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どうなる? 北の特急列車網② サロベツ・オホーツクの憂鬱(平成28年4月23日)

やあ。

またまた始めちゃいました迷連載。窮地に立たされたJR北海道の特急。果たしてこの先生き残れるか!? ってな感じで今回も語っちゃいますよ。

さて、今のJR特急でホットな話題と言ったら、やっぱりサロベツとオホーツクの再編でしょう。前回もお話しした通り、資金難の中、老朽化した特急気動車を置き換えつつ、現状のまま特急列車を維持するのは、まず不可能な状態です。これをどうしましょう。今回はこれがテーマでございます。

この記事は7月26日に改めました

本題の前に、ちょっと注意

この記事は4月に初版を出しました。その時は「今後サロベツやオホーツクはどうなるんだろう」という予想の記事でした。

しかし、5月24日の北海道新聞朝刊2面で宗谷系統・オホーツク系統の再編の概要が決まったとの報道が出ました。したがって、それをもとに、具体的にどんな運行形態になるかを解説する記事に改稿しました

さらに、7月26日の北海道新聞朝刊2面で、JR北海道から沿線自治体に提示されたオホーツクの具体的な再編プランが掲載されたので、それを元に情報を更新しました。さらに8月5日に微修正。

急がれるキハ183系の置き換え

現在JR北海道にとって急務であるのが、老朽化著しくサービスも悪いキハ183系34両を退かせることです。これらは平成29年度までの廃車が決まっています。

現在ノーマルのキハ183系で運行されているのは、先述のオホーツクと、旭山動物園号、あと北斗の増結のため応援が行っている関係で、今回のダイヤ改正からはサロベツにも入るようになりました。この他、波動輸送もあります。

ちなみに右の画像は、昨年8月に石北本線が路盤流出でウヤになったときの札幌~旭川の臨時列車です。

替わりに製造されるのはキハ261系1000番台です。しかし、現在の状態では置き換え対象と同数の新車を作る資金はないとのことです。

しかも、それから何年かの後、さらにN183系(めんどいのでこの連載ではN・NN183系をまとめて「N183系」と総称します)に廃車が出る見込みです。残るはたったの22両

そのため、車両が足りない分を、収益性の低いサロベツ・オホーツクの両列車を再編することでなんとかするようです。

ただし、あくまで今回の再編は「本数を減らさずに」行うようで、そのために一部列車を旭川以東(以北)の運転とすることで車両数の削減を図るというのです。

宗谷系統再編の解説

※以下、「予想記事」です。実際のダイヤはJR北海道のWebサイトを、それに関する雑記は本コーナー内「JR北海道の平成29年3月ダイヤ改正斜め読み」をご覧ください。

では、それらの特急列車は、具体的にどのような形に変わるのでしょうか。解説していきますよ。

まずは、稚内方面の「スーパー宗谷」と「サロベツ」。それぞれ1日に2往復、1往復運転されていますが、このうちスーパー宗谷1往復とサロベツ全列車の運行区間が旭川~稚内となる見込みです。

札幌~稚内は、車体傾斜装置停止前のキハ261系が全力で走っても5時間近くかかる長~い区間(これを軽々超えるにちりんシーガイアェ……)。そのため、1編成につき1日に1往復しかできません。これが旭川~稚内なら、所要4時間弱なので、1日に1.5往復できるようになり、必要な車両の数が減ります。これによって、キハ261系基本番台だけで宗谷系統の特急をまかなうことができ、キハ183系の必要数が減ります。

しかし、です。スーパー宗谷に充当されるキハ261系基本番台は、苗穂運転所がマイホーム。宗谷系統3往復すべてを旭川発着にしてしまうと、車両をキハ261系の管理のノウハウのない旭川運転所に転属させるか、札幌まで回送する必要が生じてしまいます。また、札幌~稚内を直通する乗客にとっても甚だ迷惑です。

