JR北海道問題 「5路線5区間」は打つ手なし
記事公開:平成30年8月9日
※令和2年8月26日に大幅改稿しました。合わせて輸送密度のデータを平成30年度版に更新しました。
JR北海道は現在深刻な経営難にあり、加えて鉄道としての強みを活かしづらい輸送密度2000以下の鉄道路線を大量に抱えています。そのため、「持続可能な交通体系」を目指した事業の再編を進めています。
その中でも一番大きな話題と言えるのが、乗客が極端に少ない5路線5区間の存廃問題です。
「5路線5区間」とは、具体的には次の区間です。
区間 | 平成30年度輸送密度 | 存廃(令和2年8月26日現在、確定情報のみ) |
---|---|---|
札沼線(学園都市線) 北海道医療大学~新十津川 | 62 | 令和2年4月17日を最後に休止、同5月6日を最後に廃止 |
石勝線 新夕張~夕張 | 69(※1) | 平成31年3月31日の運行を最後に廃止 |
根室本線 富良野~新得 | 94(※2) | 沿線のみで議論中 |
日高本線 鵡川~様似 | 119(※3) | 議論中 |
留萌本線 | 145 | 本格議論の形跡なし(!?) |
※1……「廃線特需」が本格的に発生する前の平成29年度の数値。
※2……一部災害不通となる前の平成27年度は「152」。
※3……災害不通となる前の平成26年度の数値は「186」。
いずれも輸送密度200未満という惨憺たる状況で、当然ながらJRの経営を大きく圧迫しています。上2つは表にある通り廃止となりましたが、残り3区間は正式な結論が出ていません(以下、特に断りなく「3区間」と言うとき、上表の下3つを指します)。
しかし、もはやこれ以上の資源の浪費は許されません。残る3区間もすぐに廃止の方針を固めるべきです。
この記事では、3区間の現状を整理し、存続への道筋を示すことがいかに困難であるか、皆さんと再確認していきたいと思います。辛い現実ではありますが、一緒に見ていきましょう。
根室本線 富良野~新得間
まずは3区間で一番輸送密度がヒドい根室本線の富良野~新得間から見ていきます。
かつては札幌と道東を結ぶ重要な路線の一部でしたが、石勝線に取って代わられ、細々とした地域輸送をメインとする路線となりました。
乗客のほとんどは通学客と考えられます。しかし、平成30年度特定日調査(平日)によれば一番乗客の多い朝通帯の富良野行きで乗客34人と、通学客すらバス1台で運びきれる有様です。災害で一部区間が不通になっているため若干利用が落ち込んでいると思いますが、多く見積もったところでやっぱりバス1台で足りてしまいます。
「大量輸送」という鉄道の特性を活かしているとは、全く言えない状況です。
「広域観光ルート」ならバスの方が適任では?
