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「見えないもの」を、見に行こう 文化の秋・道内日帰り3連チャン(平成28年10月8~10日)
2日目(平成28.10.9) part1/3「三浦綾子記念文学館」
本日の行程
移動手段 | 乗車(移動開始) | 出発時刻 | 下車(到着地点) | 到着時刻 | 車両 |
---|---|---|---|---|---|
函館本線普通923D | 白石 | 6:08 | 旭川 | 8:52 | キハ40 823(2両編成・2両目) |
快速なよろ1号 | 旭川 | 11:28 | 名寄 | 12:52 | キハ40 827(単行) |
トヨタレンタカー | 名寄 | 13:20頃 | エコールなかがわ | 15:00頃 | トヨタ・ヴィッツ |
トヨタレンタカー | エコールなかがわ | 16:10頃 | 道の駅なかがわ | 16:25頃 | トヨタ・ヴィッツ |
トヨタレンタカー | 道の駅なかがわ | 16:50頃 | 名寄 | 18:30頃 | トヨタ・ヴィッツ |
宗谷本線普通330D | 名寄 | 18:58 | 旭川 | 20:39 | キハ54 501(単行) |
函館本線普通2342M | 旭川 | 20:51 | 岩見沢 | 22:24 | クハ721-14(3両編成・3両目) |
函館本線普通276M | 岩見沢 | 22:32 | 白石 | 23:07 | クハ733-113(6両編成・3両目) |
旭川へのヨンマル行路
10月9日午前6時前、JR函館本線・白石駅。3連チャンの中日は、道北は天塩川流域を目指します。
前日は白石22:21着で、この日は旭川行きの始発に乗るので白石6:08発。この間、8時間足らず。このように、日帰り3連チャンの問題点として、毎日帰るために一日の行動時間が長くなることと、観光の時間を確保するために睡眠が犠牲になることがありました。
しかし、疲れは感じていたとはいえ普段の旅行の2日目と大して変わることはなく、問題なく行動できる状態でした。
家とあって、いつも通りしっかり熟睡できたようで、特に眠気があったりはしませんでした。
前日と同様に白石の有人改札を通ってホームへ。5番線をスーパー北斗2号が通過して少しすると、旭川行きの923D普通列車が入線してきました。
いつもと同じようにキハ40形の2両で、この日は両方とも原型エンジンの700番台。発車時には3~7秒ほどエンジンをふかして、やっと少しずつ動き出すという感じ。「ガヒ~、ガヒ~、ガビ~~」というエンジンの唸りが、鉄道ファン目線で見ると愛らしいですが、いち利用者としては加速の鈍さに腹が立ちます。
車内は「2列+1列」のセミクロスなので座席が少ないこともあり、座席がだいたい埋まっていました。ボクはロングシートに着席。朝イチの郊外行きでコレなので、やっぱりこの区間は需要旺盛だなあ、と再認識します。キハ40もこう見えて80年代までは札幌エリアの主力の一翼だったわけで、これがつい四半世紀くらい前までの日常の光景だったんだなあ、と。
大麻でごそっと降車があり、一人掛けのクロスシートを確保。江別を過ぎると車内はだいぶ静かになってきます。
岩見沢で列車は小休止。スーパーカムイ1号に抜かれます。乗務員もここで休憩タイムに入る感じでしょうか。ボクもホームに出て伸びをしました。
岩見沢からはローカルムード。乗客も少なく、列車は淡々と平野を駆けていきます。
外は秋の石狩平野。好きな景色ではありますが、如何せんもう散々見ているので、別段感慨もなし。
滝川からはワンマン列車となり、深川を過ぎるとトンネル地帯に。
さて、気になるのは空模様。天気予報では、この3連休は後半が好天。しかし、この日は道北方面が雨の予報でした。
この時点では晴れており、旭川方面に行ってもこの天気がもってほしいところでしたが……。
あっ……
西の空にかかる虹。その先には低く垂れ込める雲。ボクはすべてを察しました。
「ハイハイ、どうせ雨って知ってましたよーだ……」
道中に「道」を探る
札幌~旭川間は、特急・普通列車問わず、今まで何度も乗車してきた区間。北海道の大動脈のひとつですから当然ですが。
いつもと同じように乗っていても仕方がありません。そこで、今回は車内で読書をすることにしました。
ここでその話を取り上げるということからお分かりでしょうが、その本はこの先の行程に関係します。その本は、小説『塩狩峠』(三浦綾子・著)。
『塩狩峠』は、その名の通りJR(小説の舞台である戦前は「省線」といった)宗谷本線の塩狩峠にまつわるエピソード。鉄道職員の長野政雄という人物が、塩狩峠の勾配で暴走した列車を停めるべく列車から線路に飛び降りて殉職したというエピソードを基につくられた小説です。
今回、ボクは名寄方面に向かうということで、この塩狩峠を越える列車に乗るわけなので、それにちなんで以前から気になっていたこの一冊を読むことにしました。といっても数日前に少し読み進めておいたんですが。
