北海道新幹線迷開業事⑤ 上がらない最高速度~整備新幹線の怪!~ - ゲニウス(北)の北海鉄旅いいじゃないか
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北海道新幹線迷開業事⑤ 上がらない最高速度~整備新幹線の怪!~(平成28年3月17日)

北海道新幹線の開業もいよいよ秒読みです。そろそろシリーズ完結に向けてペースを上げてまいります。

第5回こそは最高速度のお話です。どちらかというと東北新幹線の話になってしまいますがね。

東京から函館までの所要時間は、最速で4時間29分。「4時間の壁」を打ち破ることができなかった北海道新幹線は、開業前から大ピンチ。なんと開業当日以外の指定席がちっとも売れないというのです。正直ボクの想定以上のひどさであります。やっぱり4時間の壁ってあるんですね。

しかし、やろうと思えば最高速度を上げて東京~函館3時間台を達成できたはず。一体どうなっているのか、というお話をいたします。

最高速度と距離が見合っていない

それではまず、東京から函館までの鉄道の最高速度を確認してみましょう。

(い)東京~大宮は110km/h。(ろ)大宮~宇都宮は275km/h。(は)宇都宮~盛岡は日本最速(初版執筆当時)の320km/h。(に)盛岡~新中小国は260km/h。(ほ)新中小国~木古内は140km/h。(へ)木古内~新函館北斗は260km/h。(と)新函館北斗~函館は120km/h。

全体的に見て、E5系・H5系がその性能をフルに発揮できる区間が案外短いことがお分かりでしょうか。一方、(い)~(へ)の走行区間は営業キロで862.5km。東京~東広島とほぼ同じです。東京~広島で3時間台を達成できているのに、東京~新函館は達成できていません。

なんといっても(ほ)の区間がネックになっているワケですが、他の区間の速度を上げてそれをカバーしていれば、開業時点での所要時間3時間台達成はじゅうぶんありました。なのに、それがなかったんです。

詳しく見てみましょう。(い)(ろ)(ほ)(と)については、現時点ではこれ以上の速度向上は無理です。(い)はヘアピンコーナー、(ろ)は騒音がネックになりますし、(ほ)は貨物列車を通すために減速は致し方ないですし、(と)は在来線な上に区間が短いので速度向上の意味はありません。つーか安全第一の方針を取るJR北海道が(と)の速度を上げるはずもありません。

しかし、(は)(に)(へ)については、やろうと思えば最高速度を上げられたはずです。

E954系を使った試験によって、最高速度360km/hでの運転は一応可能であることが証明されています。したがって(は)の速度向上は不可能とはいえません。まして(に)と(へ)はなおさらです。

にもかかわらず、JRはあっさりと所要時間3時間台をあきらめました。これは一体……。

整備新幹線の怪!

まず取り上げなければならないのは、整備新幹線というスキームです。

盛岡以北の区間はこの整備新幹線計画に含まれ、以前の新幹線構想とは異なるスキームで建設がすすめられました。

整備新幹線最大の特徴は、最高速度が260km/hに制限されること。これは、国や国鉄が財政難(自業自得)にあえぐ中で比較的需要の少ない区間を建設するということで、コストの適正化を図ったことに起因します。

つまり、設備を最高260km/hレベルに抑えることで、初期投資を抑えるのです。

そもそも整備新幹線というものがそういうものです。スーパー特急(北陸新幹線……結局フル規格で建設されたけど)やフリーゲージトレイン(長崎新幹線)によるコスト圧縮しかり、並行在来線切り離ししかり。

しかし、少なくとも今回の北海道新幹線に関しては、このコスト圧縮が裏目に出てしまったことは否定のしようがありません。

もし、(に)の区間を最初から高速運転を念頭に入れて設計し、せめて最高速度を275km/hにできたならば、この世界は少しだけ、変わっていたかもしれません。

速度よりコストを選ぶJR、その腹の内は

(は)の区間についても、結局360km/h運転を見送った最大の要因は「コスト」でした。所要時間の短縮の恩恵よりも、そのためのコスト増加が上回ると判断されたということです。

