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スーパー北斗の白老停車を考えてみよう

イランカラプテ。この季節らしく、あったかくなったり寒くなったり忙しいですが、元気出していきましょう。

本日の議題は特急「スーパー北斗」「北斗」でございます。言わずと知れたJR北海道の幹と言える列車の一つですね。札幌~東室蘭間の途中停車駅は「新札幌・南千歳・苫小牧・登別」の4駅で、スーパー北斗2号は登別を通過します。「すずらん」と比べても停車駅がかなり少なく、スピード重視の設定となっています。

ところが、通過駅の白老で新たな動きが。もともと白老には「ポロトコタン」というアイヌ文化が学べる施設がありましたが、このポロトコタンを発展させる形で「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が整備中で、2020年にオープンする予定となっています。

報道によれば、JR北海道はこれを受けて、現在は6往復のすずらんしか特急が停まらない白老駅の特急停車本数を増やすことを検討しています。言い換えれば、白老がスーパー北斗・北斗の停車駅に加わる見通しだ、ということです。

というわけで、この「スーパー北斗の白老停車」はどうなんだろう、ということを今日は一緒に考えてみましょう。

世間は反対派が多い?

まずはネットの世界でどんな評価を受けているのか見ていきます。テケトーに検索をかけてみたところ、どうやら否定的な意見が多いようです。

妥当かどうかはひとまず措いて、まずはネットなどから拾ってきたさまざまな反対意見をまとめてみます。

「すずらんの停車で十分」という意見

まず、「すずらんが停車しているのだから、それで十分」というものです。

いくら観光客が増えるとは言っても、登別や洞爺ほどの客入りは期待できないのだから、停車拡大のメリットは薄い、というのが理由のようです。

また、スーパー北斗とすずらんの役割分担(遠近分離)、つまり札幌~東室蘭間ではすずらんだけがこまめに停車し、スーパー北斗は通過駅を増やして長距離の区間(すなわち札幌~函館間)に専念すべき、という見地から述べている方もいると思われます。

「所要時間が延びる」という意見

次に、「停車駅を増やしたら余計に時間がかかるジャマイカ」論があります。

当たり前ですが、鉄道というのは停車駅が多ければ多いほど所要時間が延びます。

札幌~函館間で飛行機・高速バスと激しく争っているスーパー北斗は、少しでも所要時間を短くすることで、競争を生き抜く必要があります。停車駅を増やしてしまうと、それに逆行してしまいます。

「コストに見合わない」という意見

次の段落で述べるように、白老駅にスーパー北斗を停めるには、駅の改良が必要です。そのためには、数億円の費用がかかるそうです。

さらに、行政によって駅前広場の整備や南北通路の新設などが計画されています。

実現すればかなり利便性が上がるでしょうが、「お金のやつはどうなるんだよ!!」という意見もみられます。そこまでお金をかけても、効果は薄いのではないか、と。

現在計画中の駅整備工事

前述の通り、白老駅の特急停車拡大に向けて、駅の整備工事が計画されています。

反射的に「反対!」と叫ぶ前に、まずは白老駅の現状確認をしたうえで、整備工事がどのようなものか、見てみましょう。

現在の白老駅の素顔

今の白老駅は、5両編成の特急すずらんと、1~2両編成の普通列車が停車します。

報道によればホーム長は170mなので、8両までなら入ります。事実、過去に781系8両編成(4両×2本連結)が停まったことがあるので、それと同じ8両編成までなら対応できるはず。しかし、キハ261系1000番台のスーパー北斗は最大10両まで増結されるため、これには対応できません。

また、ホームはいずれもかさ上げがされておらず、おそらくは客車用の760mmホームのままだと思われます。特急列車のドアステップとの段差は最小でも21cmで、特にキハ281系(と臨時で入るキハ283系)との段差は30cmをゆうに越えてしまいます。

また、駅の設備はかなり古くなってきています。特に跨線橋はひどい有様で、コンクリはボロボロ、壁や柱はサビサビ。去年には外壁が線路上に落ちるというインシデントが発生しました。