ところが、一部では存続に向けた動きがあるようです。
この区間が「広域観光ルート」の一部として活用できる、というのが理由です。
今、北海道は「観光の時代」に突入しようとしています。道内では、観光客を運ぶための交通の整備が喫緊の課題となっており、観光地の間を行ったり来たりできるような「広域観光ルート」が必要とされています。
富良野~新得間は、ラベンダーなどで有名な富良野沿線と、釧路湿原などを擁する自然豊かな道東を結ぶことができる路線です。この区間を存続させれば、長距離観光列車のルートなどに活用できます。
ですが、観光ルートとして使うためにこの区間を存続させる必要はありません。
理由その1。トマムと結んだ方が効率的です。
トマムは北海道でも屈指のリゾート地で、今なお新たな施策などが多くの観光客を呼んでいます。元々のルートにこだわらず、富良野とトマムを直結すれば、双方の観光客増加に繋がるでしょう。
根拠はあります。前に、旅行で占冠から富良野に向かうバスに乗った(その時の旅行記はまた後日)のですが、占冠村民向けのバスなのに外国人観光客が1組乗ってきました。聞けばトマムからバスを乗り継いで来たとのこと。現状の不便なバス網でさえ、富良野~トマム間の利用があります。バス網を整備することで、おそらく利用は大きく伸びるでしょう。
また、トマムと結ぶことで石勝線と連絡でき、普通列車(または代行バス)でちんたら日高山脈を越えるよりもはるかに効率よく富良野沿線と道東を結ぶことができます。
理由その2。長距離観光列車を通す必要はありません。
路線がなくても、観光列車のための車両を2編成用意し、鉄道のない区間をバスで繋げば、観光ツアーとして成立させることができます。
詳しくは、過去記事「釧網本線は『全線』維持すべきか?」をご覧ください。
迂回路としての役割も期待できない
観光面だけでなく、石勝線の迂回路として存続させるべきという意見もあるようです。
ですが、富良野~新得間は迂回路として残すべき路線とは言えません。
第一に、石勝線経由に比べて札幌~新得間の距離が長すぎます。石勝線経由の176.4kmに対して、滝川まわりだと219.8km。40km以上の遠回りになってしまいます。距離の短い函館本線の「山線」(小樽~長万部)とは、ワケが違います。
第二に、そもそも「何のための迂回路なのか」が分かりません。「山線」は、「有珠山」という明確な脅威に対する迂回路であるからこそ、意味があります。ですが「石勝線の迂回路」にはそういった「仮想敵」がありません。地震だとしたらむしろ路盤の緩い富良野~新得間の方が問題でしょうし、火山にしても気象庁が観測している活火山は石勝線沿線にはありません。水害については今現在起こっている現実の通りであり、脱線事故があったとしても数日で復旧するまでの代替交通(バス・トラック)を確保すればそれで足ります。
こうして見ると、「迂回路」論にはまったく理由がないことが分かります。
代替バスの方向性は?
以上から、富良野~新得間は鉄道を廃止することが妥当と考えられます。
そうなると、代替バスをどのように運行するかが問題となります。
当サイトからは、次の3つの系統に分けて代替することを提案します。
- 代替バス メインルート:富良野~山部~幾寅~落合~トマム
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まずメインルートは、先述の理由でトマムに繋げて、観光利用を促進。
幾寅~落合~トマム間には、もともと占冠村営バスのトマム線が走っています。それと統合する形にするのが合理的でしょう。
- 代替バス サブルート:富良野~山部~金山~占冠(既存バス路線活用)
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メインルートの問題点として、「下金山・金山・東鹿越の乗客を拾いづらい」という問題点があります。
金山を経由してから幾寅に向かう場合、走りづらい道道465号を経由することになります。時間がかかってしまい、せっかくの富良野~トマム間直通のメリットが活かしきれません。
