平成28~29年のJR北海道の自動放送の変化(平成29年9月14日)
再起に向けて車両の更新や安全強化などを進めるJR北海道。ここ2年ほどは、キハ261系の増備や731系の更新など車両面でのニュースが多いです。
一方、車両以外でも変化がありました。それが、自動放送です。在来線特急列車と、札幌近郊の普通列車の放送が、いろいろと改められたのです。
どのような点が変わったのか、ちょっとまとめてみます。
※この記事は平成28年7月15日に公開した記事「ダイヤ以外も変わっていく北の鉄道たち」を削除したうえで、自動放送に関する部分を再掲し、内容を変更・追加したものです。URLは削除記事のものを継承していますが、一応「新規記事」ということにしてください。
二回も変化した、札幌到着直前の放送
一番気になる変更点が、札幌駅到着直前の車内放送。平成28年3月のダイヤ改正の前後に、内容がガラッと変わりました。
函館線・江別発手稲行きを例にとります。従前の放送はこんな感じ。
「次は、札幌に停まります。この列車は、函館線、手稲行きです。学園都市線、地下鉄南北線・東豊線はお乗換えです。この先、揺れることがありますので、お気を付けください。」
これが、平成28年に次のように変わりました。
「次は、札幌に……(同じなので中略)……お乗換えです。快速列車・区間快速列車・普通列車へお乗換えの方は、駅の電光掲示板で時刻と乗り場をお確かめください。(以下省略)」
……なんと、車掌による乗り換え案内のうち、普通・快速列車の部分を端折ってもいいような内容になったのです。
ワンマン列車では、車掌がいないので、もともと同様の放送をやっていました。ですが、同じようなことを札幌駅でもやってしまったのです。
これは、列車によっては札幌到着までの時間が短く、車掌がすべての列車の乗り換え案内を終える前に列車が札幌駅に着いてしまうというのを解消する目的があったものと思われます。もちろん、単純に車掌の負担軽減の意味もあるとは思います。
ただ、「駅の電光掲示板見ろ」なんてのは突っ放した印象になっちゃいますから、せめてということなのでしょう、「学園都市線は7番線から10番線」などと、ある程度は発車番線を案内するようにしてあります。ただ、手稲方面から江別方面に抜ける列車に乗ると「千歳線は2番線から10番線」なんてぶったまげた案内になってました。いくらなんでもアホかとバカかと。
ところが、普通列車の車掌の多くはこの放送を「○○線はお乗換えです」まででぶった切って、乗り換え案内を始めるようにしていました。車掌は今まで通り全列車の案内をするようにしていたようで、そのための時間を確保するために放送を途中切りすることを選んだようです。
これはつまり、車掌のしゃべる量を減らして駅到着までに間に合うようにするという目論見が、完全に外れたことを意味しています。
さらに、このせいで札幌到着前の英語放送が端折られるという問題も発生。国際観光都市として花開きつつある札幌の列車で英語放送が流れないのはかなりまずく、この点でも変更は失敗でした。
結局、変更からわずか1年後の平成29年3月改正の前後に、放送は元に戻りました。
「ホームは、右側です」……駅到着直前の放送
駅到着前の車内放送では、「まもなく、○○です。出口は、△側です。」という放送がされていましたが、平成29年3月改正のあたりから普通・快速列車は「ホームは△側です」という表現に変わりました(特急は従来通り)。
この言い回しは、前年にデビューした「はこだてライナー」で先行して取り入れられていましたが、札幌エリアにも伝播しました。。
言葉を変えたことでどう伝わり方が変わるか。「出口は右側」と言われると、「ホームに降りた後に、右側に向かう」という解釈が生まれてしまうのです。「ホームは右側」という表現であれば、誤解するような解釈はほとんどないと思います。
非常に細かい部分ですが、少しでも確実に情報を伝えようとするJR北海道の姿勢が窺えます(なんで特急では採用していないのかは謎)。
「ドア横の『開ける』のボタンを――」……半自動ドアの放送
札幌近郊のロングシートの電車では、駅での長時間停車の際のドアボタンの案内放送(車内+車外)が流れますが、この内容も変わりました。
今までは、「ただいま、お客様のボタン操作で、ドアの開閉ができます。お乗りになりましたが、車内のボタンでドアをお閉めください。なお、お閉めの際は、まわりのお客様にお気を付けください。」というような内容でした。
現在は、「ドア横の『開ける』のボタンを押して、ドアを開けてください。お乗りになったら、車内のボタンでドアを閉めてください。なお、閉める時は、まわりのお客様にお気を付けください。」という感じです。
そう、言い回しが易しくなっています。
スピーチなど、情報や意見を伝える時は、一般に「平易な表現の方が伝わりやすい」と言われています。JRの目指すものは、まさにこの表現の分かりやすさでしょう(当サイトの課題でもあります……苦笑)。
これで、まだ難しい言葉が分からない子どもや、日本語を学び始めたばかりの外国人などにも、わかりやすい放送になりました。
中国語放送が開始
特急列車も車内放送がいろいろ変わりました。
「停車時間はわずかです。(中略)早めのお支度をお願いします」というような放送が追加され、乗り過ごしをしないよう工夫がされました。
より顕著な変更は、中国語の放送が追加された点です。
アホみたいな勢いで増える中国人旅行客に対応するため、北海道内では様々な企業が動いています。JRも例外ではなく、ついに中国語の導入に踏み切りました。
平成28年3月改正の頃は、中国人旅行客の多い登別駅の到着前放送など、駅を限定して放送していました。なお、臨時「北斗」でも、車掌の肉声放送(日本語)の後に英語が流れ、駅によっては中国語が流れるようになっていました。
ただ、「エアポート」との乗換駅である南千歳では放送が流れていませんでした。中国人旅行客はターミナル駅や乗換駅も使うわけで、それらの駅で放送がないというのは画竜点睛の感があります。
と思っていたら、平成29年3月改正のあたりから、全駅で中国語放送が開始されました。
それにしても、ホント多いですよね、中国人の客。需要が大きいから、中国語が流れるようになるのも、当然の成り行きといったところでしょうかね。
札幌駅ホームで英語放送開始
最後に駅の放送です。ついに、やっと、ようやく、札幌駅のホームにも英語放送が導入されました。
札幌駅では、ずいぶん前からコンコースでの英語放送をやっています。また、札幌駅以外の札幌近郊では、快速エアポートの停車駅はすべて、エアポートと特急に限りますがホームでの英語放送が導入されています。なのに、大ターミナルのはずの札幌駅のホームだけは、なぜか英語放送がないままでした。
札幌駅のホームもやはりエアポートと特急に限るようで、普通・区間快速の発車時は英語放送が流れません。でも小樽行きの区間快速にも結構外国人が乗ってるので、ちょっと考えた方がいいかもしれません。
鉄道の世界で、路線網や運行体系が変わった以外で、これだけ自動放送の変化をぽこじゃが生み出す会社というのは、あまり無いのではないでしょうか。JR北海道が生き残りをかけて必死にもがいている様子が見て取れます。
「なんだそんな重箱の隅をつつくように、言語学者でもあるまいし」とか言われそうですが、一応これでも受験戦争時代は国語が得点源だったもんで、たまには強みを生かしたいんです。
というアホな話はさておき、こういう言い回し一つでいろいろ話が膨らむので、自動放送鉄ってのもなかなか楽しいもんですよ。皆さんもいかがですか?