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JR北海道の平成29年3月ダイヤ改正斜め読み(前編)

過去のダイヤ改正に関する記事です。

昨日12月16日に、JR北海道のWebサイトにて、平成29年(2017年)3月4日のダイヤ改正の骨子が発表されました。

気になる点がいくつかあるので、ちょいと書き出してみたい……のですが、まだ骨子が発表されたに過ぎず、細かい部分はたぶん来年3月号の時刻表が世に出る来年2月下旬までわからないでしょう。

そこで、現時点でわかっていることについてと、現時点での疑問点を今回「前編」として列挙して、正確な時刻がわかった2月下旬にもう一回「後編」として記事を出すことにしました。

現時点で発表があるのは、札幌エリアと、特急列車についてのみ。札幌エリアには大きな変化はないので、特急列車に的を絞っていろいろ書いてみたいと思います。


簡単なまとめ……

  • 札幌~旭川間は「ライラック」と「カムイ」が運行。ライラックは789系基本番台6両。ダイヤはわかりやすく、旭山動物園への行楽利用に便利。
  • 旭川~稚内間に「サロベツ」2往復、旭川~網走間に「大雪」2往復。ライラックとの乗り継ぎ制度も設定。大雪は旭川へのお出かけに便利。朝早すぎたり夜遅すぎたりする列車もあり。
  • 旭川~北見間の特別快速「きたみ」時刻大幅変更。札幌からも利用しやすく。
  • 札幌~函館間「北斗」1往復が「スーパー北斗」に変更、車両は261系1000番台に。
  • その他こまごまとした利便性アップなど。

旭川特急が「ライラック」「カムイ」の二本柱に

目玉は、言うまでもなく札幌~旭川~稚内・網走間の特急再編です。

まず札幌~旭川間では、789系基本番台で運行される6両編成の特急「ライラック」と、789系1000番台が使われる5両編成の特急「カムイ」の二枚看板、というスタイルに変わります。いずれも、頭に「スーパー」は付きません。

2列車の運用は完全に分けられます。「ライラック」は789系基本番台を「スーパー白鳥」時代と同じ6両のまま、しかもグリーン車を残し、uシート設置を行っていない状態で転用。微妙な改造がされただけのようです。また、「カムイ」に785系が充てられることは基本的にないようです。

ダイヤは、「ライラック」「カムイ」ともに今までの「スーパーカムイ」と全く同じ所要時間となっています。また、以前の「スーパーホワイトアロー」「ライラック」二枚看板時代の「毎時0分が○○で30分が△△」という構成とは大きく異なります。

基本的に自由席は4両ですが、「ライラック」のうち旭川で他の特急に接続する列車は、グリーン車0.5両・指定席2.5両・自由席3両という形態になります。このほか、状況によって「ライラック」の指定席(グリーン含む)は最大4両まで設定されるようです。


これらの列車で、大きなプラス材料となりそうなのは、以下の2点です。

まず、「ライラック」と「カムイ」で通しの号数が振られている点。つまり、たとえば「ライラック5号」の後は「カムイ7号」という風に、ライラック・カムイ計24往復をまとめて1~48号の号数を与えたということです。かつての紀勢本線の「くろしお」「スーパーくろしお」「オーシャンアロー」と同様、同じ区間を走る列車は通し号数、ということ。この点で、平成19年以前の「スーパーホワイトアロー」「ライラック」時代とは違います。

これに加え、「ライラック」と「カムイ」で停車駅・各駅所要時間が全く同じなので、札幌~旭川間相互の利用客は「ライラック」と「カムイ」を一体として捉えることができるでしょう。

次に、札幌8:30発の「ライラック」が設定された点。この時間は休日・ハイシーズンに札幌から旭山動物園を目指す観光客の利用が多い時間帯です。

昔は同時刻にあった「スーパー宗谷」の増結措置をとり、稚内まで6両で運転、ということをやっていました。これじゃあムダが多いってんで、その後8:30には「旭山動物園号」が入るようになりました。しかし、近年は安定運行できていません。今回、6両編成で輸送力がある「ライラック」が8:30に入ることで、安定した旭山動物園輸送を提供できるようになるでしょう。また、時期によっては指定席4両体制で運行すれば、観光客にとって使いやすく、JRにとっても大きな増収チャンスとなってくれるでしょう。

