はあまり効かなくなります。

そこで、「イールドマネジメント」がこれまで以上に重要になってくるのです。

利用が少ない列車は値段を下げ、乗客をかき集める。需要が多いなら値段を上げて、短い編成・少ない本数でも利益を増やせるようにする。こうして、固定費用の回収を目指すのです。

これが、需要減少に立ち向かい、経営破綻を避けるべく闘うJR北海道の、今後の戦略です。

「ネット割引」に活路を見出す

JR北海道は平成28年(2016年)から、インターネット予約限定での新幹線・特急の割引を始めています。

平成29年(2017年)からは「えきねっと」で販売する「えきねっとトクだ値」に移行し、設定区間・列車を順次拡大。現在では道内全ての特急列車に設定されています。(一部の臨時列車を除く。)

JRのネット限定割引の特徴は、「席数限定」であること。

ネットでは、全ての指定席を割り引くことはしません。満席近くなると、「トクだ値」では買えなくなります。

さらに、特急北斗・おおぞら・とかちでは2種類の割引率を設定し、需要に応じて売り分けています。

さらにさらに、14日前までの予約で大幅に割り引く「お先にトクだ値」を一部列車に設定し、価格にビンカンな「早め予約」層を取り込んでいます。

こうしてネット割引に軸足を移すことで、JRはイールドマネジメントを進め、利益を確保しようとしています。


さて、この「えきねっと」では現在、新幹線や首都圏の特急列車を中心に、チケットレスのお得な商品が増えています。

令和2年(2020年)に、「新幹線eチケットサービス」が登場。ICカード1枚あれば、チケットレスで新幹線に乗車できるようになりました。

それ以前の平成20年(2008年)から、モバイルSuica限定のチケットレス商品である「モバイルSuica特急券」(モバトク)がありましたが、「eチケットサービス」は他の全国交通系ICでも使える、いわば正統進化版です。

新幹線をネット予約し、その予約をICカードに紐付けておくことで、ICで新幹線改札を通り、そのままチケットレスで新幹線に乗れる仕組みです。

チケット代はICカードの残高からは引かず、えきねっと上でクレジットカードで決済します。

「新幹線eチケット」を使った場合、料金は200円引きに。また、新幹線の「えきねっとトクだ値」もeチケットで利用可能に。新幹線では、チケットレスが主力商品になりました。

在来線でも、平成26年(2014年)の「スワローあかぎ」を皮切りに、東京都内を発着する特急列車に順次チケットレスサービスを設定。

在来線は先述の道内のチケットレスと同様で、特急券単体タイプです。別にICカード(または紙のきっぷ)で運賃を払います。

こちらも料金が100円または200円引き。また、以前はチケットレスだと「トクだ値」を使えない仕様でしたが、令和3年以降は「えきねっとトクだ値(チケットレス特急券)」が登場し、チケットレスが一番便利かつお得に利用できます。

このように、JR東日本では「交通系IC+チケットレス」がもっとも便利でお得な手段になるような戦略を採っています。


今回ICカードが使えるようになる旭川エリアでも、チケットレス商品を設定し、収益強化を図ることになるでしょう。

チケットレスが浸透すれば、いつでも割引のSきっぷから、需要に応じた値段設定ができる「えきねっとトクだ値」へと、主力商品が代替わりすることになります。

窓口や券売機に並ばないスマートなスタイル。割引し過ぎずスマートに収益を確保。そんな未来が待っているのかもしれません。

「交通系IC+チケットレス」は浸透するか?

……しかし、そううまくいくでしょうか。

チケットレスを導入しても、多くの人に使ってもらうことができなかったら……?