そこで、朝の稚内行きと夜の札幌行きはそのまま札幌~稚内の運転とするものと考えられます。

つまり、宗谷系統は次のような運用に変わることになります。

  • 札幌→(現スーパー宗谷1号)→稚内→(現上りサロベツ)→旭川→(現スーパー宗谷3号)→稚内
  • 稚内→(現スーパー宗谷2号)→旭川→(現下りサロベツ)→稚内→(現スーパー宗谷4号)→札幌

ただ、現行のダイヤだと、稚内での折り返し時間に間に合わなかったり、スーパーカムイとの噛み合わせが悪かったりするので、現サロベツを中心に時刻を大幅に変えざるを得ないと思います。

さらに、現サロベツの車両が高性能なキハ261系に替わることで、旭川~稚内の所要時間が現スーパー宗谷並みに短縮されることでしょう。

それを念頭に、おおよその時刻を予測してみました。※「S」=スーパー

下り時刻
駅名S宗谷1号S宗谷3号S宗谷5号
札幌740--------
旭川90911491930
名寄100912452026
稚内124915252306
上り時刻
駅名S宗谷2号S宗谷4号S宗谷6号
稚内71014061711
名寄95216481955
旭川104917452056
札幌--------2220

2・3・4・5号は旭川でスーパーカムイに接続をとることになります。このため、スーパーカムイとの接続時間ができるだけ短くなるようにしました。

なお、時刻変更により列車交換する駅が変わるでしょう。1号と2号は風連、3号と4号は豊富あたりですれ違うことになるかと思います。

オホーツク再編の解説

※以下、「予想記事」です。実際のダイヤはJR北海道のWebサイトを、それに関する雑記は本コーナー内「JR北海道の平成29年3月ダイヤ改正斜め読み」をご覧ください。

続いてはオホーツク。現在は札幌~網走で4往復が運行されていますが、うち2往復を旭川~網走の運行とするとのこと。

報道によると、オホーツク3・4・5・6号が旭川発着になるようです。運用を減らすには、次のようにすればOKです。

  • 札幌→(1号)→網走→(6号)→旭川→(5号)→網走
  • 網走→(2号)→札幌→(7号)→網走
  • 網走→(4号)→旭川→(3号)→網走→(8号)→札幌

3・4・5・6号を旭川での折り返しとしつつ、運用の数を減らすには、一部列車の時刻を大幅に変更する必要がありそうです。特に3・4・5号は、今までより早く旭川に着いて、今までより遅く旭川を出ないと、折り返しができません。

なお、これらの列車は気動車なので、給油の問題があります。ただ、「札幌→網走→旭川→網走」と走っても、総走行距離は873.7km。スーパー宗谷1往復とそう変わるものではないので、たぶん燃料は足りると思います。

そこらへんを考えつつ、旭川乗り換えを考えつつダイヤを組むと、こんな予想になりました。

下り時刻
駅名オホーツク1号オホーツク3号オホーツク5号オホーツク7号
札幌710--------1730
旭川849123017301908
遠軽1044142519282106
北見1139152020282202
網走1229161021202251
上り時刻
駅名オホーツク2号オホーツク4号オホーツク6号オホーツク8号
網走62575813111718
北見71484714021808
遠軽81294915001906
旭川1011114816532115
札幌1146--------2250

やはり、旭川で折り返す列車は(6号を除いて)時刻がガラッと変わってしまいます。でも、網走・北見から4号で旭川に出かけて、5号で帰るという場合に、旭川の滞在時間が増えるので、存外このほうが便利だったりするかもしれません。

3・4・5・6号は旭川でスーパーカムイに接続です。宗谷の旭川発着とかぶらないようにしつつ、最小限の時刻変更にとどめました。

交換駅も変更。1号と2号は上川、1号と4号は下白滝、5号と6号は生田原、5号と8号は瀬戸瀬、7号と8号は上越でしょうか。

……というか、実際にダイヤ予想してみてびっくりしたんですが、旭川で10分近く乗り換え時間を設けても、札幌~上川以東の所要時間が変わらない、というか下手したら速くなるんですよね。いかにキハ183系0番台が遅いか、カムイが速いか、ですね。