この2点だけをもって、「今回も神改正」と言って差し支えない、とボクは考えています。


その他のプラスな点を列挙すると、以下の通り。

  • 札幌・旭川両駅の発車時刻(日中)が毎時0・30分に統一されているため、従来同様ラウンドアバウトなわかりやすい構成に。
  • 旭川でライラックもしくはカムイと特別快速きたみが接続。

一方、札幌~旭川間の特急列車の総数は減少しました。「ライラック」「カムイ」が計24往復と「スーパーカムイ」より1往復多いですが、オホーツク2往復・スーパー宗谷2往復の分が減りました。ただ、現行ダイヤではオホーツク3・4・5・6号はスーパーカムイのすぐ後、スーパー宗谷3号はスーパーカムイのすぐ前ですから、この2.5往復のぶんは減便と捉えず、「電車特急1往復増・気動車特急1.5往復減」で現行とおおむね同じ、と言えると思います。むしろ、札幌15:30発の列車が増えたぶん使いやすくなったと思います。

※追記(令和4.12.24)

……といった感じで、この当時は新しいダイヤを「特に問題ない」と考えていましたが、実際に改正後に様子を見てみると問題がありました。

下りでは、従来ダイヤだとオホーツク1号が走っていた時間帯に宗谷が走ります(札幌7:30発)が、この宗谷の自由席が札幌~旭川間で混雑しています。オホーツクが自由席1.5両、約100席なのが、改正後の宗谷は自由席1両、席数にして56席となったため、連日立ち客が発生しています。

(ただし、令和5年(2023年)3月のダイヤ改正で、ライラック3号の時刻が繰り上がり、札幌7:12発となるため、混雑緩和が期待されます。)

上りでは、大雪4号と接続するライラック34号が混雑することがあり、平日は通勤通学での利用も多いだけに問題です。

もちろん改善された点も多い改正だったとは思いますが、完璧ではありませんでした。


名称についてですが、「ライラック」と「カムイ」の組み合わせということで、1980年10月~84年2月を彷彿させます。当時はまだ781系が6両編成だったころで、「ライラック」の本数不足を711系の「かむい」(例外として1往復は気動車)が補っていました。まあ「かむい」と「カムイ」という表記違いがありますし、当時の「かむい」はあくまで補佐役の急行列車でしたし、完全に同じではないですが。

でもボクは「ライラック」より「さちかぜ」がよかったなあ、と考えていたり。こっちの方がキャッチーで瑞祥でスピード感ありますからね。

旭川発着の特急「サロベツ」「大雪」

今回の改正では、札幌~稚内間の「スーパー宗谷」(「宗谷」に改称)が1往復減・「サロベツ」が旭川~稚内間に区間短縮、札幌~網走間の「オホーツク」が2往復減となり、代わって旭川~稚内間では特急「サロベツ」が1往復増え、旭川~網走間には特急「大雪」2往復が新たに設定されます。

ボクは運行区間に関わらず稚内まで行く列車が「スーパー宗谷」、網走まで行く列車が「オホーツク」を引き続き名乗ると思っていたので、列車名が運行区間で分かれるのには驚いています。特に定期列車の愛称としては四半世紀ぶりとなる「大雪」の愛称復活はサプライズでした。

時刻も結構変わっており、使い勝手にも変化がありそう。

プラスのポイントとしては、運用の都合上大雪2号が現行のオホーツク4号より早い時間に設定されたため、北見・網走界隈から大雪2号で旭川に出かけて、大雪3号で帰るというお出かけ利用がしやすくなりました。旭川の滞在時間が5時間強なので、昼食の時間を差っ引いてもお買い物・親戚や友人など会う・野球観戦(スタルヒン球場でのプロ野球開催があれば)など様々なシーンで使えそうです。

他方、サロベツ2号・オホーツク2号は始発の時間がちょっと早すぎる気がします。特にオホーツク2号は網走を6時前に出てしまうので、網走からの利用は厳しいでしょう。また、サロベツ3号も稚内到着が日付が変わる直前となっており、ちょっとした運行障害があっただけで日付をまたいでしまいそうです。