さて、この『塩狩峠』ですが、非常に「示唆に富む」内容でありました。
まず重要なのが、作者の信仰を反映して、この小説は「キリスト教」がひとつのテーマとなっています。ボクは別に信心したワケじゃないですが(昔っから変わらず神仏習合でナマンダブな日本人丸出し野郎でさぁ)、信じる信じないにかかわらず、キリスト教の考え方というのは、人生そのものに様々な問いかけをしてきます。
次に、当時の時代背景として、キリスト教徒は一般に「異質な存在」でした。また、華族・士族・平民の階級が存在した時代でもありました。こうした「差」に関するエピソードが描かれています。
そして、長野がモデル(の一人)となった主人公や、その周囲の人々の性格や、思いや、哲学が、それぞれに「生き方とは」「人生とは」という根源的な問いを発しています。
こうした問いかけの中で、特に強く感じとられるのが、「人はしょせん小さな生き物でしかない、と理解しているか」「自分の亡き後に何かを残すことはできるのか」この2つです。
まず前者ですが……。人間は大いなる世界や宇宙から見たらゴミのようなものだ。頭では分かっていても、『塩狩峠』を読むと、「本当には理解できていないんじゃないか」と思えてきます。どこかで、「自分は大きな存在だ」と思っているのではないか、と。
そして後者について、これはボクが富や成果を残して死ぬ、ということではなくて、周囲の人にどんな影響を残すか、という意味合いです。「虎は死して皮を残す」と言いますが、ボクも人生のうちで何かを成さないまでも、後世に何らかの影響をもたらすことができるのでしょうか。今のところできそうもありません。
……とまあ、今後の人生について様々に考えることがありました。ちょうど大学卒業を控えた時期とあって、今後はどう生きたらよいか、という問題はボクにとってタイムリーでもありました。
と、考えをたくさんめぐらせながら、また時々窓の外などを見ながら読んでいって、ちょうど読み終わったあたりで旭川に到着しました。
「まだ」青空の旭川では、2時間以上もある乗り換え時間を活用して1か所だけお出かけしてみます。
三浦綾子記念文学館
旭川駅には何度も来ており、駅前の風景はボクにとってもはやおなじみのものとなりました。気分的にはもう庭です。ただ、「庭」と呼べるほど歩いたか、と言われるとそうではないんですが、ね。
今回は南口から外に出て、忠別川を渡った向こうに行きます。
南口を出て左に行くと、「氷点橋」がかかっています。これは『塩狩峠』の作者である三浦綾子の小説『氷点』から来ており、『氷点』にまつわる見本林へと続く道路ということで命名されたそうです。
その見本林に向かうべく、橋を渡って南に進みます。
旭川は晴天でしたが、風が出ており、ときおり天気雨が降るという非常に不安定な空模様。風を食らいやすい橋の上で天気雨に見舞われ、風と闘いながらなんとか傘をさして防御。
天気と闘いつつ橋を渡り、そのままずーっと直進。道が細くなろうが直進。すると、見本林の入り口に着きます。
見本林は遊歩道が整備されており、散歩などに最適。入るとすぐに、目的地である「三浦綾子記念文学館」にたどり着きます。
早速中に入って見学です。
館内の展示は、三浦綾子と、その夫であり綾子の作家人生を支え続けた三浦光世の生涯についてと、三浦の数々の作品に刻まれたメッセージについての展示が中心となっています。
タイムリーなことに、文学館では『塩狩峠』の特別展をやっていたので、『塩狩峠』をもっとよく理解することができました。
繰り返しますが、ボクは改宗するつもりなど全くありません。今後も神様と仏様の両方に手を合わせます。
というかボクは別に三浦のファンではありませんし、一人の作者の本を読みまくるよりはいろいろな作者の作品に触れたいと思っています。今回『塩狩峠』を読んだのは、あくまで北海道の鉄道関連ということと、人生の参考文献にするのと、です。
あくまで人生の参考として、しかし文学館の展示、そして『塩狩峠』はボクに強いメッセージを発していました。
損得勘定を抜きにして、誰かのために尽くすことが、ボクにできるのか。
他人のために命をも投げ出すことを、ボクはしようと思うだろうか。
自分の弱さを、ボクは本当に認めることができるのか――
「たぶん、無理だな。」割とすぐに結論を出してしまいました。
どうやら、ボクはまだ若すぎるようです。この星の無数の塵の一つだと、今のボクには理解できないのです。
まあ、幸いまだ少しばかりの時間がボクには残されています。もう少し、若く生きてみることにしましょう。
1日目「沙流川を遡った先に ~The blessing of an abundant river~」
2日目「新たな『道』を拓く ~Beyond the mountain pass~」
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