新千歳空港駅リニューアルオープン!(平成31年1月13日)
待ってたんや、この瞬間を!!
JR北海道・新千歳空港駅、リニューアル完了。昨年の4月から行われていた工事が、9月の一部オープンを経て、先日ついに終わりまして、平成30年12月26日に本格オープンとなりました。
年々増加する、新千歳空港駅の利用客。その満足度を高めるためのハード面での準備の一つとして、このリニューアルは非常に重要です。写真を交えつつ、何がどう変わったか、それで何が起こるのか、簡単に見ていきます。
といっても、この記事の公開日を見て頂ければわかる通り、当サイトは完全に出遅れてしまいました。広いネットではすでに複数の紹介記事が上がっており、もう既出ネタとなっています。なので、当サイトならではの視点というのを意識して書いていきます。
外国人観光客を重視、待合室よりインフォメーションデスク
今回のリニューアルの最大のポイントは、もちろん外国人観光客への対応です。
今まで改札に向かって左にあったインフォメーションデスクが、向かって右、以前待合室があった場所に移り、スペースが1.6倍(面積比)、デスク数も5から7に増えました。
……まあ、写真は早朝に撮ったので、デスク一つも開いてませんでしたが。
インフォメーションデスクは、外国人旅行客向けの案内をするために設けられています。ここが強化されたことで、土地勘がなく、日本の鉄道を使い慣れていない旅行者に、今までよりもスムーズに案内をできるようになります。
反面、待合スペースはもともとデスクがあったところに場所移動となり、スペースが大幅に減りました。また、通常のみどりの窓口もやや縮小されたようです。
今回のリニューアルは、新たに地下を掘るといった大規模な工事はせず、なるべくお金をかけずに、というのがコンセプトだったのだと思います。
すなわち、今あるスペースをやりくりして、課題を解決しようとしたワケです。
そのためには、必要なものを増やして、不要なものは減らすことが必要です。
インフォメーションデスクは、前述の通り外国人対応という課題があり、デスクの数が不足していたので、スペースの拡張が必要でした。
一方、待合スペースはあまり重要ではありません。新千歳空港駅は基本的に2線ある線路のどちらかに快速エアポートが常に停まっているようになっているので、札幌方面に向かう場合は駅に着いたらすぐに改札を通って停車中の列車に乗ればいいだけです。待たずに乗れるから、駅で列車を待つことはあまりありません。しかも、快速エアポートが増発されれば、今まで以上に待たずに乗れるようになります。あるとすれば、座席に座るために1本後の便に乗るか、南千歳での乗り換えに便利な便を待つか、誰かと待ち合わせるか、といった場合くらいで、大多数はすぐの列車に乗るでしょう。
また、みどりの窓口もインフォメーションデスクほど重要ではありません。窓口の売り上げの多くが快速エアポートのuシートと思われ、現在では指定席券売機があるため、少し縮小しても問題はないでしょう。おそらくは、窓口のうち1か所がほぼ使われていない状態だったのではないでしょうか。
そこで、デスクと待合スペースの場所を入れ替え、デスクは余裕のある場所に、場所をとらなくてもいい待合スペースは狭い場所へと移したわけです。また、みどりの窓口も減らして、デスクの場所を確保したのです。
バリアフリーな駅へと進歩
次に気になるのが、トイレなどの変更です。
改札内のエレベーターへの通路の途中に、多機能トイレが新設されました。多機能トイレは車いすだけでなくオストメイトにも対応していて、今までよりも大幅にバリアフリーが強化されています。
快速エアポートの車両のトイレは、今のところオストメイトには対応していません。それを考えると、駅だけでもオストメイトに対応するのは結構大きなポイントだと思います。
また、多機能トイレの隣には授乳室も設けられました。急用ができてしまって、乳児を連れて飛行機に乗らなきゃならない、なんて場面でも安心です。
ただ、このエレベーターへの通路が狭いのが改善されていない、というのはちょっとだけ残念なところです。先述の通り大きな工事はしていないので、通路を広げるだけの予算はそもそも割かれていないので仕方ありませんが、車いすどうしのすれ違いはキツそうなので、何とかならないかという気はします。
従来からある通常のトイレも変更があります。今までは改札外の待合室に繋がっていたのが、今は改札内に繋がっています。多機能トイレも改札内なので、駅のトイレすべてが改札内となり、外にはトイレがなくなりました。
これは、第一にはスペースの都合です。先述の通りデスクが改札に向かって右に行ったので、駅事務室がその裏に置かれ、結果トイレを移設せずに乗客向け施設に繋げるには改札内と繋げるしかなくなったのです。
でも、これはむしろプラスだと思います。先ほど説明した待合室の縮小と同じように、この駅での乗客の平均滞在時間は改札外より中の方が長いので、改札内にトイレがあった方が役に立つはずです。
別の視点からも。改札外にいる時に催しても、最悪空港ビル内のトイレに駆け込めば何とかなります。一方、改札内には今までだと列車のトイレしかなく、狭いですし、6両中に2か所しかないので心許ないですし、721系7次車以前のトイレは和式なので勝手が悪いです。その点でも、改札内にあった方が都合がいいと思います。
デンマーク国鉄式のデザインとの訣別?