限られた車両・線路の中でなんとか列車を設定した、という感じがありありと見えるので、ある程度は仕方ありませんが、ちょっと利便性の点でまずいような気もします。


改正と同時に、旭川での特急列車乗り継ぎ制度が誕生します。

旭川で特急列車を乗り継ぐ場合、特急料金は通しで計算されます。たとえば札幌~名寄間を移動する場合、「宗谷」で直行しても、「ライラック」と「サロベツ」を乗り継いでも、旭川で改札を出なければ同じ料金です。2本の列車でそれぞれ指定席をとっても、自由席利用との差は520円です。

ちなみに、他の地域でも同様の制度がありまして、四国は松山で「しおかぜ」あるいは「いしづち」と「宇和海」を乗り継ぐ場合、九州は大分で「ソニック」と「にちりん」を乗り継ぐ場合などがあります。いずれも、旭川と全く同じ制度となっています。

特別快速「きたみ」の変更点

旭川~北見間の特別快速「きたみ」にもいろいろ変化があります。

まず先述の通り、特急「ライラック」または「カムイ」との接続が改善され、札幌から北見方面に行く際にも使いやすい列車となりました。

続いて、現行オホーツク4号(改正後は大雪2号に置き換わる)と上りきたみの時刻が入れ替わりました。現オホーツク4号の代替となる大雪2号が北見9時前発車なので現行の上り「きたみ」と時間帯がかぶってしまいますから、上り「きたみ」は現行のオホーツク4号に近い時間に繰り下げとなったワケですな。

さらに、下り「きたみ」は現行の総所要時間が3時間33分のところ、3時間21分に大幅短縮となります。上りが9分の所要時間増大となりましたが、それでも所要3時間22分と下りと変わりませんし、「ライラック」との接続がしっかりしているので札幌~北見間で見ると時間短縮となっています。

これらの改正から、というかプレスリリースに「きたみ」の情報があったという点自体から、「きたみ」が旭川~北見間の都市間列車として改めて位置付けられた、と言っていいでしょう。

その他の改善点

ほかに変わる点をチョコチョコと挙げてみます。


まず札幌15:30発のライラックが設定されたことで、おそらくですが滝川で富良野行き2431Dと接続します(そのために2431Dは数分繰り下がると予想できます)。

札幌の発車時刻・富良野の到着時刻の両方を見るに、非常に使いやすい乗り継ぎとなると思います。富良野から札幌へのお出かけの帰りに便利でしょうし、富良野で宿泊する観光客はちょうどいい時間に富良野に着けます。

また、札幌駅前15:40発の「高速ふらの号」を使うよりも30分程度早い時間に富良野に着けるので、時間面ならバスに対して有利に立てると思います。

さらに、島ノ下駅の廃止により所要時間が1分程度短縮されることにも期待できます。


また、定期「北斗」1往復がキハ261系1000番台に置き換えられ、「スーパー北斗」になります。これに伴い一部区間の所要時間が短縮されます。

これによってN183系が捻出されますが、残る3往復の「北斗」の予備車のほか、一部は「オホーツク」に転用されそうです。「サロベツ」がキハ261系基本番台による運用となることで手が空くN・NN183系のぶんも足すと、「オホーツク」「大雪」の全列車で4両編成中3両をN・NN183系にできそうです(残る1両はグリーン・普通の合造車だが代わりがいない)。


同じ函館方面、11~12時台の定期「はこだてライナー」函館行き2本が2分だけ時刻繰り下げとなりました。

このうち、現在は新函館12:34発となっている便(3340M)には乗ったことがあるのですが、3連休とあって大荷物の乗客が多く、発車が遅れました。それを踏まえると、実態に合った改正といえるでしょう。ま、平日はむしろ乗り換え時間を持て余しそうですが(勝手なイメージ)