紙のきっぷは減らず、イールドマネジメントもままならない。交通系ICを入れた意味が、まるで無くなってしまいます。

すでにチケットレスが使える、札幌~岩見沢・苫小牧の区間の状況を見ている限り、この不安は的中しそうです。

チケットレス「先行区間」の実態

令和5年(2023年)時点で使える「えきねっとトクだ値(チケットレス特急券)」の値段は、次の通り。

  • 札幌~岩見沢:750円(35%OFF)
  • 札幌・新札幌~苫小牧:1,340円(20%OFF)

しかし、これらの区間には既に、お得なチケットがあります。

札幌~岩見沢は「Sきっぷ」が運賃込み1,980円で販売されています。往復で特急を使うなら、Sきっぷが圧倒的に安いです。

札幌~苫小牧は「すずらんオプション特急券」があり、「乗車券往復割引きっぷ」に340円を足すだけで、すずらんの自由席を使えます。

通勤・通学向けには、特急定期券「かよエール」もあります。毎日特急で往復する場合、安くなります。

(ただし、札幌~岩見沢では、通勤のかよエールよりSきっぷの方が安いです。また札幌~苫小牧でも、すずらんオプション特急券で往復する方が、通勤のかよエールより安いです。)

つまり、現状のチケットレス特急券は――

  • 札幌~岩見沢:「片道だけ特急で移動する場合」
  • 札幌~苫小牧:「片道移動の場合」または「かよエールを使わない人が特急北斗を使う場合」

――と、限られた場面でしか使いでがありません。

Kitaca定期券との組み合わせで使うぶんには、ちょうどいい値段設定ではあります。

現に、朝に札幌から岩見沢までの指定席利用が多少見受けられるほか、朝夕の特急北斗でも札幌~苫小牧間で指定席を使う人がそれなりにいます。スーツ姿の人が多く、通勤利用の割合が高いことが窺えます。

おそらく、こうした利用者にはチケットレスが浸透しているのでしょう。

このように、「今Kitacaで特急に乗っている人」だけをターゲットにするなら、これでも問題ないでしょう。

しかし、今の形のままで岩見沢以北にチケットレスを設定しても、チケットレスを「主力」にまで育てることはできません。

旭川エリアでは、チケットレスは高すぎる!

新たにKitacaが導入される岩見沢~旭川間に、同じようなチケットレス特急券を導入しても、残念ながら利用はあまり伸びない、と考えられるのです。


札幌~旭川では、Sきっぷが5,550円で売っています。往復の通常運賃が5,720円なので、「通常の値段で普通列車を使った場合より安い」という低価格です。

「えきねっとトクだ値」の設定もあり、お値段は2,860円。片道の通常運賃とまったく同額と、こちらもそうとう割安です。

これらのきっぷがある中で、果たして「交通系IC+チケットレス」で乗ってもらえるでしょうか……?

……いえ、全く期待できません。

ICカードで札幌~旭川間を利用した時点で、通常運賃2,860円が残高から引かれます。

そこに特急料金を1円でも払ったら、Sきっぷやトクだ値を使う場合より、合計金額が高くなってしまいます。

どんなに便利でも、値段が高くては使われません。

特急定期券「かよエール」を使う場合と、「Kitaca定期券+チケットレス」との比較もしてみましょう。

距離や普通列車の本数を考えると、札幌~旭川は「往復で特急を使うのが前提」の区間。片道だけ特急を使うという需要は考えにくいので、往復とも特急利用を想定します。

札幌~旭川間のかよエールでは、Sきっぷよりも安い値段にするためか、普通の定期券との差額が1万円少々しかありません。(通勤1ヶ月の場合。)

平日は毎日乗ると仮定した場合、値段の差は1乗車あたりで見ると250円程度です。

仮にチケットレスを90%OFF(230円)としてもなお、定期券との合計額は、かよエールと同等か少し安いくらいです。かよエールならいちいち予約しなくても使えるので、わざわざチケットレス特急券に切り替えるメリットは薄いです。

