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道南いさりび鉄道の平成31年3月ダイヤ改正斜め読み(平成31年1月29日)

過去のダイヤ改正に関する記事です。

平成31年(2019年)3月16日に、道南いさりび鉄道のダイヤ改正が行われます。例年通り、JR北海道のダイヤ改正と同日の実施です。

これまでの道南いさりび鉄道(以下、「いさ鉄」)のダイヤは、JR江差線時代のダイヤを踏襲しつつ微修正を加えるだけでしたが、今回初めて一定のテコ入れが行われるので、ちょっと特集してみます。

※JR北海道のダイヤ改正の特集は、「JR北海道の平成31年3月ダイヤ改正斜め読み(前編)」「JR北海道の平成31年3月ダイヤ改正斜め読み(後編)」をご覧ください。

函館発・上磯行きを1本増便!

今回の改正では、おそらくJR時代初期以来となるであろう列車の増発が行われます。函館近郊とはいえ利用者は道内他路線と比較しても多いとは言えず、また経営の苦しい三セクということもあり、増発はないと思っていましたので、これには驚かされました。

増発されるのは、函館9:02発の上磯行きです。朝の上り(上磯・木古内方面)は函館7:42発の上磯行き1152Dの後3時間ほど列車間隔が空いていますが、この間に列車が挿入され、フリークエンシーが上がります。

この列車は、JR函館本線の大沼公園発・函館行き普通列車(4852D)との接続をとります。乗り換えの待ち時間が大幅に少なくなります。

いさ鉄の沿線には、七重浜駅付近の函館水産高校と、清川口駅付近の上磯高校があります。七重浜は9:12発、清川口は9:22発なので、授業時刻には少々遅いですが、休日の部活動に行くには使えそうです。

また、上磯駅の近くには太平洋セメントの上磯工場があるので、そちらへの通勤にも使えるかと思います。通勤以外にも、最近は「工場萌え」なんてジャンルがあるようなので、そういった需要にも応えられるかもしれません。

なお、増発はしても、通過する車両の延べ両数は変わらないでしょう。現行ダイヤだと1152Dが2両で運行されますが、これを1両に短縮して、浮いた分を増発に回すと思われるからです。もともと1152Dは上磯到着後に切り離しを行っているので、それが函館切り離しに変わるだけ、というわけです。

はやぶさ1号からの接続改善

新幹線との接続も改善されます。

現行ダイヤでは木古内10:13発の函館行き列車が、後続の上磯始発の列車と順番を入れ替える形で、1時間ほど繰り下げられます。これにより、木古内に10:41(ダイヤ改正後)にやってくる新幹線はやぶさ1号から乗り継げるようになります。

この接続改善により、トラピスト修道院の最寄りである渡島当別へのアクセスが便利になります。現行だと、はやぶさ1号からの乗り継ぎで渡島当別に行く場合、到着は午後になります。今回の接続改善で、午前中に修道院に着けるようになり、渡島・檜山の周遊観光客にとっては朗報となります。「公共交通で巡りやすい道南地方」という評判が広まれば、いさ鉄だけでなく、新幹線をはじめ道南の交通機関全体で観光利用が増えてくれるはず……!

一方、上磯へのアクセスは改善とはいえません。現行のダイヤだと、新函館北斗・五稜郭乗り換えで上磯に11:43に着けますが、後述の通りこの乗り継ぎができなくなります。そのため、はやぶさ1号で上磯に行くには木古内で今回時刻繰り上げになった列車に乗り換えることとなるのですが、木古内での乗り換え時間が長いので、上磯到着は11:54となります。乗り換え回数は減りますが、10分ほど所要時間が増えることになります。

かといって、木古内発車を新幹線に完全に合わせた時刻にしてしまうと、上磯以降の時刻が現行ダイヤの1159Dよりも大きく繰り上がってしまいます。時刻を繰り上げないということは、今の時刻のままの方が、上磯以東の各駅の利用者にとって都合がいいということでしょう。

こうやって各方面の利用者便益を比較衡量した結果、「新幹線との接続を意識しつつ、上磯以降の時刻は変えない」という答えが出たのでしょう。

その他の時刻変更

他にも大小の時刻変更があります。

現行だと函館11:21発の上磯行きが、函館9:58発に大幅繰り上げとなります。函館10:40発の木古内行きよりも前の時刻となります。

これにより、先述の列車増発と合わせ、午前の上り列車は函館→上磯間でおおむね1時間に1本の運行となり、列車間隔がかなり平準化されます。

また、増発列車と同様、函館本線の普通列車と接続し、朝の時間帯の七飯方面からいさ鉄沿線へのアクセスが改善します。

ただし、新幹線はやぶさ1号のアクセス列車である新函館北斗11:10発のはこだてライナーからのアクセスが悪くなるので、本州方面から七重浜・久根別あたりに行くにはちょいと面倒になります。


朝ラッシュの列車にも若干の改善が。木古内7:05発の函館行き123Dが、7:12発に7分繰り下げとなりますが、上磯以降の時刻は変わらず、全体の所要時間が7分短縮。ラッシュアワーの7分は貴重なので、これはナイスな改正です。

要因の一つが、茂辺地での上り120Dとの交換の改善。現行ダイヤでは123Dが120Dを待っているのを、その逆、つまり120Dが123Dを待つように変更することで、乗客の多い函館行き列車である123Dを優先しました。

二つ目は、新幹線のダイヤ改正との絡みだと思います。123Dは現行だと泉沢で数分停車していますが、これが解消されます。ということは、上りの貨物列車との交換待ちをしなくなるということです。これは、新幹線の時刻が全体に4分ほど繰り下がるので、貨物列車の木古内発車も合わせて繰り下がり、貨物の五稜郭~木古内間の運転時分が4分ほど増えたため、泉沢で123Dを待つ時間を取れたからだと思います。貨物の時刻は確認していないので憶測ですが、多分合っていると思います。


もう一つ、木古内20時台発の函館行きが20分ほど繰り下がります。公式によれば、木古内での滞在時間の拡大、および上磯エリアでのイベントからの帰宅の利便性アップが目的だそうです。どちらかというと後者がメインでしょうか。

輸送合理化

積極策だけでなく、合理化も行われます。函館~木古内間の夕方の1往復が、2両編成から単行に編成短縮となります。

夕方時間帯で単行になってしまうのが、需要の細さを端的に表しています。

といっても、平成29年の改正で函館4時台の上り列車が1両から2両に増結されているので、開業当初との比較ならプラマイゼロです。

今回のダイヤ改正は、JR時代(ひいては国鉄時代)のダイヤを踏襲するだけでなく、赤字会社なりに地域に寄り添っていくという、いさ鉄の意志の表れだと思います。記事を書いていて胸が熱くなりました。

それにしても、1路線の、しかもローカル線の改正内容だけでこんなに書けるとは思いませんでした。それだけ内容の濃い改正だということです。やるじゃんいさ鉄。

いさ鉄は「鉄道専門家を自称する某デマゴーグの口車に乗る(結果としては大成功)」「車体外鈑色を増やしてわざわざメンテナンスコストを増やす」など、小首を傾げたくなるような施策が続いており、「鉄道事業者として大丈夫なんだろうか」と思っていましたが、今回のプロジェクトは見事だと思います。赤字とはいえ30万都市の近郊路線なので、是非頑張ってほしいです。

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