そこで、メインルートは金山を経由せず国道38号を走ることにして、メインルート補完のため金山から占冠に抜ける系統を別に設定。メインルートの利便性と、下金山・金山の交通維持を両立させます。
既に占冠村営バス富良野線がこのルートで走っているので、それを活用する形です。
- スクールバス混乗便・デマンド交通:下金山・金山・東鹿越~幾寅(既存+α)
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サブルートでも拾いきれない部分があります。一つは、下金山・金山と、南富良野町の役場がある幾寅との行き来。もう一つが、メイン・サブいずれも通らない東鹿越です。
前者は、既に南富良野町がスクールバス混乗便とデマンド交通を設定しているので、それで補えます。別途交通手段を用意する必要はありません。
後者についても、スクールバスやデマンド交通が東鹿越のあたりを通過するはずなので、東鹿越での乗降を可能にするだけでOK。(現状でもスクールバスは一部が東鹿越駅前に停車しています。)
これらの需要はかなり細いと考えられます。代替バスに無理に立ち寄らせる必要はなく、最小限の設備・人員で済むスクールバス・デマンド交通で十分でしょう。
以上の方法を採れば、とりあえず各駅周辺に一定程度の公共交通を残すことができます。同じルートで運行できないからといって、バス転換ができないわけではありません。
日高本線 鵡川~様似
続いて、北海道屈指の長大ローカル線・日高本線です。鵡川~様似間が平成27年の災害の影響で不通となっており、路線の需要がかなり少ないことから、JRは復旧させずに廃止する意向です。
日高地方は札幌からの時間距離が長く、交通に恵まれない地域です。だからこそ、少しでもスピードのある鉄道を何とか残せないか、と考えた時期がありましたが、正直に言うとかなり難しいです。
不通区間の廃止は妥当
詳しく見てみましょう。
まず都市間輸送ですが、苫小牧~静内間は災害不通前の所要時間が路線バスよりも約1時間速く、土休日は増発もあったことから、一応体裁上は都市間輸送を担っていた路線です。
しかし、その絶対数はきわめて少ないです。定期外旅客の通過人員は代行バスが1日30人程度で、資料から推測するに不通になる以前でも多く見積もって100人強しかありません。都市間路線と言うには、あまりにも細すぎます。
国鉄時代は札幌直通の急行が走っていたこともありますが、近年は臨時快速「優駿浪漫号」を除いては札幌直通列車は走っておらず、札幌に向かう交通としてはもはや選ばれていないと思われます。残る苫小牧~日高地方の需要も年々細り、今では零細路線そのものです。
静内~様似間については、もはや言わずもがなです。
次に通学輸送。主に苫小牧~日高門別、静内~富川、静内~本桐、東町~荻伏などで利用されています。
しかし、静内近辺・浦河近辺では、災害不通前でさえバス1~2台で運べる程度しか利用がありません。
災害復旧のための莫大なコストをかけてまで復旧する価値があるとは、到底言えません。
ただし、「全線廃止」は少し早計です。列車が運行されている苫小牧~鵡川間は、事情が違うからです。
平成30年度特定日調査(平日)によれば、朝の苫小牧行きで一番混み合う2224Dの乗客は191人です。バスだと3台が必要です。
最高速度が85km/h、距離約30kmに対して途中駅がたった3つ、ということでけっこうスピードがありまして、その意味でも通学客は大いに助かっていると思います。
輸送密度も平成25年度(災害の影響がない年)で676。500を超えているので、まだ光明はある感じです。
また、鵡川高校でスクールバスを打ち切り、鉄道利用を促進する取り組みが始まったので、苫小牧→鵡川の逆方向需要が発生。向こう数年は現状の規模の乗客数をキープできそうな情勢です。
よって、不通区間とは異なり、存続させるメリットが一定程度ある区間と言えます。今現在動いているわけですから、当然「復旧費用」なんてかかりませんし。
ですが、当然ながら地元の継続的・積極的な関与が必要です。それがなくなったとしたら、苫小牧~鵡川間も含めた日高本線全線の廃止も視野に入ります。