しかも、この比較は「通勤1ヶ月定期」での比較です。通学定期や3ヶ月・6ヶ月の定期は1乗車あたりがもっと安いので、さらにチケットレスに不利になります。

……これ無理でしょ。


途中駅であれば、チケットレスを浸透させられるかもしれません。

札幌~美唄・砂川・滝川、滝川~旭川といった区間では、Sきっぷやかよエールはあるものの、割引率はそこまで高くありません。

高速バスとの競合が無い、またはバスに対して有利な区間だから、というのが理由でしょう。

これらの区間では、思い切った値下げをすれば、チケットレスを浸透させられる可能性があります。

また、岩見沢~砂川・滝川、深川~旭川は、チケットレスを札幌~岩見沢と同じ750円に設定すれば、通勤のかよエールより「Kitaca定期+片道チケットレス特急券」の方が安くなるので――

「片道だけ特急」かつ「通勤定期利用」に限り、チケットレスの利用に期待できます。

……ただ、こういう途中区間でいくらチケットレスを推し進めても、狙い通りの効果は見込めません。

朝夕は札幌~美唄・砂川・滝川、砂川・滝川~深川~旭川といった区間での通勤通学利用が多いですが、それでも「札幌~旭川間の特急列車全体」から見れば、割合は大きいとは言えません。

多くを占めるのは、やはり「札幌と旭川」を行き来する乗客です。「札幌~旭川」のチケットレスが売れなければ、Kitaca・チケットレスを導入する意義が薄れてしまいます。

「競争」に負けないために、安いきっぷは必要

札幌~旭川では、安いチケットが設定されているために、チケットレスが割高になってしまう。それなら――

Sきっぷやかよエールを値上げすれば、チケットレスの方が安くなるから、チケットレスを使ってもらえるかもしれません。

……いえ、そう簡単にはいきません。JRには、競争相手がいるからです。


札幌~旭川間では、JRが高速バス「高速あさひかわ号」と激しく競っています。

価格はJRがSきっぷで往復5,550円、えきねっとトクだ値で片道2,860円(往復5,720円)のところ……

高速あさひかわ号は、往復運賃が4,350円、20枚つづりのスマホ回数券が1枚あたり1,840円(1往復で3,680円)です。

JRはこんなに値引いているのに、それでもバスとはけっこうな差があるのです。

たしかに、Sきっぷなどを値上げすれば、チケットレスとの差を無くせるでしょう。

しかし、値上げの結果、バスに乗客を取られたら元も子もありません。

……バスに取られるだけなら、まだ良い方です。多くの乗客が高い値段を嫌ってマイカーに流れ、そもそも公共交通を使わなくなるかもしれません。

一度離れた乗客を公共交通に呼び戻すのは、至難の業です。


定期券についても考えてみましょう。

かよエールを値上げして、「普通の定期券+チケットレス」が一番安くなるようにした場合を考えてみます。

定期利用が多い朝夕なら、道路が混むぶんJRの競争力が高いので、「高速バスには」あまり乗客を取られはしないでしょうが……

今度は、「札幌市内の住宅・下宿」との競争があります。

きっぷ代が高くなりすぎると、「特急で通ったら高い。札幌に住む方が安いじゃん。」となって、そもそも特急での通勤・通学をしなくなってしまう人が増えるでしょう。

かよエールは設定当初、もっと高かったのです。平成12・14年度(2000・02年度)の2度にわたって値下げを行った結果、下宿や一人暮らしより特急通勤・通学を選ぶ人が増え、利用を大きく伸ばしたのです。

うかつにかよエールを値上げしてしまうと、定期的に特急を使う優良顧客を手放すことになってしまいます。

チケットレスは「あだ花」で終わってしまうのか?

「特急券単体」で割り引く従来のチケットレスでは、割引できる金額に限度があります。

「高速バスの価格や札幌の家賃に対抗しつつ」、「札幌~旭川間のチケットレスの利用を増やす」には――

そう。従来のチケットレスの他に、「交通系ICカードを使った場合でも、『運賃+料金』がセットの割引きっぷを適用させる」仕組みが必要なのです。

……しかし、そんな方法があるのでしょうか?

