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北海道新幹線の札幌延伸に反対します(平成26年11月30日)

【注意】本記事は、平成28年12月23日に全面改稿を行い、基本的にその当時の状況を基に記載しております。現在(令和元年)、状況が当時と大きく変わり、前提条件が崩れた部分が多くなっております。また、当時とは考え方が変わった部分もあります。

そのため、現在の「北海鉄旅」では以下に掲載している意見を大幅に変更しました。

令和元年11月1日時点での「北海鉄旅」の意見は、「北海道新幹線の札幌延伸に反対します②」をご覧ください。

また、それと別の理由により、以下に記載の「北海道新幹線には乗車しない」旨の公約を破棄しております。詳細はこちらから。

以下、過去の意見を引き続き掲載しておりますが、現在の意見とは異なることに十分留意ください。


何かと話題にのぼることの多い北海道新幹線。現在、札幌延伸を目指して工事・調整が進められています。

しかし、ボクはこの札幌延伸には大反対です。

以下に、その理由を挙げていきます。


まずひとつめの理由は、東京・札幌間の旅客輸送において、新幹線が飛行機に勝てるわけがないからです。

そのわけは単純。東京から札幌まで、新幹線は4時間で辿り着くことができないからです。

新幹線の需要は、東京または新大阪から4時間で行けるかどうかに大きく左右されます。また、3時間で行ければ、その需要は一気に大きくなります。

既存の新幹線を見てみましょう。東京から新青森までは、最速のはやぶさでギリギリ3時間以内。東京~新青森間は、新幹線が飛行機に対して優勢です。また、東京~仙台はやまびこでも2時間ほどとあって、新幹線が独占状態となっており、羽田~仙台の飛行機はとうの昔に撤退しています。

しかし、最速でも3時間台後半の東京~秋田は、飛行機とがっぷり四つ。5時間以上かかる東京~博多間は、むしろ飛行機が圧倒。

試算では、全区間の最高速度を360km/hとすることで、東京~札幌間でも所要3時間台を実現可能とされています。

しかしながら、これは理論上の数値でしかなく、実現可能性はきわめて低い、とボクは考えています。

第一に、東北新幹線では東京~大宮間で110km/h、大宮~宇都宮間で275km/hの速度制限が存在し、将来にわたってもこの速度制限が解除される見通しがありません。前者は急曲線、後者は騒音がネックとなっているとされており、いずれも大幅な速度アップは期待できません。

第二に、北海道新幹線区間(つまり新青森以北)のスピードアップも、目下望めません。JR北海道は安全への投資を最優先としており、現在のところ北海道新幹線は例の金属片騒動以外は安定して走っています(意外でした。やるじゃんJR北)。しかし、ここからさらに最高速度を100km/hも上げるとなると、北海道新幹線を「整備新幹線」ではなく超高速対応の状態にしなければなりません。そうなると、既存区間の設備改良とそれに伴う線路使用料の引き上げ、新規建設区間の建設費高騰に伴う線路使用料の引き上げ、安全のための投資額の増大、とメチャクチャなコスト要因となります。現状でも資金がショートしかねないJR北海道に、そんな余裕は微塵もありません。

第三に、同様にJR北海道が「安全」を最優先としている以上、在来線同様に新幹線もスピードアップより安全運転、という経営判断が下るはずで、たとえ資金があってもJR北海道は新幹線の360km/h運転を望まないと考えられます。

以上から、最高速度360km/hが実現するとしても宇都宮~新青森間だけでしょう。

こうなると一部区間での360km/h運転すら無意味で、盛岡~新青森間(の全部または一部)での320km/h運転くらいしか望むことはなく、最高速度は320km/hのままで運行されると考えられます。

となると、スピードは結局現状と大きく変わらず、今の所要時間を参考に「盛岡~新青森間の速度向上」「青函トンネル区間で1往復だけ260km/h運転」を加味して考えても、東京~函館(新函館北斗じゃないよ)間が4時間10分程度、東京~札幌間4時間59分程度、札幌~仙台間3時間45分程度が限度だと考えます(ちゃんと試算してないけどこんなものだと思います)。