日高門別までの部分復旧の可能性
「日高本線の線路被害」と言っても区間ごとに様々で、最も大きな被害があったのは豊郷~大狩部間です。
言い換えれば、被害が軽い鵡川~日高門別間の復旧には、そこまで大きなコストはかかりません。
この点を突いて、日高町は鵡川~日高門別間だけの復旧という案をテーブルに乗せました。
この区間を復旧させれば、富川・日高門別から苫小牧への越境通学は非常にラクになります。所要時間が大幅に減るうえ、列車とバスの乗り換えも解消できますからね。
また、代替バスを多少減らせるので、運転手確保もラクになるでしょう。
ただ、それを考えても、「日高門別までの」復旧は厳しいのではないかと。
まず利用者側から。平成30年度の定期券の発売実績を見てみると、富川から「鵡川以遠」(おそらくほぼ全数が苫小牧市内)までの定期券は、月平均62.2枚。日高門別からは18.8枚だけです。鵡川をまたぐ通学需要は、大部分が富川からです。
(なお、逆の静内方面への通学需要は、ほぼほぼ富川以東から発生しています。なので苫小牧や鵡川からの越境通学は無視できます。)
次に供給者側。平成30年9月6日の北海道胆振東部地震で、富川~日高門別間にある沙流川橋梁が被災しました。復旧するなら、5億円の費用が発生します。
よって、復旧できるとしたら、鵡川~富川間だけ。日高門別まではムリです。
逆に、富川までであればある程度のメリットがあるので、検討の余地は十分にあります。
通学以外にも、もう一つ別な見地から部分存続を論じてみます。
令和元年12月に、札幌と平取・日高(右左府)を結ぶ基幹交通の「高速ひだか号」が廃止されるというニュースがありました。胆振・日高のバスは、それだけ深刻な労働力不足に陥っているということです。
今後、平取から札幌へは、富川まで「特急ひだか号」などに乗って移動し、富川から「高速ペガサス号」に乗り換える形を取らざるを得ません。
ここから連想して、「富川を交通結節点にして、苫小牧~日高地方間を移動する時は苫小牧~富川をJRで移動して、富川で各方面へのバスに乗り換える方式にする」というような方式も考えることができます。
苫小牧と日高地方を結ぶバスは、苫小牧~富川間は国道235号を走り、富川で平取方面と静内方面に分かれることになります。たとえば同じ時間帯に2系統のバスを運行する場合、苫小牧~富川間でダブってしまいムダになります。
そこで、苫小牧~富川間の「幹」の部分をJRに一本化して効率を上げ、バスは「幹」と各地域を繋ぐ「枝」の役割に専念させることで、労働力不足の中でもバスを回せるようにして、各地域と苫小牧を結ぶ公共交通を守る、という寸法です。ついでにJRの採算を多少改善することもできましょう。
この観点からも、富川までの復旧なら一考の価値があると思います。
ただ、そうすると従来乗り換えなしで移動できていた苫小牧~静内・浦河でも乗り換えが発生することとなり、乗客はそれを負担に感じるでしょう。結果として利用客が減り、維持困難になってしまう、という懸念も。慎重に検討する必要がありましょう。
もちろん、部分復旧による恩恵は大きくありませんし、経済学の見地だけで言えば「ムダ」です。JRとしても復旧の意思を持っていません。
したがって、復旧するなら費用は沿線が全額負担し、そのうえ復旧区間だけでも上下分離方式か、それに相当する地元の積極参画により、地元が路線維持に責任を持つためのスキームをつくるのが絶対条件です。地元がそれを飲まないなら、復旧は認められないのです。
現状、廃止対象区間の沿線はむかわ町を除き、公共交通の再編について真摯な態度を取っておらず、JRの復旧費用を負担する意思はまったくないようです。部分復旧は富川までなら悪くないプランだと思いますが、現実としてはほぼありえないと言っていいでしょう。
DMVは無意味、かつ北海道では不可能
日高本線の復旧案として、DMVの開発を再開し、被害が著しい区間は道路を、それ以外は線路を走ることで復旧するプランが提示されたことがあります。
ハッキリ言っておくと、DMVは全くの無意味であり、かつ北海道での実用化は不可能です。
