「ゲニウス(北)の北海鉄旅いいじゃないか」

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みちのく最速は東北新幹線ではない?(平成28年5月16日)

なんかこのコーナーではずーっとおカタい話ばっかり(しかも独断偏見マシマシ)だったので、今回は少しおちゃらけたお話をば。

おちゃらけたというか、ちょっとだけ空想科学読本めいた感じでしょうかね。

今回の題材は、東北新幹線です。結局今回新幹線の話です。なかなか新幹線から離れられませんな。まあ時期だから仕方あるまい。

では始めます。肩の力を抜いてぼーっと読んでください。


東北新幹線は、1982(昭和57)年に大宮~盛岡間が開業、その後、建設反対運動や整備新幹線区間のうんたらかんたらなどの紆余曲折を経て、南は2000(平成12)年までに東京まで、北は2010(平成22)年までに新青森まで延伸され、全線開通を達成しました。

当初は210km/hだった最高速度は、1985(昭和60)年に240km/hに、1997(平成9)年に275km/hに、2011(平成23)年には300km/hまで引き上げられました。東日本大震災で大きな被害を受け、運休や減速運転を余儀なくされましたが、9月には通常ダイヤに戻り、翌々年にはさらに最高速度が320km/hにまで上がりました。

当初より100km/h以上の速度向上を実現した最大の要因は車両。国鉄時代に設計された200系から、E2系、そしてE5系、と主役が代替わりしていき、そのたびに大幅な車両性能の向上が図られました。

在来線(東北本線)の時代には考えられもしなかったような大幅な高速化を実現した東北新幹線。越河や奥中山に行く手を阻まれていた蒸気機関車時代からは隔絶の進歩を遂げた東北本線ですが、新幹線にバトンを渡し、さらに革命的な速さを手に入れました。

開通後も東北新幹線は進化を続け、現在では東京~新青森間を最短2時間59分で結びます。平均表定速度は、実に239.2km/h

他の列車と比較してみましょう。日本の在来線歴代最速列車は、我らがスーパー北斗。所要時間は同じ2時間59分でした(現在は3時間27分……orz)が、平均表定速度は106.8km/h。新幹線というツールのいかに圧倒的かがわかるというものです。

速度なら、単純に飛行機の方がもちろん速いのですが、飛行機には空港アクセスと搭乗手続きの時間があります。それを込みで考えると、新幹線が速さで圧倒しています。いかな京急でも、この時間を短縮するのには限度があります。

こうして、東北新幹線は「みちのく最速」の座をほしいままにし、東北地方の振興に大きく寄与したのでした――


……というのが、通史ですね。しかし、歴史を纏めようとする者は、通史以外の歴史に目を背けることを許されません。

歴史というのは、たったひとつの発見によって覆されることが少なくありません。恐竜の最期、中国・殷王朝の存在、聖徳太子の不存在……。ひとつのことを真実と決めつけては、本当の「真実」を見失いかねないのが、この世界の常です。

実は、東北最速の称号を持ちうる者は、他にもうひとつあります。


皆さんは、「ドラえもん」という漫画をご存知でしょうか。まあ知ってるよね。もし知らなかったらググれ。

今は亡き藤子・F・不二雄氏の作品で、漫画単行本は45巻を数えます。この他大長編多数、さらに未収録作品を拾った単行本「ドラえもん+」も発売されています。全世界に多数のファンを持つ、日本の誇る名作漫画のひとつです。

……そう。このドラえもんこそ、みちのく最速のもうひとつの可能性です。

どういうことか。では皆さん、単行本5巻を開いてください。お手元にない方は急いで書店or古本屋へ。

今回問題になるエピソードは、巻頭の「のろのろ、じたばた」という話です。

このエピソードでは、ひみつ道具の「クイック」を飲んだドラえもんが、1日のうちに東京~青森を徒歩で往復しています(18頁参照)。

これだけで腹がよじれそうなくらい面白いエピソードですが、この話には他にも笑える部分が詰まっています。ボクが思うに、「ライオン仮面」「さようなら、ドラえもん」に並ぶ名作です。

5巻には他にも「ドラえもんだらけ」など珠玉の作品が載っており、「野郎オブクラッシャー」「戦争ならもうすぐ終わるよ、日本が負けるの」など名言も満載。オススメの1冊です。

※この段落の挿絵に限り、転載等の二次利用はダメとします。


では、この「ドラえもんの東北決死行」を検証してみましょう。

そのために、大体の時間と距離を推定してみます。研究ではないので、だいたいでオーケーってことで。

距離はカンタン。のび太の家は東京都練馬区にあるという設定なので、練馬区から青森市までの距離を算定すればOK。面倒なのでYahoo!地図で距離を出してみる(「練馬区」から「青森市」まで、つまり両役場間の距離を出すという乱暴な計算……)と、一般道経由で725kmと出ました。まあ近年完成した国道のバイパスとかもあるでしょうが、アバウトな距離を出すのが目的なので無視。