新幹線のチケットレスでは、先述の通り運賃をICの残高から引かず、料金といっしょにクレジットカードで払う仕組みなので、「『運賃+特急料金』の合計から○%OFF」ということができます。

でも、在来線のチケットレスには、運賃部分を割り引く仕組みがありません。

在来線の「交通系IC+チケットレス」は、受け容れられずに終わってしまうのでしょうか……?

交通系ICの「センターサーバー方式」化がもたらすもの

交通系ICカードの先駆け、JR東日本の「Suica」。

平成13年(2001年)にサービスを開始したSuicaは、「0.2秒以内」というスピードで運賃精算を行い、首都圏のラッシュアワーを流れるように捌いてみせる、当時としては凄まじい速さを誇るシステムです。

高速処理を可能にしたのが、1ヶ所の拠点(センターサーバー)ではなく、改札機の側で運賃を計算して引き落とすという方式です。

交通、そして買い物を劇的に買えた、Suicaという画期。その開発に尽力した立役者の一人が、当時JR東日本に勤務していた椎橋章夫氏です。

素晴らしい功績を残した椎橋氏はしかし、現状には満足していませんでした。Suicaの「次のステップ」を、10年以上前から見据えていたのです。

「次世代のSuicaシステムに取り入れる技術はネットワーク技術であると思う。」

「2012(平成24)年7月より、クラウド型電子マネーシステムを一部のSuica加盟店で提供している。このシステムの特徴は、電子マネーの処理を端末ではなくて、センターサーバーで行なうものである。」

「端末の作りが簡素化し、大幅なコストダウンが可能となる。」

「今後は課題を整理し、駅の出改札機器にも、この分野の技術を応用していきたいと思う。」

(『ペンギンが空を飛んだ日 IC乗車券・Suicaが変えたライフスタイル』(交通新聞社、2013年)第10章より。表記は原文ママ。太字は引用者による。)


そして、Suicaが「次のステップ」を踏み出す瞬間が、やってきました。

令和5年(2023年)4月、JR東日本はSuicaの新しいシステム「センターサーバー方式」の導入を発表。

同年5月27日から、新たに北東北の在来線の一部区間でSuicaが利用可能となりましたが、この新エリアにセンターサーバー方式が導入されました。

既存のSuicaエリアも、センターサーバー方式に順次切り替えるとのことです。

センターサーバー方式では、運賃計算を改札機ではなく、サーバーで実施します。

現在の高速な通信スピードなら、サーバーで計算を行っても、これまでと同じくらいのスピードで改札の処理ができるようです。

センターサーバー方式の大きなメリットの一つが、コストダウン。システム改修時に、駅の設備の改修を最小限にできるので、費用を減らすことができます。

しかし、可能性はそれにとどまりません。

将来的には、センターサーバーをさらに新たな「鉄道チケットシステム」に繋げ、柔軟な商品設定ができるシステムを目指すと言います。

これが実現すると、たとえば――

  • 「運賃+特急料金」が一体型のeチケットを、ネットで事前購入(予約)
  • そのeチケットをICカードと紐付ける
  • その状態でICカードで改札にタッチすると、自動的にそのeチケットが適用されて改札が開く(ICの残高からはお金が引かれない)

――というようなチケットレス商品を設定できます。

既に「新幹線eチケットサービス」では先行してセンターサーバーによる処理を行っているので、先述の通り「運賃+料金」セット割引ができていますが――

在来線のICカードエリアがセンターサーバー方式に切り替わっていけば、在来線の特急でも同じことができるわけです。


JR北海道が、若干"いまさら"感のある「この」タイミングでKitacaエリアの拡大に踏み切ったのは――

このセンターサーバー方式によって、低コストでICカードを導入・維持できるから。

さらに、センターサーバー方式の柔軟さを活かして、チケットレスを拡大できるからでしょう。

早ければKitacaエリア拡大と同時に、北海道でもセンターサーバー方式が導入されることが考えられます。

そうでなくとも、新エリアにはセンターサーバー方式対応の新型機器を導入しておき、札幌近郊も順次新型への切り替えを行うことで、いつでもセンターサーバー方式に切り替えできるようにするでしょう。