東京~札幌3時間台など、夢のまた夢、というわけです。


「それでも、あれほどの利用客数を誇る飛行機からちょっとシェアを奪えれば、割合は低くても絶対数は多いから、なんとかなるのでは?」

あちこちでこんな声が聞こえます。

彼らは、ボクに鼻で笑われています。

行きますよ。羽田~新千歳間の空の便の利用者は年間約900万人。ということは片道1日あたり約12,000~13,000人です。現在の東京~札幌間の旅客移動は飛行機がほぼ100%のシェアを持っているので、この数字を東京~札幌間における公共交通のパイの総和ととらえます。

将来の東京~札幌間の流動増加、および新幹線効果による公共交通全体のパイの増加を加味して将来の利用客数を見ても、せいぜい今の1.5倍程度でしょう。ということは1日2万人がいいところ。

東海道・山陽新幹線の東京~博多間は新幹線の最短所要時間が4時間53分(平成28年3月26日現在。間違えてたらスマソ)で、最速の列車以外だと5時間以上かかることが多いです。この区間の鉄道シェアが8%で、東京~札幌間も同程度かそれ以上の所要時間となることが想定されるので、所要時間と「鉄道・航空機のシェア」の相関関係から、東京~博多間における数値は東京~札幌間の新幹線のシェアの値に近似すると考えられます。

東京~札幌間の公共交通全体の利用者が1日片道あたり2万人、鉄道のシェアが8%、ということは東京~札幌間で新幹線を乗り通す人は1日片道1,500人。

もちろん、北海道新幹線の利用者は全区間を乗り通す人だけではありません。札幌~仙台、札幌~函館などの利用が想定されます。

札幌~仙台を同様に計算してみましょう。空の便の利用者年間78万人、現状は航空シェア100%と想定、新幹線予想所要時間4時間弱より想定シェア50%、潜在需要掘り起こしで乗客1.3倍と想定して計算すると、新幹線の予想利用者数は1日片道700人です。案外大したことありません。

次に札幌~函館。現在の特急「スーパー北斗」「北斗」の年間利用者数は、正確な数値はわかりませんが、平均乗車率5割と想定すると1日片道あたり2000人強です。札幌~東室蘭間の利用者が3割を占めていると思うので、乗り通しは1400人と想定。札幌~函館(新函館北斗じゃないよ)間の新幹線の所要時間は1時間40分程度だと思うので、シェアを拡大する余地がありますが、博多~熊本間と同様に高い特急料金を嫌う利用客のバスへの転移もありえます。よってこちらもシェア拡大は1.5倍がいいところでしょう。とすると1日片道あたりの利用客は2,000人程度。

3つの数字を足すと、1,500+700+2,000=4,200人/日。

これに洞爺湖・登別・ニセコなどへの観光客や札幌~青森・盛岡など地方都市相互間の需要を足しても、多く見積もってプラス1000人/日。東海道・山陽新幹線とは大きく異なり、沿線に人口の大きい街が少ないために途中区間の利用があまり見込めないのが東北・北海道新幹線の特徴です。

5,200人の乗客をE5系(定員723名)で運ぶと、乗車率50%と想定しても14往復程度。たった14往復で足りるワケです。しかもこの数字は、潜在需要の掘り起こし分や、洞爺・ニセコなどへの観光客の数を多めに見込んでいます。

1日たった14往復のために、あのような仰々しい高架線路や、山地を貫く長いトンネルや、1両4億円にもなる新幹線車両や、高速運転のための膨大な経費が必要でしょうか? いいえ、断じて必要ではありません。