これに限らず、JR北海道の鉄道施設はかなり老朽化が進んでおり、経営再建を目指すJRにとって重石となっています。

駅前にはロータリーがありますが、大型のバスの乗り入れにはちょっと手狭です。現状はタクシー・自家用車専用という感じがします。

北口には建物がなく、南口へと繋がるオープンエアの跨線橋があるだけです。まるで歩道橋のような最低限の設備があるだけで、バリアフリーのバの字もありません。また、ホームの跨線橋と同じように老朽化が進んでいます。

ホームの延伸・かさ上げ・エレベーター設置

現状がわかったところで、整備工事の話をしましょう。

まず、スーパー北斗が停車するために、ホームの延長とかさ上げがJR北海道によって行われます。

さらに、補助金を活用した上でホームと南北自由通路(後述)をつなぐエレベーターの整備が行われるようです。


それじゃ検討開始。まずホームの延伸ですが、「9~10両編成の列車はドアカットで対応すれば、ホームを延ばす必要がないのでは?」という意見があちこちで見られます。

ところが、です。実は国土交通省のうんにゃらかんにゃらによって、今までもドアカットをやっていた列車・駅以外では、ドアカットを行うことはできないらしいです。ただし、ネットで断片的な情報を掴んだだけで、ウラは取っていません(たぶんホントだとは思います)。

仮にこの情報が偽だとしても、やっぱりJR北海道はドアカットをしないと思われます。

なぜなら、スーパー北斗へのキハ261系投入に合わせて新札幌駅のホーム拡張が行われたからです。

今まで夜行列車ではドアカットをやっていたのに、スーパー北斗では新たに(昔はやっていたが、減速減便ダイヤ以降は増結が抑制されドアカットは一時実施されなくなっていた)ドアカットをするのではなく、ホームを延ばしたワケです。ここから、「ドアカットをしちゃいけない」もしくは「スーパー北斗ではドアカットをやりたくない何かしらの理由がある」というのが窺い知れます。


なんで規制がかかるのか。仮に規制がないとしても、なんでJRはドアカットをしたくないのか。その理由を探ってみましょう。

理由の第一として考えられるのは、安全。ドアカットをする駅で車掌が誤って全部のドアを開けてしまえば、下手をすると転落事故に繋がります。確かにきちんと確認してドアを操作すれば、大半は未然に防げるでしょう。しかし、ワンミスで命に関わる事態を招くワケで、それは健全な状態とは言えません。

また、不慣れな旅行者の場合、ドアカットが行われていることに気付かず、列車から降りられないという事態がありえます。鉄道ファンであればドアカットの実施駅と号車を把握することは容易いですが、それ以外の人だとそうはいきません。降り損ねた人はせっかくの旅なのにイヤな思いをすることになりますし、それを防ぐために対策をするとなれば結局コストがかかります。

さらに、10両編成を組んでスーパー北斗に充当されることがあるキハ261系1000番台には、ドアカット機能が付いていないと考えられます。比較的短編成の「スーパーとかち」用に開発されたので、つい2年前まではドアカットの必要がなかったからです。ドアカット機能を付けるには改造が必要で、やっぱりコストがかかっちゃいます。ドアカット機能がなくてもドアカット自体は可能かと思いますが、間違ってドアを開けてしまうリスクが高まってしまうので、望ましくありません。安全面も考えたら、ホーム延長の方がいいでしょう。

追記(令和5.6.4):キハ261系1000番台はドアカット可能なようです。ホームライナー3号(令和5年改正後は全車指定席となり、乗車可能な車両のドアは全て開放に変更)で、手稲駅で9両のうち後ろ4両をドアカットしているのを現認しました。ただこれは「始発だから」できているようにも思われ、白老という途中駅1ヶ所だけでドアカットを実施するのは、設定忘れ・戻し忘れといった操作ミスを誘発する可能性があるので、やはり望ましくないでしょう。

もっと言うと、ドアカットは車掌にとって大きな負担になります。しかも9両編成と10両編成の二つの場合に対応する必要があり、余計に負担です。そうなれば車掌さん他の会社に逃げちゃいます。車掌さんがいなくなれば将来の運転士もいなくなります(運転士になるには車掌の経験が必要)。車掌や運転士がいなければ、完全無人運転を実現しない限り列車が動かせなくなります。