その後、チケットシステムが整った段階で、「運賃+料金」タイプのチケットレス商品が登場するでしょう。

これで、「高速バスなどと競争できる価格」、かつ「チケットレスが紙のきっぷより便利になるような価格」を付けることが可能になります。

そして、札幌~旭川間の特急列車は遠からず、チケットレス利用が当たり前になっていくことでしょう。(札幌~苫小牧間でも期待できます。)

また、現在JR北海道は「北海道MaaS」の実現を視野に、データプラットフォームの開発を検討しています。

このMaaSシステムとICカード・チケットシステムを連動して、「特急列車を含む商品をMaaSアプリで買えば、ICカードで特急に乗れる」というような仕組みができるかもしれません。

今後の展望

Kitacaエリアの拡大、センターサーバー方式の登場、そしてチケットレス商品の拡張。

その先には、どんな未来が描けるでしょうか。いろいろ考えてみました。

特急列車「交通系IC+チケットレス」時代の到来

「交通系IC+チケットレス」が、札幌~旭川間の特急列車を使うスタイルの、「新しい当たり前」になる日は近いでしょう。

手間いらずでストレスフリー、そしてJRにとっても経営再建のカギに。そんなチケットレス時代のJR北海道の将来像を、予想してみましょう。

「運賃+料金」セットのチケットレス商品投入と、イールドマネジメントの強化

先述の「運賃+料金」セット割引のチケットレス商品が登場することに、大きな期待が持てます。

たとえば、札幌~旭川で、現行の紙のトクだ値と同額(2,860円)でえきねっとのチケットレス商品を投入すれば――

たまるJRE POINTも考慮すると、チケットレスが最も便利でお得になります。

かつ、バスとの競合を意識した値ごろ感も残せます。


合わせて、需要や座席数に合わせた柔軟な値段設定にすることで、イールドマネジメントの取り組みを進めることも予想されます。

たとえば札幌~旭川で、通勤などで利用が多い便や、オホーツク・宗谷は3,400円くらい(35%OFF)。それ以外は2,860円(45%OFF)にする、というように。

また、バスと競合しない札幌~美唄、バスに対して圧倒有利な札幌~砂川・滝川では、割引率を抑えて利益を確保する、というのも考えられます。

「お先にトクだ値」を閑散期などに導入するのも手です。旭山動物園や美瑛などへの観光客がターゲットになるでしょう。

収益を確保しつつ、利用者にとっても空いている列車をお得に利用できる……というような、お互いの利益になる形が理想です。

追記(令和5.9.14)

令和5年(2023年)10・11月の特定日に、札幌~旭川間に割引率55%の「お先にトクだ値」が初めて設定されることになりました。

令和5年のJR北海道では、かねてよりネット販売強化を目指してえきねっとの会員登録促進を進めており、その一環として初めて全道各地に「お先にトクだ値」を設定する運びとなり、札幌~旭川間にも設定されたという形です。

以降については現時点で不明ですが、定期的に「お先にトクだ値」が設定されるようになり、イールドマネジメントが強化されることも想定されます。

おトクなきっぷの見直し

コスト削減とイールドマネジメント強化を目指すにあたって、「いつでも割引」の「紙のきっぷ」は足かせになります。

チケットレスをほどよい価格で設定できることを前提とするならば、価格競争のためにSきっぷを現状維持する必要は無くなります。

よって、チケットレス商品が出揃った段階で、Sきっぷを値上げ、または縮小・廃止することが予想されます。

特に、バスよりもかなり有利な(またはバスと競合しない)札幌~美唄・砂川・深川では、廃止される可能性が高いと思います。

「北海道MaaS」導入後は、紙の「旭山動物園きっぷ」も廃止し、往復の特急指定席・路線バスのeチケット・旭山動物園のeチケットがセットのチケットレス商品をMaaSアプリ上で販売する、というのも良さそうです。