DMVはマイクロバスをベースにしており、輸送力はほとんどありません。DMVで足りる程度の需要しかない路線は、そもそもバス転換されるべきです。わざわざ線路と道路の両方を走る必要など全くなく、全区間で道路を走ればいいだけの話です。
また、DMVは鉄道車両としてはずば抜けて軽いので、「雪に弱い」「踏切が反応しない」など様々な課題があります。実用化への道筋はあまりに遠く、特に北海道では雪に弱い点があまりに痛手で、実用化の可能性はゼロと言って過言ではありません。
紙面の都合で簡単な説明に留めます(詳細はまた別の機会に)が、とにかくDMVはありえません。考えられません。
「じゃあBRT(というか『バス専用道』)はどうだ」という向きもあったようですが、目玉が飛び出るような額のお金がかかるようです。素直にバス転換するより他に選択肢は無いようです。
留萌本線
3番手は留萌本線。留萌地方の中心である留萌に繋がっている路線です。
留萌本線は北海道の漁業・鉱業とともにあった路線で、かつてはニシン漁で栄えた留萌からの海産物や、羽幌の炭鉱で採れた石炭を運び、貨物輸送に大きな役割を果たしました。留萌の漁業の衰退と羽幌炭鉱の突然の閉山(採掘中に断層発見、取引先倒産と不幸が重なったため、エネルギー革命の折鉱員に不安が走り大量離職という事態になったらしいです)などによりその存在意義の大部分を失いました。
連続テレビ小説「すずらん」で一時ブームになった時期もありましたが、現在ではブームも去り、寂寥感あふれる零細路線に成り下がってしまっています。
なお、5路線5区間で唯一、沿線自治体がまともな議論を行っている形跡がありません。どういうことなの……。
都市間輸送でバスに惨敗、地域輸送もか細い
では検討開始。都市間輸送からいきましょう。
留萌本線は深川で函館本線に接続し、札幌・旭川と留萌を結びます。
しかし、そのボリュームはそうとう小さいものです。鉄道の定期外旅客の通過人員を見ると、平成30年度の1日あたり平均で、一番少ない恵比島~幌糠間が69人。都市間輸送としてはほぼ「死に体」の状態です。
対旭川はフリークエンシーでバスに負けているうえ、旭川~留萌間直通の1本を除いて深川での乗り換えが必要なため、多くの乗客がバスを使っているのでしょう。そのバスでさえ令和2年9月から減便されるとのことで、乗り換えを解消したところで劇的な輸送量増加は見込めないでしょう。
対札幌では所要時間面での優位は全くなく、乗り換え1回で完敗という感じ。こちらも手の打ちようがありません。
都市間輸送を除いた残りのうち、ほぼ100%を深川~石狩沼田間の通学輸送が占めています。十数年前に起きた「秩父別事件」を見てわかるように、一定の通学需要があることは確かです。
しかしながら、通学時間帯の上り2本の利用者は、平成30年度特定日調査(平日)によれば、4920Dが37人、4922Dが55人。それぞれバス1台で運びきれます。「秩父別事件」の頃でさえ単行の列車で運びきれていたのに、そこからさらに減ってしまったようです。
3区間の中では一番輸送密度が高い路線ではありますが、それでも路線を残せる次元ではないのは確かです。
沼田町の利用促進策は評価できるが焼け石に水
沼田町は、通学の足である留萌本線を何とか存続させようと、行動を起こしています。
平成29年以降、「沼田の商店街で一定額以上の買い物をした人に深川までの乗車券の配布」「ホタル観賞ツアー」など、留萌本線を応援する企画を多数実施しています。
路線維持に向けて自発的に行動を起こした自治体はきわめて少ないです。早くから、しかも具体的・継続的に行動を起こしている沼田町の姿勢は高く評価できます。
内容としても、百害あって一利なしの「秘境駅」を持て囃し、「利用者」とは到底呼べないような者ばかりを呼び込む某自治体とは大きく異なり、町民や観光客の利用を促進するための企画であり、素晴らしい取り組みだと思います。
ですが、残念ながら焼け石に水と評せざるを得ないでしょう。
先述の通り留萌本線の現状は悲惨なものです。沼田町がひとりで頑張ったところで、大量輸送という鉄道の強みを活かせる水準まで利用を回復させることは、そうとうな困難と言わざるを得ません。
