歴史⑤ / 札幌~新千歳空港 快速「エアポート」など - ゲニウス(北)の北海鉄旅いいじゃないか
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札幌~新千歳空港間・歴史 第5章 未来へ羽ばたいて / 北の特急(+α)図鑑

空港アクセスの潮流の変化 ~733系3000番台~

図1:快速エアポートとして運行される733系3000番台

平成26年、733系3000番台が快速エアポートに投入されました。

この車両は、平成24年から札幌エリアで運行を開始した733系の改良版です。733系は前章で触れた731系の進化系で、JR北海道が渾身を込めて計画した札幌エリア一般車両の集大成です。

改善点として、ドア部分がノンステップとなった、車体幅が増えて詰め込みが効くようになった、乗り心地や座席の座り心地が大きく改善されたなど設計が大きく飛躍した、などがあります。

3000番台は主にエアポートとして運用する編成で、6両固定編成、4号車はuシートです。

この車両、基本番台とは大きな違いが一つあります。それは雪切室がないことです。

それまでの国鉄北海道総局・JR北海道の電車は、電動車に雪切室を設置して、外から取り入れた空気から雪を取り除いたうえで主電動機の冷却に使っていました。こうしないと、冷却のための風に雪が入って、機器に影響が出てしまいます。ですが、733系3000番台からは「全閉式」の電動機を採用したので、雪を取り除く必要がなくなったので、雪切室がなくなりました。空いたスペースは客室となり、さらに詰め込みが効くようになりました。さらに部品が減って車両も軽くなるなど、様々なメリットがあります。

しかし、自由席車両の座席は、他の733系と同じくすべてロングシート。それまでは全列車がクロスシート主体の車両で運行されていたのに、登場した新車はロングシート主体の車両となりました。


札幌~空港間の所要時間が30分を超える快速エアポートに、長時間の乗車に向かないとされるロングシートの車両を導入したことは、各方面からの轟轟たる非難の的となりました。

しかし、「クロスシートは快適、ロングシートは不快」という紋切型の意見だけでは、本質は見えてきません。

第一に、エアポートの混雑の問題があります。快速エアポートの混雑は徐々に熾烈になってきていました。座ることができればよいのですが、立ちになってしまうと、吊り革・手すりが少なく、通路の狭い車両で長い時間を過ごすことになります。

千歳線はこの時点で特急・快速・普通のほか貨物列車があり、限界近い本数が設定されています。また新千歳空港駅は6両編成までしか入線できず、ホームを延伸するのも難しい状況です。

混雑を解消する根本的な方法がない以上、クロスシートだけで快適な輸送を提供することは限界といえる状況でした。

第二に、乗客の手荷物の問題があります。実は、大荷物を持って列車に乗るとき、クロスシートよりもロングシートの方が便利になる可能性があるのです。

クロスシートの車両は、uシートを除くと荷物置場がありません。空港を利用する乗客は大荷物の場合が多く、網棚にも入りきらない場合が往々にしてあります。かといって通路に置くと、他の乗客の邪魔になるどころか、キャリーバッグの場合どこかに流れていってしまうことがあります(流れてきた誰かのキャリーバッグを椅子に座ったまま逆シングルで受け止めたことがあるんですよボク)。一方、ロングシートなら手元に置けば問題ありません。

以上から、快速エアポートに最適な車内設備として「混雑するクロスシート」と「ロングシート」を比較検討したとき、ロングシートが優れているという考え方が成立しうるのです。事実、JRも雑誌『鉄道ファン』2014年10月号にて、混雑への対応や大荷物を持った乗客の利便性を考慮して「デッキなし・ロングシート」の仕様を採用する、という説明をしています。

クロスシート需要に対してはuシートという選択肢が残されている点、およびロングシートの座り心地が良い点も加味してよくよく検討すると、当初各方面から上がった「安易なサービス改悪」という批判は、事実に即しているとは到底言えないのがわかります。