といった具合に、実はドアカットにはデメリットのカルテットが存在します。安全性の観点から規制があってもおかしくありませんし、もし無かったとしてもなるべくドアカットは避けるべきでしょう。特に観光拠点では、ね。

一点補足しておくと、仮に「臨時停車(特別停車)」という形で白老停車拡大を実現するにしても、結局ホーム拡張が必要です。ドアカット問題は臨時停車の場合でも発生しますからね。

なお、白老には今後、団臨「トランスイート四季島」の停車も想定されます。まさか豪華クルーズ列車である四季島でダァカットなんて考えられないので、四季島を停めるならどのみちホーム拡張は必須です。


続いてかさ上げとエレベーター設置。バリアフリーが要請される時代、段差をできるだけ解消することはもはや必要条件といってもいいでしょう。観光拠点なら、なおさらな話です。

それに、せっかく車両がバリアフリー対応でも、駅が対応していなかったら意味がありません。観光客が駅でコケたなんて、洒落にもなりません。

バリアフリー化により、乗客に利益がもたらされます。段差が少なければ、それだけ移動することへの抵抗が減ります。これは案外バカにできないポイントです。

追記(令和3.8.3):ホームのかさ上げは2・3番線のみ行われたようです。どうやら1番線と2・3番線でホーム高さが違うようで(上記のホームと車両の段差の写真は1番線のもの)、特に段差が大きい2・3番線のみの対応としたようです。令和4年度(2022年度)に特急北斗の全列車キハ261系化が計画されており(本記事初版時点では未発表の計画でした)、それ以降白老駅に停車する定期特急はドアにステップのある261・785・789系のみとなり、ある程度ホームが低くても対応可能ですので、差し当たり問題はないと思います。

南北自由通路の新設

ホームの拡張の他に、行政によって駅設備が強化されるようです。

白老町は、駅の北口と南口を結ぶ自由通路を建てるようです。バリアフリーを考えて、エレベーターも設置するようです。

南北通路により北口の利便性が向上し、観光客の導線を整備できます。南口でも良さそうなものですが、南口からだと途中で踏切を通る必要があります。

踏切を通らない導線を整備すれば、安全でバリアフリーな観光地づくりに貢献できますし、踏切待ちの時間も解消できます。

さらに、この計画は北口広場の整備とも連動しています。北口に飲食店・ホテルが整備されるようで、こうした施設のアクセスも兼ねて北口の整備が必要になります。

この北口広場整備はかなり大がかりな計画で、しかも滞在型の旅行客にはそこまで期待できないと思うので、採算性はどうなんだろう、と思わなくはありませんが、この記事の主題はあくまで「特急停車の是非」なので、今回は取り上げません。

追記(令和3.8.3):北口の駅前整備計画は大幅に計画変更したようで、実際に整備されたのは象徴空間までのプロムナードと、小規模な店舗がいくつか、それだけです。従前の計画はかなり大きなもので不安視していましたが、結果としては程よいところに落ち着いたのではないかと思います。

また、まちづくりの一環という意味合いもあるでしょう。駅のすぐ北に製材所の広大な敷地がデーンと広がっているせいで、パッと見だと北口には何もないように見えてしまいますが、現実には北にも市街が広がっています(画像右側は白老駅北口広場(という名の空き地)、左側は市街)。このエリアからの駅へのアクセスを改善する効果も期待できます。

なお、自由通路が作られることで、現在のホーム跨線橋は撤去されるようです。これによって、JR北海道は老朽インフラを一つ放棄できるので、駅のメンテナンス費用が減る分得をします。

駅前広場の整備

道も、白老駅前の広場を整備するという形で、駅拡張計画に参画するようです。

大型のバスが乗り付けられるようロータリーが整備されるほか、一般の駐車場も整備されるようで、パークアンドライドなどに役立つでしょう。

ロータリー整備により、観光バスが乗り付けやすくなります。バスのルートとして、「登別温泉各ホテルから乗車し、登別と白老を巡って、白老駅で解散」というようなルートがありうると思います。こうしたバスルートを確保し、鉄道と観光バスを組み合わせた周遊ルートの整備ができます。