疑問点

まだ一部の情報しか開示されていませんから、わからない点も非常に多いです。

気になる点をいろいろ挙げてみます。これらについては、後編で触れていきたいと考えています。

  • ライラック5号は現行スーパーカムイ5号と異なり札幌8:30発ですが、これは現行下り旭山動物園号の発車時刻に同じ。旭山動物園号ではなく、ライラックが旭山輸送のメインとなると捉えていい?
  • その旭山動物園号はどうなるのでしょう。上りの旭川15時台が特急1本しかないので臨時列車は必要ですが、いかんせん車両が古い。789系基本番台は日中は運用に余裕があるので、臨時「ライラック」を設定して旭山動物園号を置き換えか?
  • 旭川での「ライラック」「カムイ」と名寄方面普通・快速の接続はどうでしょう。「きたみ」の接続は改善されたのでこちらも期待したいところ。とりわけ快速「なよろ」との接続改善が欲しいですが……。

また、直接は関係ありませんが、本改正における種々の変更に関連して気になる点が4点。

  • 789系基本番台HE-300ユニット2両×2はどう使うのでしょう。利用の多そうなライラック5・18・34・35号あたりの増結? はたまた785系の置き換え?
  • 789系HE-300を785系置き換えに回す場合、新たに3両ユニット(うち1両はuシート)×2を製造して現HE-300ユニットと連結し5両2本として1000番台に編入?
  • 再来年の改正で北斗全列車スーパー化、オホーツクをNN183系(含むハイデッカー車)で置き換え? (そうしないとキロハ183-0を置き換えできない)
  • 将来は全列車が列車名から「スーパー」を外す?

とまあ気になる点が多いですが、それは追々わかるでしょう。果報は寝て待て。

以下、後編に続く! といいたいところですがもう少しだけ話は続きます。本筋からは少々逸れますのでお急ぎの方はもう帰って結構。

今回は、というか今回も、結構ガラリと変わる部分が多いダイヤ改正となっています。それだけに話題性は大きいでしょうね。それだけに……。

某地方新聞(もう名前出す必要もないですね。あそこですよあそこ)は、見出しで聞こえの悪い変更点ばかりを取り上げたうえで、沿線住民の「新しい列車で快適に移動できるのか」との不安の声をまるで客観的な事実であるかのようにつらつらと書き、一方でその逆の意見は取り上げない、というまとめブログのごとき破廉恥な記事を掲載しています。相も変わらず「JR北海道は叩けばいい」とでも思っているんでしょう(叩くとホコリが出る方も出る方だけどさ)

また、同様の「主観を客観に見せかける」手口や、不安をあおるだけのイナゴ的報道は、他のマスメディアにおいても平然と行われていますから、1週間もすれば「JR北海道 ダイヤ改正」で検索した日には「改悪」とか「沿線無視」とかのワードで検索結果が汚染されることでしょう(12月24日追記:そんなことはなかったぜ。お前たちのおかげだYO! )

我々は、反射的な態度をとるのではなく、冷静になって新しいダイヤを吟味する必要があります。

それに、運行体系がガラリと変わる前は、誰だって不安なんです。その体系を使ったことないんですから、当たり前です。

というか、件の新聞が「住民の声」として「旭川で乗り継いだ後で座れるか不安」という「話」(=主観)を取り上げていますが、そんなのアンタ、旭川までとその先とで両方とも指定席とれば済む話ですよ。通し料金だから追加出費は520円でいいってんですよ。こういう情報を隠したうえでインタビューしないとこんな声は聞こえてこないわけで、あまりに下劣と言わざるを得ません。

前回(今年3月)の改正でも、新幹線の話と、利用の少ない普通列車の減便と、駅の廃止ばかりがピックアップされ、エアポートや札幌エリアの普通列車はおろか、新幹線と関連が(一応)あるスーパー北斗についてすら、取り上げられることが非常に少なかったのは記憶に新しいところ。頭ごなしに紋切型に「JR北海道 = サービス低下」ではなく、根拠のない不安をあおるばかりでもなく、「実際の」(ここ大事)利用者目線でしっかり評価するべきだと思います。

むろん、ただただ鉄道会社の言い分だけを載せて礼賛、というのもダメですがね。そこはちゃんと気を付けてるつもり……。


キリがないのでこの辺で切り上げよう。ダジャレじゃないよ。では次回までごきげんよう。

後編はこちらから →「JR北海道の平成29年3月ダイヤ改正斜め読み(後編)」

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