733系3000番台は、千歳線・函館本線に登場すると、さっそく輸送力を生かして活躍をはじめました。

翌年にかけて7編成が投入され、これでエアポート用6両編成は18本となりました(これにより、721系F-1009・5001はおそらくエアポートの予備車としての役割を終えました)

「空港アクセスも、ロングシート主体」――各地の空港アクセス列車を見ても、特別料金を取る列車・車両を除けばロングシートの車両が目立つようになってきた今日、733系3000番台はこの潮流を確固たるものにするかもしれません。


なお、この年の8月30日の改正から最高速度が120km/hに低下。JR北海道が事故を連発させていたことから安全重視の減速ダイヤが組まれ、エアポートも速度を落とすこととなりました。これで札幌~新千歳空港間の所要時間が37分に、小樽~新千歳空港間は1時間13分に延びました。考えようによってはたった1分ですが……。

JR北海道管内の特急列車はスーパーとかちを除いて前年の11月に減速ダイヤに移行していましたが、千歳線の高密度ダイヤに手を加えるのに時間がかかってしまい、エアポートの減速はこの時までずれこんだのです。

新たな時代 ~平成28年ダイヤ改正~

新車登場からおよそ1年半後の平成28年3月26日のダイヤ改正で、14年ぶりにエアポートの運行形態に大きな変化が訪れることとなりました。

まず、新千歳空港駅開業以来続いていた旭川直通エアポートがついに廃止されました。日中のエアポートは、札幌~新千歳空港間のみの便と小樽直通便が交互に運行される単純な運行形態になりました。

これによって、エアポートの車両は721・733系の6両編成(うち1両が指定席uシート)に統一され、733系投入と合わせて輸送力がアップしました。

なお、733系3000番台投入によってエアポート用編成は18本(721系F-1009・5001編成は除く)に増加していたため、車両の置き換えにあたって新たな車両は必要ありませんでした。

次いで、ダイヤにも変更がありました。

空港発の列車は、日中の空港発車時刻が00・15・30・45分に。空港行きは、小樽発00・30分、札幌発05・20・35・50分にそれぞれ変更となり、覚えやすい綺麗な時刻設定となりました。

小樽直通の列車は、従前は札幌4分停車だったのが、小樽行きが札幌6分停車に、空港行きが同3分停車にそれぞれ変更となりました。遅れやすかった小樽行きの遅延を札幌で吸収しやすくなった一方、小樽~新千歳空港間の所要時間が最高130km/h運転時代と同じ1時間12分に戻りました。

減速ダイヤ移行後は、空港行き列車が空港に着いた直後に逆方面行きの列車が発車するという綱渡り的なダイヤとなっていましたが、時刻がずれたことで綱渡りが解消されたのも、列車の定時運行を守るという意味では大きな改正です。

ただし、1時間にスーパーカムイ1~2本とエアポート2本が札幌で折り返すようになったため、札幌駅は忙しくなってしまいました。エアポートとスーパーカムイの直通をしないことで遅延が広がりづらくなったとはいえ、遅れるときはやっぱり遅れる、という印象です。

また、この改正からuシートの利用料金が520円に引き上げられました。平成26年4月に消費税増税の影響で300円から310円に料金が上がって以来、約2年ぶりの改定となりました。前章でお話しした通り空港利用客は増加しており、値上げにもかかわらず改正以降もuシートの利用は旺盛で、平日の昼間でもuシートが満席になることが多いほどです。需要・供給の両面から見て、ベストな判断だったといえるでしょう。

この改正によって、利用客の大多数である札幌から(もしくは札幌へ)の乗客からはエアポートの利便性が大きく向上しました。旭川直通便こそなくなりましたが、もとより札幌で旭川・名寄・北見方面の列車と、南千歳では室蘭・函館・帯広・釧路方面の列車と接続しているので、エアポートは変わらず道内各地と空港を結ぶ列車としても活躍することとなります。


ダイヤ改正以降も、エアポートはきわめて好調でした。多少の遅れは相変わらずですが、平日の日中でも利用が多く、先述の通りuシートが満席となることも多く、自由席にもたいてい立ち客がいるという状況です。

