快速エアポート向け車両 / 北の特急(+α)図鑑
ここでは、札幌エリアの一般型電車のうち、主に快速「エアポート」で運用される6両固定編成の電車を紹介します。
733系3000番台
平成26年に登場した新たな北のエース
北海道を代表する人気列車・快速「エアポート」の混雑を緩和すると同時に、特急型電車でのエアポートの運行を取りやめるために製造されたのが、733系3000番台です。
平成24年の学園都市線電化のときに新登場した733系(基本番台)と同様の車両で、4号車は「uシート」、自由席はすべてロングシートです。
それまでの車両との大きな違いが、雪切室がないこと。雪切室とは、床下の機械を冷やすために取り入れる空気から雪を取り除くための空間です。雪が混じった空気が床下に行ってしまい、トラブルとなるのを防ぎます。しかし、全閉式主電動機という新技術によって、雪切室が要らなくなったぶん客室が大きくなり、輸送力がアップしました。
大荷物でも快適に過ごせる車内
4号車「uシート」は、エアポートとして運行されるときに指定席となります。座席は特急列車のグレードアップ指定席にこそ劣りますが、座り心地は快速列車の指定席としてはきわめて高いです。足を置くスペースが広く、荷物置場があるのもポイント。
自由席は、デッキの扉がないロングシート。座り心地はさすがに「uシート」ほどではありませんが、詰め物が低反発となっています。デッキがなく、通路が広いため、大きなキャリーバッグでも混雑していない限り邪魔にはなりません。
散々だった前評判とは裏腹に、指定席でも自由席でも空港への行き帰りがラクで楽しくなる車両です。
車内設備紹介
指定席「uシート」(4号車)
uシートの座席は、特急列車と同じくらいの質のモケット(布)を使っている座席で、シートピッチは1030mmと特急指定席を超える広さです。
茶色のモケットなど落ち着いた配色の内装が、空港への素敵なひとときを演出します。
客室には1か所ずつ荷物置場があります。キャリーバッグなどの大きな荷物でも置ける広さがあります。大荷物は荷物置場へ、手荷物は膝の上、または荷棚に置いて、広々快適な旅をお楽しみください。
自由席(1・2・3・5・6号車)
自由席は733系基本番台と同じで、すべてロングシートです。札幌から空港までの37分間ずっと座っていても疲れづらい、低反発の詰め物が使われています。
北海道の広々とした草原を思わせる緑のモケットが気持ち良い室内は、広々とした印象。デッキのない構造と広い通路は、大荷物での利用にも嬉しいところ。大きなキャリーバッグを持っていても、座席に座ってバッグを手で押さえておけば大丈夫。
その他
4号車は、快速エアポートの時だけ指定席になります。普通列車・区間快速列車として運行される区間では、自由席です。入口の上に、指定席か自由席かが表示されています。
乗降口はノンステップとなっています。車内に段差はありませんが、車両の床とホームとの段差が13cmほどありますので、足元にご注意ください。
エアカーテンが、ドアから入り込む冬の寒風を遮ります。でも限度があるので、ドアボタンが使える場合はこまめにドアを閉めてください。
3号車には、車いす対応の洋式トイレがあります。スペースは車いすでもそのまま入れる広さがあります。
中には、おむつ交換台が備え付けてあります。小さなお子様をお連れの方も安心です。
1号車にも洋式トイレがあります。こちらは車いす対応設備やおむつ交換台はありません。
設備・性能一覧
733系3000番台の設備一覧
←新千歳空港 1号車 | 2号車 | 3号車 | 4号車 | 5号車 | 6号車 小樽→ |
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自由:46席(ロングシート) | 自由:52席(ロングシート) | 自由:48席(ロングシート) | 指定:43席 | 自由:52席(ロングシート) | 自由:47席(ロングシート) |
- | - | - |
車掌は、快速エアポート以外の普通・区間快速列車では、列車最後尾に乗務されます。
性能一覧
車体 | ステンレス鋼製 |
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最高速度 | 120km/h |
