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DECMO(H100形)が意外と速い件について

記事公開:令和3年(2021年)1月24日

令和3年(2021年)3月のダイヤ見直しで、JR北海道の普通列車向け車両「DECMO(H100形)」が旭川・苫小牧の近郊での運行を開始します。

DECMOは、JR北海道が非電化ローカル線で運用している老朽車・キハ40形を置き換えるための車両です。令和2年(2020年)ダイヤ見直しで15両がデビューし、最初は函館本線の(札幌~)小樽~長万部間に導入されました。今回はそれに続く第2弾として、30両が投入されます。

JR北海道はライフサイクルコストの考え方に基づく車両の置き換えを行ってこなかったため、多くの路線でいまだ大量のキハ40形が幅を利かせています。

しかも、JR北海道の経営は知っての通り火の車。需要の少ない列車で使う車両を新たに開発する余力は全然ありません。

運賃値上げなどによりどうにか資金を工面し、設計についてはJR東日本と共通の設計図を使うことでクリア。そうして生まれたのがDECMOです。

DECMOは令和3年度にも30両が導入される予定で、3年間で一気に75両の大所帯となるわけです。

今回の記事では、DECMOが今回もたらす変化と、DECMOに乗車した時の感想をちょこちょこ書きます。

※本記事は、当初「DECMO続々登場! 道内ローカル気動車の今後は?」というタイトルで公開しており、当初は令和3年度以降のDECMOの動向を予想する内容も掲載していましたが、後日読み返したところ内容が酷く公開に堪えないと感じたため、当該部分を削除し、合わせて現在のタイトルに改題しました。(令和3.10.9)

令和3年ダイヤ見直しでの導入線区

まずは、今回増備されたDECMOがどんな辞令を受け取るのか、軽く説明します。ご存知のこととは思いますが一応。

旭川方面:宗谷本線の旭川~名寄に集中投入。石北本線にも

今回のダイヤ見直しでは、DECMOは旭川方面と苫小牧方面に導入されます。

旭川方面では宗谷本線の旭川~名寄間に集中的に投入。この区間のほとんどの普通・快速列車が、DECMOでの運転となります。

ただし、上下計3本だけDECMO以外の車両が残ります。うち2本は、キハ54形の名寄以北への送り込みを兼ねた運用でしょう。名寄から北は従来通りキハ54形を使うと予想されます。したがって、キハ54形を旭川運転所に入出庫させるのに旭川~名寄間でもキハ54形が走る、と考えられます。

残り1本は同じく送り込みか、あるいは旭川~永山間の区間列車と予想します。車両は同じくキハ54形と予想します。

旭川~名寄間の普通・快速列車はDECMOとキハ54形の2形式に統一ということになり、キハ40形は撤退が確実です。

このほか、石北本線の旭川~上川間でも2本だけDECMOが充てられます。

苫小牧方面:苫小牧以西にのみ導入。東室蘭~長万部は普通列車オールDECMO化

苫小牧方面では、室蘭本線の苫小牧~東室蘭~長万部間・東室蘭~室蘭間に投入。

東室蘭~長万部間はすべての普通列車がDECMOになります。

また、苫小牧~東室蘭~室蘭間でも普通列車の約2/3がDECMO化されます。DECMOは距離の短い東室蘭~室蘭間がメインとなり、苫小牧~東室蘭は引き続きキハ143形が中心となると予想しています(延々妄想のような予想を垂れ流すのもダサいので詳細は省きます)。なので、数の上では2/3ですが、走る距離としては半分程度かなと思います。

逆に、苫小牧~岩見沢間や、石勝線・日高本線には、少なくとも今回は投入しないようです。

意外と速い! DECMO投入によるスピードアップ

それでは、今回のDECMO投入による所要時間面の変化を見ていきます。

際立つのは、DECMOの「速さ」です。


今回DECMOが投入される列車の多くで、所要時間が短くなるようです。

特に大きく変わるのが、宗谷本線。DECMOの性能を活かしたダイヤとし、単線区間のダイヤ調整も合わせて行うことで、旭川~名寄間の所要時間を平均13分、最大31分短縮するとのこと。

ただし、駅がいくつか廃止され、停車駅が減ることによる所要時間短縮もここに含まれています。

DECMO効果が約11分、駅廃止効果が約12分(おそらくダイヤ組成の基本になる「基準運転時分」での比較)なので、だいたい半分がDECMOの性能による時短のようです。

この区間の普通列車はキハ40形、それも製造当初からの非力なエンジンを積んでいるタイプ(700番台)でも走れるダイヤにしてあるものと思います。事実、平成28年に乗車した快速なよろ1号はそうでした。

それをDECMO前提のダイヤに変えれば、当然スピードアップできます。DECMOはキハ40形よりも全ての速度域で加速に優れるからです。

さらに、車両の最高速度もキハ40形が95km/hのところ、DECMOは100km/h。宗谷本線の名寄以南の線内最高速度は120km/hなので、DECMOは当然100km/hで走れます。線形も良い部類なので、存分に高速運行できるでしょう。