時間はちょっと面倒ですね。順番にいきましょう。

まず、エピソード終盤でのび太のパパが帰宅してくるシーンがあります。単行本初版発行が1974年なので作品の舞台はそれ以前、よって当時は週休2日制定着前ですが、パパは夕方に帰宅しており、「半ドン」の土曜日ではないと考えられることから、曜日は平日であると推測されます。

ということは、のび太はこの日、普通に学校に行っているものと考えられます。実際、このエピソード内で宿題に取り組んでおり、勉強嫌いののび太が休日に勉強やるワケがないので、ここからも平日であることを裏付けることができます。

続いて時刻。のび太は漫画では小学4年という設定(注:アニメでは5年生である点に留意)なので、5~6時間の授業を受けた後。当時はゆとり教育なんて言葉はありませんから、6時間授業の方が多いはずなので、おそらくは6時間授業を前提にしているでしょう。ということは、事案発生は午後3時半ごろといったあたり。

ではラストシーンの時刻はいつごろか。まず、話の途中でのび太のパパが仕事から帰ってきます。よって時刻はおそらく6時以降、どんなに早くても5時でしょう。また、ラストシーンを見るに、「あの様子」では夕食はまだでしょうから、遅くても7時。間をとってだいたい6時半ごろでしょうかね。

以上から、所要時間は3時間程度と推測。

と、ということは……

ヤツは、片道1時間30分という驚異的なタイムを叩き出していることになります。

( ゚д゚)ポカーン

平均速度を割り出してみると、725(km) / 1.5(h) = 483.3km/h……。新幹線が裸足で逃げ出す速さですね。というか、リニアすら負かしてしまう可能性のあるスピードです……。

ポポポポポ( ゚д゚)゚д゚)゚д゚)゚д゚)゚д゚)ポカーン…

まだ山陽新幹線すら全通していない時代に、新幹線どころかリニアに匹敵する速さで奥州を駆け抜け、みちのくのアンブレイカブルレコードを樹立した22世紀のタヌキ ネコ型ロボットの激走があった。これは、まさに驚異と言わざるを得ません。


でも、ちょっと待ってください。

これ、ドラえもんの限界、超えてないでしょうか

出力面では、おそらく問題はないと思われます。出力が129.3PS、自重(というか体重)が129.3kg。同じ最高速度130km/hだったJR北海道キハ281系・キハ283系が1両あたり710PS、同キハ261系が920PSですが、こやつらの車体重量は40トンを超えています。パワーウェイトレシオで見たら、まさに「月とスッポン」。しかもドラえもんの足は数ミリですが宙に浮いているので、摩擦はゼロ。500km/h近い速度を出すパワーはあると思います。

問題は、そのパワーを支える設計強度です。ドラえもんの体は、この超スピードに耐えられるのでしょうか。

レッツシンキング。公式設定によれば、ドラえもんがネズミに驚いて逃げる速さが129.3km/hだそうです。最も嫌いであるネズミから逃げるということは、ほぼ全速力でしょう。下手をすると「火事場の馬鹿力」で限界を超えています。したがって、ドラえもんの最高速度は速くてもだいたい130km/h程度であると考えられます。奇しくも現在のJR在来線と同じ水準ですね。

となると、ドラえもんの設計最高速度は良くて145km/hというところではないでしょうか。

つまり、ドラえもんはこの時、(常に同じ速度で走っていたとしても)限界の3倍以上のスピードを出して走っていたことになります。界王拳じゃないんだから……。

しかしここでポイントなのが、ドラえもんは元々「子守りロボット」として製造されているという点です。

任天堂のゲームは、子どもがハードに使用することを想定して作られているといわれています。現に、10~15年モノの我が家のプレイステーション2が昨年ついに音を上げた一方で、それとほぼ同時期に購入し、それよりも使用頻度が高く、しかも屋外などより過酷な環境で使い、何度となく床や地面に落としたゲームボーイアドバンスが現役です(最近はほとんど出番ないけど)。

同様に、ドラえもんについても、子どもの突飛な行動などに起因する過酷な使用環境を考慮し、普通のロボットよりも頑丈に設計されているということは想像に難くありません。事実、大長編で見せてくれたあの石頭は、その頑丈さを証明しています。ときどき簡単に故障したりしてるけどキニシナイ。

というわけで、まあ無事では済まなかったでしょうが(人間で言うところの激しい筋肉痛に襲われたに違いない)、壊れはしなかった、というのにも一応は納得がいくかな、と。


以上でくだらない空想を終えたいと思います。あんなタヌキにそんな猛スピードで走られてたまるかっつーの、てなハナシです。

でも、「もし新幹線が同じくらいの速さで走ってくれたらな」とは考えますね。要するに東北・北海道新幹線がリニアだったらいいのにな、と。

平均表定速度483.3km/hで東京~札幌の1074km(東北・北海道新幹線の営業キロ)を走ったら、所要時間は何と2時間13分。すげぇ。

当サイトでは、所要時間の長さを理由に北海道新幹線に文句をつけまくり、「札幌にはいらない」と何度も申し上げてきましたが、こんなに速い新幹線なら是非ほしいですね。

というわけで、誰かリニア用に2本目の青函トンネル掘ってくんねえかなぁ。

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