特急の乗客が伸び悩んでおり、そのほかにも安全対策、災害からの復旧と、会社を揺るがすような不安要素が数多くあるJR北海道ですが、エアポートは北のエースとして輝かしい実績を残しています。

一方で、これほどの体系変更にもかかわらず、またしても輸送力が不足する事態が近づいているのも事実です。エアポートには、さらなる変化が待っているでしょう。

今後の展望

目下、快速エアポートに関連する最大の社会問題は、新千歳空港の発着枠拡大です。

これまでも発着枠の拡大は行われており、そのたびに利用客が増えてきましたが、今回はかなり大きな拡大措置で、1時間当たりの最大本数が32から42へと大幅に増やされることとなるようです。

発着枠の拡大は2017年4月から実施され、これに伴って快速エアポートの利用が急激に伸びることは確定的となっています。

しかしながら、この需要大幅増加に対応できるだけの設備は、現在のJR千歳線には存在しません。

第一に、信号の間隔が狭くないことから、エアポートを1時間4本からさらに増便することは、他の列車との兼ね合いを考えると不可能です。

第二に、新千歳空港駅が6両編成までの対応で、地下駅であることからその拡張が難しいため、列車の増結は不可能です。

第三に、南千歳~新千歳空港間が単線であること、および平和~新札幌間にある札幌貨物ターミナルへの分岐が平面交差であることから、ダイヤが乱れやすい要因が多く、定時運行と列車回数増加を両立できません。

エアポートをJR北海道の主力として成長させるには、増結か増発によって輸送力を増やす必要があり、どちらにせよ地上への大規模投資が不可欠です。このほか、列車の増発に合わせて車両を製造する必要がありますから、さらに多額の投資が必要となります。

これは断片的な情報から想定したボクの推測額ですが、将来を考えたエアポートの本格的な増強を行う場合、車両製造費用だけで200億円、さらに線路・信号の整備などを踏まえると総額300~500億円の資金が必要です。


この状況に対して、JR北海道は平成28年5月6日に一度は資金面の問題からエアポートの増強を当面行わないことを表明しました。しかし、5月18日の社長記者会見では、一転してエアポートの増強のための設備投資に踏み切ると発表。10月16日には菅義偉官房長官がエアポートの輸送力を2020年までに3割アップさせると発言し、事態は加速しています。

ただ、大がかりな投資が一朝一夕にできるような状況にJR北海道がないことから、当面はできる限りの輸送増強を行うこととなるでしょう。

緊急の対策として考えうるのは、エアポートの車両について、733系の割合を増やすことです。

新車製造費用を削るため、函館運輸区に所属する733系1000番台を活用し、中間車12両を製造して6両4本を作り、札幌の721系エアポート用3000番台6両編成4本と交換、という線もありそうです。こうすると、733系の輸送力を最大限に活用してエアポートをとりあえず増強したうえで、多客期の混雑や外国人旅行客の着席需要といった問題点のある「はこだてライナー」の改善を行うことが可能です。

差し当たりの補強の後、抜本的な輸送増強策に着手することが考えられます。

必要なプロジェクトは、車両の増備、信号設備の追加、札幌貨物ターミナルの分岐の立体化、西の里信号場の再整備などでしょう。

多額の投資が必要となりますが、快速エアポートは単にJR北海道の収益源であるのみならず、北海道の顔であり、今後の北海道の観光振興のキーマンでもあるのです。国・自治体と協力しながら、一刻も早くプロジェクトを前進させる必要があります。

我々市民も、この問題に無関心でいることは許されません。エアポートを積極的に利用し、「エアポート増強待望論」を草の根から巻き起こす必要があるでしょう。


快速エアポートの浮沈が、今後のJR北海道、そして北海道全体の行く末を大きく左右すると言っても、過言ではありません。

いち道民として、そして北海道と北海道の鉄道を愛する鉄道ファンとして、エアポートにはできる限りの応援をしたいと考えています。

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