予想ダイヤ公開と予想的中率

このページでは、上記の予想をまとめたダイヤグラムのファイル(8月5日公開、二訂版)を公開しています。ダイヤグラム作成・表示ソフト「OuDia」でご覧いただけます。

スーパーカムイ・スーパー宗谷・オホーツク h29.3改正後「予想」ダイヤ(oudファイル、18kB) ※右クリックでダウンロードしてください


※以下の段落はダイヤ骨子発表後(12月)に追記。

この二訂版のファイル公開から4か月あまり、JR北海道からダイヤ改正の骨子の発表がありました。

正直、意外なほどの的中率にビックリしています。宗谷・オホーツク系統に関しては、事前情報が多く運用が読みやすかったというのはありましたが、それでもどシロートが半分くらい的中させたんですから、手前味噌ですが大健闘と言っていいと思います。

では、以下に的中した点と外した点を列挙してみます。一人反省会です。

  • 当たっていた点……
    • 宗谷系統・オホーツク系統の車両運用の流れ。(札ナホ発着で運用数を減らすにはほかに手段がないので、当たって当然)
    • 現オホーツク3・4・7・8号の時刻。
    • 現オホーツク4号と上り特別快速きたみの時刻入れ替え。おおよその時刻含め的中。(運用の都合上現オホーツク4号はかなり早い時間にならざるを得ないので、これも当たって当然)
    • 札幌~旭川間の電車特急の本数は24往復でドンピシャ。(奇跡だ)
    • 一部列車が789系基本番台6両で運行。(ただ初版の予想ダイヤだと789系は全部5両化するとの予想で、後出しジャンケンで予想を変えたので、褒められたものではない)
    • 札幌8時台半ばの列車が6両編成となる。(同上)
    • 朝の旭川発札幌行きの現スーパーカムイ2~16号の編成両数が全部当たり。(これは単なるマグレ。しかもカムイから785系が撤退するとは読めてなかったから完全正解ではない)
  • 外した点……
    • 予想では稚内方面の特急が全部「スーパー宗谷」、網走方面は全部「オホーツク」としていたが、旭川発着便は愛称が変わることになった。ヘッドマークと方向幕作るのめんどいからやらないと思ってたが……)
    • 「スーパーカムイ」の名称が存続すると読んでいたが、789系基本番台充当の列車が「ライラック」、それ以外が「カムイ」を名乗ることになった。
    • 宗谷系統の時刻が大外れ。
    • 特別快速きたみと電車特急の接続が予想ダイヤよりも遥かによかった。
    • 昼間~夕方の電車特急は毎時0分発の便を789系基本番台、30分発を789系1000番台または785系で運行すると読んでいたが、そんなことはなかった。
    • 785系がすずらん専属になるとは読めなかった。

で、自分の予想と実際のダイヤを見比べていると、実際のダイヤだと旭川乗り換えの時間が絶妙(たぶん。実際に運用してみないとわからんけど)で、「やっぱホンモノのスジ屋さんってすごいんだなあ」と痛感しました。

万全とはいえない

この方法は、とりあえず気動車の車両数を減らし、コスト削減を実現する方法と評価できます。しかし、問題があります。

オホーツクはいいんですが、現サロベツは1両増車になってしまいます。ただでさえ名寄以北はスッカスカなのに、過剰輸送になってしまいます。

普通車は0.5両増加、さらに半室グリーン車も設定されることになります。たかがサロベツにそんな……という気がします。

しかし、車両をとにかく減らすという観点からは、これが最良となります。対案としてサロベツの運行区間を札幌~名寄とする方法も考えられ、この場合サロベツが1編成(+予備車)で運行できるようになりますが、先ほど示した方法の方が車両の数を減らせます。なんたってキハ261だけで事足りるようになるのですから。

もう一つ、長距離客にとって乗り換えが苦痛となるということ。

料金面は問題ないでしょう。「しおかぜ」「いしづち」と「宇和海」の乗り換えが必要な松山や、「ソニック」と「にちりん」の乗換駅である大分と同様、旭川での特急料金通算制度ができるでしょうからね。