一方、駐車場の整備はどちらかというと町民向けの施策になるかと思います。観光客は象徴空間の駐車場に直接車を停めるでしょうからね。

ポイント① 白老駅の特急停車拡大のメリットを正しく評価しよう

では、検討に移りましょう。まずは特急停車拡大によってどんなメリットがあるか、広い視点から見ていきます。

札幌方面からのアクセスについて見ると、現在は一日6往復ですが、停車拡大後は最低でも2倍の本数が停車するようになるでしょう。

単に本数が増えるだけではありません。ここで重要なのが、日中の停車本数です。

現状だと観光に使えるのは、札幌から白老に向かう列車がすずらん2・4・6号。札幌に帰る列車に至っては7・9号の2本だけです。6往復とは言いますが、すずらんは苫小牧・室蘭から札幌へのビジネス客を強く意識したダイヤとなっているので、観光客目線だと現状の停車本数は2.5往復しかないのです。それじゃあダメじゃん。

日中のスーパー北斗を停車させれば、象徴空間の営業時間に合わせて白老にアクセスするのが一気にラクになります

最低でも1時間に1本は白老に行く特急が走ることになるので、乗客は気軽に白老に向かうことができます。フリークエンシーの向上は利便性アップに大きく貢献するのです。


でも、これだと「すずらんの増便で足りるのでは?」となりそうですよね。確かにそうです。現実には需要の太宗である札幌~苫小牧・室蘭間の利用増が見込めない(現状でも北斗・すずらん合計で18往復もあるため)ので増便の可能性はかなり低いですが、仮にすずらんの本数が増えさえすれば、スーパー北斗・北斗を停めずとも、札幌から白老へのアクセスが改善されるでしょう。

ここでもう一つ大事なこと。すずらんは東室蘭から先、洞爺・函館方面には乗り入れないのです。

象徴空間へは、函館方面から観光客がやってくることもじゅうぶん想定されます。

なに?「函館は高々人口30万。また、いくら北海道新幹線があるからといっても、東京からは7時間くらいかかる。乗客数なんてたかが知れている」と?

そうじゃありません。

何か。函館や洞爺湖は観光客に大人気で、彼ら観光客の多くは札幌も観光します。スーパー北斗という列車は、こうした観光客の周遊ルートとして機能しているのです。

函館や洞爺から札幌を目指す客の中に、札幌に向かう途中に白老に寄ろうと考える人が一定数いるはずです。たとえば、函館や洞爺で一泊した後、白老に寄ってから札幌へ、という具合です。

列車1本で白老にたどり着けないという現状、函館方面から白老へのアクセスは困難ですが、停車拡大によって乗り換えが解消されるほか、所要時間も一気に短くなるので、飛躍的に利便性が上がります。

もちろん、東室蘭や登別で、すずらんまたは普通列車に乗り換えれば、現状でも白老へのアクセスは可能です。

しかし、鉄属性のないふつうの人間が、しかも大荷物の観光客が、乗り換えを好き好んでやるわけがありません。

「乗り換えさせればいい」という意見は、趣味の世界の中から言っているに過ぎず、現実を見据えたものだとは思いません。


なお、「スーパー北斗とすずらんは遠近分離すべきだ」という意見は、的を射ているとは考えられません。

すずらんの運行本数は少なく、すずらんが運行されない時間帯は遠近分離が実現していません。

スーパー北斗は、函館に急ぐから停車駅少なめ。すずらんは運行区間が短いから停車駅多め。停車駅の差は、運行区間の違いによる列車性格の差でしかなく、遠近分離を意図しているとは思えません。

