エスカレーター「みんなで手すりにつかまろう」キャンペーンを応援します(平成27年8月1日)
※平成30年7月1日に全面改稿のうえ、「独り言」コーナーから「素人流・鉄道観察」コーナーに移転しました。
平成27年7月から、全国の鉄道各社が「エスカレーター『みんなで手すりにつかまろう』キャンペーン」を合同で実施しています。
現在、ポスターや駅のアナウンスなどで、エスカレーターでは歩かずに手すりにつかまって上り下りするよう利用者に呼びかけを行っています。
当サイトは、このキャンペーンを全力で応援します。
悪しき慣習、右側歩行
現在、日本では慣習として「エスカレーターでは右側(地域により左側)を歩く人のために空ける」というような慣習が定着しています。
しかし、この慣習は「悪習」とでもいうべき愚行であります。
エスカレーターの片側を歩行用にするという行為には、実は様々な弊害があるんです。それは、エスカレーターという文明の利器のメリットを、まるまるスポイルしてしまうほどです。
もっと悪いことに、まだ定着する前ならよかったものの、既にこの因習は広く社会に定着してしまいました。
以下では、エスカレーター片側歩行のもたらすものについて、詳しく述べてまいります。
人々を危険にさらす行為
まず最初の問題点。要は危ないんです。
わかりやすい例を挙げて説明しましょう。なお、ここでは右側が歩く方という習慣があるという設定です。
あなたは左腕を骨折し、腕を吊って移動しています。そしてあなたは、鉄道で街に買い物に出かけようと思って、駅(橋上駅にしましょう)のホームに下る時に、混雑するエスカレーターの左側に乗りました。ところが、乗った直後に地震が発生し、それを感知してエスカレーターは緊急停止しました。あなたは左手が使えないので、手すりを掴んでいませんでした。そのため、前に倒れこんでしまい、そのままドミノ倒しを起こしてしまいました。あなたのずっと前に乗っていた人は、ドミノ倒しに巻き込まれ、死亡しました。
いかがですか。十分ありうるお話でしょう。もしこの例で、あなたが右側に乗ることができたなら、事故は起こらなかったでしょう。
他にも、重大な障害によって左手がまともに使えない人にも、同じことが言えます。
右側歩行は、人を殺めるおそれのある危険な行為です。
また、単純にエスカレーターで歩くという行為自体が危ないです。最近はよくスマホを見ながら歩くという狂気じみたことをやっている人がウジャウジャいるものですから、そのままエスカレーターなんて乗ろうものなら、乗降の際に足を踏み外しかねません。そうなれば先ほどの例と同様、状況によってはドミノ倒しすら惹起する危険性があります。
エスカレーターの危険性、ご理解いただけましたでしょうか。
危険を冒してまで急ぐメリットはあるのか?
「でも急いでいるから、多少危険でも早く行きたいし……」
そんなアナタにボクから言いたいことは3つ。
まず一つ。「他の人が移動しづらくなっても、早く行きたいのですか?」
エスカレーターを片側歩行とした場合、片側だけに極端に人が集中することが想定されます。ふつう歩かない人の方が多いので、歩かない側に長い列ができます。
左側と右側が半々になればいいのですが、左と右で条件が違う以上、そううまくはいきません。
片側に人が集中すると、いわゆる「ボトルネック」の状態になります。列に並ぶ人はエスカレーターに乗るまでにかなりの時間を要してしまいます。また、長い列は、移動しようとする人を妨害します。駅のホームであればホームを移動する人の邪魔になりますし、デパートなどであれば途中の階からエスカレーターに乗ろうとする際に列に入るのが大変になります。札幌だと、地下鉄大通駅の南北・東西線ホームや、ビックカメラのエスカレーターなどで頻繁に渋滞が発生しています。
流れの遅い列は、多くの人を不幸にすることがあります。それでもなお、あなたは時間短縮を優先しますか?
二つ目。「そんなに早いですか?」
エスカレーターを必死で歩いたところで、短縮できる時間はものの10秒程度です。その程度は、ちょっと早く家を出ればあっさり稼げます。
仕事のために急ぎたいという場面もあるかもしれません。それなら、あなたがやるべきことはエスカレーターを歩くことではなく、業務を「カイゼン」することです。そっちの方が圧倒的に多くの時間を稼げます。
余談ですが、これは車の運転も同じです。スピード違反や無理な追い越しをして稼げる時間は微々たるもので、時間に余裕をもって行動した方が、安全・確実かつ他の人に迷惑がかからないので、よっぽど良いのです。
そして三つ目、これが一番大事。「他の人の命と、あなたのその数秒を、天秤にかけるのですか?」
自分で歩いて自分で傷つく分には、自己責任です。しかし、他人を巻き込むことは看過できません。
当サイトの賢明な読者の皆さんは、人の命を顧ず、自分の利益(しかも非常に微々たる利益)ばかりを追求するような人たちではないと、ボクは確信しています。
エスカレーターは泣いている
どこかで読んだ話には、エスカレーターの片側歩行はエスカレーターを痛めつける行為であるというのです。
まず立って乗る人が片側に集中することで、片方に体重がかかるので、あまりよろしくないんだそうです。また、エスカレーターを歩くと振動が起こりますが、これもエスカレーターにとってはよくないそうです。
こういう積み重ねが、徐々にエスカレーターを蝕んでいくというのです。そうなると頻繁な点検が必要になってしまいます。
そんなの知ったことか、形あるものはいつか壊れるんじゃい、という話ではありますが、当サイトの読者の多くが鉄道に関心がある人でしょうから、あえて言っておきます。
あなたに鉄道を愛する心があるならば。鉄道が100年先も活躍していてほしいという気持ちがあるならば。
……少しでもエスカレーターに負担がかからないようにして、鉄道会社がエスカレーターを修繕する費用を削減させるべきではないでしょうか。
「鉄道が好き」と吹聴しながら、鉄道会社に迷惑をかけるばかりの人って、すごくアレだと思うんですよね。「ムダな移動をしてでも鉄道会社に金を落とせ」「使わない入場券を買え」なんて言うつもりは毛頭ありませんが、せめて鉄道会社にとって頭の痛い問題であるエスカレーター問題を、少しでも緩和するために行動する、そのくらいはしてもよいのではないでしょうか。
因習を破るために
そうはいっても、すでにほぼ完全に定着してしまった片側歩行。どうやって改めたものでしょうか。
やはり、しつこく呼びかけを行うのが重要になるでしょう。
毎年行っている駅での呼びかけの他に、広告・広報による周知を行ったり、学校でも冊子を配ったりして、少しずつ広めていくべきでしょう。
あるいは、係員をエスカレーターの歩く側に立たせて、強引に歩く列を遮る、とか。
あるいは、階段に誘導するというのも、エスカレーターの利用者の絶対数を減らすという意味では有効かもしれません。面白いのが、現在札幌市営地下鉄で行っている、健康のために階段を使うというインセンティブを与える方法です。階段やその近くに、健康のために歩くことを勧める文や、「ここまで登ったら何キロカロリー」とかが書いてある紙を貼るのです。単なる健康増進の他に、エスカレーターで歩く人を減らすことにもつながる名案と評することができるでしょう。
小難しい話はできるだけ避けて簡単な説明にしてみましたが、いかがでしょうか。
一旦こびりついた水アカを落とすのは、簡単なことではありません。でも、みんなで頑張って磨きましょう。大変なことですが、最初の一歩が肝心。皆さん、やりましょうよ!(某T自動車並感)
繰り返します。当サイトは、エスカレーター「みんなで手すりにつかまろう」キャンペーンを全力で応援します。