起動加速度 | 2.2km/h/s(0~60km/h、応荷重装置:~定員164%)、1.3km/h/s(0~130km/h) |
MT比 | 2M4T |
制御方式 | IGBT-VVVFインバータ制御 |
ブレーキ | 回生併用電気指令式空気ブレーキ 全電気ブレーキ 応荷重装置 |
参考文献
- 北海道旅客鉄道(株)車両部計画課(車両開発)新車プロジェクト 泉弘之「JR北海道733系通勤形交流電車」、『鉄道ジャーナル』2012年6月号、鉄道ジャーナル社
- 北海道旅客鉄道(株)車両部計画課(車両設計)新車プロジェクト 片岡健一・山口義貴「733系3000番台」、『鉄道ファン』2014年10月号、交友社
721系(6両固定編成)
空港アクセス向けに設計されたJR北海道初の新形式電車
721系は、JR北海道が初めて導入した一般型電車です。通勤通学の混雑を考えて片側3ドアとなった一方、寒さ対策のためデッキがあり、車内は空港利用者が快適に過ごせるようクロスシート主体という、JR北海道ならではの仕様となっています。
国鉄時代に投入された電車を大きく上回る性能を持っており、所要時間短縮・列車の増発が実現しました。
721系は仕様を変えながらも、昭和63年から平成15年にかけて製造されました。快速エアポートに現在でも使われているのは、平成3年以降に製造された車両から成る、uシート車両を連結した6両固定編成の3000・4000・5000番台です。
新快速並みのサービスも混雑にはやや弱い
4号車「uシート」は、733系3000番台と同様にエアポートでは指定席となります。特急と肩を並べる座席に、広いシートピッチ。4000・5000番台のuシートは座り心地がとても良く、気分爽快で空港まで移動できます。3000番台のuシートはキハ261系基本番台の普通車並みの席で、快速列車の指定席としてはハイグレードですが、他の車両のuシートに比べればやや劣ります。
自由席はクロスシート主体。基本的にデッキ付きですが、平成15年製造のエアポート向け8次車は、731系同様にデッキのない構造となっています。しかし、デッキのある車両が多く、通路も狭いので、大荷物だと少々困ってしまいます。
料金不要の列車としては関西新快速並みの内装を誇り、日本全体で見ても高いサービスレベルを誇る721系ですが、近年はエアポートの混雑が激しくなり、自由席では弱点が浮き彫りになってしまっているのが現状。
車内設備紹介
721系6両固定編成には、平成3~4年製の3000番台と、平成5~13年製の4000・5000番台があります。
4000・5000番台の指定席「uシート」(4号車)
4000・5000番台の4号車は、平成15年製の8次車です。車両全部が「uシート」となっています。特急列車と同等の設備を誇り、シートピッチは1030mmと特急指定席を超える広さです。
「ゆとりやなごみの感じられる空間」がコンセプトになっており、高級感のある落ち着いた配色がそれを体現しています。
客室には1か所ずつ荷物置場があります。キャリーバッグなどの大きな荷物でも置ける広さがあります。大荷物は荷物置場へ、手荷物は膝の上、または荷棚に置いて、広々快適な旅をお楽しみください。
3000番台の指定席「uシート」(4号車)
3000番台のuシートはキハ261系基本番台の普通車と同様の座席。他のuシートよりは椅子が固く、居心地は若干劣ります。シートピッチは他のuシートと同じく1030mmです。
座席は鮮やかな青と赤。新千歳空港駅とイメージカラーを統一することで、駅と車両が一体となって空港アクセスのイメージをデザインしています。
3000番台のuシートにも、荷物置場があります。
自由席(4000番台の3号車、5000番台の2・3・5号車)
自由席のうち、平成15年製の8次車は、デッキがないセミクロスシートとなっています。扉の近くが2人掛けのロングシート、残りがクロスシートです。
青系の配色の座席がクール。内装は清潔感や明るさがあります。シートピッチは関西の新快速と同じ910mmです。
3号車の車いすスペースの隣だけ、跳ね上げ式の一人がけシートがあります。ここに座る気が起きないのはボクだけでしょうか。
自由席(4000番台の1・2・5・6号車、5000番台の1・6号車、3000番台の1・2・3・5・6号車)