そもそも遠近分離という発想自体が、札幌だけを見据えた狭い発想でしかありません。函館方面を見ていない以上、1個上の段落で述べた批判に耐えることはできません。


まとめると、札幌方面からのアクセスが飛躍的に便利になるだけでなく、函館方面からの需要を掘り起こせる、ということです。

札幌方面から見ると、「日中のフリークエンシー向上」というメリットがあります。函館方面から見ると、「乗り換え解消」というメリットがあります。

周遊観光客という客層を想定した上でよくよく考えると、スーパー北斗の停車は利便性アップにつながる可能性があることがわかります。

ポイント② メリットとデメリットを総合的に評価しよう

メリットがあれば、デメリットもあります。議論というのは、メリットとデメリットの両方を見ないと、成り立ちません。

そこで、スーパー北斗の白老停車にはどんな利点と欠点があるか、ちょっとまとめてみましょう。

まず利点から洗い出してみましょう。

  • フリークエンシー向上により、札幌方面からのアクセス改善。(上記ポイント①の通り)
  • 時間短縮・乗り換え解消により、洞爺・函館方面からのアクセス改善。(同上)
  • バリアフリー化による利便性アップ、および南北通路整備による踏切待ち解消。
  • 白老駅の利用者増加によるJR北海道の増収。(ただしフリーきっぷ利用者は増収に貢献しない)
  • 老朽跨線橋廃止によるJR北海道の費用減少。
  • 鉄道でのアクセスによる環境負荷の低減。(気動車なので怪しいけど)

上三つのアクセス改善は、利便性が上がったことで利用者にとっての移動費用が減少することと、それに伴って需要が増えること、この二つを尺度として数値的に評価できます。

続いて欠点。いろいろ批判がある通り、デメリットも結構いろいろあります。

  • 白老駅の整備費用。(先述の通り)
  • 停車駅が増えることによるスーパー北斗の所要時間増加に伴う利用者減少(=利用者にとっての移動費用増)。
  • 利用者減少に伴うJR北海道の減収。

利用者にとってのメリット・デメリットを数値化することを、利用者便益分析と言います。

また、利用者便益を含めた様々なメリットやデメリットを数値的に評価し、どちらが大きいか判断することを、費用便益分析といいます。

簡単に「費用対効果」とは言いますが、実はこれだけ色々な要素を計算に入れなければなりません。

ここで大事なのが、費用便益分析はJR北海道にとっての費用対効果だけを計算しているわけではない、というところ。利用者の便益や鉄道事業者以外の出費、環境への影響をも勘案して、はじめてちゃんとした分析となるのです。

わかっていない人ほど、利用者便益を無視して(忘れて)、鉄道事業者の損得だけで計算しがちです。交通とは便利な社会を作るための道具、インフラであるということを忘れてはいけません。


では突っ込んだ便益分析を……といきたいところですが、データがないのでこれ以上は突っ込めません。

というか、これ以上踏み込んだ話をするとなると、今のボクの力量をはるかに超えてしまいます。分析の詳しい手法を知らないどころか、そもそもミクロ経済学すらまともに学んでいません。

今後知識を付けようとは思いますが、今はこの程度の解説で勘弁してください……。

とはいえ、おそらくはボクらどシロートが喚くまでもなく、既にJRさんはこのくらいの計算はきちんとしていると思います。昔だったらいざ知らず、今の社長になってからはかなりまともな会社になったようですし。

ただし、この分析は「象徴空間の来場者が行政の見立て通り年間100万人となる」という条件で計算している可能性があります。実際はこの半分以下の来客しか稼げない可能性が結構あります。この辺、注意が必要です。

ポイント③ 「特急を利用した新しい観光」の発展のために――

ポイント②は経済学的なアプローチです。他の方向からのアプローチもしてみましょう。

白老駅の特急停車拡大、その最大の目的は、もちろん観光です。

白老を観光地として発展させることは、当然ながらそのまま我が国の観光発展に繋がります。

それだけではありません。先述の通り、札幌・洞爺湖・函館といった有名観光地からのアクセスが改善するため、お互いの観光地が盛り上がるでしょう。

これからの北海道、これからの日本は、観光の時代に入っていくとボクは信じています。成長産業である観光を発展させることは、今の北海道・日本にとって優先度の高い課題だと思います。

そして、その並み居る観光地を結ぶ交通が、JRの特急だということも、大事なことだと思います。

スーパー北斗なら、大量輸送という特性を活かし、少ないコストでたくさんの観光客を運ぶことができます。スーパー北斗なら、スピードを活かし、効率よく観光地を巡ることができます。