3つ目に取り上げるのが、デザインです。今回、駅の内装が一新され、「北海道らしさ」をテーマとした新しいデザインとなりました。
待合スペースなどには、道産木材……をイメージした木目調のデザインが施されています。道産木材そのものを使っているわけではないようです。木だと耐火基準を満たせないのでしょうかね。
このため、従来の赤・青を前面に押し出した独特のデザインは過去のものとなり、快速エアポートのuシートのモケット色(空港駅の旧デザインに合わせた赤・青のデザイン)にその名残を残すのみとなりました。
以前の空港駅は、JR北海道と姉妹鉄道の関係にあるデンマーク国鉄(DSB)の協力のもとにデザインされていました。そのため、北欧チックな意匠が見られ、ちょっとした異文化体験ができる駅でした。
今回のデザイン変更により、デンマークスタイルは空港駅から一掃されました。
これは、JR北海道とDSBが、今や疎遠となってしまったことを象徴する出来事だと思います。
JR北海道とDSBは、北海道とデンマークの気候や鉄道の環境などが似ていることから、平成2年10月16日に姉妹鉄道提携を結びました。JR北海道が持つ日本の鉄道ならではのハード面技術・運行管理技術をDSBに供与し、DSBが得意とするデザインをJR北海道が学ぶ、という互恵関係が構築できたのも、大きな要因でした。
JR北海道は発足当初、本当にデザインがダメな会社でした。721系初期車の内装の件は、あまりにも有名です。それが、DSBの協力のもと洗練されました。キハ261系のグリーン車は、その集大成といえるでしょう。
このように、かつては実際にお互いを高め合えるような関係だったのです。
ところが、平成23年の石勝線脱線事故以降、JR北海道は交通の安全を根底から揺るがす大事件を次々に起こしてしまいます。そのため、現在では安全を最優先に考え、一刻も早く安全対策を進めるために多くの資金を投入しているほか、社内改革も進めています。そのような状況では、自社の運行管理だけで手いっぱいで、DSBに技術を供与する余裕などないはずです。
また、デザイン面でもDSBスタイルが徐々に影を潜めます。キハ283系などのグリーン車リニューアルでは、キハ261系で採用された青の本革シートやダイヤゴナルパターンの床敷物は採用されず、その代わりにデザインは平凡ながら機能性抜群の新しいモケット(織布)シートが設置されました。キハ261系でも、昨年度までに投入された車両ではDSBスタイルの本革シートを採用していたのが、今年度増備車では(まだ現車確認をしていませんが)キロ282形などと同様のモケットシートが設置されているとのことです。
DSBスタイルのグリーン車は、本革に木の肘掛けという、「自然由来、かつ本物の素材」を使うというのが一つのコンセプトとなっていました。モケットシートの導入は、そのコンセプトの否定に他なりません。
ですが、それはおそらく利用者の声がそうなのでしょう。北海道の人間は、節分の日に「拾いやすいから」という理由で昔っから大豆ではなく落花生を撒く民族です。「自然素材」「本物志向」よりも、「実利的なメリット」の方が、この島ではウケが良いはずです。
室内の色味は従来車と同じなので、DSBスタイルの完全否定というわけではありませんが、それでも当初のデザイン思想の根幹を成す要素の一つを折ったわけで、もはや別物と言っていいでしょう。
かくして、かつて存在した互恵関係が完全に崩壊しました。おそらく、これがJR北海道とDSBの「訣別」の理由だと思います。(推論であり確証はないことを念のため付記します。)
ともかく、様変わりしたデザイン。まあ皆さん思うところはそれぞれにあるんじゃないかな、と思いますが……
ボク個人の感想としては、前のも好きだし今のも好きです。どっちがいいなんて決めらんな~い。
その他の改善点と、それに関する与太話と
このほかにも、いろいろ変化があります。ほとんどはJR北海道のニュースリリースに書いてある通りの内容で、掘り下げられそうな話題もとうの昔に他サイト様が掘り下げているので、シンプルに箇条書きでどうぞ。
- 改札口近くの天井に映像を投影。
- 改札内1か所・改札付近の柱4本・到着ロビーからの通路2本×1か所に大型ビジョン。北海道の風景演出、およびCM。
- 指定席券売機を増設。
- 改札内のICカードチャージ機を増設。
- コンコースの列車案内の電光掲示板が、新・苗穂駅と同様のフルカラーLEDのものに交換。(ホームのものは従来通り。)
で、このうち「大型ビジョン」と、先述の「待合スペース減少」、そして別の話題ですが「南千歳駅への『話せる券売機』の新設」、この3つの符号から、昨年話題になったとある「事実」をひっくり返すことができる……のですが、それはまた別の機会に。
時代は、どんどん変わっていきます。それに合わせて、人は、社会は、鉄道は、変わっていくのです。色即是空、空即是色。
でも、鉄道が「社会に必要なインフラ」だという事実だけは、変わってほしくない。
当サイトは、新千歳空港のリニューアルを大いに歓迎します。そして、近い将来の快速エアポート増発をも。未来へ向けて、羽ばたけ札幌アーバン鉄道――
いつにも増して雑だなあ最後の段落……。