また、沼田町にとって鉄道のスピード面でのメリットはそこまで大きくなりません。深川~沼田は距離が短いからです。
頑張っている自治体に水を差すのはとても心苦しいのですが、「ムダな抵抗はやめなさい」と忠告せざるを得ません。
なお、文句ばかりを言う一方で具体的な行動を何一つ起こさず、JRの提案にも耳を貸さないような自治体については、何も言うことはありません。
深川~石狩沼田間の部分存続はありうるか
比較的利用の多い深川~石狩沼田間だけを部分存続するという方法も考えられないでもありませんが……。
結論から言えば、部分存続も良策とは言えません。
先述の通り、深川方面への通学需要はバス2台で捌き切れます。朝の通学時間帯でさえ大量輸送という特性を全く活かせていない、という状況は部分存続でも全く変わらないのです。
「でも、深川~沼田だけなら輸送密度が200を超えているから、JRの理論では廃止させられないのではないか」と思われるかもしれませんが、それも少し違います。
深川~沼田間を部分存続、つまり沼田~留萌間を廃止する場合、状況は今とは変わります。
線路が留萌まで繋がらなくなれば、深川~留萌を直通する乗客はほぼ100%が乗り換えなしのバスに流れ、わざわざ深川~沼田でJRを使ったりしないはずです。
留萌へのバスは峠下も通るので、峠下からの需要も同様に除外して考える必要があります。
平成30年度の駅間通過人員は、恵比島~大和田間の各区間は83。この数字がバスに流れるなどして、ほぼゼロになると見られます。
もう一つ、恵比島駅に向かう鉄道マニア(≠ファン)の需要が、駅といっしょに消滅すると考えられます。
真布~恵比島間の通過人員は99あり、恵比島以西と16の差があります。つまり、1日あたり16人程度が恵比島で乗降しています。で、恵比島駅の平日の乗車人数が特定日調査5年間平均で1.8人なので、16のうち生活利用は4程度で、残りの12程度はマニアの需要と考えられます。
つまり、深川~沼田間の各駅間の通過人員から、83+12=95人を引いて計算する必要があります。計算結果は下表の通り。
深川~北一已 | 北一已~秩父別 | 秩父別~北秩父別 | 北秩父別~石狩沼田 | |
---|---|---|---|---|
平成30年度通過人員 | 329 | 328 | 232 | 233 |
部分存続 想定通過人員 | 234 | 233 | 137 | 138 |
営業キロ(km) | 3.8 | 5.0 | 2.4 | 3.2 |
よって、沼田までの部分存続の場合、想定輸送密度は(234×3.8+233×5.0+137×2.4+138×3.2)÷(3.8+5.0+2.4+3.2)≒196 となり、200を割り込みます。
今後の少子化により、さらなる需要減少も予想できます。
もちろん留萌まで全部残すよりかはマシですが、朝に「ラッシュ」と呼べるほどの流動がなく、輸送密度もこれほど低いとなれば、これ以上検討する価値はないように思います。
以上より、3区間を含めた「5路線5区間」については、もはや存続を主張するに足る合理的な理由は見当たらず、廃止・バス代替するより他にありません。
単に赤字黒字の問題ではありません。廃止という結論は「その路線・区間が鉄道としての役目を既に終えている」という厳然たる事実から導き出される唯一の解であって、よしんばJR北海道が黒字会社であったとしてもいずれは(労働力不足などの他の理由により)廃止される日がやってきます。
鉄道ファンや沿線住民の皆さんにとっては、直視しがたい状況であることは分かっています。しかし、他に方法がない以上、受け容れていただくしかありません。
人間は、辛い現実をすぐに飲み込むことはできません。最初は大きく動揺し、反発し、受け入れまいとあらゆる策を打ちます。でも、やがては諦め、避けがたい現実を受け入れる準備を始めるのです。
今日すぐに受け容れろとは申しません。ゆっくり、冷静になって考えてみてください。この記事の言わんとするところを飲み込み、受け容れた時、この世界は次なるステージへと歩を進めるでしょう。