8次車以外の自由席は、デッキ付きのクロスシート。他の721系(の大半)と同様の茶色いシートで、シートピッチは910mmです。
通路が狭く、デッキが付いているので、大荷物だと困ります。
その他
4000・5000番台の場合、uシートの入口には、指定席か自由席かを表示するパネルがあります。
4000・5000番台の3号車には、車いす対応の洋式トイレがあります。場所は先述の跳ね上げ座席の向かいです。
中には、おむつ交換台が備え付けてあります。小さなお子様をお連れの方も安心です。
4000・5000番台の1号車、および3000番台の1・4号車のトイレは、和式トイレです。車いす対応設備やおむつ交換台はありません。
設備・性能一覧
721系5000番台の設備一覧
←新千歳空港 1号車 | 2号車 | 3号車 | 4号車 | 5号車 | 6号車 小樽→ |
---|---|---|---|---|---|
自由:48席 | 自由:56席(うちロングシート16席) | 自由:55席(うちロングシート18席・跳上1席) | 指定:43席 | 自由:56席(うちロングシート16席) | 自由:47席 |
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車掌は、快速エアポート以外の普通・区間快速列車では、列車最後尾に乗務されます。
721系4000番台の設備一覧
←新千歳空港 1号車 | 2号車 | 3号車 | 4号車 | 5号車 | 6号車 小樽→ |
---|---|---|---|---|---|
自由:48席 | 自由:48席 | 自由:55席(うちロングシート18席・跳上1席) | 指定:43席 | 自由:48席 | 自由:47席 |
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車掌は、快速エアポート以外の普通・区間快速列車では、列車最後尾に乗務されます。
721系3000番台の設備一覧
←新千歳空港 1号車 | 2号車 | 3号車 | 4号車 | 5号車 | 6号車 小樽→ |
---|---|---|---|---|---|
自由:48席 | 自由:48席 | 自由:47席 | 指定:43席 | 自由:48席 | 自由:45席 |
- | - | - | - |
車掌は、快速エアポート以外の普通・区間快速列車では、列車最後尾に乗務されます。
性能一覧
5000番台 | 4000番台 | 3000番台 | |
---|---|---|---|
車体 | ステンレス鋼製 | ||
最高速度 | 120km/h | ||
起動加速度 | 2.2km/h/s(応荷重装置あり) | ||
MT比 | 2M4T | 2M4T(平成24~25年の更新以前は4M2T) | |
制御方式 | IGBT-VVVFインバータ制御 | GTO-VVVFインバータ制御 | IGBT-VVVFインバータ制御(平成24~25年の更新以前はサイリスタ位相制御) |
ブレーキ | 回生併用電気指令式空気ブレーキ 応荷重装置 | 発電併用電気指令式空気ブレーキ 応荷重装置 | 回生併用電気指令式空気ブレーキ 応荷重装置(平成24~25年の更新以前は発電併用電気指令式空気ブレーキ) |
参考文献
- JR北海道運輸部運用車両課 太田利之「721系近郊型電車6次車について」、『Rail Magazine』1994年3月号、ネコ・パブリッシング
- 北海道旅客鉄道(株)運輸部運用車両課 佐藤肇「721系8次車」、『鉄道ファン』2003年12月号、交友社
- 平石大貴「北海道における近郊型・通勤型電車のあゆみ 711系電車・721系電車編」、『鉄道ピクトリアル』2013年12月号、電気車研究会
- 「721系F-3102編成+F-3202編成がVVVF化~モハ720が形式消滅に」(http://fortysonseason.blog.fc2.com/blog-entry-1147.html)、『北海道の鉄道情報局』、平成28年12月1日閲覧
エアポート向け車両が使われる列車
733系3000番台や721系6両固定編成が使用されるのは、以下の列車です。
- 快速「エアポート」
- 函館本線(小樽~札幌~岩見沢) 区間快速・普通列車
- 千歳線 普通列車
- 学園都市線(札幌~北海道医療大学) 普通列車