問題は、その旭川で乗り換える相手です。

スーパーカムイの板挟み

札幌と旭川を結ぶスーパーカムイ。しかし、この特急再編において、このスーパーカムイが大きな問題となってきます。

何が問題なのか。それは、スーパーカムイという列車の性質です。

現状のスーパーカムイは全車普通車で、指定席1両・自由席4両。札幌~旭川という比較的短い区間での利用が前提なので、自由席主体の座席設定になっており、長距離客を運ぶのには向いていません

先述のソニックやしおかぜ・いしづちは、運行区間がそれなりに長いことから、指定席が2両以上ある運用が多いです。そのため、長距離客でも割と利用しやすいようになっています。しかしスーパーカムイはこれらとは性質が違うというワケです。

ということは、旭川乗り換えという方法で行くには、スーパーカムイの指定席両数を増やさなければなりません。

しかし、この方法だと、現状の札幌~旭川の輸送実態に適合しません。観光客が多数乗り込む朝の旭川行きはともかく、それ以外は自由席需要が圧倒的に大きいはず。ここが問題です。

つまり、「指定席を増やすと札幌~旭川の乗客が困り」「増やさないと長距離客が困る」という、まさに板挟みの状態にスーパーカムイが置かれてしまうのです。

以上から、旭川で運用を区切ればみんなハッピー、と簡単にはいかないんです。

今回のまとめ

では今回お話ししたことのおさらいです。ノーマルのキハ183系を置き換えるためにキハ261系を作るとしても、お金がないので全部は置き換えられません。そうなると、何らかの形でサロベツとオホーツクに使う車両を減らす必要が出てきます。

そのため、宗谷・オホーツク系統は一部旭川乗り換えとすることで、一部区間の電車化により特急気動車の必要数を減らすというのです。

しかし、それには「スーパーカムイは自由席ばっかり」という問題が生じます。旭川ユーザーとそれ以東の乗客の利益が相反してしまうような状況です。

なかなか厳しい状態ですが、どうすればうまく折り合いをつけることができるでしょうか。

札幌を中心とした特急列車のネットワークは、今激動の時代を迎えています。

お金はない。車両も古くなっている。需要も少ない。そんな中で、地域にとって必要なサービスを維持することができるでしょうか。

この連載では、苦悩のJR北海道がどんな方法をとることができるのか、考えていきます。

参考文献……

  • JR北海道 プレスリリース 平成28年4月13日発表「特急車両の老朽・劣化の状況について」(http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2016/160413-1.pdf
  • JR北海道 プレスリリース 平成28年3月28日発表「平成28年度事業運営の最重点事項」(http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2016/160328-1.pdf
  • JR北海道 プレスリリース 平成27年3月20日発表「安全投資と修繕に関する5年間の計画について」(http://www.jrhokkaido.co.jp/press/2015/150508-1.pdf
  • 北海道新聞 平成28年7月26日付朝刊2面記事「鉄路見直し 沿線危機感」
  • 北海道新聞 平成28年5月24日付朝刊2面記事「特急の一部旭川発着 スーパー宗谷、サロベツ、オホーツク JR来春ダイヤ改正」
  • 川崎界隈貨物事情 資料室に掲載されているダイヤグラム ※公式発表のダイヤではない。あくまでダイヤ予想の「参考」としただけ。
    • 旭川~名寄・新旭川~上川 ダイヤグラム 2016年3月改正 基本ダイヤ(http://f-kawasaki.sakura.ne.jp/diagram/hokkaido/15/15_1603_0.pdf
    • 上川~網走 ダイヤグラム 2016年3月改正 基本ダイヤ(http://f-kawasaki.sakura.ne.jp/diagram/hokkaido/17/17_1603_0.pdf
  • ほか、以下に示すサイトから、平成19年のキハ261系1000番台の製造費用を知ることができる。一次資料は確認していないが、複数のサイトが同じ額を記載していることから、情報は真と判断する。時間があったら自分で資料にあたりたい。

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