それにしても、JRはなぜ、所要時間3時間台という目標をこうもあっさりとあきらめてしまったのでしょうか。

上越新幹線では「特殊速達GS」(停車駅が東京・大宮・新潟だけの便のこと。語源はニコニコの某動画)をわざわざ設けて、東京~酒田の所要時間3時間台を強引に叩き出しているのに。過密区間に単線に軟弱地盤にワインディングロードに、と難所盛りだくさんの区間を鬼神のごとき気動車で駆け抜けて、札幌~釧路を所要時間3時間台で結んだのに。どうして今回に限ってこうもあっさりと引いてしまったのでしょう。

ここでポイントなのが、数年後に所要時間の短縮が見込まれるという点。

第一に、(ほ)の区間について、貨物列車の時刻を調整して、1日1往復だけ最高速度260km/hの列車を設けることが計画されています。ボクは貨物を最優先とすべきだと考えるのでこれには反対ですが、実現すればラップタイムの短縮に大いに期待できます。

第二に、JR東日本は今後最高速度320km/hで走行できる区間を伸ばすことを考えています。そうなると、東北各都市間はもとより、東京~函館の所要時間短縮にも十分な期待が持てます。

ということは、東京~新函館の所要時間3時間台の実現は近い、ということです。どちらかが実現すれば、4時間はゆうゆう切れるはずですからね。

さらに押さえておきたいのは、新幹線札幌延伸計画は最高速度360km/hでの運行を前提に組まれているという点。360km/h運転の実現可能性はさておき、今後20~30年にわたって全体的に速度の向上が図られるということは間違いありません。

ということは、いずれ東京~函館の所要時間3時間台は実現されるであろう、ということになります。というか新函館での乗り継ぎ時間を短縮すれば、もしかしたらもっと早く達成できるかも?

つまりは、JRとしては、「まだ函館なんて中途半端なところだから、今はコスト優先でゆっくり走って、将来的に最高速度を上げていこう」と考えている、と推察されます。

安物買いの銭失い

しかし、です。今現在において、東京~函館の所要時間が4時間を超えているという事実は、なんら変わりません。

新幹線がそのパワーを最も利用客にアピールできるのは、なんといっても開業から1か月の間でしょう。実際、あれほど批判された北陸新幹線も、開業時に多数のお客が利用し、その支持を集めて、成功をおさめたんです。

今回、北海道新幹線は、「最速4時間台」という不名誉な看板を引っ提げての登場となり、結果利用者の支持を受けられないまま開業を迎えることになるでしょう。冒頭で述べた指定席の惨憺たる販売状況がそれを物語っています。

JR北海道の数々の不祥事が重なってしまったこともあり、北海道新幹線はまさに「いわくつき」の存在となってしまいました。

利用客に一番アピールできる「開業」というタイミングに、こんな速さじゃいいアピールになりゃしない。あれだけコストを下げたのに、結局赤字が待っている。「安物買いの銭失い」とはまさにこのことではないでしょうか。

追求されるべき政治と行政の責任

こうして新たな赤字マシーンが誕生し、JRはさらに経営が厳しくなります。これが後々国の重石になるのは自明の理。整備新幹線計画を推し進めるのはJRというより政府・省庁ですから、これは政治の失敗であり、行政の失敗であるととらえられるべきです。

にもかかわらず、そういった責任追及の声が有識者から上がってくることはなかなかありません。この国の将来が不安でなりません。

……なんか、この「独り言」のコーナーではこんな暗い話題ばかりで明るい話を提供できてなくて、本当に申し訳ないです。こちらとしても心苦しいのですが、ボクがそれだけ将来を不安になっているということ、そして皆さんにそれだけ真剣に将来を考えてほしいということだけ、理解していただきたいです。

採算すら怪しいと思われる、いわく付きの新幹線、北海道新幹線。

当然と言いますか、その周辺には様々な迷要素が存在しています。

この連載では、北海道新幹線の開業を前に、それらのおかしな要素を取り上げ、狂いつつある北海道の交通をネタにしていきます にスポットライトを当てていきます。

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