観光と鉄道、というキーワードからは最近流行りの観光列車がイメージされがちですが、単純な観光地への移動手段としての鉄道もまた大事です。

こういう観点から、特急の白老停車によって、道南~道央の観光を元気にするべきだ、という発想があっていいと思います。

ただし、「札幌~函館間などの所要時間増加により、観光アクセスが悪くなる」ということも言えるので、注意が必要です。

個人的には賛成です

ポイント②で言った費用便益分析を実際にやったわけではなく、ポイント③についても理論的な裏付けがあるワケではないので、「検証結果」ではなく「個人的な意見」としてですが……

あくまでボク個人としては、スーパー北斗の白老停車には賛成です。

主な理由は、ポイント③で述べた、白老を含めた道央・道南の各観光地の魅力アップと、広域観光交通としてのスーパー北斗の利便性アップです。

ただし、象徴空間の営業時間を完全に外す時間帯の列車は通過すべきだと考えます。大沼公園と同じようなスタイルでよいと思います。そういう時間帯のビジネス需要は「すずらん」でカバーできますしね。

所要時間の増加については、多く見積もっても3分程度でしょうから、そこまで悪影響は出ないのではないか、と見込んでいます(これも裏付けはありません)。

そもそも所要時間を気にするなら、伊達紋別・長万部・八雲・森の停車本数を減らすことも同時に論じるべきでしょう。ただ、それをやっちゃうと「停車駅が列車ごとにバラバラでわかりづらい」というデメリットにもなるので、一概に停車駅を削ればいいというものでもありません。

……なんというか、ボクのプアな文章力とスッカスカな知識を露呈しただけのクソ記事になってしまった感。

まあとにかく、停車駅一つとっても、利用者便益だったり両方向からの需要だったり、いろんなことを考えてやらなきゃならないから、素人が反射的に意見するのは危険だぞ、っていう一番言いたいコトは伝わるかな。

なんにせよ、白老をきっかけに北海道の観光客がいっぱい増えてほしいと思う今日この頃。とりわけ日本人に来てほしいなあ。

※追記(令和3.7.15)

令和2年(2020年)3月のダイヤ見直しから特急北斗(スーパー北斗の名称は消滅、全列車「北斗」に統一)の大半が白老に停車開始、その後同年7月に(COVID-19の影響により約3ヶ月遅れで)ウポポイが開業しました。

令和3年(2021年)7月14日、JR北海道のニュースリリースにて白老駅の利用状況が公表されました。

利用客の数はCOVID-19の流行状況にかなり左右されているので、数字の取り扱いは難しいものがありますが、少なくとも「ウポポイ開業後、かつ比較的感染症の影響が少ない令和2年夏」と、「ウポポイ開業前の令和元年夏」を比べると、1日あたり200名ほど乗降客数が増えているようです。つまり、乗車人数は約100名増。

本記事に明記はしませんでしたが、白老駅の利用者が100人/日も増えれば、まあ成功と言えるだろう、と見立てていました。感染症の影響がありながら、まさに100人の利用増を実現したということで、世相を考えるとまずまずの滑り出しといえましょう。

今後は"After COVID"に向け、この数を維持、そして増やしていくことが課題になります。単純に収益の観点以外からも、北海道の観光を盛り上げ、そして「共生社会」を目指すべくウポポイを瞬間風速で終わらせないためにも、白老駅と特急北斗にはまだまだ利用客を稼いでもらいたいところ。


ところで、北斗の白老停車開始後に、新たに気になった点があります。それは、「観光以外での白老駅の利用状況」です。

というのは、令和2~3年にかけて何度か北斗に乗ったんですが、日中の列車を中心に、観光には見えない風の、おそらく地元の方数名が白老で北斗に乗降するのを見かける、ということが複数回あったのです。

以前は特急の停車本数が少なかった白老駅。北斗が停車するようになり、大幅にフリークエンシーが向上しました。結果、今まで拾えていなかった地域利用(札幌~白老など)の需要を掘り起こすことに成功した、という可能性があります。

もちろん、すずらんの利用客を吸っただけ、という可能性もありますが、それはそれで「今までよりも自分の都合に合った時間の列車に乗れている」ということになりますので、プラスの効果と言えます。このあたりは詳しく調べてみないと、何ともわかりませんがね。

観光のみならず地域利用にも良い影響が出ているのなら、特急停車拡大はますますもって上々の立ち上がりと言えそう。まあ、いずれにせよ今後の観光客の数次第ではありますが……。

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