特急列車の指定席増加

お隣のJR東日本では、チケットレスが使える特急列車は大半が全車指定席となっています。

えきねっとのチケットレスは事前予約、つまり指定席の利用が前提なので、予約できる指定席の数が多い方が、チケットレスが便利になるからです。

また、指定席の方が日ごと・列車ごとの利用者数を把握しやすいので、イールドマネジメントがしやすい、というのもあるでしょう。

JR北海道でも、チケットレスを設定する札幌~旭川間の特急の指定席を増やす、と見て間違いありません。

実際、JR北海道は雑誌を通じ、在来線において「指定席の拡大を検討していく必要があると考えている」(『JRガゼット』2022年10月号 「特別企画乗車券における需要の変化に対する取り組み」より)という見方を示しています。

現状の特急ライラック・カムイは自由席主体の列車ですが、ゆくゆくは指定席主体に変わっていくでしょう。

指定席が増えれば、チケットレスだけでなく、旭山動物園などに向かう海外客などの団体にとっても使いやすくなる、というのもポイントです。

ただし、かよエールでの利用が多い列車は、自由席メインのままにするのも一考です。(かよエールを引き続き販売する場合は、の話ですが。)


……とはいえ、指定席への移行はある意味、現状の特急ライラック・カムイが持っている「長所」を無くすことでもあります。

ライラック・カムイは自由席が主体、かつ本数が多いので、「その時の時間などの都合に合わせて、予約無しでぷらっと気軽に使える」列車です。

指定席利用が前提になっていくと、そういう自由席ならではの気軽さは無くなってしまいます。

ただ、ネット予約・チケットレスで利用すれば、券売機・窓口を全く使わないで済みます。乗車前のバタバタした場面で、きっぷを買う順番を待ったり、券売機をいろいろ操作したりする必要はありません。

なので、今よりもストレス無く使えて、むしろそちらの方が支持される……のかもしれません。

かよエールの替わりのサービスを導入、またはかよエールをKitaca化

かよエールも自由席商品であるため、指定席のチケットレスに移行させるのも選択肢となります。

ですが、チケットレスで毎日特急に乗ると、かよエールに比べて割高となる場合も多いと思われます。最悪、札幌の下宿や賃貸に、競争で負けてしまいます。

そこで、たとえば「1ヶ月間に○回以上乗ったらボーナスポイントを付与」という仕組みを作ることが考えられます。

現状のえきねっとでは難しいですが、今後の鉄道チケットシステム、または「北海道MaaS」で実現できるかもしれません。


あるいは、かよエールを維持するのも手だと思います。

現状ではかよエールはKitacaで出せませんが、「Kitacaかよエール」を新たに導入することも考えられます。チケットレス化によって得られる効果のうち、一部はこの方式でも得られます。

自由席での利用を許容することになりますが、かよエールなら検札もラクですし、特急の利用区間・回数・時間帯はかよエールの発売枚数からおおよそ把握できます。

JR北海道はかよエールを縮小・値上げするどころか、令和5年現在ではプロ野球・北海道日本ハムの松本剛選手をイメージキャラクターに起用した広告を出しているくらいなので、かよエールは維持される可能性の方が高いかもしれません。

チケットレスを、すべての人に。JRに期待したいこと

今回チケットレスが導入されそうな地域は、札幌~旭川間・札幌~苫小牧間という、ごく限られた区間です。

でも、鉄道そして公共交通の将来のためには、全道各地に便利なサービスが広がってほしい!

