北海道新幹線迷開業事⑧ 新幹線が問い直される時 - ゲニウス(北)の北海鉄旅いいじゃないか
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北海道新幹線迷開業事⑧ 新幹線が問い直される時(平成28年3月25日)

なんやかんや長く続いてしまったシリーズも、今回で最終回とします。最初は第3回までの予定でしたが、ネタに事欠かなかったので8回も続けちゃいました。

最後は、ここまでのまとめ的な感じの記事にします。要はネタ切れでございます。

で、前回ヒートアップしすぎた感があるので、今回はできるだけ棘のない雰囲気の記事にしたいと思います。ホントは今回こそビシバシ指摘する回にするつもりでしたが、ここらへんでバランスとっておきます。

第7回までのおさらい

では、ここまでのおさらいから。

第1回は新幹線の二次アクセス、第2・3回は在来線、第4・5回は新幹線の、それぞれ迷なところを取り上げました。第6回は4時間の壁について掘り下げ、第7回は新幹線に関する議論のおかしさを指摘しました。

回によって話題は大きく違いましたが、共通の「言いたいこと」があったのがおわかりいただけたでしょうか。

まず第6回で詳しく述べました通り、新幹線には「4時間の壁」というものがあります。東京・名古屋・大阪といった大都市から4時間以内に行けないところでは、新幹線、というか鉄道は圧倒的に弱いんです。

次に、第1回と第7回でお話ししたように、鉄道には鉄道の、飛行機には飛行機の、バスにはバスの、それぞれ強さと役割があるということ。長い距離が得意な順に並べると、「飛行機>鉄道>バス」に、小回りでは「バス>鉄道>飛行機」となります。だから、鉄道が飛行機の、バスが鉄道の二次アクセスを担うことがあっても、その逆はちょっと無理があります。また、新幹線や特急はバスや短距離フェリーとは異なり、地域輸送より広域輸送が優先となります。

要するに、「新幹線は万能ではない」というのを主張しているんです。

そりゃあそうですよね。新幹線ってのはあくまで道具です。魔法の杖じゃありません。「あらびんどびんはげちゃびん」なんつって無条件にお客が増えるワケではありません。

というか、新幹線がホントに魔法みたいなものだったら、赤字なんて出ないハズですし、沿線は東京並みの大都会になってるハズですよね。そういうことです。

新幹線を問い直そう!

北海道新幹線以前に建設された新幹線は、いずれも東京か新大阪から終点までを4時間以内で結び、飛行機と対等以上の勝負を繰り広げています。

しかし、新幹線網もある程度充実してきた今、建設予定・計画・構想のある新幹線は、いずれも「4時間オーバー」「需要が少ない」「技術的に無理」のいずれかの課題を背負っています。

北海道新幹線のほか、九州新幹線長崎ルートも遅いです。北陸新幹線金沢以西は東京~福井県内の所要時間が東海道新幹線と変わらないため需要があるか不透明です。また計画路線(まともに議論されない妄想レベルの計画ですが)の四国横断新幹線は、技術的に実現不可能なんだそうです。

なるほど、国土の発展のため、必要なインフラとして新幹線を全国に整備することが必要というのは、傾聴に値する意見でしょう。

しかし、新幹線とはあくまで地域づくりの「道具」です。つまり、道具ってのはひとつしかないワケではなく、様々な道具があります。

で、道具ってモンには得意不得意がありますよね。ゾンビを殴るなら剣、石を砕くならピッケル、土を掘るならスコップ、木を切るなら斧、田を耕すならクワ(なんでマイクラやねん)。地域づくりにおいても、いろんな道具を使い分ける必要があると思うんです。交通インフラには他に空港や道路がありますし、交通以外にも再開発、産業づくり、地産地消など様々な方法で地域をつくっていくことができます。

東京や大阪から遠すぎず、かつそこそこの人口があれば、新幹線を生かせるでしょう。でも、たとえば人口3ケタの村に新幹線の終点があっても仕方ないですよね。人口100万の街でも、東京から10時間かかるとかだったらしようがないですよね。そういうところには、他にやりようがあるでしょ、というお話なんです。

新幹線という道具は、今まではその速達性が有効に活用されてきましたし、そのための素地もじゅうぶんにありました。しかし、今後はそうとは限りません。それぞれの新幹線ごとに精査が必要でしょう。