北海道は雪が多く冬が厳しいから、雪に強い新幹線が必要だ。こんな意見も、筋が通っているように見えます。

しかし、実はまったく理由になっていません。

たしかに、1年に1回くらいは、新千歳空港がマヒして、新幹線に客が流れる場面があるでしょう。

それがなくとも、盆と正月くらいは、多少は乗客が増えるでしょう。

ですが、それは1年365日~366日のうち、ごくごく数日間の出来事に過ぎません。

盆や正月ほど客の入りの多くない通常期・閑散期が、広域輸送・観光輸送では大多数を占めます。先述の通り、北海道新幹線の輸送量はたかが知れており、先ほどの試算結果を大幅に上回るような実績が出るのは本当にごくわずかな時期だけの話です。

年に1日~数日のために、あのような仰々しい高架線路や、山地を貫く長いトンネルや、1両4億円にもなる新幹線車両や、高速運転のための膨大な経費が必要でしょうか? いいえ、断じて必要ではありません。


北海道新幹線の効果は、道南・道央に限定されます。

新幹線と在来線特急の乗換駅となるであろう札幌で、新幹線と特急を乗り継いでも、東京~旭川間は6時間半~7時間(乗り換え時間含む)、東京~帯広間は7時間半~9時間(同)と試算できます。なお、JR北海道が札幌中心のダイヤを敷いており、今後もこれが変わるとは思えないため、新幹線と在来線の接続は考慮されないと考えられることから、乗り換え時間込みの所要時間には幅を持たせています。

新幹線の新函館延伸によっても、札幌など道内他エリアへの「新幹線効果」が微塵もなかったことは、記憶に新しいところです。

同様に、札幌延伸後でも東京からの鉄道での所要時間が極端に長くなる地域については、何の効果も期待できません。

観光客は増えるかもしれませんが、それは「新幹線によって北海道が注目されたから」に他ならず、いっときのブームに過ぎません。(もしそうじゃなかったら、それは「北海道の魅力が上がった」と評価すべきでしょう)

したがって、「北海道全体への波及効果」などを謳い、新幹線の延伸に賛成することには、理由がありません。

フリーゲージトレインを持ってきて旭川や帯広に新幹線を直通させてもムダです。そもそも東京~札幌間で所要5時間前後かかる以上は札幌以遠への乗客など全く期待できませんし、FGTは最高速度が遅いので東京~札幌間の所要時間がさらに伸びますから、この時点で直通客に期待できません。第一、石勝線・根室本線は非電化です。

さらに、道南・道央であっても、これほどの所要時間では大したインパクトは期待できません。理由は全く同じです。これは、現在の函館界隈でビジネスの動きが全然ないのを見ていれば、わかると思います。

新幹線を新千歳空港まで延伸しても変わりません。そもそも新幹線の空港乗り入れ自体に意味がありません。

「新幹線・イコール・沿線活性化」という考えは捨てましょう。新幹線の線路があろうと、新幹線の車両が乗り入れて来ようと、所要時間が長ければ意味がありません。


政治家と官僚と土建業者だけをいたずらに利し、沿線には利益をもたらさない新幹線を造る金など、ほんらいこの国にはないはずです。

快速「エアポート」増強のための援助。道内各地の老朽インフラの修繕・交換。社会保障。観光推進。軍事。課題は山積みで、そのための財源の問題が深刻化しています。

必要なところに資金が回らず、不要なハコモノや天下り法人ばかりが出来上がる。この国には、ハッキリとした「ねじれ」が存在します。

われわれ国民は、このようなねじれを容認・黙認してはなりません。不要物の建設には、しっかりと反対の声をあげる必要があります。


以上の理由から、ボクは北海道新幹線の札幌延伸に断固として反対します。

ここまで言ってしまったからには、ボクは北海道新幹線には乗りません。東北新幹線には乗りますが、新青森より北には決して行きません。別の交通機関に乗り換えます。乗車レポートを期待されていた方、すみません。

いやでも、733系1000番台はいいですね。内装がチョー気に入りました。

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