そこで、「将来こんなことをやってくれないかな」と、やや願望めいたことを列挙していきます。

あくまで素人の思い付きなので、参考程度にお願いします。

室蘭方面へのKitacaエリア拡大・チケットレス拡充を

室蘭方面も特急での通勤利用が一定数ありますし、白老・登別への観光需要もあります。

そのため、室蘭までKitacaエリアとチケットレスを広げることを考えてよいと思います。

この区間は繁忙期と閑散期で需要量にかなり差があり、特急北斗と特急すずらんでも大きく違います。チケットレス導入とともに、トクだ値で柔軟な値段設定を行うことが有効です。

無人駅の利用でも便利になる、という点も大事。駅できっぷを受け取れなくても、チケットレスなら問題無し。車掌からきっぷを買い求めることなく、ゆったり過ごせます。車掌にとっても業務負荷を軽くできます。

以前すずらん3号に乗った時、きっぷの車内購入が多く見受けられたことから、糸井・錦岡・鷲別といった無人駅からの利用者も多いと思われます。

すずらん3号では、きっぷ車内購入に対応するため、車掌2人乗務の体制を敷いていました。高いコストをかけて、車内で「すずらんオプション特急券」を安値で売り歩く有様でした。

これを1人体制にできればコストを減らせますし、ネット販売なら需要・供給に見合った値段のきっぷを売れます。

QRコード乗車券の導入による、さらなるチケットレス化

ICカードが使えない区間では、当たり前ですがICカードに紐付けるチケットレス商品が使えません。

紙のきっぷしか無いままでは、時代に取り残されてしまいます。でも、利用が少ないエリアにICカードを導入するのは難しいです。

そこで、JR東日本が検討している「QRコードを活用したチケットレス」の導入を考えるべきと思います。

JR東日本では今後、改札機をセンターサーバー方式Suicaだけでなく、QRコードにも対応していくそうです。

スマホでQRを表示させるなどしてQRを読み込むと、これまたセンターサーバーを使って、QRの情報をもとにネットで手配したチケットを判定するといいます。

改札機の無い駅でも、スマホアプリ上で利用開始・終了の手続きをすることでチケットレスで使える、という方法が検討されています。

令和6年度(2024年度)下半期以降、JR東日本管内の路線に順次導入を進めるとのことです。

この方法を北海道にも導入すれば、安いコストで道内全域にチケットレスを設定できます。

スムーズでストレスフリーな鉄道の時代に向けて、道具の準備をしておこう

もうすぐ、北海道にもチケットレスの時代がやってきます。

JRを利用している方は、それに備えて今のうちに準備をしておくといいでしょう。

えきねっとの会員登録

まずは、JRの予約サイト「えきねっと」への登録。チケットレス特急券を予約するのに必要になります。

JR北海道の公式YouTubeで登録方法を案内しているので、やってみましょう。

登録は無料。現状でも紙の「トクだ値」は使えるので、旅行の良きパートナーになってくれるでしょう。

期間限定のお得な商品などもあるので、ときどきチェックしてみましょう。

モバイルSuicaのインストール

続いて、スマホで便利に使える交通系ICカード「モバイルSuica」のアプリを用意しましょう。

既に他の交通系ICカード(Kitacaなど)を持っている方や、ふだんは鉄道を使わない方も、Suicaがあればえきねっとをおトクに活用できるので、モバイルSuicaをオススメします。(既にSuicaをお持ちの場合は、そのまま使ってもOK。)

対応機種は、モバイルSuicaのWebサイトで確認できます。

アプリのインストールが終わったら、必要事項を入力して会員登録。iPhoneの場合は、ウォレットにSuicaを取り込むのを忘れずに。

JRE POINTの会員登録

えきねっとの利用でたまる「JRE POINT」も準備しましょう。チケットレス商品は多めにポイントが付くので、準備した方が圧倒的にお得です。

先ほど準備したモバイルSuica(またはお持ちのSuica)を登録して、画面に従って会員情報を入力すれば完了。JRE POINTアプリのインストールは不要です。

続いて、えきねっとに「JRE POINT会員番号」(10ケタ)を登録。これで、「えきねっとトクだ値」など指定席の利用でポイントがたまるようになります。

たまったポイントは、アカウントに登録してあるSuicaに、1ポイント=1円でチャージできます。鉄道の利用のほか、コンビニなどでの買い物でもSuicaが使えるので、有効活用しましょう。