(これらを逆に言えば、今までがそうとう遅かったということでもありますが。)

室蘭本線でも、同様に時短が図られます。苫小牧~室蘭間は平均4分、全列車がDECMO化される東室蘭~長万部間は平均8分短縮となります。

なお、利用者目線でどれくらいの恩恵があるかの分析は、ダイヤ見直しの特集記事で改めて論じる予定です。

数字以上に速い! DECMO実乗インプレッション

DECMOが具体的に従来車とどれくらい違うのか、参考までに小樽~余市間で実際に乗ってみての印象を記します。

加速ですが、当初持っていたイメージとはかなり違って、滑らかに加速します。

発進からしばらくは、電車並みにスムーズ。30km/hあたりからだんだん鈍りますが、それでもキハ40形なんぞとは比べ物にならず、キハ150形から見てもそれほど遜色ありません。

従来の液体式気動車だと50km/h(キハ40形700番台だと70km/h)あたりで一旦加速をやめて変速するわけですが、DECMOは電気式気動車なので必要ありません。ギアチェンジ無しでそのまま加速。

50km/h~70km/hは、従来車だとどの車種でも加速がもたつく速度域。DECMOも加速が弱くはなりますが、さすがは電気式、もたつき感はそれほどなく、着実に速度を上げていきます。

変速がないのと、中速域の加速が良いので、40→70km/hの加速で比較すればたぶん北海道のローカル気動車でトップです。キハ281系にも肉薄するのではないかと思います。

70km/hを超えると、さすがに余力が無くなってきます。高速域は液体式気動車の得意領域ということもあり、キハ54形やキハ143形あたりと比較すると高速域での加速は劣ると感じます。もちろんキハ40形よりは圧倒的に上です。

雑誌に掲載されていたスペック表によれば、0→60km/hの加速度は1.1km/h/sとのことですが、ウソだと思いました。実際には1.2~1.3km/h/sくらいはあると思います(実測ではなく体感ですが)。最初にこの「1.1」という数字を見た時はわりとガッカリしていたんですが、乗ってみて印象が変わりました。(利用の少ないローカル列車の置き換え用で、しかも経営難の中で国の支援を受けつつ導入する関係上、性能を低めに公称している?)

しかも、普通列車として使用するので、中速域の加速が良いというのがかなりの好材料。カタログの数字以上に、DECMOは「速い」と思います。

参考までに減速についても。JR東日本の車両がベースではありますが、ブレーキ性能は札幌圏の電車や785系以降の特急列車と同様にセッティングされているようです。

ブレーキはB1~B7の7ステップ(+非常1ステップ)ありますが、札幌圏などと同じく、基本的にB2までしか使っていませんでした。B1・B2での減速性能も、札幌圏電車と同じくらいだと感じました。

速度種別は、単行・2両編成とも、「停気D5」でした。キハ40形基準のダイヤで運行される列車は基本的に「F8」なので、それよりも上り勾配10‰での均衡速度が17km/h高いということです。

追記(令和3.6.3):令和3年(2021年)4月に室蘭本線でDECMO単行の普通列車に乗車しましたが、速度種別はさらに上、「停気C4」でした。もしかして試作車と量産車(または1次量産車以前と2次量産車)で性能が違う?

(キハ40形が入る列車でも例外があります。ボクが知る限り、日高本線は平成27年時点で「D3」でした。ただし現在は変わっている可能性あり。)

ただ、キハ54形・キハ143形が「A3」、キハ150形が「B3」または「C0」(2両編成以上でB3、単行でC0? 詳細不明)なので、それよりは劣ります。

DECMOは凡庸といえば凡庸ですが、キハ40形との比較で言えばかなりの俊足だということがわかったと思います。小樽~長万部間では従来とほぼ同じ所要時間で走っており余力を残している印象があります(かつてのキハ150形限定運用の列車でもダイヤにずいぶん余裕がありました。路線の特性による制約?)が、今回導入される区間ではいよいよ本領発揮といったところです。

「いつまでも骨董品が走っている地域」。そんな北海道のローカル路線のイメージが、一気に変わるかもしれません。

DECMOには「着席定員が少ない」「座席が固い」などの指摘がある(同感)上、高速性能がやや劣るため、特にキハ54形と比べると必ずしも改善ばかりではないでしょう。

それにしても、経年30年を超えた車両ばかりが居座る現状が一気に変わることのインパクトは非常に大きいはず。イメージアップなど、北海道の交通網を少しでも維持可能なものに近づけるような効果を期待したいところです。

こんなご時世ですが、少しでも良いニュースが多くなることを祈って、本日はこれにて。サヨナラ!!(爆発四散)

参考文献
JR北海道 令和2年12月9日ニュースリリース「来春のダイヤ見直しについて」(https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20201209_KO_kaisei.pdf)
北海道旅客鉄道株式会社 車両部 計画課(車両設計) 水上幸治、清水敬太「H100形電気式気動車」、『鉄道ファン』2018年7月号、交友社

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