今まで新幹線が素晴らしいものに見えていたのは、圧倒的に速かったから。しかし、今後できる路線は、そうとは限らないのです。

東海道新幹線が開業してから50年あまり、新幹線というものは今、徹底的に問い直されるべき時期に来ています。

他の新幹線を考えてみよう

それでは、ケーススタディ的な感じで、現在建設中の他の新幹線を検討してみましょう。

まず北陸新幹線の金沢以西。東京~福井の所要時間はしらさぎルートでも余裕で4時間を切っているので、時間は問題なし。ですが、前述の通り所要時間が大きくは縮まらないので、効果は低いかも。

こういう迷う場合は違うアプローチをしてみましょう。この北陸新幹線については、単なる輸送機関という役目以外にも、「東海道ルートの代替」という使命があります。そういうのを重要だと考えるかどうかは人それぞれだと思いますが、少なくとも加古川線の電化より迂回路確保の効果は大きいと思いますよ。

お次は長崎ルート。FGTまたはリレー方式の場合、新大阪からの所要時間が4時間超え、しかも建設費・車両コストがかさむということで、「不要」と断じてもいいと思います。逆に、全線フル規格は、新大阪から3時間台で到達可で、博多~長崎間も大幅に短縮されるため、一考の価値があります。前者の方が初期投資は小さいですが、実際に効果が高いのは後者でしょう。

なお、並行在来線問題を理由として建設に反対するのはお門違いです。それは、前回でお話した「鉄道って何だっけ」という立論から考えればわかりますよね。

ついでに羽越新幹線。新潟~酒田をミニ新幹線化する場合を考えてみます。現状だと乗り換え1回、所要は1往復を除き4時間超えという状況ですが、これを高速化すれば山形・秋田新幹線のように成功する可能性がないとは言えません。

しかし、現行の特急いなほは新潟~酒田間1日7往復。秋田新幹線の前身・特急たざわが14往復だったことを考えると、需要が大きいとは言えません。狭軌のまま高速化する方が現実的でしょう。実際そういう方向ですすんでいます。

とまあこんな感じで、繰り返しにはなりますが、もはや新幹線といえども必ず成功するとは限らないので、今後計画・建設される新幹線はきちんとこういうところを議論しなければならないと思います。

逆にいえば……

逆に、所要時間が4時間以内である既存の新幹線については、何も言うことはありません。あるとすれば、さらに利用客にとって便利な交通機関になるべく頑張ってください、という程度。

また北陸新幹線についても、迂回路という理由以外にも、東京~福井県内の所要時間が4時間以内であるので、不要と断じることはボクにはできません。サンダーバードとつるぎの乗り換え解消というメリットもありますし。

また、所要4時間以内をじゅうぶん実現できる新幹線や路線高速化プロジェクトについては、「どうぞやってください」という立場をとります。

当サイトではこれだけ北海道新幹線に文句を言っているのに、スーパー北斗・スーパーおおぞらはヨイショしています。これは一見ダブルスタンダードのように見えますが、実はこの2つはちゃんと両立可能な主張なんです。

要するに、このシリーズではそういうことを伝えたかったんです。すべての新幹線に喧嘩を売っているわけではなく、かといってどんどん作ればいいとも言ってない。新幹線を造るか否かは、ちゃんとみんなで個別具体に考えて、熟慮の末に決めるようにしましょう、ってことなんです。どうかそこだけは理解してほしい。

さて、若干グダグダではありますが、これにて「北海道新幹線迷開業事」はおしまいとします。

ぶっちゃけこの連載こそが最大の「迷」な気もしますが、別に結構、皆さんが何か物事を考える際に、少しでも役に立ててくれればそれでいいんです。ちゃんと考えの筋道は示したつもりなので、参考くらいにはなるかな、と思っています。

とにかく、みんなでちゃんと考えて、みんながちゃんと意見を持って、やっていってほしいという思いです。新幹線とは何か、それはその地域に本当に必要なのか……と。政府のいいなりではいけませんし、ただのクレーマーでもいけません。

ボクは、今までそういうきちんとした議論が新幹線周辺にあったためしがない、と思っていました。政治家や官僚が自分のエゴで新幹線を造りたがって、それに対して有効な批判のないまま建設が始まっちゃう、みたいな。そういう危機感があって、こんな記事を8本もおこしちゃったんです。どうか皆さん、頭を使うのを嫌がらないで、いろいろ考えてほしいんです。それがボクの願いなんです。

まあそういうことです。メチャクチャな連載(つーか連載と言うにも期間空きすぎやんな……)でしたが、最後までお読みくださった皆様、本当にありがとうございました。もうこんなことはやらないとは思いますが、今後とも当サイトをよろしくお願いします。

……といっても、もう1回特別版を増発するんですがね。「EXTRA」と称して、開業後のお話をちょろっとしますよ。

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