「北海鉄旅いいじゃないか」のブックマーク

最後は自分の宣伝になってしまいますが……

当サイト「北海鉄旅いいじゃないか」のブックマークも、もしよろしければお願いいたします。

現状(本記事公開時点)では更新が遅れていますが、サイトの改良に合わせ、北海道の特急列車をチケットレスで使う便利な方法、特急列車の上手な使い方など、便利なコンテンツを増やしていく予定です。

期間限定の列車やサービスの情報なども、なるべく取り上げていこうと考えています。たま~にでいいので、サイトを覗いてみてくれたらな、と。

ここで会ったも何かの縁、ひとつよろしくお願いします。

今回のおさらい

  • 令和6年(2024年)春、Kitacaエリアが「岩見沢~旭川」と「函館~新函館北斗」に導入される。
  • Kitacaエリア拡大の目的は、おそらく「交通系IC+チケットレス」で、より便利な、より稼げる鉄道を目指すため。
  • 今の「特急券単体」のチケットレスでは、岩見沢以北の新たなKitacaエリアで特急に乗るには、値段が高くなりすぎる見通し。
  • Suicaの「センターサーバー化」が進行中。Kitacaエリアもセンターサーバー化すれば、「運賃+特急料金」セット割引のチケットレスを設定でき、使いやすい値段で販売できる。
  • 将来の札幌~旭川の特急では、チケットレスが当たり前の時代が到来するだろう。既存のおトクなきっぷの見直し、自由席主体から指定席主体への変更が予想される。
  • チケットレス時代に向けて、えきねっと・モバイルSuica・JRE POINTの準備をしておこう。
参考文献
JR北海道 令和4年9月14日ニュースリリース「【社長会見】ICカードKitacaエリアを拡大します! ~2024年春、函館・旭川各エリアでKitacaサービスを開始します~」(https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/220914_KO_Kitaca.pdf)
JR北海道 令和5年4月3日ニュースリリース「令和5年度事業計画について」(https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/230403_KO_R5jigyoukeikaku.pdf)
JR北海道 平成23年2月9日ニュースリリース「もっと便利に、さらに快適に 特急定期券『かよエール』は累計発売枚数まもなく10万枚」(https://www.jrhokkaido.co.jp/press/2011/110209-3.pdf)
JR東日本 令和2年2月4日ニュースリリース「『新幹線eチケットサービス』が始まります!」(https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20200204_KO_e-ticket.pdf)
JR東日本 令和5年4月4日ニュースリリース「新しいSuica改札システムの導入開始について」(https://www.jreast.co.jp/press/2023/20230404_ho02.pdf)
JR東日本 令和4年11月8日ニュースリリース「QRコードを使用した新たな乗車サービスの導入について」(https://www.jreast.co.jp/press/2022/20221108_ho03.pdf)
国土交通省 令和2年12月25日報道発表資料「JR北海道、JR四国等に対する支援を継続・拡充します」(https://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo05_hh_000099.html)
竹内健蔵(2018)『交通経済学入門(新版)』有斐閣
椎橋章夫(2013)『ペンギンが空を飛んだ日 IC乗車券・Suicaが変えたライフスタイル』交通新聞社
JR北海道 鉄道事業本部 営業部 商品計画グループ グループリーダー 伊藤修平「特別企画乗車券における需要の変化に対する取り組み」、『JRガゼット』2022年10月号、交通新聞社
「Kitaca 利用エリアを函館・旭川に拡大へ」(https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20220915/7000050669.html)、NHK NEWS WEB、令和5年7月18日閲覧
鈴木淳也「『センターサーバ方式Suica』に関する疑問をJR東日本に聞いた」、Impress Watch、令和5年7月18日閲覧

「素人流・鉄道観察」のトップに戻る

当サイトトップページに戻る